元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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10歳〜アストレカ大陸編【戴冠式と入学試験】

《プチドッキリ》を仕掛けます!

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バードピア王国の王族達の滞在する屋敷に到着すると、鳥人族の精鋭達約30人が、陸空において、周囲を警護していた。空の警備隊には、私の従魔ドールマクスウェルも含まれている。身長を1m程に設定して、警備に参加しているのか。彼女(?)は私に気づいて、空の警備をやめ、こちらに下りてきた。

「シャーロット様、今のところ異常ありません。ですが、別働隊が潜伏しているかもしれませんので、王族達がこの地を去るまで、私が鳥人族達を護ります!」

この言葉を聞いてか、鳥人族達の男女達が皆、笑顔となっている。多くの魔法を極めたSランク魔物が味方なのだから、皆も安心するだろう。

「マクスウェル、ありがとね。暗殺者の件もドレイクから聞いたよ。拷問【ナイトメア】、上手くいったようだね」

私の言葉で、大和人形がニコッと笑った。生まれた当初、表情を上手く動かせなかったようだけど、今では自在に変化できる。笑った人形も可愛い。

「私と奴等の魔力を同調させたことで、容易に成功しました。夢の中での拷問のため、シャーロット様の記憶を基に、建物も楽に想像できました。警備を緩めるわけにはいきませんので、私が屋敷内へ御案内しましょう」

「うん、お願いするよ」

護衛部隊の鳥人族達はダークエルフ族と違って、肌も人間と同じ肌色だ。本来であれば、彼らも私にお礼を言いたいのだろうけど、少しの油断が命取りになる。だから、彼らは敷地内に入る私達を見て動きを止め、全員が同時に感謝のお辞儀をした後、警備に戻る。

「さあ、どうぞ」

マクスウェルが入口となるドアを開けてくれた。屋敷内に入ると、3人の王族達と目が合う。40代の黒髪の男性、フォーマルスーツを身に纏い、毎日身体を鍛えているためか、がっしりしており、気高さからか、一目で王であることが伺える。40代のピンク色の髪をした色艶やかな女性、フォーマルドレスを身に纏い、気品溢れるオーラから王妃であるとわかる。というか、この人も結構な筋肉質をしている。そして、最後の1人は……

「シャーロット!」「エメルダさん!」

まさか、ここで再会するとは。

ガーランド様からエメルダさんの正体について聞いていたけど、1度しか会っていないし、1日で別れたから存在を失念していた。

クックイスクイズ第2チェックポイント【迷宮の森】を彷徨っている時に出会った黒髪ロングのやや悪役令嬢っぽいきつめの美人さん、あの時は冒険者の格好だけど、今は黒髪に映えるフォーマルドレスを着用している。当初出会った時と、漂う風格が全然違う。 確かあの時、双子のメイドさん達もいたけど、今はいないのかな? 森のセーフティーエリアで話している時、いきなり3人とも全く別人のダークエルフに変化しちゃったから、変身後の姿だけが強く印象に残っている。

「8歳の女の子で、名前がシャーロットだから、もしかしたらと思ったけど、やっぱりあなただったのね。というか、どうしてこっちの姿の私を知っているの!?」

混乱するのも無理ないか。理由を教えてあげよう。

「当時、私達は幻惑に惑わされないよう、魔法【真贋】を使用していました。魔法【幻夢】で変装した姿であっても、真実の姿を見れるのです。あの時、話している途中で効果が切れて、エメルダさんと双子のメイドさん達が急にダークエルフになったから、内心かなり驚きましたよ」

「魔法【真贋】? 初めて聞くわ」

どうしよう? 

何の事情も知らない国王様と王妃様の目が点になっている。まだ、自己紹介すらしていない。とりえず、私から先に自己紹介しておこう。

「エメルダさん、とりあえず国王陛下と王妃陛下に御挨拶させて下さい」
「え……あ! そうね(やば…お父様とお母様にバレる!)」

私が公爵令嬢としての挨拶を行うと、お2人とも我に返り、ニコッと微笑む。

「うむ、礼儀に則った綺麗な所作だ。私はファルストム・バードピア、バードピア王国の国王だ。シャーロット、君のことはソーマやドレイクから聞いている。8歳で最強の力を手にし、その力に溺れることなく、平和を望む少女、帝国の初代帝王の再来だな」

威圧感溢れる声、教育には相当厳しそうな雰囲気を感じる。

「私はサルシャーナ・バードピア、バードピア王国の王妃です。シャーロット、あなたとは長い付き合いになりそうね。さて、シャーロットと話し合う前にやることができたわね。あなたも、そう思うでしょ? エ・メ・ル・ダ?」

何故かな? サルシャーナ様の顔が般若に見える。

「あ…何のこと…でしょうか?(やばいわ、どうやって誤魔化そう)」
「シャーロット、あちらの部屋に移動しましょう。あなたやあなたの従魔達には、御礼を言わないといけないのだけど、その前にエメルダとの出会いを聞かせてほしいわ」

う~ん、優しげな口調とは裏腹に、威圧感を感じるのですが?

○○○

トキワさんが3人に《再会》の挨拶をした後、私達は広いリビングへと移動した。私が出会いを話す前に、エメルダさんが焦った表情で、全くデタラメの事を言い始めたので、サルシャーナ様がメイドに目配せし、メイドさんがエメルダさんの背後から近づき、両手でそっと口を塞いだ。これって不敬罪にならないの?

「さあ、準備が整ったわ。シャーロット、話して」
「うう、ううううう(シャーロット、話さないで!)」

エメルダさん、もう諦めようよ。私は彼女との出会いを詳細に話す。すると、ファルストム国王様もサルシャーナ王妃様も、顔は笑顔なのだけど、背後に般若が見えた。これは、明らかに怒っている。彼女は何をしたんだ?

エメルダさんは観念したのか、全てを暴露した。

どうやら彼女は、2人に内緒で【迷宮の森】に訪れた。あの時の双子さんは教育兼戦闘メイドで、互いに子供の頃からの付き合いのため、《身も心も強くなるべく、3人で魔物達を狩っていました》と暴露しちゃった。

国王様と王妃様はカンカンに怒り、屋敷内にいる双子のメイド、ルイーザさんとセシリカさんを呼び出して、3人を床に正座させ、私達がいるにも関わらず、お説教タイムが始まった。

ここにいてはまずいと思い、私とトキワさんは一旦リビングから静かに離れる。私は心の中で、《暴露してごめんなさい》と謝罪しておいた。


……15分後


リビング内の雰囲気が優しくなったので、室内に入ると、3人は燃え尽きたのか、頭から白い煙をあげている。双子のメイド達は、私達に御辞儀した後、真っ白のままリビングを立ち去り、エメルダさんはサルシャーナ王妃の隣に座る。私達との話し合いが、ようやく再開するわけだけど、どれだけきつく叱られていたの?

「ゴホン、ついつい怒りすぎてしまったな。シャーロット、一国の王として、礼を言わせてもらおう。君の従魔が捕らえた暗殺者達の情報は、我々にとって、非常に有意義なものであった」

そういえば、ドレイクから情報の内容を詳しく聞いていなかった。

「内容をお聞きしても構いませんか?」

「構わんよ、既に帝国の上層部に知られている。君は、国が主催するレースを知っているか?」

ミサキさんやホノカさんが参加するレースのことだよね?

「耐久レースのことですか?」
「そうだ。毎年必ず開催されるのだが、2年前1つの通報があった。内容は、【レースの賭博が裏で開催されている】というものだ」
賭博か……日本でいう競馬、競輪、競艇のようなものかな。

「我が国も賭博を禁じているわけではないが、伝統ある耐久レースを賭け事にする行為だけは、断じて許せん! 王族自らが捜査に乗り出したのだが、敵は中々尻尾を出さん! 3ヶ月前、捜査の責任者でもある王太子が、敵に襲撃され、大怪我を負わされる事態にまで発展した」

それって大事件だよ! 王族に対して、そこまでやるとは。

「エメルダさん、その状況下でよく迷宮の森に行きましたね」
強くなるためとはいえ、3人での行動は自殺行為でしょう?

「その状況だからこそよ! この際だから全部話すけど、強くなるため森に入ったことも事実だけど、秘密裏に関係者を捕縛したかったのよ! 私達は森の中に何度も侵入して、第3区域くらいまでは把握していたの。だから、少数精鋭で敵を誘き寄せ、何人かを確保したかった。でも、私達が訪れた日、丁度クックイスクイズの挑戦者達が森に入ってきたの。このままここに滞在すると、彼らに迷惑が掛かると思い、私達は翌日に森から脱出したわ」

そんな事情があったのか。

「エメルダ、先程の説教で何か隠していると思ったが、危険な行為はよせ。お前の強さは承知しているが、万が一ということもあるのだ!」

この様子から察すると、暗殺者4名のいずれかが、黒幕の情報を持っていたのかな?

「暗殺者達の雇い主は、1人ではなかった。1名の指名手配犯と、1名の高位貴族。指名手配の者は、闇で暗躍する組織【ゴルドベーザ】の大幹部だ」

ゴルドベーザ? そんな組織が闇で暗躍しているのか。

「指名手配犯の居場所に関してはわからないが、残り1人の高位貴族は、国庫を管理する財務大臣だ。今回の暗殺未遂事件はバードピアから遠い地で行われたもの、組織の連中も、犯人の一味が捕縛されたことに気づいていない。そこを利用させてもらう。財務大臣を徹底的にマークし、今年行われるレースで【ゴルドベーザ】自体を潰そうと思っている」

国の財政を司る財務大臣が、組織の幹部と関わっているわけか。ミサキさん達が出場するレースの裏で、騎士達は組織のアジトに踏み込み、壊滅を狙っている。組織側も、相当な戦力を有しているはず。

「そういう事情でしたら、耐久レースが終了するまで、私の従魔ドールマクスウェルを王太子様の護衛として、お貸ししましょうか?」

「誠か!?」「「え!?」」

私の言葉に、3人が驚き、席を立つ。

「シャーロット、その申し出は我々としても非常にありがたい。だが、ドールマクスウェルの拠点とする地に、問題が起こるのではないか?」

ああ、国王陛下はそこを心配してくれているのか。

「問題ありません。マクスウェル以外にも、XXやXがいます。彼らは私の従魔となったことで、強さも大幅に上がっています。一定期間、ボスのマクスウェルが抜けたからといって、その地が滅ぼされる危険性もありませんよ。むしろ、戦いに挑んだ者達が滅ぼされるでしょうね。今のXXはSランク、XはAランクですから」

私の言葉に、フォルストム国王陛下は目を見開き、サルシャーナ王妃とエメルダさんは絶句する。

「それに、マクスウェルも鳥人族のことを気に入っているようです。許可さえ頂ければ、お貸ししますよ」

「シャーロット、感謝する。マクスウェル殿をお借りする」
「シャーロット、ありがとうございます。あの方が味方にいれば、我々の士気も大きく上がりますわ」
「ありがとう! マクスウェルがいれば、百人力よ! これでお兄様の仇を討てる!」

国王様と王妃様、エメルダさんから、御礼の言葉を頂いた。でもエメルダさん、お兄様でもある王太子様は死んでいません。

バートピア側の事情を知り対策を練れたことで、次は私の事情を話す。神関係のことは除いている。

アストレカ大陸側の状況を伝えると、3人は人間やエルフといった4種族に対して、悪感情をあまり抱いていなかったけど、ガーランド法王国の仕掛けた戦争の動機に呆れ果てていた。

「アストレカ大陸の種族達は、欲に弱い。何処かで自制しなければ、いつかこちらと同じ【魔素戦争】を引き起こす。戦争は悲劇しか生み出さないことに、何故気づかん! 愚かな連中ではあるが、シャーロットのいる今の状況ならば、国交を回復後、こちらの歴史を教えていけば、戦争の愚かさを知ってくれるやもしれんな」

国王陛下の言う通りだ。
せめて、私が抑止力となって、戦争を起こさないようにしよう。

「エメルダ王女、俺に何か言いたいのか?」

トキワさんの言葉で、私はエメルダさんを見た。
すると、彼女はニヤニヤしながら、トキワさんをじっと見ている。

「久しぶりにトキワと再会したけど、あなたが1国を滅ぼせる程、成長するとはね。ただ、怒りの原因がね~、コウヤ様が知ったら喜ぶのか、落胆するのか、どちらかしらね~」
「ぐ…」

3人は、6年くらい前に起きたSランクのゴースト退治で、トキワさんと知り合ったはずだ。《再会の挨拶》をした時も、トキワさんの成長を褒めていた。エメルダさんはトキワさんと友人関係だから、彼の気に触る点をズバッと言えるのか。

「精霊様が絡んでいるとはいえ、トキワは《己の精神の未熟さ》を知るべきだな」

「国王陛下、わかっています。もっと精進しますよ」

「ああ、精進せい。これは、エメルダにも言えることだ!」
ファルストム国王がギラッと睨むと、エメルダさんも少したじろぐ。
「う……はい、精進します」 

国王陛下はトキワさんの話を切り上げ、こちらを向く。

「シャーロット、そなたと出会えてよかった。この出会いを機に、両大陸全国家とより友好を深めていくことを誓おう」

「ええ、私も誓いますわ。シャーロット、例の事件が片付いたら、我が王国に招待しますね」

ファルストム国王とサルシャーナ王妃、大きな野心もなく、内に潜む狂気もない心の美しい人達だ。そして、エメルダさんも好感の持てる女性だ。

「はい! ありがとうございます!」

私は、明日の戴冠式における注意事項を3人に伝え、屋敷を後にした。ジストニス、サーベント、バードピア、そしてフランジュ、ハーモニック大陸の国々とは仲良くやっていける! アストレカ大陸との国交を回復させるためにも、もっと絆を深めていこう!



○○○ 戴冠式直前~バルコニー入口付近~



《戴冠式開始時刻まであと30分》

既に、全ての用意が整っている。

私の服装は、何と言えばいいのかな? ヨーロッパのとある王室の女王様が着るような豪華なドレスだ。ただし、それの子供バージョンだね。ドレスには、子供っぽいフリルも付いている。私が家族のもとへ帰還する少し前、戴冠式用の子供用ドレスを製作する為、寸法を測られた。1ヶ月という短期間で完成させるとは、職人さんには申し訳ない気分だよ。

通常の戴冠式であれば、屈強な男性冒険者が帝王となるので、フォーマルスーツに着替え、愛剣を高々と掲げ、帝王としての威厳を国民達に示し、抱負を述べる。しかし、8歳の女の子がそんなことをしても、威厳など皆無で、ただ遊んでいるようにしか見えない。そのため、現帝王のソーマさんから、《8歳なんだから、無理せずシャーロットなりの威厳と抱負を見せてくれ!》と言われた。肝心な部分に関しては、全部アドリブでやれってことだ。

昨日の段階で、戴冠式で行う私の示し方をソーマさん達に教えた。皆からOKサインを貰えたので、あとは出たとこ勝負でやるしかない。

天気は快晴、気温20℃、湿度30%、絶好の戴冠式日和で、上空には、デッドスクリームやドールマクスウェル、カムイ達が周囲を警戒し、万全の警備態勢となっている。王宮の庭には、大勢の国民達が駆けつけ、王宮から街へと続く道沿いには、人・人・人で溢れかえり、人々の顔は皆笑顔で、私の登場を今か今かと待っている。あの群衆の何処かに、トキワさん、アッシュさん、リリヤさんもいるはずだ。

私にとっても、とても大切な1日となる。

緊張がないと言ったら、嘘になる。1ヶ月前、こういった群衆の中でスピーチしたけど、あの時は後に厄浄禍津金剛の決戦が控えていたこともあって、あまり緊張を感じなかった。全ての事件が解決し、今回全ての群衆が私に注目している。さすがに、身体が少し震えている。前世での初めての学会デビューも、規模こそ違うけど、こんな体調だったことを思い出す。

戴冠式の会場となる2階バルコニーの関しても、私が昨日の夜に再調整しておいた。プチドッキリの用意も整っており、観客側から見れば、普通のバルコニーに見えるけど、出席者達にとっては少し怖いものに変化している。

あ、各国の人達が到着したようだね。

男性陣も女性陣も、王族の権威と優雅さを纏った威風堂々たる風格の服装を身に纏い、私のいるバルコニー入口手前の方へと歩を進めていく。その歩みからは、些かの緊張も感じ取れない。そして、全員が戴冠式会場の様子が昨日までと異なることを察したのか、足を止める。

このプチドッキリ、表向き皆を驚かせるために製作している。しかし、出席者達の驚く姿を見ることで、私の緊張を解すことこそが、真の目的なのだ!

真っ先に声をあげたのは……クロイス女王か。

「シャーロット、ここで戴冠式をやるんですか! 昨日と全然違うじゃないですか! 聞いてませんよ!」

【クロイス女王】、ドッキリなんだから、前もって言うわけないでしょう。

「これは……魔法じゃない? 本物なのか!? おい、帝王の威厳を見せるどころか、俺達が威厳を保てるか試しているだろ!?」

【アトカさん】、どうせならば各国の王族全員が、度胸のあるところを見せてあげましょうよ。

「シャーロットちゃん、怖すぎるよ! これ以上進みたくない! これ、意味あるの!?」
【シンシアさん】、意味はあります。あなた達にとっても、猛烈に記憶に残るでしょう?
あと、平民口調になってますよ。

「ここを……歩いて、あの椅子に座るのか? 陛下、フランジュ帝国の戴冠式というものは……いつもこうなのですか?」
【クレイグ王太子】、妻でもあるシンシアさんの前で、カッコいいところを見せれますか?

「こんな会場は……世界初だ! バルコニー全体を半透明のガラスにするとは……1日で建設したのか? 耐久性は大丈夫なのか? これが、シャーロットの力……」

【アーク国王】も驚いているけど、シンシアさん程ではない。バードピア王国の人達はどうかな?

「へえ、面白い趣向ね。昨日、シャーロットが私達に会いに来た時、《ドレス用のレギンスを必ず履いて下さい》と念を押していたのは、こいういう事だったのね。外から見た時は、普通のバルコニーだったけど、まさかここから見える場所だけを魔法かスキルで、半透明にするとはね。あなたの力の強大さを伺えるわ」

「ふむ、面白い趣向だな」
「陛下、この仕掛け、レースに使えるのでは?」

やはり、エメルダさんやファルストム国王、サルシャーナ王妃は、高さに慣れているためか、あまり驚いていない。

【私の用意したプチドッキリ……それは、戴冠式の会場となるバルコニーを全て半透明の強化硬質ガラスに変化させ、皆を驚かすというものだ】

昨日、ミスラテル様に私のドッキリ案を現実にするため、簡易神人化していいか相談すると、ガラスの強化技術自体が何処かの国で開発済らしいので、許可を貰えた。また、簡易神人になれば、地球から小さな物質を召喚したり、範囲指定した箇所の構造を別の物質へ変換可能となるらしいので、今回それを利用させてもらい、地球の強化硬質ガラスを召喚し、構造解析してから、バルコニーの材質を構造変化させた。また、ミスリルなどを使用して強度や耐久性を向上させている。

あとは魔法【幻夢】をバルコニーそのものに付与し、地上にいる観客達からは普通のバルコニーに見えるよう設定するだけでいい。このバルコニーの使用方法に関しては、ソーマさんにのみ教えている。だから、戴冠式後も悪用されることはない。

3ヶ国の中でも、クロイス女王が1番驚いているかな。

「クロイス女王もアトカさんも、風魔法【フライ】や【ウィンドシールド】で飛ぶことが可能となったのですから、この程度の高さは問題ないでしょ?」

「そういう問題ではありません。なんで半透明なんですか!?」
クロイス女王、手足が震えている。そこまで怖いかな?

「全部透明にすれば、私達は地上にいる人達全てを見ることができます。今後、こういった記念式典を早々実施しませんから、記憶に残るものにしたかったのです」

「シャーロットの戴冠式よりも、バルコニーの構造が記憶に残りますよ!」
クロイス女王、心配無用です。

「大丈夫。これはあくまで前座、本番はこの後です!」
「前座!?」

出席者の椅子は、半透明区域の両端に設置されており、その後方には、半透明の壁が用意されている。バルコニー自体が、ビル3階程の高さであるため、すぐに慣れるだろう。

「皆様、クロイス女王の護衛を務める私が、先に行き安全を確認しましょう。その後、入場して下さい」
アトカさん、公の場だからか、敬語で話している。当初、この会場を見て感情を乱していたけど、さすがだ。

「アトカが行ってくれれば、私も安心して進めます」

皆の不安を考慮したのか、彼は安心感を与えるため、率先してバルコニー中央を堂々と歩いていく。

「クロイス女王、頼もしい護衛ですね。それでは、私から行かせて頂きます」

鳥人族の【エメルダさん】が、ファルストム国王とサルシャーナ王妃を連れて、臆することなくスタスタと歩いていき、自分達の席に座る。3人共、恐怖心を微塵も感じていない。3人の背後には、立派な羽根を背中に携えた護衛3人が控えている。

その後、クロイス女王が勇気を奮い立たせ、毅然とした態度で自分の椅子まで移動していく。アトカさんは、彼女の席の背後に控えている。

次に、アーク国王陛下、クレイグ王太子、シンシア王太子妃の順に入っていき、席に着席する。3人の背後には、空戦特殊部隊のイオル隊長を含めた3人が控えている。

「シャーロット、ドッキリは成功のようだな。今から、戴冠式を始める。私が挨拶を行い、式を進めていく。呼んだら、あのバルコニー内に入ってきてくれ」
「はい」

ソーマさんがバルコニーに入ったことで、地上にいる国民達がどっと大きな歓声をあげる。彼は各国の王族と違い、ミスリルの立派な鎧を身に纏い、腰にオリハルコンの剣を装備している。また、彼の頭には代々の帝王に受け継がれている王冠が装備されている。王としての威厳を兼ね備えているからか、その佇まいからは大きなカリスマ性を感じさせる。

「只今より戴冠式を開催する!」

プチドッキリで私の緊張も緩和され、出席者達の心も掴めた。
さあ、一世一代の祭りを始めようか!







○○○作者からの一言

次回更新予定日は、3/5(火)朝10時40分となります。

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