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第7章 黒猫
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(シャルロット視点)
「代理なんですけれど」
そう言いながら私は返却席の机の上に四冊の本を置いた。
本と共に置かれた貸出票の名前に目を留めて、カイン・バシュレは顔を上げると私を見た。
「……マリアンヌ様は」
「用事があって来られないので代わりに返すよう頼まれました」
「そうですか……」
返却の手続きを済ませると、カイン先生は再び私を見上げた。
青い瞳が刺すように私をじっと見つめる。
「何か?」
「あなたは以前、マリアンヌ様と揉めていたように思いまして」
「ああ……よく誤解されるんですけれど、忠告を受けていただけです」
「忠告?」
「私、平民なので貴族のマナーとかよく分からなくて、不用意に殿下に近づいたりしていたので」
笑顔でそう答える。
「今はもう殿下には近づきませんし、マリアンヌ様とも仲良くなりましたから」
入学したての頃は、一応ヒロインなんだし攻略しなきゃという義務感があり、ゲーム通りに殿下に接触しようとしていた。
……けれど殿下やマリアンヌ様の反応がゲームとは異なり、何かおかしいと思っていたところにマリアンヌ様の事故が起きたのだ。
そして同じ転生者であり、前作のキャラであるリリアン様の登場。
ゲームの世界だけれどゲームとは異なる展開に、私も無理せず好きにやろうと決めたのだ。
乙女ゲームは好きだったけれど、あれはゲームとしてやるからいいのであってリアルで攻略するのは自分の性格的にも厳しい。
それに恋愛よりも、お菓子作りとリリアン様の相手をする方がずっと面白い。
そのゲームでのマリアンヌ様はとてもキツくて平気で嫌がらせをするような典型的な悪役令嬢だった。
現実のマリアンヌ様もキツい印象はあるけれど嫌がらせをするようなことはなく――孤高の人、一匹狼という印象だった。
ちなみに今の中の人であるリリアン様は、天然で自由で人懐こくて可愛くて猫っぽい。
「仲良く、ですか」
「おかしいですか?」
平民と侯爵令嬢が仲良くなることが?
それとも揉めていたはずの二人だから?
「いえ……今のマリアンヌ様は随分と変わられたようですね」
「そうですね。以前と比べてずっと親しみやすくて。素敵な方です」
「――以前のマリアンヌ様もとても素敵な方ですよ」
独り言のように、ぼそりとカイン先生は言った。
……あれ、この人って。
「そうですね、でも私は今のマリアンヌ様の方がいいです。あの方は私が平民であることを気にしないので」
貴族の多いこの学園では、どうしても平民は肩身が狭い。
身分制度がある以上、平民に対して選民意識を持つのは自然な部分もあるのだけれど――リリアン様は前世の影響からかそういった意識が全くないのだ。
「そうなんですか」
「はい。あ、マリアンヌ様からの伝言です、『どの本もとても面白かったのでまた借りたいです』と」
「――では今度いらした時はおすすめの本を用意しておきましょう」
「はい、伝えておきます」
次に会うときが来るかは分からないけどね。
そう思いながら私は図書館を後にした。
「代理なんですけれど」
そう言いながら私は返却席の机の上に四冊の本を置いた。
本と共に置かれた貸出票の名前に目を留めて、カイン・バシュレは顔を上げると私を見た。
「……マリアンヌ様は」
「用事があって来られないので代わりに返すよう頼まれました」
「そうですか……」
返却の手続きを済ませると、カイン先生は再び私を見上げた。
青い瞳が刺すように私をじっと見つめる。
「何か?」
「あなたは以前、マリアンヌ様と揉めていたように思いまして」
「ああ……よく誤解されるんですけれど、忠告を受けていただけです」
「忠告?」
「私、平民なので貴族のマナーとかよく分からなくて、不用意に殿下に近づいたりしていたので」
笑顔でそう答える。
「今はもう殿下には近づきませんし、マリアンヌ様とも仲良くなりましたから」
入学したての頃は、一応ヒロインなんだし攻略しなきゃという義務感があり、ゲーム通りに殿下に接触しようとしていた。
……けれど殿下やマリアンヌ様の反応がゲームとは異なり、何かおかしいと思っていたところにマリアンヌ様の事故が起きたのだ。
そして同じ転生者であり、前作のキャラであるリリアン様の登場。
ゲームの世界だけれどゲームとは異なる展開に、私も無理せず好きにやろうと決めたのだ。
乙女ゲームは好きだったけれど、あれはゲームとしてやるからいいのであってリアルで攻略するのは自分の性格的にも厳しい。
それに恋愛よりも、お菓子作りとリリアン様の相手をする方がずっと面白い。
そのゲームでのマリアンヌ様はとてもキツくて平気で嫌がらせをするような典型的な悪役令嬢だった。
現実のマリアンヌ様もキツい印象はあるけれど嫌がらせをするようなことはなく――孤高の人、一匹狼という印象だった。
ちなみに今の中の人であるリリアン様は、天然で自由で人懐こくて可愛くて猫っぽい。
「仲良く、ですか」
「おかしいですか?」
平民と侯爵令嬢が仲良くなることが?
それとも揉めていたはずの二人だから?
「いえ……今のマリアンヌ様は随分と変わられたようですね」
「そうですね。以前と比べてずっと親しみやすくて。素敵な方です」
「――以前のマリアンヌ様もとても素敵な方ですよ」
独り言のように、ぼそりとカイン先生は言った。
……あれ、この人って。
「そうですね、でも私は今のマリアンヌ様の方がいいです。あの方は私が平民であることを気にしないので」
貴族の多いこの学園では、どうしても平民は肩身が狭い。
身分制度がある以上、平民に対して選民意識を持つのは自然な部分もあるのだけれど――リリアン様は前世の影響からかそういった意識が全くないのだ。
「そうなんですか」
「はい。あ、マリアンヌ様からの伝言です、『どの本もとても面白かったのでまた借りたいです』と」
「――では今度いらした時はおすすめの本を用意しておきましょう」
「はい、伝えておきます」
次に会うときが来るかは分からないけどね。
そう思いながら私は図書館を後にした。
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