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14 どうしてここに?
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「おはよう、ウサギちゃん。今日も来てくれたの?」
私を見るなり駆け寄ってきたウサギを抱き上げる。
この子は最初に助けた子のような気がするけれど、正直見分けがつかないので分からない。
でも毎日のように来てくれるウサギは多分、同じ子なのだと思う。
お湯を張って、魔法をかけて。
魔物たちが温泉に入るのを見届けると一息つく。
「今日も平和だなあ」
この生活を始めてから、三カ月はたっただろうか。
「……四カ月前は日本にいたんだよね」
こんな世界があることを知らずに、大学行ってバイトに行って、友達と遊んで。
二十年も生きていたのに、向こうの生活のほうが夢だったような気がする。
(お父さんたち……びっくりするかな。私が異世界に行って、結婚したなんて知ったら)
そっとお腹をなでてみる。
まだだろうけど、もしかしたらこの中に新しい命が宿っているかもしれないなんて。
子供は欲しいけど、この山の中で出産するのは怖いなと思っていたら、アルバンさんが「その時はうちの嫁が手伝うぜ」と言ってくれた。
一度その奥さんを連れてきたけれど、とても綺麗で優しいひとだった。
アルバンさんはいかつくて見た目は怖いけれど、優しくて頼れるお兄さんという感じだ。
定期的にここへ温泉に入りにやってきて、困っていることはないか聞いてくれたり、時には傷ついた魔物を連れて来たりする。
勇者一行は相変わらず、あちこちに出没しては魔物討伐を行っているそうだ。
ブラウさんや魔王さんも時々やってきては温泉に入って夕飯を食べていく。
皆いいひとだし、この温泉に来る魔物も聞き分けのいい子ばかりなのに。
「本当に……どうして魔物だからって理由だけで討伐しようとするんだろう」
ため息が出てしまう。
「……そうだ、今のうちに畑を見てこよう」
思い出して抱えていたウサギを下ろした。
「すぐ戻ってくるから、温泉入ってて」
あとを追いかけてこようとしたウサギに言って、森へと入っていく。
二カ月ほど前に畑を作った。
野菜はエーリックが町で買ってきてくれるけれど、自分で育てるのもいいなと思って作ったのだ。
畑にはいくつかの野菜と豆を植えた。
大根みたいな野菜は、元の世界でそうしていたように干して保存食にできるそうだ。
エーリックが言うには、この山は冬になると雪が積もるらしいので、その備えに出来ればいいなと思っている。
(ん? 足音がする?)
畑の様子を確認して、また温泉に戻りながらふと気づいた。
少し離れたところから、複数の足音……?
振り返ると、木々の向こうから数人の人影が現れた。マントを被って顔は見えないけれど、人間のようだ。
(こんなところに……)
「人間か!?」
男の人の声が聞こえた。
「こんな山奥に?」
「確かに人間だな……」
「ヒナノさん!?」
聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
「……リンちゃん?」
「ヒナノさん!」
一番小さな人影が走り寄ってきた。
「ヒナノさん! 本物!!」
「リンちゃん!」
え、どうしてリンちゃんが!?
「わあん、ヒナノさんー!」
思い切り抱きつかれて転びそうになりながらもリンちゃんを受け止めた。
「会いたかったです!」
「リンちゃん……」
マントのフードが外れて顕になったその顔は、間違いなくリンちゃんだった。
「リンちゃん……どうしてここに?」
「それはこっちのセリフです! なんでこんな山の中にいるんですか!?」
「あ……ええと……色々あって」
「色々って?」
ふいにリンちゃんの顔が険しくなった。
「ヒナノさんに会いたいって何度も言ったのに全然会わせてくれなくて……しつこく聞いたら行方不明になったって言われたんですけど! まさかヒナノさん、この山に捨てられたとか!?」
「いや、そんなことないよ! 遭難して帰れなくなったから住んでるだけで……」
「住んでる!? こんな山奥に!?」
「あ、うん……」
そうよね、不思議よね。
「リンちゃんはどうしてここに?」
「もう、聞いてくださいよ。ひどいんですこの国の人たち。あちこちの山に連れてかれて、魔物退治するまで帰ってくるなって。魔物っていうからゲームに出てくるモンスターみたいなの想像してたら、目が赤い以外は普通の動物じゃないですか」
「ああ、うん……」
「この間はどうみても人間なのにいきなり襲ってて。ありえなくないですか!?」
「……そうだね」
それはもしかして、アルバンさんのことかな……。
「リン。その人は誰なの?」
リンちゃんと一緒にいた一人が聞いてきた。
「この人が私と一緒に無理矢理この世界に召喚された先輩よ!」
「ああ、前に言ってた……。その人が、どうしてここに?」
「遭難して帰れなくなったんだって」
フードを外したのは、リンちゃんより少し年下に見える金髪碧眼のイケメン君だ。
「ヒナノさん、この人はロイド。勇者なの」
「初めまして」
ペコリと頭を下げた、この青年が勇者……。
穏やかで人の良さそうな好青年風で、何体もの魔物を倒してきたようには見えない。
「……ヒナノです」
「ヒナノさん。遭難したなら僕たちと一緒に行きましょう」
勇者のロイドが言った。
「いえ、私は大丈夫なので」
「え、なんで?」
リンちゃんが私の腕をつかんだ。
「こんな山の中、危ないですよ!」
「ええと、あのね……」
「おい! 魔物がたくさんいるぞ!」
「ロイド来い!」
聞こえてきた声にハッとした。
そっちにあるのは温泉……。
「ダメ!」
リンちゃんの手を振り解くと慌てて駆け出した。
私を見るなり駆け寄ってきたウサギを抱き上げる。
この子は最初に助けた子のような気がするけれど、正直見分けがつかないので分からない。
でも毎日のように来てくれるウサギは多分、同じ子なのだと思う。
お湯を張って、魔法をかけて。
魔物たちが温泉に入るのを見届けると一息つく。
「今日も平和だなあ」
この生活を始めてから、三カ月はたっただろうか。
「……四カ月前は日本にいたんだよね」
こんな世界があることを知らずに、大学行ってバイトに行って、友達と遊んで。
二十年も生きていたのに、向こうの生活のほうが夢だったような気がする。
(お父さんたち……びっくりするかな。私が異世界に行って、結婚したなんて知ったら)
そっとお腹をなでてみる。
まだだろうけど、もしかしたらこの中に新しい命が宿っているかもしれないなんて。
子供は欲しいけど、この山の中で出産するのは怖いなと思っていたら、アルバンさんが「その時はうちの嫁が手伝うぜ」と言ってくれた。
一度その奥さんを連れてきたけれど、とても綺麗で優しいひとだった。
アルバンさんはいかつくて見た目は怖いけれど、優しくて頼れるお兄さんという感じだ。
定期的にここへ温泉に入りにやってきて、困っていることはないか聞いてくれたり、時には傷ついた魔物を連れて来たりする。
勇者一行は相変わらず、あちこちに出没しては魔物討伐を行っているそうだ。
ブラウさんや魔王さんも時々やってきては温泉に入って夕飯を食べていく。
皆いいひとだし、この温泉に来る魔物も聞き分けのいい子ばかりなのに。
「本当に……どうして魔物だからって理由だけで討伐しようとするんだろう」
ため息が出てしまう。
「……そうだ、今のうちに畑を見てこよう」
思い出して抱えていたウサギを下ろした。
「すぐ戻ってくるから、温泉入ってて」
あとを追いかけてこようとしたウサギに言って、森へと入っていく。
二カ月ほど前に畑を作った。
野菜はエーリックが町で買ってきてくれるけれど、自分で育てるのもいいなと思って作ったのだ。
畑にはいくつかの野菜と豆を植えた。
大根みたいな野菜は、元の世界でそうしていたように干して保存食にできるそうだ。
エーリックが言うには、この山は冬になると雪が積もるらしいので、その備えに出来ればいいなと思っている。
(ん? 足音がする?)
畑の様子を確認して、また温泉に戻りながらふと気づいた。
少し離れたところから、複数の足音……?
振り返ると、木々の向こうから数人の人影が現れた。マントを被って顔は見えないけれど、人間のようだ。
(こんなところに……)
「人間か!?」
男の人の声が聞こえた。
「こんな山奥に?」
「確かに人間だな……」
「ヒナノさん!?」
聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
「……リンちゃん?」
「ヒナノさん!」
一番小さな人影が走り寄ってきた。
「ヒナノさん! 本物!!」
「リンちゃん!」
え、どうしてリンちゃんが!?
「わあん、ヒナノさんー!」
思い切り抱きつかれて転びそうになりながらもリンちゃんを受け止めた。
「会いたかったです!」
「リンちゃん……」
マントのフードが外れて顕になったその顔は、間違いなくリンちゃんだった。
「リンちゃん……どうしてここに?」
「それはこっちのセリフです! なんでこんな山の中にいるんですか!?」
「あ……ええと……色々あって」
「色々って?」
ふいにリンちゃんの顔が険しくなった。
「ヒナノさんに会いたいって何度も言ったのに全然会わせてくれなくて……しつこく聞いたら行方不明になったって言われたんですけど! まさかヒナノさん、この山に捨てられたとか!?」
「いや、そんなことないよ! 遭難して帰れなくなったから住んでるだけで……」
「住んでる!? こんな山奥に!?」
「あ、うん……」
そうよね、不思議よね。
「リンちゃんはどうしてここに?」
「もう、聞いてくださいよ。ひどいんですこの国の人たち。あちこちの山に連れてかれて、魔物退治するまで帰ってくるなって。魔物っていうからゲームに出てくるモンスターみたいなの想像してたら、目が赤い以外は普通の動物じゃないですか」
「ああ、うん……」
「この間はどうみても人間なのにいきなり襲ってて。ありえなくないですか!?」
「……そうだね」
それはもしかして、アルバンさんのことかな……。
「リン。その人は誰なの?」
リンちゃんと一緒にいた一人が聞いてきた。
「この人が私と一緒に無理矢理この世界に召喚された先輩よ!」
「ああ、前に言ってた……。その人が、どうしてここに?」
「遭難して帰れなくなったんだって」
フードを外したのは、リンちゃんより少し年下に見える金髪碧眼のイケメン君だ。
「ヒナノさん、この人はロイド。勇者なの」
「初めまして」
ペコリと頭を下げた、この青年が勇者……。
穏やかで人の良さそうな好青年風で、何体もの魔物を倒してきたようには見えない。
「……ヒナノです」
「ヒナノさん。遭難したなら僕たちと一緒に行きましょう」
勇者のロイドが言った。
「いえ、私は大丈夫なので」
「え、なんで?」
リンちゃんが私の腕をつかんだ。
「こんな山の中、危ないですよ!」
「ええと、あのね……」
「おい! 魔物がたくさんいるぞ!」
「ロイド来い!」
聞こえてきた声にハッとした。
そっちにあるのは温泉……。
「ダメ!」
リンちゃんの手を振り解くと慌てて駆け出した。
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