元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国

シャーロット、ネルエルに協力を求める

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王城到着後、私・カムイ・マリルの3人は男性騎士の案内で、国王陛下とルルリア王妃様のおられる執務室へと赴いた。男性騎士がドアをノックし、私達が到着したことを中にいるお2人に宣言すると、ルルリア王妃様から入室許可を得られた。

私達3人が執務室へと入ると……

「シャーロットちゃん、待ちわびたわよ。マクレン領の件は、既に聞いているわ。ネクロマンサーを説得させるのなら、ネルエルが必要でしょう。アル隊長が牢獄の手続きを終わらせ次第、彼女をここへ連れて来てくれる手筈となっているわ。それまでに、もう一つの案件を終わらせましょう」

王妃様が笑顔で迎えてくれたのだけど、もう1つの案件って何? 
それに、なんだか国王陛下の顔色が悪い。

「ネクロマンサー以外で、何かありましたか?」
「ふふふ、これのことよ」

ルルリア様は、自分の左手を私達に見せてくれた。人差し指に嵌められている指輪、あれってまさか……お仕置きちゃん? どうしてルルリア様が持っているの?

「あぎゃああああ~~~うぎょええええ~~~母上~~~何故~~~」

え!? 突然、男の甲高い悲鳴が近くから聞こえた!
まさかの襲撃!? 全く敵意を感じ取れなかった!!!
早く叫び声のする場所へ向かわないと…………ってあれ? 

王妃様は平然としている。国王様は私を見て、子犬のようにプルプルと震えながら、首を横にゆっくりと振った。

「ルルリア様、今の叫び声は?」

「おほほほほ、王太子のカルロスの声ね。昨日、カルロスと側近達の様子がおかしかったから、ちょ~っと問い詰めたのよ」

聖女帰還パーティー開催時、カルロス王太子様はコーデリア王太子妃様を連れ立って、私のもとを訪れ帰還祝いを言ってくれた。2人は仲睦まじい夫婦という感じで、カルロス様は《そろそろ子供が欲しいね》とコーデリア様に言ったところ、彼女は顔を真っ赤に染めていたのを覚えている。

あの叫び声の主は、カルロス様? 

国王陛下の様子を考えると、どんな案件なのか大凡わかる。マクレン領のこともあるし、ネルエルさんが到着するまでに、さっさとこの話題を終わらせよう。

「まさかとは思いますが、そのお仕置きちゃんでカルロス様を?」
「そ、シャーロットちゃんに仕事中のカルロスの叫び声を聞かせてあげたの。2日前、あなたが変装した側近3人組に、この魔導具【お仕置きちゃん】をあげたのよね」

2日前、私は冒険者ギルドにて、3人の貴族様に【お仕置きちゃん】を渡した。あの人達は、カルロス様の側近だったのか! ということはサボり癖のある上司って、カルロス様のことなの! 

カルロス様~~~~、申し訳ありませ~~~~~ん!!! 
ルルリア様は側近3人組を脅して、お仕置きちゃんのことを知ったのか。

「あの…アレはかなりの痛みを伴いますし、痛みで暴れまわる様は、男女の尊厳を打ち砕きます。だから、私は何か仕出かした時にだけ使用するよう言ってあったのですが?」

「ふふふ、そのようね。あの3人も自分達で試した後、カルロスに取り付けたのよ。そして、シャーロットちゃんに言われた通りにしていたわ。でも昨日の昼、カルロスが自分の仕事部屋から、またいなくなってしまった。ここまでの時点で、2回使用しているわよ」

既に、2回もお仕置きされているとは……。

「《また仕事をサボっているな》と思った3人は、ついシャーロットちゃんに言われた以上の強さでやっちゃたのよ。そして、王城全てに響き渡るほどの叫び声があがった。ちなみに、その時のカルロスは、コーデリア、私、ブライアンの目の前にいて、3週間後に行われるお茶会の内容を議論し合っていたのよね。あの時、股間を押さえながら床を転がり回るカルロスを見て、ついつい私も笑ちゃったわ~。妻であるコーデリアは、ドン引きしていたわよ。ブライアンだけは、ポカ~んと私達の光景を眺めていたわね」

うわあ~、3人組はサボっていると勘違いしたのか。
ルルリア様に知られた以上、あの魔導具を渡すしかない。
だから、国王陛下は怯えた犬のように、プルプルと震えていたのか。

「アレと同じものは、予備としてもう1台あります。もともと、男女関係なく、不倫や浮気に走る愚か者達にお仕置きするため、ハーモニック大陸のサーベント王国で開発されたものです。その魔導具を少し改良して、有効範囲を広げたのが、ルルリア様の持つ【お仕置きちゃん】です」

「国交が回復したら、サーベント王国の国王陛下に御礼を言わないといけないわね。カルロスもブライアンも仕事を勝手にサボる時があって、私達も困っていたのよ」

私は観念して、予備の1台をルルリア様に渡した。
そして、国王陛下の方を見て、テレパスで謝罪しておいた。

『国王陛下、申し訳ありません。でも、仕事を頻繁にサボるお2人も悪いです』

『うん…そうだな。私達が悪いな。ただ、罰としてのお仕置きが酷すぎやしないか? 私も、カルロスの転げ回るところを目の前で目撃した。国王が臣下の前であんな醜態を晒したら、王としての威厳が……崩壊していく』

《既に崩壊しているような?》と思うのは、私だけだろうか?

現状、魔人族やガーランド法王国の内乱についての問題が山積みとなっているから、国王陛下は仕事をさぼれないと思う。ただ…

「お仕置きちゃん…か、良い名称ね。ブライアンもカルロスも、偶にサボるくらいなら私も許すけど、あまり度が過ぎるのも良くないのよ。それに、ここ最近になって新たな問題も発生している。急にいなくなると、皆も不安になってしまうし、士気にも影響します。一応、ブライアンには今日中に、【お仕置きちゃん】を身に付けてもらいましょう」

ルルリア様の場合、お遊びで試しそうだから怖いんだよね。そういう意味では、国王陛下を気の毒に思ってしまう。現在、緊迫した状況でもあるから、さすがにお遊びでやったりしないよね?

「有効範囲は、指輪から半径30mとなっています。使用方法は……」

「なるほど、わかったわ。量産化可能だけど、今はそれどころじゃないわね。もう1個は、カルロスの側近達に返しておきましょう」

ネクロマンサーの件で、更なる問題が発生するだろうから、今のうちにしっかりと、王妃様が2人の手綱を握っておいた方がいい。


○○○


アルさんとネルエルさんが到着したのはいいのだけど、アルさんの動きが異様に固い。目の前に国王陛下と王妃様がいるからかな? ネルエルさんの両手首には、魔法とスキル封印の拘束具が取り付けられているけど、人間の女性の姿に変異している。取調べ終了以降、人間の姿に変異していると、お父様も言っていた。

「アルさん、動きが変です」
「え?」

アルさんがこっちを向く時も、ギギギギとゆ~っくりだ。もしかして、ネルエルさんに惚れたか? 

「アル、ご苦労だった。我々の話が終わるまで、外に控えているように」
「あ……は! 失礼致します!」

国王陛下からの命令で、アルさんはぎこちない動きで部屋を出ていった。

「早速だが、本題に入ろう。ネルエル、君の仮説が的中した」
「ネクロマンサーが現れたのですね!?」

国王陛下の一言で、ネルエルさんも事態を察したようだ。ただ、予想していたこともあって、大きな驚きはない。

「我が国のマクレン領にて、魔鬼族の女を確保した。先に言っておくが、拷問などの処置は行っていない。領主でもあるマクレン伯爵は、彼女を客人として迎え入れ、現在屋敷にて話し合いを行なっているところだ。その過程で、彼女自らがネクロマンサーであることを明かした」

「え…そんな馬鹿な!? 拷問もされず、客人として迎え入れただけで、その女性は自分からネクロマンサーだと明かしたのですか!? 我々にも、誇りがあります。任務を遂行する上で、敵側に捕縛されることは死を意味します。自害もせずに、どうして自分の素性を!?」

ネルエルさんが戸惑うのもわかる。隠れ魔人族達の恨みは相当なものだ。通常であれば、確保された時点で、自害するだろう。でも、こっちには想定外のスキルを持ったリーラがいる。聖浄気で恨みを完全に浄化させ、きちんと客人として応対すれば、魔鬼族の女性も混乱こそするけど、ある程度の事情を明かしてくれると思う。

「簡単なことだよ。マクレン領には、特殊なユニークスキル持ちが1人いる。その人間が、魔鬼族の恨みを浄化したのだ。そして、何の偏見も持たずに、魔鬼族の女性を迎えいれたことで、女性も警戒心を緩めた。ただ、完全に心を開いてくれたわけではない」
  
「そんなユニークスキルが……陛下は私に何を求めているのですか?」

ネルエルさん、何を言われるのか、薄々勘付いているのかもしれない。

「簡単なことだ。ネルエル、我が国の諜報員として働いてもらいたい」

「隠れ魔人族達やガーランド法王国の情報を集めろと? 手始めに、マクレン領へ赴き、ネクロマンサーでもある魔鬼族の女性から話を聞けと?」

ネルエルさんの目に、変化が現れた。この変化は、私達にとって良くないものだ。『信頼しようと思っていたけど、ここもガーランド法王国と変わらないのか』という思いが、私にもヒシヒシと伝わってくる。彼女は私達に対し、失望したのだ。

「そうだ。君を利用することになるが、別に脅すつもりはない。取調べを行なったことで、君の抱えている問題も浮き彫りとなった。マクレン領に行き、魔人族と話し合いを行い、事件を解決に導いてくれたのなら、君の住む村人達、また大陸に隠れ棲んでいる魔人族を正式に我が国の客人として迎え入れるつもりだ。聖女シャーロットの帰還により、魔人族に対する国内の忌避感も少しずつ薄れつつある。まだ完全に環境は整っていないが、我が国への移住を認めよう。時期が来れば、正式に公表するつもりだ」

この報酬に対し、ネルエルさんはどう対応するのだろうか? 彼女を見ると、国王陛下の提案に別段驚いている様子もなく、少し思案しているという感じだ。

「その提案を信じろと?」

さすがに、すぐには受け入れられないか。何もかも、都合が良すぎるもんね。

「《信じられない》というのも無理はない。ならば、我が国が隠している重大機密の1つを今ここで教えよう。この秘密を知っている者は、王族とエルバラン公爵家、教会関係者の一部のみとなっている」

あ、先の展開が読めてきた。絶対、私のことだ。

「陛下、私にそんな機密事項を教えても宜しいのですか?」

ネルエルさんも興味を持ったのか、身体の重心が少し前に傾いた。

「構わない。君……いやアストレカ大陸に棲む全ての魔人族達に大きく関わることだ。君は、聖女シャーロットの帰還方法を知っているか?」

私の秘密を聞けば、ネルエルさんも協力してくれると思うけど、そうなると彼女の仕事量が大幅に増える。

「え……転移石で、ここに戻ってきたのでは?」

「表向きはそうだ。転移石はオーパーツでもあるから、皆も納得しやすい。実際のところ、シャーロットはハーモニック大陸で長距離転移魔法を習得し、その魔法を行使したことで、ここへ帰還できたのだ」

国王陛下、勿体ぶらずにさらっと秘密を暴露しちゃった。ネルエルさんも、いきなり長距離転移魔法という言葉を聞いたせいか、動きが固まった。

「……冗談ですよね?」

ここにいる全員が、押し黙る。それは、肯定していることと同義である。

「シャーロットから言われた時、我々も信じなかったが、彼女の魔力の一端を見せてもらったことで、私も王妃も信じるしかなかった。君の場合、実際に長距離転移魔法を使用して、何処かに移動した方が信じるだろう。シャーロット、登録している地点に転移し、君の一端を見せてあげなさい」

現時点で、転移可能場所はフランジュ帝国の帝都、バードピア王国の迷宮の森の2地点だけ。フランジュ帝国に転移するしかない。ある意味、ネルエルさんにとって、衝撃的な光景を見ることになる。だからこそ、転移場所がハーモニック大陸だと信じるだろう。

「わかりました。マリルとカムイは、ここで待機していてね。ネルエルさん、私の右手にに触れて下さい」

彼女は恐る恐るではあるけど、側にいる私の右手を握った。

「国王陛下、私達が転移した後、また同じ位置に戻ってきます。その間、絶対にこの転移位置に入らないように! 誰かが侵入し、私達が戻ってくる瞬間と重なった場合、その方は木っ端微塵になります」

「そんな欠点があるのか!?」

私が帰還した当初、マリルも短距離転移を使用できるようなので、欠点を教えておいた。そして、その対処方法も教えてある。転移される位置には、兆候として必ず魔法陣が浮かび、その5秒後に対象者が転移されてくるのだ。国王陛下とルルリア様にも、その欠点と対処方法を教えておいた。

「突然、正体不明の魔法陣が現れたら、要注意ってことね」

ルルリア様も、木っ端微塵になることを想像したのか、冷汗をかいている。
話が落ち着いたところで、転移といきますか。

「その助言、肝に命じておこう」
国王陛下も、木っ端微塵になりたくないよね。

「私とネルエルさんは、ハーモニック大陸に行ってきます。注意事項に関して、呉々も忘れてはいけませんよ。『転移、フランジュ帝国帝都上空』」

魔法を行使した途端、景色が切り替わった。ここは、帝都上空20m付近となる。私とネルエルさんをウィンドシールで囲っておこう。

「え? 視界が? 陛下は? 王妃様は? マリルもカムイもいないわ」

ネルエルさんが周囲をキョロキョロと見ている。部屋の中から、いきなり空の上へ移動したから、混乱して当たり前か。

「ネルエルさん、ここはエルディア王国から遠く離れた場所、ハーモニック大陸フランジュ帝国の帝都上空です」

「ハーモニック大陸ですって!? 聖女様、いくらなんでも……」
驚くのもわかります。

「ネルエルさん、下を見てください。私の言った言葉が真実だと理解できます」
「下?」

私達が、帝都の光景を見ると……

「そんな……人間の男が魔鬼族の男と、あっちのエルフの女はダークエルフの女と……仲良く談笑しているわ! なんなのこれは? 獣人の男は、鳥人族の女とデートですって! これは夢なの? ありえない……ありえないわ!」

ネルエルさんの狼狽え方が、半端じゃない。ここまで取り乱すとはね。

「ネルエルさん、これが現実です。ジストニス王国では、まだ差別など残っていますが、フランジュ帝国ではそういった差別意識が低いのです。私は、アストレカ大陸内でも、こういった光景を増やしたいと思っています」

ここに住む魔人族達は、人間や獣人といった4種族に対し、忌避感などを持っていない。だからこそ、全員が和気藹々と笑い合っているのだ。私の目標が達成されるのは、まだまだ先の話だけど、諦めるつもりはない。必ず、実現させてみせる!

ネルエルさんを見ると、口を右手で覆い隠し、両目から大粒の涙を流していた。

「ここがハーモニック大陸…みんなの故郷…この国では、全員が平等なんだ」

《この国の皇帝が私です》という真実は、伏せておこう。
これを言ってしまったら、感動に浸っている雰囲気を壊してしまう。

「シャーロット様は、本当に長距離転移魔法を使えるのですね」

現在の彼女の目は輝いており、先程の失望を漂わせるような感じを見受けない。

「はい。この魔法は1度行ったことのある場所ならば、いつでもそこへ転移可能となります。ですから、今回のマクレン領の事件を解決に導いてくれたならば、あなたの生まれ故郷にいる村人達だけでも、先にエルディア王国に転移させます。希望者がいれば、ここに転移させることも可能なのです。私達はあなたを利用しますが、ガーランド法王国のような卑怯なマネはしません。私達を信じてくれませんか?」

以前の様な威圧で、強制的に私の強さをわからせることはしない。ネルエルさんの場合、きちんした話し合いを行ない、彼女から問われた質問に誠実に答えていき、信頼を勝ち取りたい。

「シャーロット様が転移魔法の使い手ということはわかりました。でも、まだ疑問点が残ります。どんな魔法であれ、必ず魔力を消費します。アストレカ大陸からハーモニック大陸までの距離はわかりませんが、あなたはこれ程の長距離を転移したにも関わらず、汗1つかいていませんし、息も乱れていません。あなたの魔力量は、どれ程あるのですか?」

まあ、疑問に思って当然だ。

「私はガーランド様から、【環境適応】というユニークスキルを頂いています。どんな過酷な環境であろうとも、身体がその環境に適応するというものです。それによって、私の身体は通常の人間から逸脱したものとなりました。私の魔力量は10000を軽く超えています。私は、カムイよりも強いのです!」

本来の数値は10万以上だけど、簡易神人化していない状態で完全制御できるのは、現在のところ6500だ。だから、魔力量以外のものは、この数値に設定している。転移魔法関係に関しては、イメージをしっかり保つだけで発動してくれるから、簡易神人化しなくても問題ない。

「あのカムイよりも? ……例外はあると聞いたことがあるけど、従魔は基本的に強者に従う。それなら……」

カムイに威圧されたネルエルさんならば、私を信じてくれるはずだ。

「わかりました。私はシャーロット様を……エルディア王国を信じます。隠れ魔人族達にとって、アストレカ大陸での生活は厳しいものです。皆をハーモニック大陸に帰したい。マクレン領だけでなく、今回のネクロマンサー事件全てに協力させてもらいます!」

やった! 信じてもらえた!これで、マクレン領に行ける!
リーラが無事であることはわかっているけど、それでも早く彼女に会いたい。
リーラ、今から行くね!





○○○

次回更新予定日は、11/9(金)10時40分です(^ω^)
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