転生少女は友達作りに勤しむ〜国の危機とか世界の危機とか知りません!〜

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プロローグ

プロローグ3

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管理人のその言葉に柳希は生前病室で読み漁っていた本の中にその“異世界転生”を
題材にした小説があったことをふと思い出した。

確か、転生した主人公が“チート”ってやつでその世界でありえない程強い存在で
仲間と共に旅をしたり、国を救ったり、世界を救ったりする内容だった、と。

「…生前読んだ本の中にそのような内容の話があったのを覚えているけど」
『だったら話は早いや!君は今からその“異世界転生”をしてもらうよ☆』
「え、何故ですか?」
『さっきも言ったけど、僕の気まぐれ♪
 あぁでも、ただ“転生”はさせないよ!ちゃんとオプションつけるからさ』
「オプションって…ちなみにその“異世界転生”って断ることは?」
『無理だよ!君は輪廻から外れちゃってるし、ここから出たら魂が消滅するよ』
「拒否権なしとは…人権もへったくれもない」
『人権って…君はもう死んでるだろ?』
「…まぁそうですけど」
柳希はこれ以上この管理人に何を言っても無駄であることを悟った。
ここはもう“異世界転生”とやらをしなくてはならないようだ。
(仕方がない…ここはもう腹を括るかないか)
「分かりました、その“異世界転生”をやります」
『いいの?』
「はい」
管理人は柳希の同意を得られ嬉しそうに笑顔を浮かべた。
柔らかく花が咲ったかのような可愛らしい笑顔それは、まるで
天使のようだと柳希が思ったのは内緒である。

『さて!異世界転生をするにあたり、簡単だけど説明するね。
 その世界は魔法が当たり前にあり剣と剣が当たり前のようにぶつかり合ってて
 君が生きた世界と比べると治安は良くない。
 生きていく為の手助けとして君にいくつか能力をあげたいと思うけど…何か欲しい
 力はあるかい?すっごい力が欲しいとか、家柄の良い家に生まれたいとかさ
 色々あるでしょ?ある程度ならチートも可能だよ~』
「……」

柳希は正直その“チート”に興味はなかった。
最強の力があっても誰かを傷付けるだけならいらないし、
家柄の良い家に生まれても家族の仲が悪ければ何の意味がない。
「別にチートって奴じゃなくてもいいんですけど、まずは“健康“。丈夫な身体
 が欲しいです」
『健康?』
「はい、健康です。“元気があれば何でもできる”って言いますし」
『そうだね。君の生前を考えると納得だ!身体は“健康そのもの“にするよ
 他には?』
「“家族“です。互いに助け合えて、尊敬し合える…そんな家族が」
両親に対して医療を施してくれた事には感謝しているが、最後に会ったのが
分からなくなる位に会いには来てくれなかった。“無関心“程冷たく悲しいものはない。
『良いよ、家族ね。君と相性の良い人の“子供“にしてあげる』
「それと…もう一つ。いいでしょうか?」
『何だい?』
「その…“友達“が、欲しいです」
『友達?』
「はい、病気で友達もできなかったので生まれ変わるなら友達が欲しいなって…」
これまでは病室から殆ど出ることができなかった。
交流があるのは“大人“だけ。
もし元気なら、学校に行けたなら、友達ができたならどれだけ幸せなこと
だろうか。何度も何度も望み何度も何度も諦めてきた。
『OK!ならいろんな奴と“友達”になれるようにしてあげるよ』
「ありがとうございます」
『他には何かない?まだ良いよ?』
「いえ、これ以上は…」
『良いのかい?』
「はい、十分です」
『そっか。なら始めるよ』
管理人は両手を合わせると柳希の身体が光り始め、徐々に透明になっていく。

『じゃあ新たな人生を謳歌してね!』

柳希の意識は再びぷつりと切れるのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『今回は随分と面白い子だったなぁ』
柳希が転生を果たし再び静寂となった間で管理人はポツリと呟いた。

管理人はこれまで魂を無作為に選び異世界へ転生をさせてきた。
これまでの魂はやれ最強にしろだの、王族に転生させろなど欲望丸出しの
要望ばかりだった。
その魂が転生した後、どうなったか管理人は知らない。
知らないと言うより興味が失せてしまったと言った方が正しい。

『あの子は個人的に気に入ったから“あれ以外“に色々つけちゃったけど…
 まぁいっか☆』

管理人は柳希が転生した世界を覗き始めた。

『さぁ、僕を楽しませてよ!!』
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