鬼の宴

さかばんばすぴす

文字の大きさ
1 / 21
鬼の宴

(1)

しおりを挟む
~●◯●~
いつもは静かな商店街は
騒々しい声に包まれていた。
今日は一年に一度のお祭り、慈雨祭だ。
街が活気に溢れ、
他県からも来ている人がいるらしい。
こういうのは苦手だ。
まるで静寂が拒絶されているようで。
静寂が大好きなボクを拒絶しているようで。

「きのすけ…もっと楽しもうよぉ~」

後ろから抱きつかれる…思考が邪魔された。
諸悪の元凶の抱きついた張本人、
くとは隣の席に座って買ったのであろうわたあめを食べだした。
なかなか減らないりんご飴を舐めながら
楽しんでいるからと弁明する。

「お前みたいにはしゃぐだけが楽しいんじゃねえんだよ、」

前の席でぬいぐるみに埋もれながら皮肉を吐き出しているのはくるるだ。
奇跡的にこっちを向いているうさぎのぬいぐるみが代弁をしているようで
あるまじきほどに可愛くなってしまっている。

「そんなにはしゃいでないだけど…っていうか君に言われたくないね!!」

ぬいぐるみは射的の景品でくるるとくとが戦った時に取ったものだったりする。
大半くるるがとったのでまあ、はしゃいでいただろう。
当の本人も言い返せないようで、眉間にシワを寄せて不機嫌オーラだけを漂わせている。

「しょーがねーだろ、取れちゃったんだから…それよりもあと少しで花火が始まるぞ。」

あ、そうだ!!とさっき座ったばっかりの席を立つ慌ただしいくと。
そういえばどっか穴場があるって言ってたっけ。
いこいこと急かしてくる彼女。
はいはい、とめんどくさがりながら席を立つ。

急ぐ彼女の後ろに、影が見えた。

「…おい!!くと!危ない!!」

腕を引っ張り、危機一髪で回避させる。
その男は、舌打ちをしながら何処かへ行った。

「あ…ごめん…。」

くとの視線は地面に落ちたりんご飴にあった。
…ああ…もったいない

「いいよ別に、また買おうぜ。」

本当にごめんね!!!と全速力で謝るくとに、言う。
いや、本当にお前は悪くないんだよ、本当に。

「…きのすけ。」

わかっていたらしいくるるが後ろからどうする、という顔で見てきた。
今わざと当たってきたあいつらをどうにかするなら、いくらでも出来る。
でも、

…ここで大事にするのは、得策ではない。

「まーどこ行くんだ?」

空気を変える。
ここで尾を引くのは良くないと感じたのか、繕った笑みでくとが言う。

「…あ、言ってなかったっけ、あそこ!」

指の先には

「慈雨神社??」

立入禁止になっているはずの神社があった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

処理中です...