光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第194話 闇の崇拝者

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ムムから黒フードの男を預かった詰所では、すぐに厳戒態勢が敷かれた。

普段、詰所は五人が交代で任務にあたっているだけだったが、連絡を受けた隊長のヒューイはすぐに兵士を増員した。

「敵が救助のために襲撃してくる可能性がある。ソラリス様が戻るまで警戒を怠るな!」

「分かりました!」
兵士たちの間には張り詰めた空気が漂っていた。

精霊大戦以降、世界は平和になっていたこともあり、今までこのような非常事態が起こったことがなかったのだ。彼らは、リンドの国の聖域に土足で踏み入った敵の存在に、改めて事態の深刻さを認識した。

(まさか、この平和な時代に、このような不穏な動きがあるとは……)

ヒューイは、地下の牢にいる黒フードの男から、何としても情報を引き出さなければならないと強く心に誓った。ソラリスの到着を待ちながら、詰所の兵士たちは見張りを続けた。

ソラリスたちは町への帰路を急いで進んでいる。行きとは打って変わって険しい表情を浮かべるソラリスからは、微量ながら怒りのこもった魔力が流れ出ていた。後ろを歩くナダルニア王国の調査団たちは、その重苦しい雰囲気に耐えかね、言いようのない緊張感に包まれていた。

重苦しい空気に耐えかねて、ララはソラリスに話しかける。

「ソラリス様、微量ながら魔力がソラリス様より流れ出ています」

ソラリスは怒りのあまり、魔力が流れ出ていることに全く気づいていなかった。ハッと我に返ったソラリスが後ろを確認すると、ただ二人を除いて、調査団たちは皆、その場の重圧に顔を歪ませていた。

「本当にこの人、動じないな……」
クラウの護衛騎士がボソリと呟く。

クラウの頭の中では、瘴気生成装置の調査データと、新たな結界増幅装置の構想で頭がいっぱいで、周囲の怒りの魔力や緊迫した空気など、気にする様子は全くない。

「あの装置を使えないとなると・・・・」
クラウはぶつぶつと独り言を呟きながら、ソラリスの後に続いて歩いていた。

ソラリスは一度大きく深呼吸し、流れ出ていた魔力を収束させる。
「済まない。少し取り乱した」

ララが優しく答える。
「いえ、状況が状況です。お気になさらないでください」

しかし、ソラリスの苛立ちは収まらない。世界樹の聖域が侵され、敵が侵入したそしてその敵を捕らえた事で彼女の平静を乱していた。

「しかしあやつらは、一体何者じゃ。何のために世界樹を……」
ソラリスは声を荒らげそうになり、再び深呼吸で怒りを抑えた。ソラリスのイライラは収まらない。

「町に戻り次第、すぐに尋問を始める。ララ、女王にはあらかじめ報告しておけ。尋問の間は、誰も立ち入らせるな」

「分かりました」
ララはソラリスに頷いた。

重い足取りで町へと向かうソラリスと調査団。彼らの背後から、光の精霊プニとナタリーが楽しげに会話する声がソラリスやララに聞こえてきた。

「ねーねーナタリー、光の結界で鳥さんを包んであげたい!」

「プニ、だめですよ。まずは魔力操作の練習からしないとヒカリ様に怒られてしまいます。」

「ヒカリ様に聞き分けのないプニにお兄ちゃんって言われたくないって言われるかもしれませんよ」

「えー、お兄ちゃんはプニのお兄ちゃんだもん!」
プニとナタリーの他愛もない会話だが周りの騎士たちは冷ややかな目でナタリーを見ていた。

プニの声や姿が見えない者にとってはただの独り言にしか聞こえないからだ。ナタリーはプニの可愛さに我を忘れている。

そんなナタリーとプニを見てソラリスは溜息をついた。

ソラリスは一刻も早く、あの黒フードの男から情報を引き出す必要がありそれが、世界樹を脅かす闇の陰謀を阻止する唯一の手がかりだったからだ。

ソラリスは次々と結界を操作しながら、重い足取りで迷いの森を進み町へと急いだ。

「もうすぐ町に着くのじゃ」

最後の結界を操作し、視界に町が飛び込んできたとき、重苦しい空気からようやく解放されると思った調査団たちは、安堵の表情を浮かべた。

詰所の見張りの兵士が、森の道を歩いてくるソラリスたちを視界に捉えた。

「ヒューイ隊長、ソラリス様が戻られました」
詰所の机で待機していたヒューイに、見張りの兵士が報告する。

「分かった」
ヒューイは詰所から外に出ると、ソラリスの方へと向かった。

「ソラリス様、捕らえた男を詰所の牢へ投獄しております」

「すぐに尋問を始める」
ソラリスの言葉に、ヒューイは頷くとすぐに詰所へと戻った。

「すぐに尋問を始める!魔道士は結界の準備をしろ!」

ヒューイの指示が飛ぶと、詰所内の兵士たちに再び緊張が走った。彼らは、尋問が始まるという事実に、一気に気を引き締めた。

詰所では、ヒューイの指示により、魔道士たちが尋問のための結界の準備を始めた。この結界は、外に声が漏れないようにする効果と、特定の者以外は中に入れないようにする効果を持っていた。

町へと着いたララは、そのまま女王エルミナの下へと向かうために、ソラリスに声をかけた。
「それでは、母に報告に行ってきます」

「うむ、頼んだのじゃ」
ソラリスが頷くと、ララはムムに話しかけた。

「ムム、行くわよ」

「ムム、分かった!」
ララはムムを連れて、女王の元へと歩き出した。

彼女は一刻も早く、捕らえた男の報告と、現状の危機を女王に伝える必要があった。

ナダルニアの調査団はどうすればいいのか分からずに立ち止まっているとクラウがソラリスに話しかける。

「ソラリス様、我々がいる必要もなさそうなので、部屋で待機します」

クラウはすぐにでも部屋に戻り、瘴気生成装置の調査データや新しい装置の設計図などを考えたかった。尋問など、彼にとってはどうでもいいことだった。

「分かったのじゃ。後ほど、報告で人を向かわせる」
ソラリスは尋問の準備で忙しく、クラウの申し出を簡単に了承した。

「分かりました。アベル、戻るぞ」
クラウが護衛騎士に声をかける。

「あ、はい」

自分のこととなると率先して仕切るクラウを見て、溜息しか出ないのは、クラウ専属の護衛騎士、ホランだった。

「はあ……いつもこういう感じだといいんですがね……」
ぼやくホランを他所に、クラウはそそくさと部屋へと戻って行くその姿を見た調査団も慌ててクラウに付いて行った。

ナタリーは部屋へと戻る調査団とは別行動をとっていた。彼女は町の広場へと向かい、プニに魔力操作を教えることにした。

広場にはベンチが設置されており、ベンチに腰掛けるとナタリーはプニに話しかけた。

「プニにはこれから魔力操作を教えますね」
プニに魔力操作の重要性を言い聞かせると、プニは素直に頷く。

「プニがんばる!」
プニを見て、ナタリーの顔が緩む。

「では、まずは私が魔力操作をしてみますね。プニは魔力の流れを感じてください」
ナタリーの膝の上にちょこんと座るプニ。

ナタリーは集中し、魔力を身体全体に行き渡らせた。
「プニ、私の魔力を感じましたか?」

「うん、プニ分かった!」

ナタリーがプニに魔力操作を教えている頃、詰所の地下の牢では、黒フードの男の尋問が始まっていた。
水をかけられ目を覚ました黒フードの男は、辺りを見渡した。

(ああ、俺は捕まったのか……)
心のなかで、男は静かに呟いた。

「ようやく目を覚ましたか」
ソラリスが低い声で、今にも爆発しそうな怒りの魔力を抑えて呟いた。

「お前は何者じゃ」

その言葉に、男は顔を歪ませながら笑った。
「我らは闇を愛し崇拝する者、そしてやがて目覚める王を待つ者とだけ言っておこう」

イライラが募るソラリスは、質問を続けた。
「お前たちの目的は何なのじゃ!王とは誰じゃ!」
しかし、ソラリスの質問に黒フードの男は答えることはなかった。

黒フードの男はさらに高笑いすると、何かを唱える。だが、ヒカリの光の拘束(シャインプリズン)によって、魔力が外に出ることはない。

(やはりダメか……)

男はそう諦めかけたが、次に別の呪文を唱えた。その瞬間、急に男は苦しみだした。黒フードの男に刻まれた呪いが、呪文によって発動したのだ。呪いは一瞬にして男の全身に行き渡り、彼はのたうち回って苦しみ出す。

だが、黒フードの男の顔は、苦しみの中でも笑っているように見えた。

ソラリスはすぐにこの異常事態に対応しようとするが、間に合わなかった。

黒フードの男が苦しみだして二秒後、口から大量の血が流れ出す。それを見たソラリスは、悔しそうな顔をした。まさか、自害のための呪いの印を仕込んでいるとは、思ってもいなかったからだ。

情報源は、目の前で失われた。
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