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第1章 帰郷
02
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「目覚めて良かった。まる一日眠っていたよ」
真っ青な髪色の青年は、雫を見てハチミツ色の目を細めると人の良さそうな笑顔を浮かべてベッドの傍へやってきた。
「私はオリエンス・アズール。この家の長男だ。…君は?」
「……雫と申します」
「シズク…姓はあるのかな?」
「あ、はい…柏木です」
「カシワギ…聞いたことがないな」
口の中で呟くと、オリエンスは雫の顔を見つめた。
侍女の報告では何故屋敷の池で倒れていたのか、彼女自身分かっていないようだった。
オリエンスに見つめられ、戸惑うように視線を落とすその様子から間者の類には見えなかった。
口調から貴族の娘ではないように思えるが、容姿や雰囲気からは高貴さを感じさせる。
不思議な少女だった。
「シズク」
オリエンスはベッドの傍に置かれた椅子に腰を下ろした。
「君はこの屋敷の池の傍でずぶ濡れになって倒れていたんだけど、どうしてかな?」
オリエンスの言葉に、雫は視線を落としたまま首を緩く横に振った。
「…すみません…どうしてなのか分からないです…私、大学から帰る途中で…」
「ダイガク?」
聞きなれない言葉にオリエンスは眉をひそめた。
「それは何?」
「え、あの…」
雫は思わず顔を上げてオリエンスを見た。
「…学校です」
「ガッコウ?」
「ええと、集団で勉強をする場所で…」
最初にオリエンスの顔を見た瞬間に頭をよぎった〝ある疑い〟が現実になるように感じて、雫は軽く眩暈を覚えた。
「———君は、別の国から来たのか?」
雫を見つめ返してしばらく思案するとオリエンスは口を開いた。
「…日本です」
「ニホン?知らないな…」
「…あの、ここは…」
「ここはオレオール王国だ」
「オレオール…」
「アズール家は王国の四公爵家の一つで、私は王太子の側近を務めている」
雫の反応を確かめるようにじっと見つめながらオリエンスは答えた。
「四公爵…」
オリエンスの言葉を小さく呟いて、雫はますます眩暈が強くなるのを感じた。
自分はオリエンスを知っている。
知っているというか…昨日もスマホの〝画面の中〟で彼を見た。
彼の名前、仕事、自然ではあり得ないような青い髪、声…。
だけど、どうしてそれが目の前に?
夢にしてはあまりにも感覚は現実的で…
けれどそれ以上に。
彼から聞く国の名前や〝四公爵〟という言葉が雫の心をざわつかせた。
何だろう。
自分は知っている。
彼が…ここが〝ゲームの世界〟かもしれないという事だけでなく…もっと深く…そう昔から———
「シズク」
オリエンスは雫に顔を近づけた。
「君はノワールという名前に聞き覚えは?」
雫の瞳が大きく見開かれた。
「この黒い髪はノワール家の〝色持ち〟だけの色だ」
オリエンスは雫の長い髪に視線を送った。
黒々としたその色は、ノワール家の中でも特に魔力が強い者だけが宿す色だった。
「私は、君によく似た男を知っている」
視線を髪から瞳へと移す。
瞳の色こそ違えど、その綺麗な顔立ちは彼を女性にするとこうなるのだろうと思えるほどよく似ていた。
「フェール・ノワールという男で、彼は…」
その、知っているはずの名前を聞いた瞬間。
雫の頭の中で何かが弾けた。
真っ青な髪色の青年は、雫を見てハチミツ色の目を細めると人の良さそうな笑顔を浮かべてベッドの傍へやってきた。
「私はオリエンス・アズール。この家の長男だ。…君は?」
「……雫と申します」
「シズク…姓はあるのかな?」
「あ、はい…柏木です」
「カシワギ…聞いたことがないな」
口の中で呟くと、オリエンスは雫の顔を見つめた。
侍女の報告では何故屋敷の池で倒れていたのか、彼女自身分かっていないようだった。
オリエンスに見つめられ、戸惑うように視線を落とすその様子から間者の類には見えなかった。
口調から貴族の娘ではないように思えるが、容姿や雰囲気からは高貴さを感じさせる。
不思議な少女だった。
「シズク」
オリエンスはベッドの傍に置かれた椅子に腰を下ろした。
「君はこの屋敷の池の傍でずぶ濡れになって倒れていたんだけど、どうしてかな?」
オリエンスの言葉に、雫は視線を落としたまま首を緩く横に振った。
「…すみません…どうしてなのか分からないです…私、大学から帰る途中で…」
「ダイガク?」
聞きなれない言葉にオリエンスは眉をひそめた。
「それは何?」
「え、あの…」
雫は思わず顔を上げてオリエンスを見た。
「…学校です」
「ガッコウ?」
「ええと、集団で勉強をする場所で…」
最初にオリエンスの顔を見た瞬間に頭をよぎった〝ある疑い〟が現実になるように感じて、雫は軽く眩暈を覚えた。
「———君は、別の国から来たのか?」
雫を見つめ返してしばらく思案するとオリエンスは口を開いた。
「…日本です」
「ニホン?知らないな…」
「…あの、ここは…」
「ここはオレオール王国だ」
「オレオール…」
「アズール家は王国の四公爵家の一つで、私は王太子の側近を務めている」
雫の反応を確かめるようにじっと見つめながらオリエンスは答えた。
「四公爵…」
オリエンスの言葉を小さく呟いて、雫はますます眩暈が強くなるのを感じた。
自分はオリエンスを知っている。
知っているというか…昨日もスマホの〝画面の中〟で彼を見た。
彼の名前、仕事、自然ではあり得ないような青い髪、声…。
だけど、どうしてそれが目の前に?
夢にしてはあまりにも感覚は現実的で…
けれどそれ以上に。
彼から聞く国の名前や〝四公爵〟という言葉が雫の心をざわつかせた。
何だろう。
自分は知っている。
彼が…ここが〝ゲームの世界〟かもしれないという事だけでなく…もっと深く…そう昔から———
「シズク」
オリエンスは雫に顔を近づけた。
「君はノワールという名前に聞き覚えは?」
雫の瞳が大きく見開かれた。
「この黒い髪はノワール家の〝色持ち〟だけの色だ」
オリエンスは雫の長い髪に視線を送った。
黒々としたその色は、ノワール家の中でも特に魔力が強い者だけが宿す色だった。
「私は、君によく似た男を知っている」
視線を髪から瞳へと移す。
瞳の色こそ違えど、その綺麗な顔立ちは彼を女性にするとこうなるのだろうと思えるほどよく似ていた。
「フェール・ノワールという男で、彼は…」
その、知っているはずの名前を聞いた瞬間。
雫の頭の中で何かが弾けた。
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