永遠への階~オルセレイド王国物語~

弥生

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第53話 欲情の証 *

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 互いの唇が重なり合う。
 きつく抱きしめあった2人は、思いの丈を込めて、何度も口付けを交し合う。
 時々漏れる熱い吐息すらも勿体無いと謂わんばかりの、シルフィアの柔らかな唇を貪るかのような口づけだ。

「やっ・・・・・・あっ・・・」

 巧みすぎるアークレイの口づけに追いつくのが精一杯のシルフィアは、次第に腰に力が入らなくなり、支えられているアークレイの腕にしがみついて限界を訴えるが、なかなかその腕は緩もうとしない。
 緩むどころか益々口づけは深くなる。
 体中が熱くてたまらなかった。
 唇が離れても、無言のまま熱い吐息と視線が絡み合う。

「くっそ・・・・・・」

 眉根を顰めたアークレイは珍しく品の無い言葉を吐き、余裕のない表情で大きく舌打ちをしたかと思うと、徐に腰に提げていた剣を外してしまう。
 何をするのかとシルフィアが見ている前で、アークレイはそれを寝台の上へと放り投げた。

「アークレイ様、何を・・・・・・!」

 シーツの波に落下したその剣は、己の分身とも言えるアークレイにとって大切な剣のはず。
 そのように乱雑に扱うことに驚くシルフィアに、アークレイは「構わん」と低く唸るように答えただけだ。

「あっ!」

 そして無言のまま、シルフィアの身体を抱えるように、寝台へと引きずり上げてしまったのだ。

「アークレイ様・・・・・・?」

 身体が沈むほど柔らかなシーツの上に横たわったシルフィアは、未だ状況が読み込めないまま、ブーツを床に脱ぎ捨てて、寝台へと上がってきたアークレイを見上げることしか出来なかった。
 覆いかぶさるように覗き込んできたアークレイの手のひらが、そっとシルフィアの頬に触れる。
 それだけで、ドクンッと心臓が大きく跳ね上がった。

「シルフィア・・・・・・好きだ」

 アークレイの吐息混じりの甘い言葉に胸が疼いた。

「シルフィアは?」

 瞳が細められ、優しい笑みが落ちてくる。
 答えを促すようにアークレイの指先が頬を撫でた。
 その感触が心地よく、少し恥かしさを覚えながらも、アークレイに応えるために心の内を正直に吐露する。

「好き・・・・・・です」

 好き。
 その言葉を口にすればするほど、想いは一層強くなる。

「アークレイ様のことが、好きです」

 真っ直ぐにアークレイを見上げ、想いを込めて再び告げた。
 男同士だとかそのようなしがらみは最早関係なかった。

 好き。
 愛している。

 恥ずかしさは未だ残るものの、気持ちを隠す必要はない。
 その気持ちが何よりも大切なのだから。

「シルフィア・・・・・・愛している」

 耳元で囁かれた言葉に頬が染まる。
 もう幾度も告げられた言葉なのに、それをアークレイから与えられるたび、恥かしいような嬉しいような甘酸っぱさが心に満ちていく。
 アークレイの唇が頬に寄せられた。
 額に。
 こめかみに。
 瞼に。
 唇が離れると同時に瞼をゆっくりと開ければ、見つめてくる翠の瞳の奥に、炎の揺らぎのようなものを感じた。
 まるでそれに呼応するかのように、身体がじわりと熱を帯びていく。
 身体の奥に潜む芯に炎が灯されたかのようだ。

「・・・・・・シルフィア、覚えているか?」

 アークレイはシルフィアの白金の髪を一房手に取り、それに口づけを落とす。

「庭園で話したことだ」

「庭園で・・・・・・?」

 4日前、2人の王子に連れて行かれた庭園の花園で、シルフィアはアークレイと二人並んで長椅子に座り、互いの兄妹の話をしたり、『レイス・レーヴェ』の話をしたり、執務官が呼びに来るまで随分と長い間様々な話をした。
 アークレイはどの話のことを指して言っているのだろう。
 視線を外して首を傾げるシルフィアに、アークレイは可笑しそうに笑う。

「おいおい。鈍いにも程があるぞ、シルフィア。この状況で思い出さないとは」

「に、鈍くなど・・・・・・」

「いや・・・・・・天然と言うべきか?あるいは、それも俺を煽るための計算のうちか?」

「そのような・・・・・・っ」

 頬を撫でた指がゆっくりと顎に沿って滑り落ち、くいっと上へと向かされる。

「言っただろう?この前は口づけだけだったが、次は『最後』までだと。遠慮などするつもりはないから覚悟をしておけ・・・俺は貴方に伝えた筈だが?」

 口端を上げて笑ったアークレイの言葉に、一瞬、何を言われたのかわからず首を捻る。
 だが、言葉の一つ一つを読み解いていくうちに、全てを理解し、身体の足の指先から頭まで、かああっと血が逆流するかのように熱が滾った。

「ア・・・・・・クレイ、さま・・・・・・」

『最後』
 アークレイが言う『最後』とは、つまり・・・・・・
 それを今、ここで。

「思い出したか?」

「あっ、あれは・・・・・・!そのっ!・・・あ・・・・・・で、も!・・・あ、いえ、その・・・」

 あまりにも不意打ちすぎて思考が支離滅裂になってしまい、自分でも言っていることがよくわからなくなってくる。
 顔を赤面させて狼狽するシルフィアの頬を、愉しそうな笑みを浮かべたアークレイが指で軽く突く。

「ふふ・・・・・・顔が真っ赤だ」

「アークレイ様!」

「俺は冗談を言っているわけではないぞ?」

「んっ・・・・・・」

 首筋に吸い付くように唇を落とされて、背筋を甘い痺れが走る。

「で、ですが・・・・・・」

 アークレイは冗談ではないと言う。
 だが、シルフィアは女性ではない。
 男なのだ。
 アークレイは本気で男の身を抱きたいなどと考えているのだろうか。

「わ、たしは、男で・・・・・・」

「シルフィア・・・・・・」

 困ったように苦笑するアークレイは、シルフィアの両頬を手で挟み覗き込んでくる。

「何度言えば貴方は安心するのだ?性別など関係ない。俺はシルフィアが欲しい。愛しい人と肌を重ねたいと思うのは間違っているのか?」

「・・・・・・アークレイ様」

「それとも俺の一方的な思い上がりか?欲しいと思っているのは俺だけか?」

 そう問われて、何と答えればよいのかわからず、シルフィアはきゅっと唇を噛み締める。
 本音を言えば・・・・・・欲しい。
 アークレイに愛されているのだという証拠が欲しい。
 存分に愛されて、蕩けるような甘美な波に溺れたい。
 だが、良いのだろうか。
 そのような欲求を持つことが自分に許されるのだろうか。
 妻子あるアークレイを、ただ正妃だという理由で自分が独占してよいのだろうか。
 だが、逡巡するシルフィアの葛藤など、アークレイはお見通しであるかのようだ。

「俺はシルフィアに無理強いはしたくない。本当は安静にして眠らせてさしあげたいからな。だが・・・・・・俺は今、貴方が欲しい。貴方は俺のものなのだと確かめたい・・・・・・俺が貴方のものなのだと確かめて欲しいからだ」

 シルフィアがアークレイのものなのだと。
 アークレイがシルフィアのものなのだと。
 本当に・・・・・そのようなことを求めてよいのだろうか。

「良いの・・・・・ですか?」

「あたりまえだ。何を遠慮する必要がある?欲しいか、欲しくないか。ただそれだけの単純なことだ」

「・・・・・・」

「それとも、嫌か?シルフィアも男として譲れぬものがあるだろう。男の俺に触れられるのは嫌か?抱かれるのも嫌か?」

「い、嫌などということはございません!」

 誤解されたくなくてその思いを口にしたシルフィアは、一瞬目を見開いたアークレイの表情に、はっと我に返る。
 アークレイに触られるのも、抱かれるのも嫌ではない・・・・・・逆を言えば、触って欲しいのだと抱いて欲しいのだと、恥かしげもなく告白してしまったようなものだ。

「あ・・・・・・」

 顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかり、慌てて両手で顔を覆ってしまう。
 だが、その手首をアークレイに掴まれて外されてしまった。
 どこか嬉しそうな笑みを浮かべたアークレイの顔が間近にあって、一層顔が熱くなるのが抑えられない。

「今のは、真か?」

「う・・・・・・」

「俺に触れるのは嫌ではない?抱かれるのも嫌ではない?」

 言葉にするのも恥かしくて、ぎゅっと目を閉じて頷くことしか出来なかった。
 その瞼に口づけが落とされ、おずおずと瞼を上げれば、優しげに微笑む翠の瞳と視線が絡み合う。

「俺の目を見て言ってくれ。貴方の美しい碧玉の瞳に囚われた俺に、貴方の心を教えてくれ」

 何故、こちらが恥かしくなるようなことをアークレイは簡単に言えるのだろうか。
 だが、歯が浮くような科白も、アークレイが言うと決して卑しくない。
 むしろ、心も身体も溶けてしまいそうになるくらい甘い囁きだ。

「アークレイ様・・・・・・」

「俺は貴方が欲しい。貴方は?シルフィア、貴方は俺が欲しいか?」

 最早、心を偽ることは出来なかった。
 男である自分をアークレイが求めてくれている。
 その喜びは何よりも嬉しいことだ。

「はい・・・・・・欲しい、です」

 消え入りそうな声ではあったが、アークレイはシルフィアの望みを聞き取ったらしい。
 シルフィアの両頬を手で挟み、甘さを含んだ微笑を浮かべる。
 そして、唇に落とされる口づけ。

「んっ・・・・・・」

 啄ばむような口づけから、徐々に熱を帯びた深い口づけへと変わっていく。
 激しく高鳴る鼓動。
 アークレイに聞こえてしまうのではないかと思うほどだったが、そんな思考も与えられる口づけによって次第に掻き消されてしまう。

 柔らかなシーツの波に広がるシルフィアの白金の髪。
 緊張して戸惑うシルフィアを安心させるように、アークレイがその髪を優しく撫でる。
 口付けを落としながらも、シルフィアが纏う淡い空色の夜着の腰帯の結び目を、丁寧にゆっくりと解いていく。
 重なり合う唇の濡れた音だけが響く中、シュルッと腰帯が抜かれる微かな音も耳に入らなかった。
 袷を広げられ、紐で結ばれていただけの内着の紐も解かれて、素肌が空気に晒されてようやくシルフィアも夜着を脱がされたのだということに気づく。

「あ・・・・・・」

 思わず身を竦めて見上げれば、アークレイは微かに笑みを浮かべた。
 そして首筋に唇が寄せられたかと思うと、吸い付くような口づけが落とされる。
 ゾクゾクするような痺れが走り、思わず小さな悲鳴を上げてしまう。

 アークレイの手のひらが、まるで何かを確かめるようにシルフィアの肌の上を滑り落ちていく。
 腕に、肩に、背に、胸に、脇腹に。
 アークレイに触れられた場所が、じわりじわりと熱を帯びていくのがわかる。

「貴方は本当に綺麗だ、シルフィア。あの離宮の泉で月の光を浴びる貴方を見たときにも思ったが・・・・・・透き通るように白く、滑らかな肌・・・・・・本当に同じ男だとは信じられないな」

「アークレイ様・・・・・・」

 とはいえ、華奢ではあるが、やはりシルフィアの骨格は男性のものだ。
 女性とは違い、柔らかさもない。
 アークレイはそのように言うが、男の裸などを見て、本当に綺麗などと思うのだろうか。

「お・・・男の・・・・・・身体、ですよ?」

「そうだな。それが?」

 にやりと笑うアークレイに、シルフィアの方が言葉を詰まらせてしまう。

「では、シルフィアはどうだ?」

「え?」

 身体を起こしたアークレイは、おもむろに、着ていたシャツのボタンを右手で一つ一つはずしていく。
 戸惑いに目を見開くシルフィアの目の前で、ボタンを全てはずし、シャツを勢いよく脱ぎ捨ててしまう。
 ハラリとシーツの上に落ちたアークレイの白いシャツ。
 露わになったのは、アークレイの引き締まった上半身。
 それこそ自分と同じ男とは思えないほど、大人の男の身体だった。
 それを視界の中に捉えた瞬間、どくんっと心臓が大きく脈打つ。

「どうだ?俺も同じ男の身体だぞ?シルフィアは嫌か?触れたくもないか?」

「そのような・・・・・・」

 嫌だなどと考えたことは一度もない。
 小刻みに首を横に振れば、アークレイは笑みを浮べ、シルフィアの身体に覆いかぶさるようにゆっくりと肌を重ねてきた。

「俺も、貴方に触れたい」

「あ・・・・・・」

 感じるアークレイの重み。
 触れ合う熱を帯びた肌。
 布越しではない生身の感触に、思わず熱い吐息がもれる。

「どうだ?熱いだろう?」

「は・・・・・・い」

「俺はもっと貴方の肌に触れたい」

「え・・・」

 シルフィアの身体を包み込むように抱いたアークレイは、僅かに身体をずらし、ゆっくりとシルフィアの胸元へ唇を落とした。
 途端、まるで電撃が走ったかのように鋭い痺れが走る。

「あっ」

 ビクッとシルフィアの身体が揺れ、自分でも信じられないような甘い声がもれた。

「あっ・・・や・・・・・・」

 柔らかな胸の尖りを舌先で舐められて、ますます声が出てしまう。

「だ・・・めです・・・」

「感じるのか?」

 そう問われて、シルフィアは自分が感じているのだと初めて気づく。
 女性でもないのに、口づけされて舐めらただけで感じてしまったことがとても恥ずかしい。
 口元を手の甲でおさえ、アークレイの視線から逃れるように顔をそらしてしまった。
 だがアークレイは微苦笑するだけで止めようとはしない。
 再び唇を落とし、吸い上げ、ときには転がすように舌でなめた。

 ぞくっと背筋を震えが走る。
 それは慄きではない。
 紛れも無い快感なのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
 無意識のうちに鼻に抜けるかすれたような声がもれ、必死に抑えようとするだが、アークレイの絶え間ない攻めに成すすべはなく、シルフィアは声を堪えることができなかった。

「いや・・・・・・やっ・・・・・・」

 片方の尖りも指でつままれて、次第にそこが固くなり始めるのが自分でもわかった。
 翻弄されてどうすることも出来ない自分の身体が、アークレイを求めて浅ましく淫らになっていく。
 全くといっていいほど経験がないシルフィアだが、これがまだ前戯に過ぎないであろうことくらいわかる。
 この程度で感じてしまうシルフィアを、アークレイは呆れてしまわないだろうか。

 だが、シルフィアは気づいていない。
 洩れ出でる甘さが含まれたその声も、羞恥に頬を染めるその表情も、快感に戸惑い潤む碧玉の瞳も、その全てがアークレイの身体を熱くすることに。

「参ったな・・・・・・」

「え?」

「まさか23年生きてきて、男の身体に『欲情』するときが来るとは思わなかった」

 甘ったるい痺れに頭が回らないシルフィアは、アークレイが呟いた言葉をよく理解できなかった。

「それもこれも・・・・・・相手がシルフィアだからだな」

 何を言われたのかわからず戸惑うシルフィアに、アークレイは微かに笑みをこぼす。
 そして肌を重ねてきたかと思うと、ぐっと強く抱かれて更に互いの身体が密着する。

「・・・・・・っ!」

 シルフィアははっと目を瞠り、間近にあるアークレイの整った顔を見上げた。
 意図をもって口端を上げて笑うアークレイに、かあ・・・・・っと体中が熱くなる。

「・・・・・・わかるか?」

「は、い・・・・・・」

 バクバクと煩いほどにシルフィアの心臓は激しく高鳴る。
 腰のあたりに硬いモノが押し付けられていた。
 それは紛れも無く、アークレイも感じているのだという証だ。
 だが同時に、シルフィアが既に感じていたのだということも知られてしまった。
 胸への愛撫だけで、シルフィアは自分では抑えられないほど甘い痺れに溺れていたのだから。
 そこは痛いほどに疼き、如実に反応を示していた。

「シルフィアも、感じてくれているのだな」

 すっとわき腹をアークレイの手のひらがたどっていく。

「い、やっ・・・・・」

 羞恥に身悶え、シルフィアの身体が小さく震えた。
 だがアークレイはその反応にほくそ笑むだけだった。
 それどころかシルフィアの下穿きを僅かに下ろされて、下着の中に指が滑り込んできたのだ。
 まさか、と目を見開くことしか出来なかった。
 絡みつく、熱い指の感触。
 シルフィアの理性を裏切るように淫らに震えるそれが、アークレイに触れられているのだという事実が信じられなかった。

「だめっ!・・・やっ!触らないでください!」

 湯気が出ているのではないかと思うほど顔を真っ赤にして、シルフィアは慌てて上半身を起こす。

「何故だ?」

 一方で余裕の笑みを浮かべるアークレイは、下着から抜いた手をシルフィアへと差し出す。
 その指先は、明らかに濡れていた。
 それを見せ付けられ、かあああっと更に赤面したシルフィアは、逃れるようにシーツに顔を埋めた。

「や・・・・・・いや・・・・・・」

「何故だ?恥ずかしいのか?」

「あ・・・・・当たり前です!」

「べつに恥ずかしがることではない。男なら当然の反応だ。むしろ、それだけ貴方が感じてくれているのだということがわかって俺には喜ばしいことだ」

 肩を震わせながら、シルフィアはおずおずとアークレイを見上げた。

「アークレイ様は・・・・・・嫌ではないのですか?」

「俺が?何故?」

「だって・・・・・・このような・・・・・・」

「何故だ?俺はこんなにも貴方に欲情しているというのに?」

「よっ・・・・・・」

 頬を染めたシルフィアの瞼に口付け、唇に音をたてて口付けが落とされた。

「まったく・・・・・そんな潤んだ瞳で見られては、俺の理性も焼き切れる寸前だ。欲望のままに無体を働くわけにはいかないからな、これでも抑えているのだぞ?なのに無自覚に俺を煽って貴方は酷い。天然というのは本当に性質が悪いな」

「天然・・・・・・・私が?」

「ああ、そうだ。天然で、無自覚に俺を煽る」

「そ、そのような・・・・・」

 アークレイを煽ってなどいない。
 とにかくいっぱいいっぱいで、付いていくだけでも必死なのだから。
 むしろ、シルフィアを翻弄しているのはアークレイのほうだ。

「わ、私は・・・・・・私はアークレイ様が初めてなのです。そのようなことをおっしゃられてもわかりません!」

 シルフィアを覗き込むアークレイの瞳の奥に、何かがゆらりと揺らめいた。
 僅かに濡れた自身の唇を、アークレイはゆっくりと舌先でなぞる。

「・・・・・・本当に、シルフィアは煽るのが上手い」

「え?」

「・・・・・・益々、欲しくなった」

 アークレイは僅かに身体をずらしたかと思うと、慌てるシルフィアをまるで無視し、下穿きと下着を一気に下ろしてしまったのだ。

「やっ!ア、アークレイ様!」

 足先にまで感じるシーツの冷たさが、何も身に纏っていないことを如実に表しており、一層シルフィアの羞恥を煽った。
 そんな全てを剥かれたシルフィアの裸体を、アークレイは眩しげに目を細めて見下ろす。

「本当に・・・・・・貴方という人は・・・・・・」

「え?」

 カチャカチャと忙しなく外される金具の音。
 アークレイがベルトを外す音だった。

「あ・・・・・・」

 再び覆いかぶさってきたアークレイの重みを感じたシルフィアは、不意にぐいっと右腕の手首を掴まれた。

「・・・・・・!」

 その手が導かれた先に触れたもの。
 ドクドクと脈打つ、硬く、熱いもの。
 大きく目を瞠りアークレイを見上げれば、甘さを含んだ笑みとともにこめかみに口づけが落とされ、吐息まじりの声が耳元で囁かれた。

「貴方の手で触れてくれ・・・・・・貴方の手の中で、俺は、いきたい・・・・・・」
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