悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。

朝比奈未涼

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6. 恋人たちの話を現実でしてみる

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「えー!それがエマちゃんの綺麗になった秘密だったの!?」

「秘密って…。まあ、そうなんですよ」

「すごーい!面白い!」


ある日の昼休み。
あまりにもカオリさんが私の恋愛事情について聞いてくるのでついに私はとある喫茶店でカオリさんとランチを食べながら夢についてカミングアウトした。

最初は引かれると思っておどおどしながら話した私だったが、この目を輝かせているカオリさんのリアクションを見る限り引かれてはいないようだ。

むしろ興味深々である。



「まぁ、面白い話ですよね」

「そこら辺のドラマや漫画より面白い話よ!」



カオリさんのリアクションに対してうんうんと頷いていると興奮気味にカオリさんがそう言う。

私もそう思います。

夢の中ではなく、現実であんなことがあれば誰でもこれはドラマか?と思えるくらいあの夢はよくできた話だと思う。


権力も魔術の力もある完全無欠の美女が美しい男を3人も軟禁して愛を強要させている。
そしてこの美女、ただの悪女ではなく、きちんと悪女になってしまった背景もある。唯一1人だけ家族の誰からも愛されてこなかったからこそ、彼女は愛に飢えているのだ。

たかが夢のはずなのに細かい設定までよくできている。
夢ならばただの男好き、彼らもただの恋人たちでもよかっただろうに。

私、実は凝り性なのかな?



「エマちゃんと恋人たちの難しい関係の今後が気になるわ!甘い話も素敵だけど恋人たちの本当の想いは?エマちゃんの偽りでもいいと欲した愛の結末は?」



夢のことを1人で考えていると変わらず興奮しているカオリさんが水を一気に飲み干した後、私に再び問い詰めてきた。



「え、えーっと…」



その勢いに押されて私は困ったように笑顔を浮かべながらも今思っていることを話し始める。



「恋人たちは私のことを恨んでいます。私の気持ちは自分のことなんですけどよくわからないんです。所詮夢だからと私は男たちを侍らすことを全力で楽しんでいます。しかも夢の私は現実の私とは性格が全然違ってそれもうふしだらで傲慢で気が強すぎるんです」

「あら~。確かにそれは正反対の性格ね。見た目はまさにふしだらで傲慢で気が強い感じがするんだけど」

「カオリさん!失礼ですよ!」

「嘘ついても仕方ないでしょー。その見た目で何人の男が泣いてきたことか」



冗談っぽく笑うカオリさんに怒ってみたがカオリさんは特に気にする様子はない。

私も流れ的に怒っただけで別に言われ慣れていることなので特に何も思わなかった。

この遊び慣れていそうな見た目が悪いのだ。例え美女だったとしても。



「でも本当に恋人たちはアナタを恨んでいるの?そう言われた?」

「恨んでいますよ。言われたことはないですけど軟禁して愛を強要させているんですよ?恨まない方がおかしくないですか?」

「んー。でもエマちゃんの話的にはその恨みが見えないって言うか」

「私の夢ですよ?その辺はきっといい感じになっているんです」

「そう」



首を傾げているカオリさんの言葉を私はバッサリと否定する。
カオリさんはそんな私の言葉を聞いてもどこか引っかかっているような表情を浮かべて何かを考え始めた。

夢の話なのに何故そんなにも真剣に考えているのだろうか。



「じゃあ話題を変えましょう!エマちゃんは誰が1番好き?」

「ええ!1番ですか!?」

「そう!」

「難しいこと言いますね…」

「いいじゃなーい。気になるんだもん」



パンっと手を叩いて笑うカオリさんの質問に私は戸惑ってしまう。

あんな美しく、欠点のない恋人たちの中で1番なんて決められるのだろうか?



「リアムの話は面白いです。一緒にいて楽しいし、何よりリアムはよく人を見て、誰よりも空気が読めます。いつも欲しい言葉と態度をくれるリアムに私はいつも満たされています」

「うんうん」

「それからルークの魅力は知識に対する貪欲さです。いろいろな話をいつも興味深そうに楽しそうに聞く姿を見れば話さずにはいられません。もちろん私の望むものもいつもくれます。そんな姿が愛らしくて好きです」

「なるほどね」

「最後にレオですがレオはいつも真っ直ぐで一緒にいて気持ちがいいです。特に大好きな魔術の話になると目が輝きます。他の2人に比べて愛想はないですが、それでも一生懸命私に答えようとする姿は愛らしいです」

「…うん。で、みんな大好きなのはわかったけど1番は?」



一人一人のことを思いながら彼らに対する想いを口にしていく。カオリさんは終始楽しそうにその話を聞き、最後に誰が1番なのかともう一度問いかけてきた。



「んー。考えてみたんですけどわかりません」

「んん!そうなのね。じゃあこれから決めないとね」

「?何でですか?夢ですよ?」

「まあ、そうなんだけどね?やっぱり夢でも1番を決めて1番好きな人に1番愛されたいじゃない?」

「…まあ、そうですね」



カオリさんの言葉を最初は疑問に思ったが、すぐに私は一意見として納得した。

愛はたくさんあればいいのではない。
誰か1人の1番になる、そしてその人から無償の愛を受ける。
それが1番であることはわかる。

だが、所詮あれは夢である。ただの私の欲望。
いろいろな細かい設定はあるがそれは気にせず私自身があの夢を楽しめればそれでいいのだ。




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