元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】

不気味なノイズと機械音声

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○○○ シャーロット視点

昨日来賓室にて、オトギさんがミーシャにヒュデル村で起きた事件の真相を伝えた。やはり、彼女にとって突拍子も無い内容ばかりのため、当初信じてもらえなかったが、私は事件の信憑性を高めるため、彼女に狂獣病の研究資料を見せることで、ようやく信じてもらえることができた。

ミーシャ自身がかなり苦しんだものの、《自分なりの答え》を導き出すことに成功する。夏休み中、オトギさんと2人で故郷への御墓参りに行く約束を取り付けたことで、彼女の抱える闇が完全に晴れたのだろう、とびきり可愛い笑顔を私達に見せてくれた。

王都で起きた全ての事件が解決した。
残すは、竜人族達の悩みのタネである【ハーゴンズパレス遺跡】についてだ。


……土曜日の授業も全て消化し食堂で昼食を食べ終わった頃、コウヤ先生が私とフレヤに、来客の報せを届けてくれた。周囲には私達以外にも、オーキス、リーラ、ミーシャ、アーバンがいたけど、《フレヤ誘拐事件の真実》を知っているのはオーキスとリーラのみのため、私達は詳しいことを言わないまま4人と別れた。

「【ハーゴンズパレス遺跡】、どんな遺跡なのかな? シャーロットはもう知っているのよね?」

「フェルボーニさんのデータに細かく記載されていたけど、遺跡の一部がダンジョン化されているわね。詳しくは、本人から聴きましょう。私も解析データと照らし合わせて、嘘でないのかを確認するから」

現時点で、【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる解析データをフレヤ達に話していない。事前に全員に話してしまうと、コウヤ先生もオトギさんもフレヤも殆ど驚くことなく、ただ聞くだけの状態になってしまう。

これって話す側の立場で考えると、かなり不気味に感じると思う。相手からしたら、既に自分の心を覗かれているから、かなりの緊張を強いられるだろう。事前に解析データを話していないことを2人に伝えておけば、緊張感も少し薄れるし、話す気力も湧き上がるんじゃないかな?

私達が来賓室に行くと、既に人数分の飲み物が置かれており、フェルボーニさん、カビバラさん、オトギさんも寛いでいた。私達とコウヤ先生が3人の対面となるソファーに座る。メンバーは、この6人だけでいいよね。

フェルボーニさん達はすこし疲れているようだけど、比較的顔色も良い。
これなら話を円滑に進められそうだ。

「フェルボーニさん、カビバラさん、私は【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる詳細な内容を解析データから確認していますが、全内容を3人に話していません。ですから、自らの口できちんと語って下さいね」

「あら、そうなの? でも、その方がこちらとしてもありがたいわね。お気遣い、感謝するわ。とりあえず、まずは私達の現状を伝えるわね」

現状か、私としても先にそっちを聞きたいかな。

「私とカビバラの誘拐作戦が失敗し、シャーロット様に見つかったことを集合場所で待機していたメンバー全員に伝えると、みんな……一斉に自害しようとしたわ」

「「自害!」」

私とフレヤがハモって大声を出してしまった。

「私達にとって、《シャーロット様に見つかる》ということは、自国の消滅を意味するのよ」

ええ~、私ってそれだけ恐れられているの?

「大丈夫、私が《安心して、フレヤ様がシャーロット様の怒りを鎮めてくれたわ》と報告したことで、自害を防ぐことができたの。ただ……」

ただ? 
その続きは何だろうか?

「フレヤ様は聖女ではなく海女であること、シャーロット様の転移魔法の件を教えると、『話が違うだろうが!? あのクソババア~~~~』と揃って、作戦考案者でもあるクソババ…コホン…【アルカナ女王】を呪ったわね」

ランダルキア大陸の聖女の名前は、【アルカナ】というのね。
この様子からして、アルカナ様の支持率は極めて低そうだ。

「できれば、あの女を【王】の座から引きずりおろして、新たな聖女を設けたいところなんだけど、それって【アルカナ様を殺す】ってことになるから誰も出来ないのよね」

フェルボーニさん、それって完全に謀反ですよ。
本来、絶対に言ってはいけない言葉ですよ。

「私達以外のメンバーは【作戦失敗】ということで、スカイドラゴンに乗って自国に戻っている最中よ。この後、私達はエルディア国王様とヘンデル教皇様に謁見して、お詫びをするつもり……なんだけど、どうお詫びすればいいのか、エルディア王国に喧嘩売ったも同然だし、戦争になったら100%負け確定だし……はあ~憂鬱だわ~」

フェルボーニさんが、盛大な溜息をついている。
見つかった時の対処も考えておこうよ。

「フェルボーニ様、俺っちは只の運び屋っす。ズフィールド聖王国と何の関係ないんすけど、俺も謁見するんっすか?」

「当たり前でしょうが! アンタがフレヤちゃんを誘拐したんだから、その方法を詳しく言いなさいよ!」

「誘拐といっても簡単っすよ! 餌…コホン…フレヤ様のゴミ出し日に罠をセットして釣れるのを待つだけっす」

この人、さり気なく【餌】と言ったよ。
フレヤもカチンときたのか、カビバラさんを少し睨んでいる。
このままだと、一悶着起こりそうだから話題を変えよう。

「お二人共、戦争の件については御心配無用です。今回の誘拐事件の真実については、現時点で王族の方々、教皇様、私の父エルバラン公爵に話しています。話し合いの結果、戦争を回避する方向性にまとまりました」

「本当なの!?」
「本当っすか!?」

私は静かに頷く。

「ここまでの時点で、世界最強レベルの人達が、国内に3人(私・コウヤ先生・トキワさん)控えています。今回、新たに【蒼青の悪魔】という二つ名で知られているオトギさんが加入しました。周辺諸国からみれば、《世界征服を企んでいるのでは?》と思われても仕方ありません。我々王国側は、そんな野心を微塵も抱えておりません。その事を知ってもらうため、国王陛下は周辺諸国に対し、今回起きた事件を包み隠さず話す予定です」


全員が単独で国を滅ぼせる力を持っている分、国王陛下やルルリア王妃様もかなり気を使っている。今頃、何処かの国と大型通信機で話し合っている頃かな?


「一般市民の方々には、【魔物騒動】に関しては小規模瘴気溜まりの爆発、【誘拐事件】に関しては盗賊共の仕業に見せかけておきました。今回の謁見、竜人族のフェルボーニさんとカビバラさんに関しては、ズフィールド聖王国からの使者として、国賓扱いでお出迎えしてくれる手筈となっています」


昨日、グローバル通信機で話し合いをしている最中、国王陛下の顔色が疲労のせいか、あまり優れなかった。後半あたりになって『早く引退したいよ~』という呟きがボソッと聞き取れた瞬間、ルルリア王妃様が自作のハリセンで陛下の頭をスパ~~ンと叩いていたのが、記憶に新しい。


「シャーロット様! フレヤ様を殺しかけた私達のことを国賓として迎えてくれるの!?」
「御礼は、フレヤとオトギさんに言ってください」

昨日、フレヤが通信機越しに『国賓として迎えてはどうでしょうか?』と、国王陛下やヘンデル教皇に進言したことで、その案が通ったんだよ。エルディア王国はアストレカ大陸の南部に位置しているため、殆どの国民が竜人族を見たことがない。この2人を春蘭祭のゲストとして迎えることで、ランダルキア大陸北方地方にあるとされるズフィールド聖王国と接点を持ち友好関係を築いていく。成功すれば、他の国々とも上手くやっていけるだろう。この説明なら、王都近辺で見慣れない種族を目撃し、《他にも何か起こるのでは?》と不安に思う人達も納得してくれる。


「フレヤ様、オトギちゃん……恩にきるわ。私達の持つハーゴンズパレス遺跡やランダルキア大陸の情報を教えるわ!」

これまでトキワさん経由でしか、ランダルキア大陸の情報を得ていないから私としても助かる。

「『ザザ…ソロッ…ザザ…タ』」
え?

「シャーロット、今何か聞こえなかった?」
フレヤにも聞こえたんだ。

「うん。ノイズと変な音声が聞こえたような?」

「『ザザザ…イブンシ…スベテ…ミツケタ…ケイカク…ジッコウニウツス…リュウジンゾク…カンシャ』」

異分子? 計画? 急に聞こえてきたのは、ノイズ混じりの機械的な音声だ。
これは何なの? 全然、気配を感じ取れない。
コウヤ先生もオトギさんも、私と同じで一気に警戒態勢をとる。

「は!? 私達に感謝ってどういうこと?」
「お前、誰っすか!? 出てこいっす! お前の声に、聞き覚えはないっす!」

うん、2人の言ってることは真実だ。
皆を不安にさせてはいけない!

「大丈夫、お2人が我々を騙していないことは、解析データからわかっています。声の主さん、あなたは何者ですか? 姿を見せてください」

「『ワタシニ…ナマエ…ナイ…デモ…ニンム…アル…』」

任務?
どういうこと?

声だけが聞こえるのに、存在を微塵も感じ取れない。
何処にいるの?

「え!? 光が!」

突然、部屋中央の1点が光り出し、光量がどんどん強くなっていく。

「イブンシタチト……ソノタ……ワレノリョウイキ……【ハーゴンズパレス】…二…ショウタイスル……ワレノリョウイキデハ……オマエタチノチカラムコウ……テンイヲカイシスル」

「「「「「「え!?」」」」」」

もう、目を開けていられない!


○○○


空気が変わった?
それに、湿度もさっきと違う。
まさか、私達全員は本当に何処かへ【転移】されたの?

うう、光のせいで、目がまだ見えない。

「目が見えないよ~。何かおかしいよ~~~、兄様~~何処~~兄様~~」

うん? 
なんか聞き覚えのある声が聞こえたよね?

「ねえ、あなたの名前は何て言うの?」
「うひゃあ! 近くで女性の声がした! あれ? 今の声……まさかシャーロット様?」
私を知っているの? この声…喋り方…まさか……

「あなた……ネルマ?」
「あ、そうです! 目が見えません。何処にいるんですか?」
「ごめん、私も突然現れた光のせいで、目が見えないの」

どういうこと?
何故、ネルマがここにいるの?


……5分程経過すると、やっと目が見えるようになってきた。


「やっぱり、シャーロット様だ~~~!」
「ネルマ!?」

ネルマが半泣きで、私に抱きついてきた。
どうなっているの?
彼女は、クディッチス家にいるはず。
ここは……薄暗い部屋…よね?

「どうして、あなたがここにいるの?」
「その質問、私がしたいです。突然、私の部屋が光ったと思って、目を開けたらここにいました」
「……私と似ているわ」

あの声……《異分子》と《その他》を自分の領域へ転移させると言っていた。

「あ、窓があります! 開けてみますね!」
「あ、こら、ちょっと!」
「うわ~~~綺麗~~~」

ネルマがカーテンを開け放ち、窓を全開にすると、一筋の風が流れ込んできた。私がネルマのもとへ向かい窓の外を眺めると、そこには……広大な敷地が広がっていた。敷地境界線には、万里の長城のような大きな城壁が設置されており、外へと通じる門らしきものは見当たらない。

敷地内には建物がいくつかあり、私達のいる場所は下を見た限り判断すると、3階建の建物の2階の角部屋となっている。

私達の身に、何が起きたの?
みんなは、何処にいるの?






○○○作者からの一言

読者の皆様、本作品を読んで頂き誠にありがとございます。

【旅芸人編】、これにて終了です。
唐突な場面転換となりましたが、このまま次章【ハーゴンズパレス】編に移ります。

ただ、私の転職に伴い、本業の仕事が8月中旬から大きく変更することになりました。
この仕事に慣れるためにも、しばらくの間更新を停止させて頂きます。
9月中旬か10月初旬頃には再開させたいと思っています。

長期間の停止となりますが、今後ともよろしくお願い致します。

犬社護
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