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季節は巡るが何も変わらないわけでは無い 4
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月曜日、四人の生徒が入部届を出してくれた。
あの日本犬みたいな男の子と、眼鏡の利発そうな男の子、たれ目の女の子ときりっとした目の三つ編みの女の子だ。今までよりも部室はちょっとだけ狭く感じた。
「若狭幸太郎です、桜木先生の本に感動して入りました。正直、まだまだ勉強中です、宜しくお願いします」
犬のように元気な若狭が言う。
「梶誠一郎です、ビブリオバトルに興味があって入部しました。理学部にも入っています」
梶は淡々と言い、お辞儀をする。
「佐伯和可菜です。小説を書いてみたくて入りました。宜しくお願いします」
たれ目の女の子は、見た目可愛いが、口調ははきはきとしている。
「本を読むことが好きでこの部に入りました。高橋満理奈です。小説だけでなく詩、短歌も好きです。ビブリオバトルにも興味があります。宜しくお願いします」
三つ編みの子も、通る声ですらすら喋る。
「改めて、宜しく」
俺が言う。
「よろ」
伊月がペンを口にくわえながら言う。
「よ、よろしくね」
鈴木が恭しく笑う。
俺たちはその日、自分の好きな本を読んだり、自由に語り合って過ごした。部室は賑やかになり、二年組にとってもそれはいい刺激になった。
「俺、斎藤加奈子の『西日の当たる場所で』っていう作品が好きで、それ以来斎藤先生の本ばかり読んでて……」
柴犬君が言う。
「ああ、あれいいよね。映画化もされたし」
鈴木がニコニコ言う。
「斎藤先生の作品なら、一発目の『ここ』が俺は好きだな」
俺も話に入る。
「先輩、日向先輩は、時代小説はあまり読まれないんですか?」
梶君は思った通り、頭が良さそうだ。
「そうだなあ、俺歴史は苦手だしなかなか読まないなあ。お勧めはある?」
「ベタですけど、一昨年の大河ドラマのもとになった作品が読みやすいと思いますね」
「鈴木先輩、小説の書き出しってどうやって思いつくんですか?」
たれ目の佐伯は、鈴木につきっきりだ。
「え、ええ、うーん、わかんないかも。どうしてるんだろう?」
鈴木はちょっと困っている。
「書き出しから書くんじゃなくて、結末から書いてみたら、書き出しが良いものになる時もあるかも……そうじゃない時もあるけど」
「『ハリーポッター』もそうだったみたいですね」
「うん、とにかく頭の中にある事を書き出して見たら勝手にできるんじゃないのかなあ、うまく言えなくてごめんね」
「わかりました」
佐伯は鈴木の話をメモして熱心に聴いている。
「最近は割と、古典にはまりつつありますね」
三つ編みの子は伊月と話していた。俺と趣味が合いそうだ。
「ロシアの古典に今は嵌っています」
「いいよなあ」
俺思わず口を挟む。
「俺も露文は本当に好きなんだよ。この学校でこの話が出来るのは、こいつくらいだけど」
俺は伊月を指さす。
「そうだな」
伊月が笑う。
「そうだったな、そう言えば」
奴は穏やかな口調で言う。
「俺も忘れてたけどな」
「うん」
俺たちは変わりつつある。
あの日本犬みたいな男の子と、眼鏡の利発そうな男の子、たれ目の女の子ときりっとした目の三つ編みの女の子だ。今までよりも部室はちょっとだけ狭く感じた。
「若狭幸太郎です、桜木先生の本に感動して入りました。正直、まだまだ勉強中です、宜しくお願いします」
犬のように元気な若狭が言う。
「梶誠一郎です、ビブリオバトルに興味があって入部しました。理学部にも入っています」
梶は淡々と言い、お辞儀をする。
「佐伯和可菜です。小説を書いてみたくて入りました。宜しくお願いします」
たれ目の女の子は、見た目可愛いが、口調ははきはきとしている。
「本を読むことが好きでこの部に入りました。高橋満理奈です。小説だけでなく詩、短歌も好きです。ビブリオバトルにも興味があります。宜しくお願いします」
三つ編みの子も、通る声ですらすら喋る。
「改めて、宜しく」
俺が言う。
「よろ」
伊月がペンを口にくわえながら言う。
「よ、よろしくね」
鈴木が恭しく笑う。
俺たちはその日、自分の好きな本を読んだり、自由に語り合って過ごした。部室は賑やかになり、二年組にとってもそれはいい刺激になった。
「俺、斎藤加奈子の『西日の当たる場所で』っていう作品が好きで、それ以来斎藤先生の本ばかり読んでて……」
柴犬君が言う。
「ああ、あれいいよね。映画化もされたし」
鈴木がニコニコ言う。
「斎藤先生の作品なら、一発目の『ここ』が俺は好きだな」
俺も話に入る。
「先輩、日向先輩は、時代小説はあまり読まれないんですか?」
梶君は思った通り、頭が良さそうだ。
「そうだなあ、俺歴史は苦手だしなかなか読まないなあ。お勧めはある?」
「ベタですけど、一昨年の大河ドラマのもとになった作品が読みやすいと思いますね」
「鈴木先輩、小説の書き出しってどうやって思いつくんですか?」
たれ目の佐伯は、鈴木につきっきりだ。
「え、ええ、うーん、わかんないかも。どうしてるんだろう?」
鈴木はちょっと困っている。
「書き出しから書くんじゃなくて、結末から書いてみたら、書き出しが良いものになる時もあるかも……そうじゃない時もあるけど」
「『ハリーポッター』もそうだったみたいですね」
「うん、とにかく頭の中にある事を書き出して見たら勝手にできるんじゃないのかなあ、うまく言えなくてごめんね」
「わかりました」
佐伯は鈴木の話をメモして熱心に聴いている。
「最近は割と、古典にはまりつつありますね」
三つ編みの子は伊月と話していた。俺と趣味が合いそうだ。
「ロシアの古典に今は嵌っています」
「いいよなあ」
俺思わず口を挟む。
「俺も露文は本当に好きなんだよ。この学校でこの話が出来るのは、こいつくらいだけど」
俺は伊月を指さす。
「そうだな」
伊月が笑う。
「そうだったな、そう言えば」
奴は穏やかな口調で言う。
「俺も忘れてたけどな」
「うん」
俺たちは変わりつつある。
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