光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

文字の大きさ
104 / 202

第103話 ヒカリとフロスト王城へ

 王城の空に澄んだ春の風が吹き抜ける朝、ヒカリは公爵家の修練場でフロストの魔法訓練を見守っていた。

「フロスト、かなり上達したね。アレンと合わせてみたらどうかな?」

 ヒカリが軽やかに笑いながら言うと、フロストは目を輝かせてうなずいた。

「そ、そうじゃな! アレンはビックリするじゃろ!」

「じゃあ、王城へ行こうか。ただし、フロストは魔法禁止ね」

「なぜじゃ! 我の成長を見せれないではないか!」

 フロストは抗議するように腕を振り上げたが、ヒカリは肩をすくめて応じた。

「精霊は基本、魔法を使わないからさ。王城では人目も多いし、フロストのこと見える人が居たら余計な誤解を招くと面倒だよ」

「むむむ……そうじゃった。ここに居ると精霊の概念が狂うのう……」

「それじゃ、出発しよう。いざ、王城へ!」

 ヒカリとフロストは王城へ向けて飛翔した。

 その道中、ふと森の中で不穏な気配を感じ取る。ヒカリが上空から視線を落とすと、冒険者の一団がタイガーウルフの群れに囲まれていた。

「やばい、囲まれた……!」

 狼たちは牙を剥き、今にも襲いかかりそうだった。

「あれ、やばいね」

 ヒカリが口を開くと、フロストは即座に反応した。

「たしかにやばいのじゃ」

「フロスト、あの狼の群れに攻撃してくれない?」

「任せるのじゃ!」

 フロストは宙に浮かびながら、両手を掲げる。その手のひらから鋭く冷たい魔力が溢れ、氷の槍が次々と生成された。

 同時にヒカリは地上にいる冒険者たちに向けて、光の障壁を展開する。

光の障壁が冒険者に展開されたその時タイガーウルフが冒険者に襲いかかった。

「くるぞ!」
冒険者は身構え攻撃を防ごうとした。

しかしタイガーウルフの爪が冒険者に届く前に光の障壁で弾かれた。
ガキンッ!
「な、なんだ?何が起こった」

 次の瞬間、氷の槍が次々と放たれ、タイガーウルフを正確に貫いていく。鋭い氷が光を反射し、まるで白銀の雨のように魔物たちを仕留めていった。

 冒険者たちは一瞬何が起こったのか理解できず、周囲に張られた光の障壁とタイガーウルフが次々と倒されていくのを見て、ただ呆然と立ち尽くしていた。

「我にかかればこんなもんじゃ!」
 戦闘を終えたフロストは、自慢げに胸を張った。

「はいはい、じゃあ王城へ行こうか」
ヒカリは呆れたように笑いながら、再び空を飛び始めた。

 王城に到着するとヒカリはうろうろしていた。
「クラリスどこだろ」

その頃クラリスは午前の王妃教育を終え、庭園のベンチで一息ついていた。暖かな日差しと、ほのかに香る花の匂い。静かな時間に心が少しずつほどけていく——そんな瞬間だった。

「クラリス、久しぶり」

聞き慣れた、どこか優しい響きを持つ声に、クラリスははっと顔を上げた。振り向くと、そこに居たのはヒカリだった。軽く片手を上げて微笑んでいる。

「ヒカリ……どうしたの? こんなところに」

驚いた表情で立ち上がるクラリスに、ヒカリはにこにこと笑いながら歩み寄ってきた。

「なんかさ、『爆裂姫』っていう二つ名がついたって聞いてさ。気になって見に来たんだ」

「……もうっ!」

クラリスは思わず頬を膨らませてムスッとした表情を見せる。そして横に漂っていたカインにぎろりと視線を向けた。

「カイン! ヒカリに言ったわね!」

気まずそうに目をそらしたカインは、腕を組んでふよふよとクラリスの視線から逃れながらぼそりと呟いた。

「……俺には報告の義務があるからな」

「義務って何よそれ! ただ面白がって言っただけでしょう!」

「うむ、確かに面白かったが、あれは重大な“事件”だったからな」

「事件って……」

ヒカリは二人のやり取りを見ながら、笑いをこらえていたが、ついに吹き出してしまった。

「ぷっ……ごめんごめん。でもさ、爆裂姫って、ちょっとカッコいいと思うけどな」

「全然嬉しくない!」

クラリスは唇を尖らせ、両手を腰に当てて仁王立ちになった。

「私、ただ普通に魔法を使っただけなのに、カインが……!」

「ほう、我のことか?」

カインはぴたりと浮遊を止め、誇らしげに胸を張った。

「我の魔法の威力は三倍増し! 的を灰にしたのは我の計算通りである!」

「計算通りじゃないでしょ! しかも誰もカインを認識してないから、全部私がやったことになってるし!」

ヒカリは頷きながら言った。

「まぁ、確かに。見た目はクラリスが11本の焔の槍を一気に出したようにしか見えなかったんだろね」

「そうよ!それで皆、私を見たら避けるの。こそこそと『怒らせたら焼かれるぞ』って……」

「爆裂姫、か……なんか漫画の主人公みたいだな」

「もう、やめてぇ……!」

クラリスはその場にうずくまり、項垂れた。

カインはそんな彼女の頭の上にふよふよと浮かびながら、少しだけ申し訳なさそうな顔をした——ほんの少しだけ。

「……許せ、クラリス。我の感情が先走ってしまった。だが、悪意はなかったのじゃ」

「わかってるよ、カイン。あなたが私のこと守ろうとしてくれたのは。でも……」

クラリスが落ち込んでいるのを見かねてヒカリは、騎士団の訓練場に行くことを提案した。 
「クラリス、フロストがアレンに会いたがっててさ、騎士団の訓練場に行こうよ」

「フロスト?あ、アレンの契約精霊ね」

「そそ、気分転換になるかもしれないしさ」

クラリスは少し考えて頷いた
「わかったわ、でもカインは絶対に魔法禁止ね!」

「う、うむ、わかったのだ」
カインはしぶしぶ頷いた。

騎士団の訓練場へと続く石畳の道を、クラリスと精霊たちは軽やかに進んでいた。

「そろそろアレンの居る騎士団の訓練場よ」

クラリスがそう言うと、隣を歩くフロストはうきうきした様子で頷いた。

「うむ! 我の成長を見せてやる時が来たのじゃな!」

「フロスト、魔法は禁止だからね」

「わ、わかっとるのじゃ」

ヒカリは肩をすくめて、少し困ったように笑った。

「アレンがフロストに会ったら驚くだろうね。前よりだいぶ魔力が安定してるから」

「ふふん、アレンの反応が楽しみなのじゃ。『すごい!』とか言うのじゃろ?」

「いや……『また何か起きる』って思うかも」

「否定できぬ……」

その時、訓練場の方から掛け声が聞こえてきた。剣士たちが集まり、模擬戦をしている様子だ。
それを遠くから見ていた

「とりあえず休憩まで待とうか」

フロストは会いたい気持ちを抑えて頷いた
「わ、わかったのじや」
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。