呪いを受けて少女は魔女になった

冬野月子

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18.霊獣の登城

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「ラウル。私は王宮へ行くけど…戻りが遅かったらちゃんと先にご飯食べてね」
「ん……」
気の無い返事は絶対聞いてないんだろうな…。
本の山に埋もれて本を読み耽っているラウルの背中にため息をつく。

彼が調べているのは私の呪いに関する事だから文句は言えないんだけど。
朝ごはんも適当だったし…ちゃんとご飯は食べて欲しいし休憩も取って欲しいな!
———というか。
何でこんな事になっているのかな!

本格的に私の呪いについて調べるという名目で、ラウルはあのまま私の家に住み着いている。
…確かに研究対象は私とこの森だけど?
公国の魔導師の仕事はいいのかと聞いたらこれが最優先の任務だから大丈夫と返されてしまった。
昔ラウルが使っていた部屋はあっという間に本の山に埋もれた。
この中には公国やランベール王国から借りた希少な本もあるらしいけれど…全てがごっちゃになっていて…大丈夫なのかしら?

でも、こうやって研究に没頭する相手に文句をいいつつ世話をするのはお師匠様との生活を思い出して、懐かしくて…少し嬉しい。
どちらも没頭し過ぎて放っておくと食事しなくなって心配だから嬉しいのはほんの少しだけだけど。

「…せめてお茶は飲んでね」
栄養たっぷりのハーブティーを入れたティーポットとカップをサイドテーブルに置くと、その音でようやく気付いたらしくラウルが振り返った。
「フローラ様。出掛けるの?」
ローブを纏った私の姿に首を傾げる。
「…朝言ったでしょう。今日は王宮へ行くって」
「———ああ、アルフィンが来るんだっけ」
「そうよ、戻りが遅くなるかもしれないから…」
ラウルは立ち上がると私の腰に手を回し———唇を塞いだ。
滑り込んだ舌がぬるり、と私の口の中を撫でる。
「…ん…」
「行ってらっしゃい」
離れた唇から笑みがもれる。
「———何だか新婚夫婦みたいだね」
やめて!

夜這いは多分あの一度きりのはずだけれど、一日数回はラウルにキスをされている。
それは段々と濃くなっていって…それに慣れてきているのも怖いけれど…このままなし崩し的に色々されそうで怖い。
魔女だし森暮らししてるけど一応公女なの。貴族令嬢なの。
清らかな身体でいたかったのに…。



「フローラ!」
ちょっとやさぐれた心で王宮に向かうと泣きそうな顔でシャルロットが駆け寄ってきた。
「ねえこの格好…おかしくない?大丈夫?」
「とても素敵よ」
「アルフィン様に…気に入ってもらえるかしら…」
ピンク色のドレスを纏い、目を潤ませたシャルロットは———ああもう、ホント可愛いな。
可愛いけれど…印のせいでいつもはスカーフを巻いて隠している胸元を、今日は大きく開いたドレスで…可愛い顔に似合わない豊かなお胸が強調されて…上気した肌が色っぽくて…。
何というか…ずるい。まだ十五歳なのに!
私は顔はアレだけれど色気のあるタイプではないし、胸は…控えめなので……いや魔女に色気は必要ないし!ドレスとか着ないからいいけど!あったらあったできっと邪魔だし!
でももう少し欲しかったな…。

「ああもうどうしよう。お会い出来ると思うと…お腹が痛くなってきたわ」
「少し休みましょう」
興奮気味のシャルロットの手を取りソファへ座らせると、私はお茶を運んでくれるよう侍女に頼んだ。


大事な娘を嫁がせる相手の顔が見たいという国王の要望で、アルフィンを王宮に呼ぶ事になり、色々不安なので私も立ち会うのだ。

お茶を飲んで落ち着いたと思ったシャルロットは、アルフィンの到着を告げられるとまたジタバタしだした。
取りあえず彼女は侍女に任せて私だけが行く事にする。

アルフィンは人間ではないし、公式な会見ではないので今日の顔合わせはティールームで行われる。
いつも人間になった時はシャツとパンツだけというラフな服装のアルフィンは、今日は私が見立てたフロックコートを着用し、黒で統一した正装一式を身につけていた。
———ホント黙っていれば格好いいな。
十分貴族に見えるよ。
既に挨拶は済ませたらしく、苦虫を噛み潰したような顔の国王陛下と対象的ににこやかな王妃様と何か話している。
傍に立っていたジェラルド様が私に気付いた。
「フローラ。シャルロットは?」
「かなり緊張しているので休ませています」
緊張というか興奮だけどね。

「霊獣というからどんな方が来るのかと不安だったけれど、こんな立派な殿方だったのね。安心したわ」
王妃様は嬉しそうだった。
———良かった、まだボロは出していないようね。

(アルフィン…失礼な事言っていないでしょうね)
(今まで失礼な事など言ったことないぞ)
(……いいわもう)
念話魔法で話していると、扉が開く音が聞こえた。
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