光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第185話 五国会議

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世界樹の聖域に戻ったヒカリは、眠りについているチビ闇精霊と、相変わらず不機嫌そうなチビカインをフロストが面倒を見ている隣で、今後の対策を練っていた。

一方、エルフの里では、女王エルミナが慌ただしく動いていた。ヒカリの報告を受け、事態の深刻さを悟った彼女は、すぐに他の四国と神殿へ緊急を知らせる赤い手紙を送る準備を始めた。

エルミナの私室には、古びた巻物と、真紅の封蝋が置かれている。彼女は一筆箋に、たった一言だけを書き記した。

『世界樹の危機』
たったそれだけを書いた。

だが、その一文が持つ意味を、四つの国の王族と神殿の教皇は誰よりもよく理解している。エルミナは、丁寧に手紙を折りたたむと、王族専用の伝書鳩五羽の足にそれぞれ括り付けた。伝書鳩の首には王族の紋章が付けられている。

「頼みますよ……」
彼女の祈りが込められた伝書鳩たちは、一斉に飛び立ち、それぞれの国を目指して夜空へと消えていった。

この赤い手紙には、特別な意味があった。精霊大戦が終わりを告げた時、五つの国の王族と神殿の教皇が集い、再び世界の危機に直面したと判断した時のみに使うことを義務付けた、特別な合図なのだ。

赤い手紙が送られてきた時は、速やかに自由都市のノベリ共和国にある神殿へと全ての王族が集まることになっている。

赤い手紙は、王族専用の鳩で、通常の伝書鳩では考えられないほどの速さでそれぞれの国へと届けられた。

グロリア帝国の煌びやかな装飾に彩られた皇帝の私室。書類の山に埋もれていた皇帝ラグナの元に、一羽の鳩が飛び込んできた。その足に括り付けられた真紅の手紙を見て、ラグナの表情が険しくなる。

「……エルミナからか」
ラグナは伝書鳩の首に付けられている紋章を見て手紙がエルフの女王エルミナからだとすぐに分かった。手紙を手に取り、その内容を一瞥した。

『世界樹の危機』
たったそれだけの言葉に、彼の脳裏に語り継がれてきた精霊大戦の記憶が蘇る。

ラグナは深い溜息をつくと、すぐに宰相を呼びつけた。

「至急、ノベリ共和国への旅路を整えよ。エルフの女王エルミナからの招集だ」
宰相は、その言葉の重さを理解し、無言で深く頭を下げた。

ナダルニア王国の王城の玉座の間では、国王が近隣国との貿易協定について話し合っていた。その議論を遮るように、一羽の鳩が窓から飛び込んできた。

「陛下、これは……!」
宰相のレオが、鳩の足に括り付けられた赤い手紙を見て、顔色を変えた。

「赤い手紙……まさか、この紋章はエルフの紋章だな……」
国王は、手紙を受け取ると、すぐにその内容を読み上げた。

「『世界樹の危機』……。宰相、すぐに会議は中止だ。ノベリ共和国の神殿へと向かう」

「はっ!しかし、陛下、会議を途中で……」

「構わぬ!この手紙の意味を、お前も知っているはずだ。一刻の猶予もならん」
国王は、強い口調で宰相を制した。

宰相は、事態の深刻さを再認識し、すぐさま各方面へ指示を出すため、駆け足で玉座の間を後にした。

「クラウを世界樹の調査の為に派遣したが、事態は急を要するということか」

広大な草原が、広がるガルド王国では、王が手紙を受け取ると、雄叫びを上げて部下たちに指示を出した。彼の声は、獣人たちの間に瞬く間に広がり、精鋭の兵士たちが王を守るために集結し、自由都市へと向かい始めた。

ノベリ共和国の神殿には、夜が更けるにつれて、五つ王たちが集まり始めた。

最初に到着したのは、エルフの女王エルミナだった。彼女は、神殿の中央にある精霊大戦の石碑の前で、静かに祈りを捧げていた。

その後、グロリア帝国の皇帝ラグナ、ナダルニア王国の国王、ガルド王国の獣人の王、そしてイグニス王国のドワーフの王が、護衛を連れて次々と到着した。

全員が揃うと、神殿の教皇が、五国会議の開催を告げるとエルフの女王エルミナが説明した。

「お集まりいただき、ありがとうございます。この赤い手紙を送ったのは、私が独断で下した判断です。しかし、事態は、皆さまの想像を遥かに超えるものです」

エルミナは、ヒカリから受けた報告を、四国の王族と神殿の教皇たちに詳細に説明した。瘴気生成装置の存在、闇を崇拝する組織、そして闇精霊を体内に取り込み、力を増幅させていたボスのこと。

「まさか、闇精霊を体内に取り込むとは……」
ラグナが、信じられないといった表情で呟いた。

「そして、その背後には、精霊の特性を熟知し、外部の技術を用いるような、強力な黒幕がいる可能性が高いと、信用出来る光の精霊から報告を受けました」
エルミナの言葉に、全員の視線が集中した。

「光の精霊……?」
ラグナ以外の王族と教皇は全く理解出来なかった。

「それは光の大精霊様ではないのですか?」
神殿の教皇、ワグナスが質問したが、エルミナは否定した。

「いえ、光の精霊です」
その言葉に王と教皇は、ザワついた。

「皆さんは、以前その光の精霊に会っているはず」

「いつだ?」
ガルド王国のカイゼル王がギロリとエルミナを見た。

「突如、光の魔力に包まれた経験があると思います。我ら王族だけが身に着けることを義務付けているブレスレットに魔力を充填したのが、今回、話に出てる光精霊です。」
エルミナは、ヒカリの存在を、王族と教皇に明かした。

「あの時か!敵の攻撃かと思ったわ!」
イグニス王国のドルガン王が声を荒げた。

会議は、深夜にまで及び、四つの国の王と教皇たちは、エルミナの報告に耳を傾けながら、今後の対策を真剣に話し合った。世界樹の危機は、一国の問題ではない。この世界全体の存亡に関わる、未曾有の危機なのだ。

世界樹では、ヒカリたち精霊が今後のことを話し合っていた。

「俺とカインと闇精霊は、魔力が回復するまでここに残るね。もうすぐクラウも来る頃だしさ」

「みんなは、主が心配だろうから、主の元に戻って」
ヒカリの言葉に、精霊たちは頷いた。

「ヒカリは、一人で大丈夫なのじゃ?」
フロストが心配そうに尋ねた。

「大丈夫だよ。世界樹の聖域なら、カインと闇精霊の魔力も早く回復すると思うからさ」
ヒカリは、そう言ってチビカインと闇精霊の頭を優しく撫でた。

すると、チビカインが不機嫌そうにヒカリの手を振り払う。

「フンッ!我は別に、ヒカリに守られなくても問題無い!」

そんなツンデレなカインの態度に、ヒカリは苦笑した。

「ライン、悪いけど、俺たちはまだ戻れないから、クラリスのことも頼めるかな」

「ああ、いいぜ。ただ、ファナが優先なのは変わらないからな」
ラインは、そう言ってフッと笑った。

「それでいいよ。宜しくね」
ヒカリは、ラインに感謝の言葉を述べた。

「雷蔵くんはどうする?」
次に、ヒカリは雷蔵に尋ねた。少し考えてから、キリッとした表情で答える。

「我は少し死の森の探索をするでござるよ」

「死の森……?」
ヒカリは、雷蔵の言葉に眉をひそめた。

「ああ……ほどほどにね。絶対に無茶はしないでね……」

「承知でござる」
雷蔵は、ヒカリの言葉に力強く頷いた。

ルーファ、エル、ライン、フロストは、ヒカリに別れを告げると、それぞれの主の元へと戻って行った。
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