22 / 24
第1章〜生活〜
あかいろ
しおりを挟む
そこからの僕の行動は素早かった。
倒れている人の傷を確認していく。倒れていたのは……僕よりも幼い少年だった。やせ細った骨のような身体にボサボサな黒髪、死人のように青白い肌、そして、喉を掻きむしったような傷跡。少年の喉は赤く今も尚血が流れ、爪にはその行為の痕跡が残されている。後は少しのかすり傷。
僕はカバンからタオルを取り出し、適当な大きさに切った。そのタオルを水で濡らして少年の体を拭いていく。正直に、この少年は清潔とはかけ離れている。血やら汗やらの体液が酷い。僕は少年の着ていたマント?を剥ぎ取る。
傷のある喉を丁寧に拭いて、残っていたタオルを包帯のように巻いていく。これが正解かは分からないが……。
拭いたおかげでだいぶ匂いはマシになった。少年が着ていたマントを着せる気にはなれなかったので、僕のパーカーを着させてやった。僕のパーカーが大きめで良かった。隠れるべきところは隠れている。
一通り少年の手当は終わったので、これからのことを考える。そう、どうやってココから出るかだ。
僕だけなら来た道を戻るだけでいい。だが、この少年は違う。この少年が僕と同じように水中で息が出来たらなぁ…なんて考えながら、僕は思考をめぐらせる。
といっても、こればかりは考えても意味は無い。少年のそばを少し離れ、発酵キノコ片手に辺りを探索する。
意外にも直ぐに出口は見つかった。これは僕の日頃の行いがいいとしか言えない。カバン前に背負い、少年をおんぶする。少年はなんとか僕でも持てる重さだった。見た目的にもっと軽いかと思った。…ちょっとビックリ。
「………帰るか」
さっさと洞窟を出る。
先程出口を見つけた時は、出口があるのだけを確認して出口が何処へ繋がっているかは確認しなかった。けれど、あぁ、なるほど。
「………女神の泉」
あの洞窟の湖を見て、神秘的だと感じた意味が分かった。ここと繋がってたのか。
よかった、知ってる場所で。ここからなら直ぐに館に帰れる。
**********
「……ただいま」
思いつきから始まった探検は、本当に大冒険だった。
家に入った僕は、少年をリビングにあるソファーの上に寝かせる。そして3階にあるタオルと僕が作った甚平を取ってまた少年の元へ行く。
タオルを蒸しタオルにして先程よりも丁寧に拭いていく。すると、タオルは見る見るうちに赤黒く汚れた。傷跡はどれくらいで治るのだろうか、声は大丈夫だろうか。
……帰ってくるまでの時間にも考えた。こいつは何なんだろう。何故此処にとか、何者だとか、何故この家に入れるのとか、たくさんの疑問が浮かぶ。
あぁ、考えても考えても結局これは推測であり、妄想でしかない。少年の身体を拭き終わった次に甚平を着せていく。最後に、この前本を読んで気になって作ったアロエの軟膏を少年の喉に塗っておく。こんな所で使えるとは思わなかった。
「…よし。おしまい」
あぁ、明日は洞窟に置いてきた道具とキノコを取りに行かないとなぁなんて思いながら立ち上がろうとする。
けれど、それは叶わなかった。
少年は僕を押し倒した。
……気づいたら押し倒されてた。
“あらら、情熱的だね。前世でもこんなことされたことないのにー”なんて呑気に思う。
少年は僕を見下ろし、僕を見て目を見開いた。それが何を思った表情なのか僕は分からなかった。でも、その顔をしてくれたおかげで少年の顔が、瞳が、ハッキリと伺えた。
紅い。ただただ紅い。
アルビノのような濁った色じゃない。そこに存在すると訴える様な強い意志を持った瞳。クリムゾン、真紅、唐紅、スカーレット、緋色。頭の中で文字が踊る。
……初めて、祖母以外の鮮やかな色を現実で見た。僕は少年の瞳に魅入られた。
僕らは数秒無言で見つめ合った。その沈黙を破ったのは少年の方だった。“破った”といっても声が出ないのか、パクパクと口を動かしただけだったが。僕は、少年が何を伝えたいのかが分からなかった。
少年は、先程とは打って変わってこちらを責め立てるように見下ろし、そして、逃げようとした。
僕はびっくりした。“逃げ出す”という選択肢を考えていなかった。
そんな咄嗟の行動に、僕は少年が行かないようにぎゅっと抱き着いた。
少年はしばらくジタバタと暴れたが、僕が離す気配がないのを気付いたのか直ぐに暴れるのを辞めた。が、ここからが大変。なんと、少年は泣き出してしまった。
その時の僕は内心“((((;゚Д゚)))))))だった。なぜ泣いたし。何が原因か分からない。傷が痛かった?抱き着かれたのが嫌だった?僕が気持ち悪かった?僕は泣き止んで欲しくて背中を摩る。
アタフタする僕をお構い無しに、少年はさらに泣く。
もういいや。
考えるのが面倒になったので泣き疲れさせて眠らせる事にした。
倒れている人の傷を確認していく。倒れていたのは……僕よりも幼い少年だった。やせ細った骨のような身体にボサボサな黒髪、死人のように青白い肌、そして、喉を掻きむしったような傷跡。少年の喉は赤く今も尚血が流れ、爪にはその行為の痕跡が残されている。後は少しのかすり傷。
僕はカバンからタオルを取り出し、適当な大きさに切った。そのタオルを水で濡らして少年の体を拭いていく。正直に、この少年は清潔とはかけ離れている。血やら汗やらの体液が酷い。僕は少年の着ていたマント?を剥ぎ取る。
傷のある喉を丁寧に拭いて、残っていたタオルを包帯のように巻いていく。これが正解かは分からないが……。
拭いたおかげでだいぶ匂いはマシになった。少年が着ていたマントを着せる気にはなれなかったので、僕のパーカーを着させてやった。僕のパーカーが大きめで良かった。隠れるべきところは隠れている。
一通り少年の手当は終わったので、これからのことを考える。そう、どうやってココから出るかだ。
僕だけなら来た道を戻るだけでいい。だが、この少年は違う。この少年が僕と同じように水中で息が出来たらなぁ…なんて考えながら、僕は思考をめぐらせる。
といっても、こればかりは考えても意味は無い。少年のそばを少し離れ、発酵キノコ片手に辺りを探索する。
意外にも直ぐに出口は見つかった。これは僕の日頃の行いがいいとしか言えない。カバン前に背負い、少年をおんぶする。少年はなんとか僕でも持てる重さだった。見た目的にもっと軽いかと思った。…ちょっとビックリ。
「………帰るか」
さっさと洞窟を出る。
先程出口を見つけた時は、出口があるのだけを確認して出口が何処へ繋がっているかは確認しなかった。けれど、あぁ、なるほど。
「………女神の泉」
あの洞窟の湖を見て、神秘的だと感じた意味が分かった。ここと繋がってたのか。
よかった、知ってる場所で。ここからなら直ぐに館に帰れる。
**********
「……ただいま」
思いつきから始まった探検は、本当に大冒険だった。
家に入った僕は、少年をリビングにあるソファーの上に寝かせる。そして3階にあるタオルと僕が作った甚平を取ってまた少年の元へ行く。
タオルを蒸しタオルにして先程よりも丁寧に拭いていく。すると、タオルは見る見るうちに赤黒く汚れた。傷跡はどれくらいで治るのだろうか、声は大丈夫だろうか。
……帰ってくるまでの時間にも考えた。こいつは何なんだろう。何故此処にとか、何者だとか、何故この家に入れるのとか、たくさんの疑問が浮かぶ。
あぁ、考えても考えても結局これは推測であり、妄想でしかない。少年の身体を拭き終わった次に甚平を着せていく。最後に、この前本を読んで気になって作ったアロエの軟膏を少年の喉に塗っておく。こんな所で使えるとは思わなかった。
「…よし。おしまい」
あぁ、明日は洞窟に置いてきた道具とキノコを取りに行かないとなぁなんて思いながら立ち上がろうとする。
けれど、それは叶わなかった。
少年は僕を押し倒した。
……気づいたら押し倒されてた。
“あらら、情熱的だね。前世でもこんなことされたことないのにー”なんて呑気に思う。
少年は僕を見下ろし、僕を見て目を見開いた。それが何を思った表情なのか僕は分からなかった。でも、その顔をしてくれたおかげで少年の顔が、瞳が、ハッキリと伺えた。
紅い。ただただ紅い。
アルビノのような濁った色じゃない。そこに存在すると訴える様な強い意志を持った瞳。クリムゾン、真紅、唐紅、スカーレット、緋色。頭の中で文字が踊る。
……初めて、祖母以外の鮮やかな色を現実で見た。僕は少年の瞳に魅入られた。
僕らは数秒無言で見つめ合った。その沈黙を破ったのは少年の方だった。“破った”といっても声が出ないのか、パクパクと口を動かしただけだったが。僕は、少年が何を伝えたいのかが分からなかった。
少年は、先程とは打って変わってこちらを責め立てるように見下ろし、そして、逃げようとした。
僕はびっくりした。“逃げ出す”という選択肢を考えていなかった。
そんな咄嗟の行動に、僕は少年が行かないようにぎゅっと抱き着いた。
少年はしばらくジタバタと暴れたが、僕が離す気配がないのを気付いたのか直ぐに暴れるのを辞めた。が、ここからが大変。なんと、少年は泣き出してしまった。
その時の僕は内心“((((;゚Д゚)))))))だった。なぜ泣いたし。何が原因か分からない。傷が痛かった?抱き着かれたのが嫌だった?僕が気持ち悪かった?僕は泣き止んで欲しくて背中を摩る。
アタフタする僕をお構い無しに、少年はさらに泣く。
もういいや。
考えるのが面倒になったので泣き疲れさせて眠らせる事にした。
0
あなたにおすすめの小説
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる