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ばあちゃんは素直じゃない
しおりを挟む「まったく、毎日毎日ご飯や水をあげる身にもなれってんだよ。ほんと、死んでも手間かけさせる人だよ、このじいさんは」
憎まれ口をたたきながら、ばあちゃんは仏壇にこんもりと盛ったご飯とお水を供えて両手を合わせる。
朝に一度、炊いたご飯やお水を交換してるだけだけど、毎日となるとちょっとしたことでも面倒に感じるものだ。
それでもばあちゃんは違う。
うちに来てからというもの毎朝ちゃんとご飯を炊いて、じいちゃんの写真を飾った仏壇に欠かさずご飯とお水をお供えしている。
多分、実家にいた時からの、ばあちゃんの朝の日課なのだろう。
「(口ではああ言ってても、ちゃんとじいちゃんの事が好きだったんだろうなぁ)」
「……なんだい、その目は」
「いや、別に何も?」
「まったく、じいさんに似てふてぶてしい顔だよ」
ばあちゃんはそう言うと、僕の手を取って仏壇の前に連れて来た。
「ほら、見なよ。このムスッとした仏頂面」
仏壇に置かれたじいちゃんの顔写真を見る。
ばあちゃんの言う通りムスッとしていて、少し怒ってるんじゃないかと思える顔だ。
でも、こんな顔でも別に怒ってるわけじゃないらしい。
「子は親に似るっていうけど、じいさんにもよく似るもんだよ。ほら、じいさんの顔をよく見ときな。将来こんな仏頂面にならないように、顔をしっかり覚えてくんだ。そうすりゃ、こうならないようにって少しは自分で直せるだろ」
「……僕、じいちゃんだけじゃなくて、ばあちゃんの血も入ってるんだけどなぁ」
「じゃあ、あたしをよっく見て育ちな。そしてあたしに似た、賢い大人になるんだよ」
「……ばあちゃんに似たら、めんどくさい大人になりそうだよ」
「はんっ! じいさんに似て、口の減らない子だよ! ……じいさん、あんたがもう少し素直だったら、この子もこうはならなかったんだよ? バカ息子もバカ息子だし。まったく、ほんとどうしようもないね、うちの男どもは」
「……」
口ではそう言うばあちゃんだけど、その顔は少しだけ笑っているように見えた。
いつものような意地悪そうな笑みじゃない、もっと穏やかな笑み。
やっぱり、ばあちゃんは素直じゃない。
「(きっとこんなばあちゃんに、じいちゃんも苦労させられてたんだろうなぁ)」
そう思いながら、僕も仏壇に向かって両手を合わせる。
「(じいちゃん。ばあちゃんは昔と変わらず意地悪で素直じゃないけど、それでも僕によくしてくれてるよ。だからじいちゃんも、天国でも変わらずムスッとした顔のまま僕たちを見守っててね)」
きっとその方が、ばあちゃんも嬉しいと思うから。
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