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第109話 ヒカリの罪悪感
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モニカが涙目でヒカリをじっと見つめていた。
ヒカリはその視線から目をそらし、内心で反省していた。
(いやー……さすがにモニカには悪いことしたな。急に魔力流して、騒ぎになったもんな……)
「そ、そうだ! モニカ、本の部屋に行こうよ!」
思いついたように声をかけると、モニカは一瞬戸惑った表情を見せた。
「え? でも、まだお仕事が……」
ヒカリはちらりと部屋を見渡す。他の聖女たちが黙ってこちらを見つめ、まるで「行ってきなさい」と言わんばかりに目配せをしていた。
「ほら、見て。みんなOKって顔してるし、行こ!」
モニカが遠慮がちに他の聖女たちに視線を送ると、彼女たちは一斉にうなずいた。
「う、うん……行ってらっしゃい」
「はい……では、少しだけ」
ヒカリとモニカは、そそくさと聖女たちの部屋を出て、本の部屋へと移動した。静かな廊下を歩きながら、ヒカリはモニカの沈んだ表情を気にしていた。
(これってめっちゃ気まずい……)
部屋に入ると、木の香りが漂う静かな空間。壁一面に本が並び、中央には柔らかなソファがいくつも置かれていた。ヒカリは手を後ろに組んでふわふわと浮きながらモニカに声をかける。
「そ、そうだモニカ! 前回のロランの日誌の続き、聞かせてよ!」
モニカはぱちくりとまばたきしてから、こくりと頷いた。
「あ、はい……わかりました」
モニカは、少し驚いた表情をしたが、すぐに気を取り直し、書架からロランの日誌を取り出した。
彼女の表情はまだどこか陰っていたが、日誌のページを開き、そこに書かれた文字を追い始めるうちに、少しずつ和らいでいった。
(ふぅ~、よかった)
ヒカリは、モニカの表情が少しでも明るくなったことに、心底安堵した。
やはり、モニカにとって、好きなことに触れる時間は、心を癒す効果があるようだ。
モニカが、静かにロランの日誌を読み進めていると、ある一節にヒカリの目が釘付けになった。
「……ん? ちょっと待って。今、なんて?」
モニカが読んでいた日誌の中に、見覚えのある言葉が記されていた。
《聖女の髪飾り――かつて精霊大戦の終焉を告げた遺物。封印された地の奥深くで発見された。》
「“聖女の髪飾り”? あれ、ロランも触れてたの?」
「ええ。どうやら精霊大戦があった場所で発掘されたらしいんです」
「……そんな大昔のものが、今も残ってるんだね」
「この髪飾りには、強力な浄化の力が宿っていたと記録されています。1000年前、精霊たちとの戦いが最も激しかったとされる時期ですね」
ヒカリは腕を組んでうーんとうなった。
「……あ、そうだ。モニカへの罪滅ぼしに、何かプレゼントするよ!」
「えっ……?」
モニカは、ヒカリの言葉に目を丸くして驚いた。まさか、ヒカリからプレゼントをもらえるなど、想像もしていなかったからだ。
「そ、そんな!ヒカリ様に何かもらうなんて、恐れ多いです!」
モニカは、慌てて両手を振った。
「いやいや、気にしないでってば。俺が勝手にやったことだし、ちょっとでも埋め合わせしたいんだ」
(てか、俺ってモニカからどんな存在に見られてるんだろ……)
ふと視線を落としたヒカリは、モニカの左腕に付けられた銀の腕輪に目を留めた。
「それ、素敵な腕輪だね」
モニカは驚いたように自分の左腕を見て、少し照れたように微笑んだ。
「あ……これは、祖母からもらった形見なんです。わたくしにとって、大切な宝物で……」
「へえ……すごくモニカに似合ってるよ。シンプルだけど、品があるっていうか」
「そ、そんな……ありがとうございます……」
頬を赤らめるモニカ。ヒカリの何気ない言葉に、小さく微笑んだ。
そのとき――部屋の扉が開いた。
「モニカ様!」
声と共に入ってきたのは、数日前にモニカが救った錬金術士の青年だった。整った顔立ちに爽やかな声。落ち着いた雰囲気の彼は、深く一礼した。
「お探ししました。あの節は、本当にありがとうございました」
「い、いえ……私は何も……」
「私は、錬金術士のクラウと申します。モニカ様に何か恩返しができないかと思いまして、直接お伺いしようと」
ヒカリは彼の真面目すぎる態度に少し笑いそうになるが、黙って様子を見ていた。
「お礼なんて……本当に必要ありません」
「それでも……僕にできることがあるなら、何でも仰ってください」
(うーん、なんか真面目すぎるな……あ、そうだ!)
ヒカリはピンと閃いた。
(モニカに俺の魔力が入った魔道具を渡せば、いつでも助けられるし、罪滅ぼしにもなるかも)
「ねーねーモニカ」
「はい、何ですかヒカリ様?」
「今から言うこと、クラウに伝えてくれない?」
「あ、はい……」
「光の魔力が貯められて、身に付けられるアクセサリーを作ってほしいって」
モニカは少し戸惑った表情を見せたが、しっかりとクラウに伝えた。
「えっと……光の魔力を貯められるアクセサリーですか?」
クラウはモニカの体を見て、腕輪に目を止める。
「その左腕の腕輪、小さな光の鉱石が付いていますね。それを改良すれば、魔力をより多く貯められるようになりますが……」
モニカはぴたりと動きを止めた。
「いえ……これは、祖母の形見でして。大切な物なので……」
「そうですか。でしたら、右腕にもう一つ、似たデザインの腕輪をお作りするのはいかがでしょう?」
「それなら……問題ありません」
「では、一週間で仕上げます。楽しみにしていてください!」
そう言ってクラウは嬉しそうに部屋を後にした。
――一週間後。
「モニカ様、できました! こちらをお受け取りください」
クラウが差し出した腕輪は、洗練された銀の枠に、板状の光の鉱石が四枚美しく埋め込まれていた。
「わぁ……ありがとうございます。とても素敵ですね」
「喜んでいただけて、光栄です!」
クラウは深く一礼し、そのまま満足そうに部屋を後にした。
そこへ、ヒカリが部屋に入ってくる。
「モニカー! 腕輪届いた?」
「はい、先ほどクラウ様から受け取りました」
「じゃあさ、その腕輪ちょっと貸してくれる?」
「……はい。どうぞ」
モニカは迷いなく腕輪をヒカリに差し出した。
ヒカリはそれを手に取ると、にっこり微笑んで言った。
「それじゃ、ちょっと預かるね」
そして、スッと部屋を出ていった。
(この腕輪に魔力を充填して渡せば、モニカはいつでも俺の魔力を使えるようになるな)
ヒカリは腕輪を胸に当てた瞬間、それを体内に吸収し、魔力を注ぎ始めた。
ヒカリはその視線から目をそらし、内心で反省していた。
(いやー……さすがにモニカには悪いことしたな。急に魔力流して、騒ぎになったもんな……)
「そ、そうだ! モニカ、本の部屋に行こうよ!」
思いついたように声をかけると、モニカは一瞬戸惑った表情を見せた。
「え? でも、まだお仕事が……」
ヒカリはちらりと部屋を見渡す。他の聖女たちが黙ってこちらを見つめ、まるで「行ってきなさい」と言わんばかりに目配せをしていた。
「ほら、見て。みんなOKって顔してるし、行こ!」
モニカが遠慮がちに他の聖女たちに視線を送ると、彼女たちは一斉にうなずいた。
「う、うん……行ってらっしゃい」
「はい……では、少しだけ」
ヒカリとモニカは、そそくさと聖女たちの部屋を出て、本の部屋へと移動した。静かな廊下を歩きながら、ヒカリはモニカの沈んだ表情を気にしていた。
(これってめっちゃ気まずい……)
部屋に入ると、木の香りが漂う静かな空間。壁一面に本が並び、中央には柔らかなソファがいくつも置かれていた。ヒカリは手を後ろに組んでふわふわと浮きながらモニカに声をかける。
「そ、そうだモニカ! 前回のロランの日誌の続き、聞かせてよ!」
モニカはぱちくりとまばたきしてから、こくりと頷いた。
「あ、はい……わかりました」
モニカは、少し驚いた表情をしたが、すぐに気を取り直し、書架からロランの日誌を取り出した。
彼女の表情はまだどこか陰っていたが、日誌のページを開き、そこに書かれた文字を追い始めるうちに、少しずつ和らいでいった。
(ふぅ~、よかった)
ヒカリは、モニカの表情が少しでも明るくなったことに、心底安堵した。
やはり、モニカにとって、好きなことに触れる時間は、心を癒す効果があるようだ。
モニカが、静かにロランの日誌を読み進めていると、ある一節にヒカリの目が釘付けになった。
「……ん? ちょっと待って。今、なんて?」
モニカが読んでいた日誌の中に、見覚えのある言葉が記されていた。
《聖女の髪飾り――かつて精霊大戦の終焉を告げた遺物。封印された地の奥深くで発見された。》
「“聖女の髪飾り”? あれ、ロランも触れてたの?」
「ええ。どうやら精霊大戦があった場所で発掘されたらしいんです」
「……そんな大昔のものが、今も残ってるんだね」
「この髪飾りには、強力な浄化の力が宿っていたと記録されています。1000年前、精霊たちとの戦いが最も激しかったとされる時期ですね」
ヒカリは腕を組んでうーんとうなった。
「……あ、そうだ。モニカへの罪滅ぼしに、何かプレゼントするよ!」
「えっ……?」
モニカは、ヒカリの言葉に目を丸くして驚いた。まさか、ヒカリからプレゼントをもらえるなど、想像もしていなかったからだ。
「そ、そんな!ヒカリ様に何かもらうなんて、恐れ多いです!」
モニカは、慌てて両手を振った。
「いやいや、気にしないでってば。俺が勝手にやったことだし、ちょっとでも埋め合わせしたいんだ」
(てか、俺ってモニカからどんな存在に見られてるんだろ……)
ふと視線を落としたヒカリは、モニカの左腕に付けられた銀の腕輪に目を留めた。
「それ、素敵な腕輪だね」
モニカは驚いたように自分の左腕を見て、少し照れたように微笑んだ。
「あ……これは、祖母からもらった形見なんです。わたくしにとって、大切な宝物で……」
「へえ……すごくモニカに似合ってるよ。シンプルだけど、品があるっていうか」
「そ、そんな……ありがとうございます……」
頬を赤らめるモニカ。ヒカリの何気ない言葉に、小さく微笑んだ。
そのとき――部屋の扉が開いた。
「モニカ様!」
声と共に入ってきたのは、数日前にモニカが救った錬金術士の青年だった。整った顔立ちに爽やかな声。落ち着いた雰囲気の彼は、深く一礼した。
「お探ししました。あの節は、本当にありがとうございました」
「い、いえ……私は何も……」
「私は、錬金術士のクラウと申します。モニカ様に何か恩返しができないかと思いまして、直接お伺いしようと」
ヒカリは彼の真面目すぎる態度に少し笑いそうになるが、黙って様子を見ていた。
「お礼なんて……本当に必要ありません」
「それでも……僕にできることがあるなら、何でも仰ってください」
(うーん、なんか真面目すぎるな……あ、そうだ!)
ヒカリはピンと閃いた。
(モニカに俺の魔力が入った魔道具を渡せば、いつでも助けられるし、罪滅ぼしにもなるかも)
「ねーねーモニカ」
「はい、何ですかヒカリ様?」
「今から言うこと、クラウに伝えてくれない?」
「あ、はい……」
「光の魔力が貯められて、身に付けられるアクセサリーを作ってほしいって」
モニカは少し戸惑った表情を見せたが、しっかりとクラウに伝えた。
「えっと……光の魔力を貯められるアクセサリーですか?」
クラウはモニカの体を見て、腕輪に目を止める。
「その左腕の腕輪、小さな光の鉱石が付いていますね。それを改良すれば、魔力をより多く貯められるようになりますが……」
モニカはぴたりと動きを止めた。
「いえ……これは、祖母の形見でして。大切な物なので……」
「そうですか。でしたら、右腕にもう一つ、似たデザインの腕輪をお作りするのはいかがでしょう?」
「それなら……問題ありません」
「では、一週間で仕上げます。楽しみにしていてください!」
そう言ってクラウは嬉しそうに部屋を後にした。
――一週間後。
「モニカ様、できました! こちらをお受け取りください」
クラウが差し出した腕輪は、洗練された銀の枠に、板状の光の鉱石が四枚美しく埋め込まれていた。
「わぁ……ありがとうございます。とても素敵ですね」
「喜んでいただけて、光栄です!」
クラウは深く一礼し、そのまま満足そうに部屋を後にした。
そこへ、ヒカリが部屋に入ってくる。
「モニカー! 腕輪届いた?」
「はい、先ほどクラウ様から受け取りました」
「じゃあさ、その腕輪ちょっと貸してくれる?」
「……はい。どうぞ」
モニカは迷いなく腕輪をヒカリに差し出した。
ヒカリはそれを手に取ると、にっこり微笑んで言った。
「それじゃ、ちょっと預かるね」
そして、スッと部屋を出ていった。
(この腕輪に魔力を充填して渡せば、モニカはいつでも俺の魔力を使えるようになるな)
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