元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子

文字の大きさ
62 / 66
第9章 マリアンヌ

02

しおりを挟む
(マリアンヌ視点)

私たちは黒猫を挟んでベンチに並んで座った。
最初シャルロットは私と同じ席につくことを躊躇ったが、お祖母様が強引に座らせたのだ。

「――それで、セベリノ様の提案って何なのですか?」
カーニバルの日に攫われてからの経緯をお祖母様が語り、一息ついたところでシャルロットが尋ねた。
「まずマリアンヌが元の身体に戻るでしょう。そうしてミジャン王国に留学するの」
「留学、ですか」
「――王子と婚約解消して何度も事件を起こしたもの。ここには居辛いわ」
こちらを見たシャルロットに、私はそう言った。

あの小屋で元の身体に戻ったあと、家に帰った私はまず両親に謝ろうとしたのだけれど――それよりも早く、私の無事を聞きつけたフレデリク殿下が駆け込んできた。
私を見た瞬間、殿下は中身がお祖母様ではないことに気づいたのだろう。
あの時の絶望に染まったような顔は、未だに心に焼きついている。

「アンは……?」
初めて聞く低い声でそう言うと、殿下は私へと詰め寄った。
「アンはどこだ! アンを返せ!」
「……何のことでしょう」
表情を消すのが得意で良かったと、この時ほど思ったことはない。

私は階段から落ちて記憶喪失になったのではなく、あれは黒魔術によるということ、そしてお祖母様の魂は私の影の中にいることは、決して誰にも知られないようにとあの黒魔術師に言われた。
恐らくそれを殿下に知られてしまうと、きっと殿下はどんな手段を使ってもお祖母様の魂を手に入れようとするからと。
そう言われたお祖母様がかなり怯えていたので、殿下のお祖母様への執着は相当なものだと察することができた。

殿下のお祖母様への想い、それは嫌というほど身に染みていた。
絵姿でしか知らないお祖母様をあれだけ想えるのだ、本物に会ってしまえばもう、止まらなくなるのだろう。
――この身体が無事で良かったと後で部屋で呟いたらそっと黒猫のお祖母様に目を逸らされた。
その仕草に嫌な予感を覚え、問い詰めたら殿下に首に痕をつけられたと言っていた。
……それだけで済んで良かった。


「アンは……!」
私に掴みかかろうとした殿下は護衛の者たちに制され、王宮へと連れ戻されていった。
その後、ようやく私は両親に謝罪することができた。
あの日は一人思い詰め、いっそこの身体なんかいらないと思っている時に足を踏み外して階段から落ちてしまったのという、嘘の説明をすることに罪悪感を覚えるが、かといって本当のことを告げる訳にもいかなかった。

話し終えた私を両親は抱きしめてくれた。
そうして、逆に済まなかったと謝られてしまった。
私が悩んでいたことには気づいていたけれど、私から言うまでは見守ろうと思っていたそうだ。
けれどそうではなく、もっと私に寄り添うべきだったと。
親子三人、その夜は泣きながら色々と話をした。


三日後、私と両親は王宮へと上がった。
家族で話し合い、殿下との婚約解消を願うためだ。
その場に殿下は現れなかった。
お祖母様が消えてしまったことにひどく落ち込んでおり、学園にも行っていないのだと。

殿下との婚約はあっさり解消された。
――殿下のお祖母様への執着がひどく、このままでは良くないと陛下たちは危惧していたのだという。
そうして私に戻ったことに、むしろ安堵していると。

「あの子がごめんなさいね。ずっと辛かったでしょう」
お祖母様の友人である王太后様が私の手を取り謝罪してくれた。
殿下はしばらく療養させ、心が落ち着くのを待つのだそうだ。



婚約は円満に解消できたとはいえ、それで良かったとはならない。
例えこちらに非がなかったとしても、婚約解消した令嬢は傷もの扱いされてしまうのが貴族社会だ。
まして私は階段から落ちて記憶喪失になったり、誘拐されたりと色々問題を起こしている。
学園でも社交界でも腫れ物扱いとなってしまうだろう。

だからしばらく、遠い異国で留学したいと両親に告げたら反対された。
一人で異国になど行かせられない、心配だというのがその理由だ。
親としては当然なのだろうが、私にだって……望むものがある。

話し合いは未だ平行線だが、頃合いを見てアドリアン殿下の口添えでミジャン王国へ留学できることになったと伝える予定だ。
王子の口添えとなれば、両親もそう強く反対はできないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

処理中です...