アンドロール

竹壱 有司

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第二章

第二十一話

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 頭がクラクラする。それに吐き気も少々。
「直君は平気?」
「そう見えるか?」
 明らかに顔が青白いイリーナは、もはや動けないと言った具合で座席にもたれている。
 唯一の救いと言えば、狂喜乱舞していたヘリコプターが地面に足をつけている事。咲さんの暴れっぷりを考えれば、天龍さんが空を嫌いになるのも分かる気がする。
「いやぁ! 久々に燃料を気にせず飛べたよね! どうだったかな~」
 空の暴れん坊を演じた張本人は上機嫌だ。
「……楽しかったです」
 笑顔に見える表情のアンドロールは例外らしい。
「ほんと、凜ちゃんは良き理解者だね~。あたしが面倒を見てあげようか」
「……直秋さんやイリーナさんが居ますので大丈夫です」
「いつでもあたしに鞍替えしてもらっていいからね」
 反応に困る凜。イエスかノー、どちらを答えても一方に与することになるからだろうか。
「……直秋さん。どうすればいいでしょうか」
「冗談だから適当にあしらえばいいぞ」
「直秋君も中々酷いねぇ。まぁそんな事は置いといて、そろそろあたしも行かないといけないから、降りてくれるとありがたいけど」
 あまり気分は良くないが、送迎のパイロットの言うことは聞かなければいけない。というか、咲さんのせいで俺もイリーナもへばっている訳だが。
 俺達はヘッドセットを元の場所へ戻すと、積み込んでいた荷物を下ろして機外へ。
「結構な数のヘリコプターがあるよね。私達以外にも大勢が来てるのかな」
 イリーナの言葉通り、周囲には大小のヘリコプターが駐機していた。もちろん、航空基地のように整備された場所ではない。舗装された大きな道だ。戦前は主要道路として使われていたのだろう。
「さて、あまり調子は良くないが……イリーナと凜は、お腹を満たしたいんだろ」
「そうだけど、直君は一緒に来ないつもりなの?」
「ちょっとだけ用事があるからな」
「……私も食べ物には惹かれます。しかし、グリスを――――」
「俺が探しておくから、女性陣で楽しくやっててくれ」
「そういう事なら止めないけど」
 何故か少しだけ不機嫌そうなイリーナに手を振って別れを告げる。
 この辺りは来たことが無いが、路地に入り、人がいる方へ歩みを進めれば良さそうだ。目的の場所は、中心地に近いところにあるので、歩いていれば、土地勘がある場所へたどり着くだろう。
「ちょっと待った! あたしの話を聞かずにどこかへ行くのはいいけど、お帰りはどうするつもりかねぇ」
 おっと。面倒ではあるが、送迎パイロットの言うことを聞いておかないと帰宅が困難になってしまうな。
「どうしました?」
 振り返って、咲さんに視線を投げる。イリーナ達も同様に、パイロットへ向きかえっていた。
「ご帰宅は大体2時間後だから。それまでに集合で」
「私達は美味しいものさえ食べられれば、すぐに戻ってくるので」
「じゃあ、あたしは直秋君の心配さえしていればいいのかな」
「別に心配しなくていいです」
「遅れたら帰りも空のジェットコースターを堪能させてあげるから」
「絶対に遅れないに決まってるでしょ」
 流石に帰路でもあんなことをされたら内臓が飛び出してしまう。なおかつ、その原因が俺だなんてことになれば……イリーナお嬢さんにスナイプされかねない。
「では、歴戦の狙撃手達と可愛いアンドロールちゃん、しばしお別れだねぇ」
 そう言い残すと、ポニーテールを揺らしながら足早に去っていった。
 もちろん俺も時間制限がある中でぼーっと立っているのはもったいない。再び目的地に向かうため歩き出す。
 狭い路地へ入れば、両脇に廃墟と化した建物がそびえ立っている。戦前はビルだったのか、階層あるような建物が数多く静かに鎮座していた。その内部からは、無数の視線を感じる事が出来る。
「用心しとくか」
 肩に掛けている狙撃銃を両手で持つと、先ほどよりも周囲に気を配りながら路地を進む。右、左、右、直進――――数分間、歩哨のように歩き続けると、それなりに人がいる開けた場所にたどり着いた。
 物売りや身なりが貧相な人間、ただじっとしているだけの人までいる。
 やはり、命をかけているだけ俺やイリーナ、基地にいるアンドロールなんかも良い生活が出来ているんだ。
 そのまま人をすり抜けていけば、半分ほどシャッターが閉まった建物に辿り着く。
「久々だな」
 一言呟くと、人を拒んでいるようなそれをくぐった。
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