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第一章 赤色の追憶
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~❀☆❀~side刹那
いつもよりも豪華な花が散っている。
いや、コレは、花ではない、炎だ。
自分に架せられた、檻が燃える音、
この光景を、僕は、知っている。
この光景は、
この情景を、作り出したのは。
「刹那、ねえ、終わったよ。」
こえを、かけられる。
「もう、君を縛るものはない。過去も、未来も、今も、自分の物だ。」
「でも、君は!」
僕は知っている、なぜか知っている。
彼女に、自由はないことを。
「明日なんだ、私が捕虜として大きな異国に行くの。」
「たぶん、いや、絶対、戻ってこれないし、
私は檻の中で少ない命を燃やし続けるだけの猛獣と同じように死んでゆく」
目をつぶり、「こんなの。」
「死んだも同然だ。」
彼女はくちを開く。
それは彼女の多分最後の本音で、本心だ。
「ねえ、刹那、人間って二回死ぬんだって。」
一回目は肉体の死、二つ目は精神的な死。
僕達を縛った二つの宗教にも、異国の宗教観にもない、一人の作詞家がうみだした妄想。
それでも、彼女は、イエスや、仏陀よりも…自分の神よりも信じていたのかもしれない。
彼女が僕と距離を詰める。息づかいと体温だけが、彼女がここに生きている証明だ。
「私を忘れないで。」
「私を生かしてよ、君の自由に連れて行って。」
「私を殺さないでよ、君だけが、私を知っているから。」
ねえ、どうか。
「わたしのぶんまでいきて、」
言葉は呪い(のろい)となり、呪い(まじない)になる。
剣になり、包帯になる。
その言葉は、僕のここで生きた存在証明であり、過去にとらわれる唯一の枷となった。
炎が舞う、空に、桜が散る。
散ったピンクはセピアになる。
「ねえ、まだ、そこにいるの?」
後ろから、声がする。
「思い出したんだ、へえ、それで?」
「過去の事実は変えられない、ここで、君は彼女…花陽に背中を押され、必死に逃げる。」
「次の辰の刻に、山の中で、何もできず、汽笛を鳴らす船を見送る。」
「近くにいた老夫婦に9年間育てられ、自分が異様に足が速いこと、剣の才を持っていることを知る。」
「それからその老夫婦は獣に襲われ死亡、必死に戦おうとするが、足がすくみ動かなくなる。」
「最後に、必死に願う。もし、自分みたいな偽物じゃない、本物の、神様がいるのなら」
『もう一度、彼女に会いたい。』
言葉が重なる。
そのまま無我夢中に獣を討伐する。気付けば異国で知らない天井を見上げていた。
息を、吐く。体は動かない。
そう思えば、幼少期から、僕はずっと自由になりたかった。
一日三食、きちんとした生活、手は荒れず、血なんて見ない。
それが嫌で、こっそり覗きに来た花陽に、外の話を聞いた。
最近近所で猫が生まれたこと、丹物屋の新作の事、近くにツバメの巣ができたこと。
夕日の話ですら、僕には新しい発見だった。
それを、くれたのは。
自由を教えてくれたのは、
まぎれもなく、彼女だった。
「でも、その彼女が、今君を縛っている。」
「そうだね、僕は、縛られていた。これからも、彼女の亡骸の上に成り立つ自由を見るたび、僕は、悔やんで、苦しくて、たまに死にたくなるかもしれない。」
「なら、思い出さなきゃよかった。」
それでも、そうだとしても、
「僕は、思い出してよかったって、死にたくなるたび笑うんだ。」
だから。ね?そんな顔しないで、花陽。
後ろを振りむく、一回りも、二回りも成長した花陽の泣いている顔が、見える。
「君に僕のこれからをとやかく言われる筋合いはないね、残念ながらあの時、君が僕を送り出した時から、僕は僕自身の自由をつかみ取ったんだ。」
「これからも自由に君に縛られて生きてゆくよ。」
そうなんだ、そうか、成長したんだね。
彼女の口から、こぼれてくる。
「私が間違っていたよ、ここに、君はいない。」
「ごめんね、連れて行ってなんてわがまま言って、自己中すぎて笑っちゃう。」
「そんなことない、連れていくよ、君も、君との思い出も。」
彼女の口角が上がる。とめどなく流れる涙を拭きとった。
強い風が吹き、周辺の桜の木が一斉に鮮やかに舞った。
「ありがと、刹那、大好きだよ。」
小さな少女が崩れてなくなる。
きっと彼女の時間が、この時から動き始めたのだ。
「うん、僕も。」
崩れる世界の中で、最後にひとつ、と声がかかる。
「君の大切な人が、いま、危ない目に遭っている。」
「え?」
「私から、最後の贈り物。」
背中を、
押される。
体が宙に舞い、摩天楼から落とされる。
「助けてあげて、君の事を私の代わりに救ってくれたあの人を。」
「助けてあげて、君の“時”さえ超える、その足で!」
涙を流しながら君はぎこちなく最上級の笑みを見せる。
視界がピンクに染まって。
そのあと。
君は、見えなくなった。
ー裏話ー
いつも何回も見直すのに一回で出しちゃったから矛盾してるかもしれんわ。
まじで老夫婦くだり出す予定なかった。期間の穴埋めに作ったくだりなんだけど...
自由なんて言葉…使わなきゃよかった…
え?刹那は花陽に恋をしているかだって?プロット段階はそうでした。
何なら花陽=くと説をにおわせようとした時期もありました。
普通にめんどくなるので止めましたし、いまからその理由が分かります。
いつもよりも豪華な花が散っている。
いや、コレは、花ではない、炎だ。
自分に架せられた、檻が燃える音、
この光景を、僕は、知っている。
この光景は、
この情景を、作り出したのは。
「刹那、ねえ、終わったよ。」
こえを、かけられる。
「もう、君を縛るものはない。過去も、未来も、今も、自分の物だ。」
「でも、君は!」
僕は知っている、なぜか知っている。
彼女に、自由はないことを。
「明日なんだ、私が捕虜として大きな異国に行くの。」
「たぶん、いや、絶対、戻ってこれないし、
私は檻の中で少ない命を燃やし続けるだけの猛獣と同じように死んでゆく」
目をつぶり、「こんなの。」
「死んだも同然だ。」
彼女はくちを開く。
それは彼女の多分最後の本音で、本心だ。
「ねえ、刹那、人間って二回死ぬんだって。」
一回目は肉体の死、二つ目は精神的な死。
僕達を縛った二つの宗教にも、異国の宗教観にもない、一人の作詞家がうみだした妄想。
それでも、彼女は、イエスや、仏陀よりも…自分の神よりも信じていたのかもしれない。
彼女が僕と距離を詰める。息づかいと体温だけが、彼女がここに生きている証明だ。
「私を忘れないで。」
「私を生かしてよ、君の自由に連れて行って。」
「私を殺さないでよ、君だけが、私を知っているから。」
ねえ、どうか。
「わたしのぶんまでいきて、」
言葉は呪い(のろい)となり、呪い(まじない)になる。
剣になり、包帯になる。
その言葉は、僕のここで生きた存在証明であり、過去にとらわれる唯一の枷となった。
炎が舞う、空に、桜が散る。
散ったピンクはセピアになる。
「ねえ、まだ、そこにいるの?」
後ろから、声がする。
「思い出したんだ、へえ、それで?」
「過去の事実は変えられない、ここで、君は彼女…花陽に背中を押され、必死に逃げる。」
「次の辰の刻に、山の中で、何もできず、汽笛を鳴らす船を見送る。」
「近くにいた老夫婦に9年間育てられ、自分が異様に足が速いこと、剣の才を持っていることを知る。」
「それからその老夫婦は獣に襲われ死亡、必死に戦おうとするが、足がすくみ動かなくなる。」
「最後に、必死に願う。もし、自分みたいな偽物じゃない、本物の、神様がいるのなら」
『もう一度、彼女に会いたい。』
言葉が重なる。
そのまま無我夢中に獣を討伐する。気付けば異国で知らない天井を見上げていた。
息を、吐く。体は動かない。
そう思えば、幼少期から、僕はずっと自由になりたかった。
一日三食、きちんとした生活、手は荒れず、血なんて見ない。
それが嫌で、こっそり覗きに来た花陽に、外の話を聞いた。
最近近所で猫が生まれたこと、丹物屋の新作の事、近くにツバメの巣ができたこと。
夕日の話ですら、僕には新しい発見だった。
それを、くれたのは。
自由を教えてくれたのは、
まぎれもなく、彼女だった。
「でも、その彼女が、今君を縛っている。」
「そうだね、僕は、縛られていた。これからも、彼女の亡骸の上に成り立つ自由を見るたび、僕は、悔やんで、苦しくて、たまに死にたくなるかもしれない。」
「なら、思い出さなきゃよかった。」
それでも、そうだとしても、
「僕は、思い出してよかったって、死にたくなるたび笑うんだ。」
だから。ね?そんな顔しないで、花陽。
後ろを振りむく、一回りも、二回りも成長した花陽の泣いている顔が、見える。
「君に僕のこれからをとやかく言われる筋合いはないね、残念ながらあの時、君が僕を送り出した時から、僕は僕自身の自由をつかみ取ったんだ。」
「これからも自由に君に縛られて生きてゆくよ。」
そうなんだ、そうか、成長したんだね。
彼女の口から、こぼれてくる。
「私が間違っていたよ、ここに、君はいない。」
「ごめんね、連れて行ってなんてわがまま言って、自己中すぎて笑っちゃう。」
「そんなことない、連れていくよ、君も、君との思い出も。」
彼女の口角が上がる。とめどなく流れる涙を拭きとった。
強い風が吹き、周辺の桜の木が一斉に鮮やかに舞った。
「ありがと、刹那、大好きだよ。」
小さな少女が崩れてなくなる。
きっと彼女の時間が、この時から動き始めたのだ。
「うん、僕も。」
崩れる世界の中で、最後にひとつ、と声がかかる。
「君の大切な人が、いま、危ない目に遭っている。」
「え?」
「私から、最後の贈り物。」
背中を、
押される。
体が宙に舞い、摩天楼から落とされる。
「助けてあげて、君の事を私の代わりに救ってくれたあの人を。」
「助けてあげて、君の“時”さえ超える、その足で!」
涙を流しながら君はぎこちなく最上級の笑みを見せる。
視界がピンクに染まって。
そのあと。
君は、見えなくなった。
ー裏話ー
いつも何回も見直すのに一回で出しちゃったから矛盾してるかもしれんわ。
まじで老夫婦くだり出す予定なかった。期間の穴埋めに作ったくだりなんだけど...
自由なんて言葉…使わなきゃよかった…
え?刹那は花陽に恋をしているかだって?プロット段階はそうでした。
何なら花陽=くと説をにおわせようとした時期もありました。
普通にめんどくなるので止めましたし、いまからその理由が分かります。
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