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第164話 宰相の苦悩はいつまでも
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クラリスたちは、昼食の時間も惜しむように慌ただしく済ませて、教室へと戻ってきた。短い昼休みも終わりに近づき、生徒たちの間には午後の授業への切り替えの雰囲気が漂っている。
ヒカリは、モニカにそっと話しかけた。
「モニカ、置き去りになってた聖女の羽衣、僕が預かっておくね」
モニカは、ヒカリの言葉に納得したように頷いた。彼女は、ヒカリが体内に保管してくれていることを理解した。
「あ、はい。ありがとうございます、ヒカリ様。助かります」
(クラウの話聞いてない奴が悪さしようとすると死者が出るからな……)
ヒカリは、先ほどのクラウの説明を思い出した。あの羽衣の自己防衛機能は本物だ。もし誰かが悪意を持って触ろうとすれば、ただでは済まないだろう。
(クラウはモニカ以外眼中にないからな……あの騎士も苦労するだろうな)
ヒカリは、クラウの行動が、すべてモニカのために向けられていることを改めて感じていた。彼の情熱は、ある意味で純粋だが、周囲を巻き込む力も持ち合わせている。その被害を一番受けるのは、恐らく彼のお目付け役の騎士だろうと、ヒカリは心の中で同情した。
そして午後の授業が始まる前にエヴァ先生から話があった
「ダンジョンの調査が終わりましたので来週からダンジョンでの訓練が再開されます」
「くれぐれも上級生のルートへは、行かないように」
エヴァ先生はダンジョン再開とルールを守るようにと釘を差した。
その頃、クラウは王城に戻る馬車の中で、彼の天才的な頭脳をフル回転させていた。モニカの新たなドレスの件で、彼の頭の中は、いっぱいだ。
まるで、目の前の景色など見えていないかのように、彼の瞳の奥には、無限の計算式とデザインが渦巻いていた。
王城に着くと、クラウは一目散に自身の仕事部屋へと入った。部屋に入るなり、机の上の紙を乱雑に掴み取り、何かを猛スピードで書き出し始めた。
その手は、まるで時間を惜しむかのように速く、筆ペンが紙の上を滑る音だけが部屋に響く。
隣の机に座っていた騎士は、深いため息をつきながら、学園での出来事と、下着装備の性能についての報告書を書き出し始めた。
彼の脳裏には、先ほどの出来事が鮮明に蘇っていた。クラウの破天荒な言動と、聖女の羽衣の驚くべき能力。そして、自分自身が壁に叩きつけられた衝撃までが、リアルに思い出される。
しばらくして、クラウがガタリと音を立てて立ち上がった。彼の手には、何枚かのデッサンした紙と属性糸が握られている。
それらをカバンに入れると、クラウは弾かれたように部屋を出て行った。
「クラウ卿!どちらへ行かれるのですか!?」
騎士は慌てて声をかけたが、返答はなかった。
クラウは、まるで何かに取り憑かれたかのように、一直線に進んでいく。騎士は、置いて行かれるわけにはいかないと、慌ててその後を追いかけた。
クラウは、王城の通用口に待機していた馬車に乗り込むと、騎士も置いて行かれないように素早く乗り込んだ。
馬車は、王都の大通りをひた走り、商会が運営する商業ギルドの前で止まると、クラウはすぐに降りて中へと入って行く。騎士も、慌ててその後を追うように中へと入った。
このギルドは、先日、宰相がクラウに依頼された下着装備の製作を依頼している、いわば彼の「協力工房」だ。
クラウは、ギルドに入ると、迷うことなく受付嬢の前まで来ると、開口一番、声を張り上げた。
「王命である!直ちにギルド長にお目通りを願う!」
受付嬢は、突然の言葉と、クラウの尋常ではない雰囲気に困惑した。彼女の顔には、明確な警戒の色が浮かんでいる。
「あ、あの、ギルド長にどのようなご用件でしょうか?事前にご連絡いただいていないようですので……」
受付嬢は、恐る恐る尋ねるが、クラウの返答は同じだった。まるで融通が利かない機械のようだ。
「王命である!直ちにギルド長を呼ぶように!一刻を争うのだ!」
受付嬢が、どうしたものかと悩んでいると、クラウの後ろから王国騎士が駆け寄ってきた。
「クラウ卿!いったい何をしていらっしゃるのですか!ギルドの方にご迷惑をおかけしてはなりません!」
受付嬢は、王国騎士を見るなり、その表情が一変した。王国の紋章をつけた騎士の存在と王命と言う言葉は、ギルドにとって無視できないものだ。彼女の顔に、明確な焦りが浮かんだ。
「少々お待ちくださいませ!」
受付嬢は、そう言うと、ギルドの奥へと駆け足で消えていった。
しばらくして、受付嬢と年配の男性がやって来た。年配の男性は、この商業ギルドのギルド長のようだ。彼は、騎士とクラウの姿を見て、すぐに状況を察したのか、深く頭を下げた。
「わたくしギルド長をしております者ですが、何かご用でございましょうか?」
ギルド長は、丁寧な口調でクラウに尋ねた。
「私はクラウと申します。今回、王命により、このデザインの下着を5セットと、コルセットを1つ、早急に作るように!」
クラウは、そう言うと、カバンからデッサンした紙と大量の光属性の糸を取り出し、ギルド長に差し出した。
ギルド長は困惑していた。今は王国より依頼されている下着作りと学園の生徒からの依頼でラインがひっ迫していたのだ。
「クラウ様、今は王国からの依頼と学園の生徒からの依頼で製作ラインがひっ迫しておりまして……」
「私の依頼が最優先事項だ!王国からの依頼は止めて問題無い」
流石に王国からの依頼を止めていいと言われても止めることは出来ないとギルド長はクラウに言ったがクラウは聞く耳を持たなかった。
「私から属性糸の供給が無いと言えば問題無い」
クラウは言い切った。それでも困惑するギルド長は騎士の方を見ると騎士は溜息をつき頷いた。
ギルド長は、額の汗を拭いながらクラウから渡されたデッサンを見ると、その内容に驚愕した。そのデザインは、見る者の頬が染まるような、精緻で美しい女性用下着のデザインが描かれていた。そして、隣にいた騎士も、そのデッサンのデザインを見て、思わず声を上げた。
(え?こいつ、いつ聞いたの……!?)
「クラウ卿!一体いつ、モニカ嬢の下着のサイズを聞いたのですか!?」
騎士は、半ば悲鳴のような声を上げた。
クラウがモニカ嬢にサイズを聞く行動は取っていないことは騎士も確認していた。ただモニカ嬢の周りを一周しただけだ。なのにモニカ嬢の下着のサイズが事細かに描かれていた。
宰相からの「下着のサイズを聞きそうになったら妨害しろ」という厳命が、頭の中で何度も繰り返される。しかし、クラウは彼の問いかけに、冷静な表情で一言答えた。
「見れば分かる」
その一言に、騎士は完全に頭を抱えた。
(そんな能力があるなんて聞いてないよ……!)
彼の脳裏には、未来の宰相からの怒鳴り声が響いているようだった。
ギルド長は、騎士とクラウのやり取りに戸惑いながらも、デッサンに描かれた詳細な数値と、その裏にある錬金術の深遠さに圧倒されていた。彼は、錬金術師としてのクラウの才能を疑いようがなかった。
「しかし、クラウ様。これほど高度な技術を要するものを、早急に、とのことですが……納期は、いつまでに?」
クラウは、何の躊躇もなく、即座に答えた。
「もちろん、学園の晩餐会までにです!聖女モニカ様が晩餐会で着用されるドレスの下に着用するものですから!」
ギルド長は、その言葉に絶句した。晩餐会まで、残された期間は二カ月ちょいしかない。これほど繊細な下着を短期間で作り上げるなど、常識では考えられない。しかも、王命となれば、断ることもできない。
騎士は、絶望的な顔で天を仰いだ。宰相の苦悩は、まだ始まったばかりだ。
次の日、宰相の執務室には、騎士から提出された詳細な報告書が置かれていた。宰相は、その報告書に目を通し終えると、椅子に深く座り込み、天井を見つめた。
「クラウめ……」
彼の口から漏れたのは、怒りとも呆れともつかない、深い溜息だった。
下着装備に続き、今度は聖女モニカのドレス用の下着とコルセット。しかも、その人を見ただけでサイズが分かる無駄な能力を持っているという事実。
宰相は、報告書をもう一度見直した。そこには、クラウの天才性と、それ故の常識の欠如が克明に記されていた。
最後に騎士からの悲痛な一言「無理です」と書かれているのを見て天を仰いだ。
彼が抱える苦悩は、これからも続きそうだ。この天才錬金術師をどう御していくか、それが王国の未来を左右する課題となるだろう。
宰相は溜息をつきボソリと呟いた。
「いっそのことモニカ嬢と結婚させればいいのか……」
ヒカリは、モニカにそっと話しかけた。
「モニカ、置き去りになってた聖女の羽衣、僕が預かっておくね」
モニカは、ヒカリの言葉に納得したように頷いた。彼女は、ヒカリが体内に保管してくれていることを理解した。
「あ、はい。ありがとうございます、ヒカリ様。助かります」
(クラウの話聞いてない奴が悪さしようとすると死者が出るからな……)
ヒカリは、先ほどのクラウの説明を思い出した。あの羽衣の自己防衛機能は本物だ。もし誰かが悪意を持って触ろうとすれば、ただでは済まないだろう。
(クラウはモニカ以外眼中にないからな……あの騎士も苦労するだろうな)
ヒカリは、クラウの行動が、すべてモニカのために向けられていることを改めて感じていた。彼の情熱は、ある意味で純粋だが、周囲を巻き込む力も持ち合わせている。その被害を一番受けるのは、恐らく彼のお目付け役の騎士だろうと、ヒカリは心の中で同情した。
そして午後の授業が始まる前にエヴァ先生から話があった
「ダンジョンの調査が終わりましたので来週からダンジョンでの訓練が再開されます」
「くれぐれも上級生のルートへは、行かないように」
エヴァ先生はダンジョン再開とルールを守るようにと釘を差した。
その頃、クラウは王城に戻る馬車の中で、彼の天才的な頭脳をフル回転させていた。モニカの新たなドレスの件で、彼の頭の中は、いっぱいだ。
まるで、目の前の景色など見えていないかのように、彼の瞳の奥には、無限の計算式とデザインが渦巻いていた。
王城に着くと、クラウは一目散に自身の仕事部屋へと入った。部屋に入るなり、机の上の紙を乱雑に掴み取り、何かを猛スピードで書き出し始めた。
その手は、まるで時間を惜しむかのように速く、筆ペンが紙の上を滑る音だけが部屋に響く。
隣の机に座っていた騎士は、深いため息をつきながら、学園での出来事と、下着装備の性能についての報告書を書き出し始めた。
彼の脳裏には、先ほどの出来事が鮮明に蘇っていた。クラウの破天荒な言動と、聖女の羽衣の驚くべき能力。そして、自分自身が壁に叩きつけられた衝撃までが、リアルに思い出される。
しばらくして、クラウがガタリと音を立てて立ち上がった。彼の手には、何枚かのデッサンした紙と属性糸が握られている。
それらをカバンに入れると、クラウは弾かれたように部屋を出て行った。
「クラウ卿!どちらへ行かれるのですか!?」
騎士は慌てて声をかけたが、返答はなかった。
クラウは、まるで何かに取り憑かれたかのように、一直線に進んでいく。騎士は、置いて行かれるわけにはいかないと、慌ててその後を追いかけた。
クラウは、王城の通用口に待機していた馬車に乗り込むと、騎士も置いて行かれないように素早く乗り込んだ。
馬車は、王都の大通りをひた走り、商会が運営する商業ギルドの前で止まると、クラウはすぐに降りて中へと入って行く。騎士も、慌ててその後を追うように中へと入った。
このギルドは、先日、宰相がクラウに依頼された下着装備の製作を依頼している、いわば彼の「協力工房」だ。
クラウは、ギルドに入ると、迷うことなく受付嬢の前まで来ると、開口一番、声を張り上げた。
「王命である!直ちにギルド長にお目通りを願う!」
受付嬢は、突然の言葉と、クラウの尋常ではない雰囲気に困惑した。彼女の顔には、明確な警戒の色が浮かんでいる。
「あ、あの、ギルド長にどのようなご用件でしょうか?事前にご連絡いただいていないようですので……」
受付嬢は、恐る恐る尋ねるが、クラウの返答は同じだった。まるで融通が利かない機械のようだ。
「王命である!直ちにギルド長を呼ぶように!一刻を争うのだ!」
受付嬢が、どうしたものかと悩んでいると、クラウの後ろから王国騎士が駆け寄ってきた。
「クラウ卿!いったい何をしていらっしゃるのですか!ギルドの方にご迷惑をおかけしてはなりません!」
受付嬢は、王国騎士を見るなり、その表情が一変した。王国の紋章をつけた騎士の存在と王命と言う言葉は、ギルドにとって無視できないものだ。彼女の顔に、明確な焦りが浮かんだ。
「少々お待ちくださいませ!」
受付嬢は、そう言うと、ギルドの奥へと駆け足で消えていった。
しばらくして、受付嬢と年配の男性がやって来た。年配の男性は、この商業ギルドのギルド長のようだ。彼は、騎士とクラウの姿を見て、すぐに状況を察したのか、深く頭を下げた。
「わたくしギルド長をしております者ですが、何かご用でございましょうか?」
ギルド長は、丁寧な口調でクラウに尋ねた。
「私はクラウと申します。今回、王命により、このデザインの下着を5セットと、コルセットを1つ、早急に作るように!」
クラウは、そう言うと、カバンからデッサンした紙と大量の光属性の糸を取り出し、ギルド長に差し出した。
ギルド長は困惑していた。今は王国より依頼されている下着作りと学園の生徒からの依頼でラインがひっ迫していたのだ。
「クラウ様、今は王国からの依頼と学園の生徒からの依頼で製作ラインがひっ迫しておりまして……」
「私の依頼が最優先事項だ!王国からの依頼は止めて問題無い」
流石に王国からの依頼を止めていいと言われても止めることは出来ないとギルド長はクラウに言ったがクラウは聞く耳を持たなかった。
「私から属性糸の供給が無いと言えば問題無い」
クラウは言い切った。それでも困惑するギルド長は騎士の方を見ると騎士は溜息をつき頷いた。
ギルド長は、額の汗を拭いながらクラウから渡されたデッサンを見ると、その内容に驚愕した。そのデザインは、見る者の頬が染まるような、精緻で美しい女性用下着のデザインが描かれていた。そして、隣にいた騎士も、そのデッサンのデザインを見て、思わず声を上げた。
(え?こいつ、いつ聞いたの……!?)
「クラウ卿!一体いつ、モニカ嬢の下着のサイズを聞いたのですか!?」
騎士は、半ば悲鳴のような声を上げた。
クラウがモニカ嬢にサイズを聞く行動は取っていないことは騎士も確認していた。ただモニカ嬢の周りを一周しただけだ。なのにモニカ嬢の下着のサイズが事細かに描かれていた。
宰相からの「下着のサイズを聞きそうになったら妨害しろ」という厳命が、頭の中で何度も繰り返される。しかし、クラウは彼の問いかけに、冷静な表情で一言答えた。
「見れば分かる」
その一言に、騎士は完全に頭を抱えた。
(そんな能力があるなんて聞いてないよ……!)
彼の脳裏には、未来の宰相からの怒鳴り声が響いているようだった。
ギルド長は、騎士とクラウのやり取りに戸惑いながらも、デッサンに描かれた詳細な数値と、その裏にある錬金術の深遠さに圧倒されていた。彼は、錬金術師としてのクラウの才能を疑いようがなかった。
「しかし、クラウ様。これほど高度な技術を要するものを、早急に、とのことですが……納期は、いつまでに?」
クラウは、何の躊躇もなく、即座に答えた。
「もちろん、学園の晩餐会までにです!聖女モニカ様が晩餐会で着用されるドレスの下に着用するものですから!」
ギルド長は、その言葉に絶句した。晩餐会まで、残された期間は二カ月ちょいしかない。これほど繊細な下着を短期間で作り上げるなど、常識では考えられない。しかも、王命となれば、断ることもできない。
騎士は、絶望的な顔で天を仰いだ。宰相の苦悩は、まだ始まったばかりだ。
次の日、宰相の執務室には、騎士から提出された詳細な報告書が置かれていた。宰相は、その報告書に目を通し終えると、椅子に深く座り込み、天井を見つめた。
「クラウめ……」
彼の口から漏れたのは、怒りとも呆れともつかない、深い溜息だった。
下着装備に続き、今度は聖女モニカのドレス用の下着とコルセット。しかも、その人を見ただけでサイズが分かる無駄な能力を持っているという事実。
宰相は、報告書をもう一度見直した。そこには、クラウの天才性と、それ故の常識の欠如が克明に記されていた。
最後に騎士からの悲痛な一言「無理です」と書かれているのを見て天を仰いだ。
彼が抱える苦悩は、これからも続きそうだ。この天才錬金術師をどう御していくか、それが王国の未来を左右する課題となるだろう。
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