Tril"if"e

さかばんばすぴす

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第一章 赤色の追憶

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~❀☆❀~sideライ
待機室で俺とくるるは待たされる。
きのすけはこの隣の部屋にいる、布団に寝っ転が差れたので多分いまからスネークミッションを行うところだろう。
隣で饅頭3個目を頬張る傍若無人さを見せつけたくるるさんを横目に入ってきた人をみる。
高貴ほどでもないが、けっこうお高そうな着物だ。さっき仲良くなって見せてもらった反物から察するに上の下と言ったところか。
綺麗な所作で入る男性は、名前を要、と言った。
くるるの方を向き、包み紙が結構積まれているのにすこし驚きながら、微笑をこぼしている。
まるでネズミを狙う蛇のようだ。ねちっこい感じが特に。あと自分が捕食者であることを信じてやまない感じが。

「ようこそここにいらっしゃいました。もう大丈夫ですよ。」

きゅと、目を細めるそぶりをしたので、俺も細めてみる。

「ありがとうございます、あなた方がいなければ私たちは…」

その①、相手に有利なことを言う。
これは相手との意見の反り合わせ、俺たちが下であるという意思表示。

「このご恩は忘れません、ありがとうございます。」

深々と頭を下げる。次来るのは、“いえいえ、私たちは”

「いえいえ、私たちは人としての事をしたまでです。」
「ですが…せめて恩返しをさせてください!」

はい、ビンゴ♪“そうですね…ならば、私たちが崇める刹那大明神様のお支えを”

「そうですね…ならば、ぜひ入信していただけると嬉しいです。」

ド直球かよそれは予想外。

「なに、そんな困ることはありません、ただ、人手が足りなくてお手伝いをしていただきたいのです。」
「ですが…」

②考えているように見せる。
自分がリズムを担っていると錯覚させる。
これにより、リズムがおろそかになり、奪いやすくなる。
…例外として今も饅頭食っている奴とか己のリズムを貫くやつを除くが。

「そう…ですね、はい!手伝わせていただきたいです。」
「ありがとうございます!ではこちらに名前を…」

ガチガチ契約書に名前を書かされる。
ぅ―――ん適当でいいや、結構偉い人っぽくしたいから桐生院とかよくね?
書こうとした。手が、止まる。
頭の奥底のメモリーが、ある名前をたたき出した。

「鬼灯…葉月さん、ですか。いい名前ですね。」

お世辞を微笑で聞き流して意思なく震える機体を抑える。
使い捨ての名前なんて愛着なんていらない。
鬼灯なんてウソつきの代名詞の花を使うなんて馬鹿げている。
それでも、使わなくてはいけない気がした。
そういえば、この、名前は。

「そちらの方は?」
「ああ、こいつは鬼灯弥生、ねえさんは鬼灯皐月です。」

思考を正常に戻し適当にこっちは作ってみた。
全部月の名前。刹那から教えてもらったやつ、くそ懐かしい。

「こちらが間取り、そしてこちらがやることです。」

二枚の紙を見せてくる。ほう、ガチガチ雑用草。

「あの、三つほど聞きたいことがあるのですが…」
「…?はい、どうぞ。」

③あとはアドリブ、イチかバチか。

「あの木…はどんな品種ですか。」
「ああ、それは、桜です、この宗派はを隔てて世界を分けているのです。」

美しいでしょう?と言われても、不気味にしか見えない。
そういえば、見たことあるかもしれない。極東の国は、親善国に桜を渡す風習がある。
俺たちの国にも数本生えていたはずだ。
こんなギッチギチの投げやりの育て方なんてしたら、
園芸課の人間が怒ってしょうがないだろう、
あの、植え方は、狂気だ。まるで、一つの道具としか思っていないを体現したかのようだ。
そんなこと表に出せるなんてないので、ニコニコしながらやり過ごす、
不意に、表情を変えて見せる、数瞬おいて、あ、と一言。

「行く途中、幹に大きな傷跡を見つけたのですが。」
「それは、過去、私たちの教祖様が神隠しに遭ったしるしです、それから、私たちは、神と崇めることになったのです。」

反吐がでる、何が信仰だ、なにが神だ。
どこぞの活字中毒者に言ったらバッサリGott ist tot死んだとニヒリズムで返されるぞ。
いちいちうるさいなあと思いつつ、そこで何かが起こったのならあいつの記憶が戻せるかもしれないと思う、
メモメモ、

「その話についても、今夜話させていただきますね。」
「ありがとうございます!」

うっぜえが多分重要になる話だ、そうに違いない、そうであってくれ。
雑用をするために、席を立つ、障子の取っ手に手をかけて、そういえばと声をかける。

「そういえば…ここの神様は…」
「ああ、刹那大明神様というんです。」

まあ、知っているでしょうけど。
なんてことない、とでもいうように、ソイツは言った。

途端、少し開けた障子の隙間から出てくる槍、
全てがスロー再生に見えてくる。
いつもなら気付けたはずだ、いや、気付かなくても、こんなのよけれる。
体をねじろうとした瞬間の腹部の痛みに、顔をしかめる。

当たる。

そんな時、自分は後ろに引っ張られて、槍は急に方向転換する。

自分の物とは違う赤に槍は染まっていた。

「っ!きのすけ!?」
「あぶねえ!これ、潜入気付かれてたのかよ!」

そういうことだろう、たぶん、海賊からのリークだ。
こんな状況を想定していなかったわけではない、戦闘狂二人をデリバリーする程度には
想定はしていた、しかし、腹部こんなに痛いとは思わんやろ、しゃあない。

「それじゃあ、宗教戦争を始めようか。」

そう言い、きのすけの脱ぎ捨てた着物から、スナイパーライフルと持ち出すくるるの後ろに隠れる。

「って!おめえ戦わねえのかよ!」
「適材適所ってね、俺頑張っていた時にお饅頭頬張ってた人に言われたきゃあない。」

てか、槍使いに近距離で挑むなんて、あそこで手をガンガン切っても笑いながら蹂躙しているキチガイにしかできねーんだよなあ。
なお、そのキチガイは絶好調で意味の分からない挙動を披露している。

「っはあ、近距離すぎてスコープもいらねえ、萎える。」

そんなこといいながらくるるも参戦する。
超絶意味の分からない挙動を、見切ったように援護射撃を行う。
フレンドリーファイアなんてこいつらの辞書にはない、

「ほんとうに最強だな、このコンビ。」

ぼそっとつぶやいた。

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