4 / 62
第1章 帰郷
02
しおりを挟む
「目覚めて良かった。まる一日眠っていたよ」
真っ青な髪色の青年は、雫を見てハチミツ色の目を細めると人の良さそうな笑顔を浮かべてベッドの傍へやってきた。
「私はオリエンス・アズール。この家の長男だ。…君は?」
「……雫と申します」
「シズク…姓はあるのかな?」
「あ、はい…柏木です」
「カシワギ…聞いたことがないな」
口の中で呟くと、オリエンスは雫の顔を見つめた。
侍女の報告では何故屋敷の池で倒れていたのか、彼女自身分かっていないようだった。
オリエンスに見つめられ、戸惑うように視線を落とすその様子から間者の類には見えなかった。
口調から貴族の娘ではないように思えるが、容姿や雰囲気からは高貴さを感じさせる。
不思議な少女だった。
「シズク」
オリエンスはベッドの傍に置かれた椅子に腰を下ろした。
「君はこの屋敷の池の傍でずぶ濡れになって倒れていたんだけど、どうしてかな?」
オリエンスの言葉に、雫は視線を落としたまま首を緩く横に振った。
「…すみません…どうしてなのか分からないです…私、大学から帰る途中で…」
「ダイガク?」
聞きなれない言葉にオリエンスは眉をひそめた。
「それは何?」
「え、あの…」
雫は思わず顔を上げてオリエンスを見た。
「…学校です」
「ガッコウ?」
「ええと、集団で勉強をする場所で…」
最初にオリエンスの顔を見た瞬間に頭をよぎった〝ある疑い〟が現実になるように感じて、雫は軽く眩暈を覚えた。
「———君は、別の国から来たのか?」
雫を見つめ返してしばらく思案するとオリエンスは口を開いた。
「…日本です」
「ニホン?知らないな…」
「…あの、ここは…」
「ここはオレオール王国だ」
「オレオール…」
「アズール家は王国の四公爵家の一つで、私は王太子の側近を務めている」
雫の反応を確かめるようにじっと見つめながらオリエンスは答えた。
「四公爵…」
オリエンスの言葉を小さく呟いて、雫はますます眩暈が強くなるのを感じた。
自分はオリエンスを知っている。
知っているというか…昨日もスマホの〝画面の中〟で彼を見た。
彼の名前、仕事、自然ではあり得ないような青い髪、声…。
だけど、どうしてそれが目の前に?
夢にしてはあまりにも感覚は現実的で…
けれどそれ以上に。
彼から聞く国の名前や〝四公爵〟という言葉が雫の心をざわつかせた。
何だろう。
自分は知っている。
彼が…ここが〝ゲームの世界〟かもしれないという事だけでなく…もっと深く…そう昔から———
「シズク」
オリエンスは雫に顔を近づけた。
「君はノワールという名前に聞き覚えは?」
雫の瞳が大きく見開かれた。
「この黒い髪はノワール家の〝色持ち〟だけの色だ」
オリエンスは雫の長い髪に視線を送った。
黒々としたその色は、ノワール家の中でも特に魔力が強い者だけが宿す色だった。
「私は、君によく似た男を知っている」
視線を髪から瞳へと移す。
瞳の色こそ違えど、その綺麗な顔立ちは彼を女性にするとこうなるのだろうと思えるほどよく似ていた。
「フェール・ノワールという男で、彼は…」
その、知っているはずの名前を聞いた瞬間。
雫の頭の中で何かが弾けた。
真っ青な髪色の青年は、雫を見てハチミツ色の目を細めると人の良さそうな笑顔を浮かべてベッドの傍へやってきた。
「私はオリエンス・アズール。この家の長男だ。…君は?」
「……雫と申します」
「シズク…姓はあるのかな?」
「あ、はい…柏木です」
「カシワギ…聞いたことがないな」
口の中で呟くと、オリエンスは雫の顔を見つめた。
侍女の報告では何故屋敷の池で倒れていたのか、彼女自身分かっていないようだった。
オリエンスに見つめられ、戸惑うように視線を落とすその様子から間者の類には見えなかった。
口調から貴族の娘ではないように思えるが、容姿や雰囲気からは高貴さを感じさせる。
不思議な少女だった。
「シズク」
オリエンスはベッドの傍に置かれた椅子に腰を下ろした。
「君はこの屋敷の池の傍でずぶ濡れになって倒れていたんだけど、どうしてかな?」
オリエンスの言葉に、雫は視線を落としたまま首を緩く横に振った。
「…すみません…どうしてなのか分からないです…私、大学から帰る途中で…」
「ダイガク?」
聞きなれない言葉にオリエンスは眉をひそめた。
「それは何?」
「え、あの…」
雫は思わず顔を上げてオリエンスを見た。
「…学校です」
「ガッコウ?」
「ええと、集団で勉強をする場所で…」
最初にオリエンスの顔を見た瞬間に頭をよぎった〝ある疑い〟が現実になるように感じて、雫は軽く眩暈を覚えた。
「———君は、別の国から来たのか?」
雫を見つめ返してしばらく思案するとオリエンスは口を開いた。
「…日本です」
「ニホン?知らないな…」
「…あの、ここは…」
「ここはオレオール王国だ」
「オレオール…」
「アズール家は王国の四公爵家の一つで、私は王太子の側近を務めている」
雫の反応を確かめるようにじっと見つめながらオリエンスは答えた。
「四公爵…」
オリエンスの言葉を小さく呟いて、雫はますます眩暈が強くなるのを感じた。
自分はオリエンスを知っている。
知っているというか…昨日もスマホの〝画面の中〟で彼を見た。
彼の名前、仕事、自然ではあり得ないような青い髪、声…。
だけど、どうしてそれが目の前に?
夢にしてはあまりにも感覚は現実的で…
けれどそれ以上に。
彼から聞く国の名前や〝四公爵〟という言葉が雫の心をざわつかせた。
何だろう。
自分は知っている。
彼が…ここが〝ゲームの世界〟かもしれないという事だけでなく…もっと深く…そう昔から———
「シズク」
オリエンスは雫に顔を近づけた。
「君はノワールという名前に聞き覚えは?」
雫の瞳が大きく見開かれた。
「この黒い髪はノワール家の〝色持ち〟だけの色だ」
オリエンスは雫の長い髪に視線を送った。
黒々としたその色は、ノワール家の中でも特に魔力が強い者だけが宿す色だった。
「私は、君によく似た男を知っている」
視線を髪から瞳へと移す。
瞳の色こそ違えど、その綺麗な顔立ちは彼を女性にするとこうなるのだろうと思えるほどよく似ていた。
「フェール・ノワールという男で、彼は…」
その、知っているはずの名前を聞いた瞬間。
雫の頭の中で何かが弾けた。
118
あなたにおすすめの小説
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。
第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。
「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。
「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。
だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。
全43話+番外編です。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる