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第二章
第二十二話
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「邪魔するぞ」
薄暗い室内には、各種類の銃が置かれている。弾や銃関連のアクセサリー、得体の知れない機械類も一緒に鎮座していた。
「昔来たことあるお客さんだね。基地からの人間は最近も関わったが」
奥から出てきたのは、メガネを掛けた白髪の爺さんだ。
「ああ。昔に一度だけな」
「思い出話をするほど暇じゃないのでね。要件は何かな」
「この辺りで、アンドロールの部品を扱っている人間を知らないか」
今回のメインミッションだ。しかし、俺自身そんなところは知らないので、一度来たことがあるこの店で情報収集をしようという考えだ。
「うちで取り扱いがある」
「あるとは思わなかった」
「どんな部品を探しているんだい」
「アンドロールの可動部に塗布するグリスなんだが」
「上半身と下半身どちら用かな。それと、何世代目のアンドロールだい?」
「腕に使用するから上半身用だ。世代は――――」
凜の世代……確か8世代だったような。型番を頭に思い浮かべてみると、識別名称もそうだったはずだ。
「8世代だったと思う」
「ほぉ……こりゃまた、生産数もストック部品も少ないアンドロールか」
「そうなのか」
「6世代以前は共通部品が多い。7世代と8世代は、現行並みの性能を維持できる。しかし、部品の構成が違うのでね。それなりにお代はもらおう」
「これでも高給取りだから心配しなくて大丈夫だ。それよりも案外詳しいじゃないか」
「君よりもアンドロール関係に手を出して長いのでね。少し待っていてくれ」
言葉を残し、店の奥へ消えた爺さん。彼を待っているまで店内の銃器を見て回る。俺が持っているような年代物の銃から、アンドロール達が製造したであろう現代のアサルトライフルまで取り揃えられていた。
凜にだけ何か買っていくと、イリーナからのクレームがありそうだし、ご機嫌取り用に銃でも仕入れていくか。
「いや、そんな費用も無ければ、逆にもっと良いもの寄越せとキレられるか」
「一人で何喋っているのか」
おっと……爺さんが小さな黒い箱を手に戻ってきていた。恥ずかしいところを見られてしまった。
「気にしないでくれ」
「そうかい。で、これが例の物でね」
近場の棚を机代わりにして爺さんが箱を置く。そして、俺に確認させるように中身を見せてきた。中にはアルミ製の小さな容器が収められている。
「本物かどうか分からないが、まぁ中身があるなら大丈夫だろう。お代だが、配給切符でいいか?」
「ほとんど価値が無くなった紙幣よりも、基地の人間が持つ配給切符の方が助かる。種類は問わないが、10枚は貰いたいね」
中々高額だ。俺たちの給料と同時に支給される切符だが、食料や日用品と交換出来るので、街中ではそれなりの値になる。それが一気に10枚も消し飛ぶのは……難しい。まぁ最近では、交換する物が無い場合も多いが。
「7枚で手を打たないか? 食料用切符と日用品用切符の配分はそっちで決めていい」
「条件が飲めないなら、別の人間に売るだけのこと。さぁ決めてくれ」
「分かった。言い値でいいが、他にも何かつけてくれるか? そうだな――――」
目ぼしいものを告げようとした時、空気を読まない腹の虫が鳴き声を上げた。
マズイ朝食を凜に献上していたから、今頃になって騒いでいる訳だ。
「なるほどなぁ。なら、これをつけてやろう」
今度は近場の棚を何やらゴソゴソとし始める爺さん。そして、引っ張り出してきたのは――――乾パンだ。しかも、真空パックの表紙に書かれているメーカーを確かめれば、高級な部類のものである。俺のコレクションのものよりも良い。
「腹も満たして、アンドロールの部品も手に入る。これ以上は手を打てないがね。すぐに決めてくれ」
「いや――――」
確かに良質な乾パンだが……もう予算的に一杯なので、ここでイリーナ分の手土産も入手しておきたい。だが、何がいいのか。
周囲に視線をやる。ふと、先ほど見た銃器の中でイリーナと同じものが目に入った。その銃の銃身に、戦闘にはあまり関係無さそうなものが掛けられている。これがいい。
「あの銃に掛かっているものも入れてほしい。それで交渉成立だ」
俺が指示した方へ顔を向けた爺さんは鼻で笑うと、求めていた返事をくれた。
「いいだろう。あんなものを欲しがるとは、幾分昔の映画でも好きなのかね」
「映画?」
俺が要求したもの、それは十字架のネックレスだ。映画との関係――まず映画をほとんど見たことがないが――なんてあるのだろうか。
「昔、世界を巻き込んだ戦争があっただろう。それをモチーフにした映画に、十字架を身に着け、祈りを捧げてから敵を撃つ狙撃手が居たのでね」
「映画は知らないが、お祈りをする時間があるなら撃ったほうが早いだろうに」
「験を担ぐことは悪いことではないぞ」
「そうかい。とりあえず配給切符を置いていくから、物は貰っていくぞ」
上着のポケットから紙幣よりも貴重な紙切れを差し出す。爺さんがしっかりと受け取ったのを確認して、先ほどの3点を手にすると踵を返した。
「毎度」
「ありがとさん」
後ろからの声に答えると、再びシャッターをくぐって外へ出た。手にした黒い箱、ネックレスを上着のポケットに入れておく。乾パンは腹の足しなので、歩きながら口へ放り込んだ。
薄暗い室内には、各種類の銃が置かれている。弾や銃関連のアクセサリー、得体の知れない機械類も一緒に鎮座していた。
「昔来たことあるお客さんだね。基地からの人間は最近も関わったが」
奥から出てきたのは、メガネを掛けた白髪の爺さんだ。
「ああ。昔に一度だけな」
「思い出話をするほど暇じゃないのでね。要件は何かな」
「この辺りで、アンドロールの部品を扱っている人間を知らないか」
今回のメインミッションだ。しかし、俺自身そんなところは知らないので、一度来たことがあるこの店で情報収集をしようという考えだ。
「うちで取り扱いがある」
「あるとは思わなかった」
「どんな部品を探しているんだい」
「アンドロールの可動部に塗布するグリスなんだが」
「上半身と下半身どちら用かな。それと、何世代目のアンドロールだい?」
「腕に使用するから上半身用だ。世代は――――」
凜の世代……確か8世代だったような。型番を頭に思い浮かべてみると、識別名称もそうだったはずだ。
「8世代だったと思う」
「ほぉ……こりゃまた、生産数もストック部品も少ないアンドロールか」
「そうなのか」
「6世代以前は共通部品が多い。7世代と8世代は、現行並みの性能を維持できる。しかし、部品の構成が違うのでね。それなりにお代はもらおう」
「これでも高給取りだから心配しなくて大丈夫だ。それよりも案外詳しいじゃないか」
「君よりもアンドロール関係に手を出して長いのでね。少し待っていてくれ」
言葉を残し、店の奥へ消えた爺さん。彼を待っているまで店内の銃器を見て回る。俺が持っているような年代物の銃から、アンドロール達が製造したであろう現代のアサルトライフルまで取り揃えられていた。
凜にだけ何か買っていくと、イリーナからのクレームがありそうだし、ご機嫌取り用に銃でも仕入れていくか。
「いや、そんな費用も無ければ、逆にもっと良いもの寄越せとキレられるか」
「一人で何喋っているのか」
おっと……爺さんが小さな黒い箱を手に戻ってきていた。恥ずかしいところを見られてしまった。
「気にしないでくれ」
「そうかい。で、これが例の物でね」
近場の棚を机代わりにして爺さんが箱を置く。そして、俺に確認させるように中身を見せてきた。中にはアルミ製の小さな容器が収められている。
「本物かどうか分からないが、まぁ中身があるなら大丈夫だろう。お代だが、配給切符でいいか?」
「ほとんど価値が無くなった紙幣よりも、基地の人間が持つ配給切符の方が助かる。種類は問わないが、10枚は貰いたいね」
中々高額だ。俺たちの給料と同時に支給される切符だが、食料や日用品と交換出来るので、街中ではそれなりの値になる。それが一気に10枚も消し飛ぶのは……難しい。まぁ最近では、交換する物が無い場合も多いが。
「7枚で手を打たないか? 食料用切符と日用品用切符の配分はそっちで決めていい」
「条件が飲めないなら、別の人間に売るだけのこと。さぁ決めてくれ」
「分かった。言い値でいいが、他にも何かつけてくれるか? そうだな――――」
目ぼしいものを告げようとした時、空気を読まない腹の虫が鳴き声を上げた。
マズイ朝食を凜に献上していたから、今頃になって騒いでいる訳だ。
「なるほどなぁ。なら、これをつけてやろう」
今度は近場の棚を何やらゴソゴソとし始める爺さん。そして、引っ張り出してきたのは――――乾パンだ。しかも、真空パックの表紙に書かれているメーカーを確かめれば、高級な部類のものである。俺のコレクションのものよりも良い。
「腹も満たして、アンドロールの部品も手に入る。これ以上は手を打てないがね。すぐに決めてくれ」
「いや――――」
確かに良質な乾パンだが……もう予算的に一杯なので、ここでイリーナ分の手土産も入手しておきたい。だが、何がいいのか。
周囲に視線をやる。ふと、先ほど見た銃器の中でイリーナと同じものが目に入った。その銃の銃身に、戦闘にはあまり関係無さそうなものが掛けられている。これがいい。
「あの銃に掛かっているものも入れてほしい。それで交渉成立だ」
俺が指示した方へ顔を向けた爺さんは鼻で笑うと、求めていた返事をくれた。
「いいだろう。あんなものを欲しがるとは、幾分昔の映画でも好きなのかね」
「映画?」
俺が要求したもの、それは十字架のネックレスだ。映画との関係――まず映画をほとんど見たことがないが――なんてあるのだろうか。
「昔、世界を巻き込んだ戦争があっただろう。それをモチーフにした映画に、十字架を身に着け、祈りを捧げてから敵を撃つ狙撃手が居たのでね」
「映画は知らないが、お祈りをする時間があるなら撃ったほうが早いだろうに」
「験を担ぐことは悪いことではないぞ」
「そうかい。とりあえず配給切符を置いていくから、物は貰っていくぞ」
上着のポケットから紙幣よりも貴重な紙切れを差し出す。爺さんがしっかりと受け取ったのを確認して、先ほどの3点を手にすると踵を返した。
「毎度」
「ありがとさん」
後ろからの声に答えると、再びシャッターをくぐって外へ出た。手にした黒い箱、ネックレスを上着のポケットに入れておく。乾パンは腹の足しなので、歩きながら口へ放り込んだ。
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