14 / 17
本編
13話 立場逆転
しおりを挟む
予想外の展開に驚きながらも、チャンミは両親にCW関係者の名刺を見せながらクラスメイトが所属している芸能事務所から熱心にスカウトを受けてしまったことを報告した。
元々自分たちの一人娘が世界一可愛いと思っている上に、彼女に歌手の道を目指してほしいと考えていたチャンミの両親は言うまでもなく乗り気だった。
実は今までチャンミが即座に断ってきたスカウトに関しても、彼女の両親は「オーディションのお誘いに過ぎないんだから、受けるだけ受けてみたら?」という立場だった。
しかし、まだ太っていた頃のチャンミは「受かるはずないし、何よりもこんな醜い姿でオーディションを受けるなんて考えられない。私は恥をさらしたくない」と言って頑なに拒否していた。
結局、今度こそ「受けるだけ受けてみる」という感覚でCWが彼女のためだけに実施した臨時オーディションを受けたチャンミは、自らオーディションに訪れた社長のジウォンからその場で「文句なしで合格です。ぜひとも弊社に来てください。うちはまだ小さい会社ですが、他のどの会社にも負けないくらい手厚くサポートします」と熱心に誘われてしまった。
両親にも改めて相談し、「1ヶ月だけ考える時間が欲しい」と返事したチャンミだったが、彼女が在籍する特殊な高校は、芸能事務所の人材開発室の社員たち常時チェックしていると言っても過言ではない学校だったため、翌週には他社からのスカウトも届いていた。
そのことから、チャンミは「今の自分は、外見も含めて芸能事務所からスカウトが届くような存在なんだ」ということをようやく少しは理解する。
チャンミは、自分のチャンネルを最初に見つけて声をかけてくれた会社がCWだったことや、社長兼統括プロデューサーのジウォンからの熱心な勧誘、そしてミンソンの「うちは自由でアットホームな雰囲気の会社だから、チャンミも楽しくやっていけると思う。自信を持っておすすめできるよ」という言葉から、もし芸能界に入るならCWを選ぶと決めていた。
問題は事務所選びではなく、本当に芸能界を目指すかどうかだった。そしてチャンミは悩みに悩んだ末、CWへの入社を決意する。
練習生になるだけで、別にデビューが決まるわけじゃない。というか自分なんかが厳しい競争を勝ち抜いてデビューできるわけがない。
でも将来的に音楽関連の仕事をするなら、練習生としてトレーニングを受けることや、芸能界に人脈を作っておくことはプラスになることはあってもマイナスになることはないと判断したのがその理由だった。
「自分なんかがデビューできるわけがない」と考えてしまうところが、いかにもチャンミらしいネガティブ思考だった。
結局、複数の芸能事務所からのスカウトも、チャンミの異常に低い自己肯定感を高めることはできなかったのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
CWへの入社が決まってから、チャンミがもっとも仲良くなったのは彼女がCWに入社する直接のきっかけを作ってくれたミンソンではなく、舞香だった。
元々日本文化が大好きだったチャンミは、社内唯一の日本人練習生の舞香とどうしても日本語で会話をしてみたくて自分から声をかけていた。
チャンミの性格からして、実は自分から誰かに声をかけること自体、相当な勇気が必要な行動だったが、もし日本人練習生の子と仲良くなれるならぜひそうしたいという思いの方が勝っていた。
当時まだ韓国語がほとんど話せなかった舞香にとって、日本語でコミュニケーションがとれるチャンミが自ら話しかけてくれたのは、願ってもない幸運だった。
そしてチャンミが社内で舞香の通訳のような役割を積極的に引き受けてくれたことで、舞香は10代の少女が一人で抱えるにはあまりにも重い孤独から、少しずつ解放されていった。
チャンミは、舞香にとってまさに二人目の救世主のような存在だった。
初めて舞香のダンスを見たチャンミが舞香のダンスパフォーマンスに衝撃を受け、「こういう子がアイドルになるんだね。やっぱり私なんかがデビューできるわけがない」と感じ、お得意のネガティブ思考に陥る場面もあったが、舞香とチャンミはお互いの弱点を補完し、助け合う理想的な関係になっていった。
舞香がまだ韓国語をうまく話せなかった頃は、どちらかというとチャンミの方が舞香を助ける場面が圧倒的に多かった。しかし、舞香の韓国語が上達してからは、その関係は完全に逆転する。
チャンミのメンタルはアイドルとして大成功してからもさほど変わらず、もろい状態のままだった。
ファンとのコミュニケーションにおいて少しでも傷つくようなことを言われたり、アンチに誹謗中傷されたりした日にはすぐに心に深いダメージを負ってしまう。
そのたびに誰よりも親身になってチャンミの話を聞いて、彼女を慰めて、励ましていたのはいつも舞香だった。
最初の2年間、舞香がルームメイトでいてくれなかったら、チャンミは早い段階で心が折れてアイドル活動を継続できなかっただろう。
またプロ意識や向上心が極めて高く、自分にも他人にも厳しいタイプで、チームとして納得のいくレベルのパフォーマンスができたかどうかを何よりも重視するミンソンと、ダンスを苦手としている上にややプロ意識や向上心に欠けるところがあるチャンミが衝突するたびに、積極的に間に入って仲裁していたのも舞香だった。
元々自分たちの一人娘が世界一可愛いと思っている上に、彼女に歌手の道を目指してほしいと考えていたチャンミの両親は言うまでもなく乗り気だった。
実は今までチャンミが即座に断ってきたスカウトに関しても、彼女の両親は「オーディションのお誘いに過ぎないんだから、受けるだけ受けてみたら?」という立場だった。
しかし、まだ太っていた頃のチャンミは「受かるはずないし、何よりもこんな醜い姿でオーディションを受けるなんて考えられない。私は恥をさらしたくない」と言って頑なに拒否していた。
結局、今度こそ「受けるだけ受けてみる」という感覚でCWが彼女のためだけに実施した臨時オーディションを受けたチャンミは、自らオーディションに訪れた社長のジウォンからその場で「文句なしで合格です。ぜひとも弊社に来てください。うちはまだ小さい会社ですが、他のどの会社にも負けないくらい手厚くサポートします」と熱心に誘われてしまった。
両親にも改めて相談し、「1ヶ月だけ考える時間が欲しい」と返事したチャンミだったが、彼女が在籍する特殊な高校は、芸能事務所の人材開発室の社員たち常時チェックしていると言っても過言ではない学校だったため、翌週には他社からのスカウトも届いていた。
そのことから、チャンミは「今の自分は、外見も含めて芸能事務所からスカウトが届くような存在なんだ」ということをようやく少しは理解する。
チャンミは、自分のチャンネルを最初に見つけて声をかけてくれた会社がCWだったことや、社長兼統括プロデューサーのジウォンからの熱心な勧誘、そしてミンソンの「うちは自由でアットホームな雰囲気の会社だから、チャンミも楽しくやっていけると思う。自信を持っておすすめできるよ」という言葉から、もし芸能界に入るならCWを選ぶと決めていた。
問題は事務所選びではなく、本当に芸能界を目指すかどうかだった。そしてチャンミは悩みに悩んだ末、CWへの入社を決意する。
練習生になるだけで、別にデビューが決まるわけじゃない。というか自分なんかが厳しい競争を勝ち抜いてデビューできるわけがない。
でも将来的に音楽関連の仕事をするなら、練習生としてトレーニングを受けることや、芸能界に人脈を作っておくことはプラスになることはあってもマイナスになることはないと判断したのがその理由だった。
「自分なんかがデビューできるわけがない」と考えてしまうところが、いかにもチャンミらしいネガティブ思考だった。
結局、複数の芸能事務所からのスカウトも、チャンミの異常に低い自己肯定感を高めることはできなかったのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
CWへの入社が決まってから、チャンミがもっとも仲良くなったのは彼女がCWに入社する直接のきっかけを作ってくれたミンソンではなく、舞香だった。
元々日本文化が大好きだったチャンミは、社内唯一の日本人練習生の舞香とどうしても日本語で会話をしてみたくて自分から声をかけていた。
チャンミの性格からして、実は自分から誰かに声をかけること自体、相当な勇気が必要な行動だったが、もし日本人練習生の子と仲良くなれるならぜひそうしたいという思いの方が勝っていた。
当時まだ韓国語がほとんど話せなかった舞香にとって、日本語でコミュニケーションがとれるチャンミが自ら話しかけてくれたのは、願ってもない幸運だった。
そしてチャンミが社内で舞香の通訳のような役割を積極的に引き受けてくれたことで、舞香は10代の少女が一人で抱えるにはあまりにも重い孤独から、少しずつ解放されていった。
チャンミは、舞香にとってまさに二人目の救世主のような存在だった。
初めて舞香のダンスを見たチャンミが舞香のダンスパフォーマンスに衝撃を受け、「こういう子がアイドルになるんだね。やっぱり私なんかがデビューできるわけがない」と感じ、お得意のネガティブ思考に陥る場面もあったが、舞香とチャンミはお互いの弱点を補完し、助け合う理想的な関係になっていった。
舞香がまだ韓国語をうまく話せなかった頃は、どちらかというとチャンミの方が舞香を助ける場面が圧倒的に多かった。しかし、舞香の韓国語が上達してからは、その関係は完全に逆転する。
チャンミのメンタルはアイドルとして大成功してからもさほど変わらず、もろい状態のままだった。
ファンとのコミュニケーションにおいて少しでも傷つくようなことを言われたり、アンチに誹謗中傷されたりした日にはすぐに心に深いダメージを負ってしまう。
そのたびに誰よりも親身になってチャンミの話を聞いて、彼女を慰めて、励ましていたのはいつも舞香だった。
最初の2年間、舞香がルームメイトでいてくれなかったら、チャンミは早い段階で心が折れてアイドル活動を継続できなかっただろう。
またプロ意識や向上心が極めて高く、自分にも他人にも厳しいタイプで、チームとして納得のいくレベルのパフォーマンスができたかどうかを何よりも重視するミンソンと、ダンスを苦手としている上にややプロ意識や向上心に欠けるところがあるチャンミが衝突するたびに、積極的に間に入って仲裁していたのも舞香だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる