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第2章 二回目の学園生活
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「殿下……下ろしてくれませんか」
「ダメだよ」
「でもこれは……とても恥ずかしいのですが……」
私は温室にあるベンチに座っていた。
――正確には、殿下の膝の上に。
これはさすがに恥ずかしすぎるし、腰に回った殿下の手がくすぐったい。
何よりも互いの体温が伝わるほどに密着したこの状態は……色々とまずいのではないだろうか。
側から見れば婚約者同士、問題はないのかもしれない……いや婚約者といっても未婚の男女がこれは……それとも最近の若い子はこれが普通なの?!
後はお二人でというように、ローズモンドと庭師たちは帰ってしまった。
二人きりに――といっても護衛や侍女はいるのだが、彼らは基本空気だ――なるやいなや、殿下は私の手を取りベンチへ導くとすかさず自分の膝上に私を座らせたのだ。
「じゃあ『フレッド』と呼んでくれたら下ろすよ」
「それは……」
「アン」
すぐ目の前に私を見つめる殿下の瞳があった。
「君は僕の婚約者だ。婚約者同士愛称で呼ぶのは普通だろう」
「……婚約の件は保留と……」
「僕は絶対にリリアンと結婚する」
ふいに視界が暗くなった。
「リリアンは……僕と結婚するのは嫌?」
私を閉じ込めるように抱きしめて殿下は言った。
「嫌というか……」
「まだアルノー殿が好きなの?」
アルノー。
私の夫。
優しい笑顔が頭によぎる。
「お祖母様が言っていたんだ。リリアンはきっとまだアルノー殿が好きだから、僕の事はすぐには好きになってくれないって。でも僕はアンが僕を好きになってくれるまで待つから」
「どうして……私なのですか」
「理由なんか分からない。でも初めて絵姿を見た時に思ったんだ、僕はこの人がいいって」
それはもう何度も尋ねた理由だけれど、何度答えを聞いても理解は難しい。
――いくら絵姿に一目惚れしたといっても……私は殿下の祖母であるローズモンドと同い年なのに。
それを言っても『年齢なんか関係ない』と返される。
確かに……見た目は十六歳なのだから、心の年齢を意識するのは難しいかもしれないけれど。
そしてもう一つ、大事なこと。
「……この身体は私のものではありません。――マリアンヌの心が戻ってくるかもしれないんです」
そうなったら私はどこへ行くのだろう。
また転生するのか、それとも……
「そうしたら僕はリリアンの心を探すよ」
私を抱きしめていた腕を緩めると、殿下は私を見つめた。
「どこにいても、どんな姿でも。リリアンに出会えるまで何年でも探し続けるから」
私を見つめる瞳はとても純真で。
それ以上は言い返せなかった。
「アルノー……私、どうすればいいのかしら」
屋敷へ戻り、テーブルの上に飾った白百合を見つめて私は呟いた。
殿下のことは……好ましいとは思うけれど、それはマリアンヌやカミーユに抱くのと同じ、孫のように思う好意だ。
十六歳の子供に恋心を抱けと言われても難しい。
それに殿下も言っていたけれど――私にはアルノーがいる。
彼と生き別れたのは私の感覚では二ヶ月前だ。
――そうすぐに忘れられるはずもない。
物心つくより前からアルノーは側にいた。
いつも一緒に遊んでいた私たちは当たり前のように婚約をし、結婚した。
私たちは何でも話し、相談し、共有した。
私に前世の記憶があることも、乙女ゲームのことも思い出してすぐアルノーに語った。
アルノーは私の話を否定せず受け止め、ローズモンドが王太子の婚約者となるのに協力もしてくれた。
「アルノー……会いたいわ……」
話を聞いて欲しい。
そして私がどうすればいいのか、教えて欲しい。
目頭が熱くなるとともに、目の前の白百合が滲んで見えた。
「ダメだよ」
「でもこれは……とても恥ずかしいのですが……」
私は温室にあるベンチに座っていた。
――正確には、殿下の膝の上に。
これはさすがに恥ずかしすぎるし、腰に回った殿下の手がくすぐったい。
何よりも互いの体温が伝わるほどに密着したこの状態は……色々とまずいのではないだろうか。
側から見れば婚約者同士、問題はないのかもしれない……いや婚約者といっても未婚の男女がこれは……それとも最近の若い子はこれが普通なの?!
後はお二人でというように、ローズモンドと庭師たちは帰ってしまった。
二人きりに――といっても護衛や侍女はいるのだが、彼らは基本空気だ――なるやいなや、殿下は私の手を取りベンチへ導くとすかさず自分の膝上に私を座らせたのだ。
「じゃあ『フレッド』と呼んでくれたら下ろすよ」
「それは……」
「アン」
すぐ目の前に私を見つめる殿下の瞳があった。
「君は僕の婚約者だ。婚約者同士愛称で呼ぶのは普通だろう」
「……婚約の件は保留と……」
「僕は絶対にリリアンと結婚する」
ふいに視界が暗くなった。
「リリアンは……僕と結婚するのは嫌?」
私を閉じ込めるように抱きしめて殿下は言った。
「嫌というか……」
「まだアルノー殿が好きなの?」
アルノー。
私の夫。
優しい笑顔が頭によぎる。
「お祖母様が言っていたんだ。リリアンはきっとまだアルノー殿が好きだから、僕の事はすぐには好きになってくれないって。でも僕はアンが僕を好きになってくれるまで待つから」
「どうして……私なのですか」
「理由なんか分からない。でも初めて絵姿を見た時に思ったんだ、僕はこの人がいいって」
それはもう何度も尋ねた理由だけれど、何度答えを聞いても理解は難しい。
――いくら絵姿に一目惚れしたといっても……私は殿下の祖母であるローズモンドと同い年なのに。
それを言っても『年齢なんか関係ない』と返される。
確かに……見た目は十六歳なのだから、心の年齢を意識するのは難しいかもしれないけれど。
そしてもう一つ、大事なこと。
「……この身体は私のものではありません。――マリアンヌの心が戻ってくるかもしれないんです」
そうなったら私はどこへ行くのだろう。
また転生するのか、それとも……
「そうしたら僕はリリアンの心を探すよ」
私を抱きしめていた腕を緩めると、殿下は私を見つめた。
「どこにいても、どんな姿でも。リリアンに出会えるまで何年でも探し続けるから」
私を見つめる瞳はとても純真で。
それ以上は言い返せなかった。
「アルノー……私、どうすればいいのかしら」
屋敷へ戻り、テーブルの上に飾った白百合を見つめて私は呟いた。
殿下のことは……好ましいとは思うけれど、それはマリアンヌやカミーユに抱くのと同じ、孫のように思う好意だ。
十六歳の子供に恋心を抱けと言われても難しい。
それに殿下も言っていたけれど――私にはアルノーがいる。
彼と生き別れたのは私の感覚では二ヶ月前だ。
――そうすぐに忘れられるはずもない。
物心つくより前からアルノーは側にいた。
いつも一緒に遊んでいた私たちは当たり前のように婚約をし、結婚した。
私たちは何でも話し、相談し、共有した。
私に前世の記憶があることも、乙女ゲームのことも思い出してすぐアルノーに語った。
アルノーは私の話を否定せず受け止め、ローズモンドが王太子の婚約者となるのに協力もしてくれた。
「アルノー……会いたいわ……」
話を聞いて欲しい。
そして私がどうすればいいのか、教えて欲しい。
目頭が熱くなるとともに、目の前の白百合が滲んで見えた。
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