元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】

謁見合否試験

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突然のノック、相手は誰なのかな?

「シャーロット様、ネルマ様、落ち着かれましたか? お部屋に入っても宜しいでしょうか?」

あれ?
この女性の声…何処かで聞いたような?
とても懐かしい声だ。

『シャーロット様、どうしたんですか?』
ネルマが私に小声で質問してきた。

『この声に聞き覚えがあるの。でも、ここはハーゴンズパレス遺跡の内部だから、《あの人》がここにいるはずないわ』

私の勘が正しければ、声の正体は【あの人】だけど…

『とりあえず、声の主を入れますか?』
『そうだね。声の感じからして、敵意はなさそうだし入れてあげよう』

私達は軽く頷いた。

「大丈夫です。お入りになってください」

入口のドアが静かに開き、そこに現れたのは……

「ルクスさん!」

やっぱり、声の主の正体はハーモニック大陸サーベント王国にいる【ルクス・ソルベージュさん】だ!

ダークエルフ族でベアトリスさんの専属メイド、2年ぶりの再会となるのだけど、彼女がどうしてここにいるの?

「シャーロット様、お久しぶりです。あなた方が到着するのをお待ちしておりました」

ルクスさんは初対面時と異なるメイド服を着ており、私達を《お客》として迎え入れてくれている。まるで、この館の《メイド》のような振る舞いをしているのは何故だろう?

「ルクスさん、ベアトリスさんもこの遺跡内にいるのですか?」
「……」

何故、悲しげな目をしているの?
何故、何も喋らないの?

「申し訳ありません。契約上、私はあなた方との会話において、制限が課せられています。その制限に違反しない限り、私の《命》は護られます。契約内容に関しては明かせません」

命!
ということは、契約に違反した内容を話すと死ぬ!?
彼女の目は真剣そのものだ。
嘘偽りはない気がする。

先程の言葉や表情の端々から、状況だけは少しだけ推理できる。

《お待ちしていた》ということは、私達よりも早い時期に遺跡内に転移されていたということ。

ルクスさんのあの悲しみの表情から察すると、転移された人達は他にもいる。もしかしたら、彼女の主人でもあるベアトリスさんも転移されているかもしれない。

でも、契約の関係上、そういった内容を明かせない。
となると、私達からは話す内容も限られてしまう。

「あの~質問してもいいですか?」
私があれこれ考え込んでいるからか、ネルマがルクスさんに質問したようだ。

「あ…はい、どうぞ」

「私はネルマといいます! あなたは、その肌色から察すると、【ダークエルフ族】なんですか?」
今、その質問なの!?

「え…と、はい。私の種族は《ダークエルフ》ですが?」
ネルマの目が、どんどん輝いていく。

「は…初めて拝見しました! シャーロット様が帰還して以降、ハーモニック大陸関係の本がいくつか販売されて、魔人族については本の中でしか知らないんです!」

そうか。
ネルマはスキルエラーの件もあって、ずっと屋敷内に閉じこもっていた。
つい最近になって、屋敷の外へ出られるようになったんだ。
彼女にとって、全てが新鮮なんだね。

「そ…そうなんですか?」
「魔人族の中でも、【ザウルス族】と【獣猿族】を見たいと思っているんです! この遺跡内にいますか?」

ザウルス族と獣猿族か、彼等は魔人族の中でも一際稀有な種族に位置付けられている。全員がケルビウム大森林に住んでいるから、彼等を見たことがない人達は魔鬼族の中にも存在する。ネルマの場合、動物園の動物見たさのような感覚かもしれない。

「え~と、申し訳ありません。その質問にはお答えできません」
「え~、残念無念!」

ネルマは、本気で悔しがっている。
転移の状況を話したにも関わらず、彼女からは危機感というものを感じない。
私を気遣っての行動なのか、それともただの素の行動なのかは不明だけど、彼女を見ていると私も安らぐ。

「お2人共、そろそろ本題に移らせて頂きます。私の役目は2つ、《試験官》と《メイド》です」

私達の身の回りのお世話をする《メイド》はわかるけど、試験官というのはなんだろうか?

「シャーロット様とネルマ様には、この遺跡の【主人】と謁見する条件を満たしているかを判断するための試験に参加してもらいます。私は、その合否を決めるための試験官です」

遺跡の【主人】!?

ダンジョンの場合、【主人】に値するものは、自動でダンジョン内部を構成していく【ダンジョンコア】と【精霊様】の2つとなる。フェルボーニさんの情報によると、ハーゴンズパレスは半ダンジョン化されているから、【主人】がいるのもわかる。でも……

「主人の正体については言えませんよね?」
ルクスさんはゆっくりと頷く。
まあ、当たり前か。

ハーゴンズパレスを統括する主人、果たして何者なのだろうか?
皆の安否も気になる。

遺跡内を探索したいところだけど、私の力が封じられれている以上、迂闊に外を徘徊するのは自殺行為だろう。ルクスさんから可能な限りの情報を収集し、屋敷内を探索していこう。

「それじゃあ、こういった屋敷は何棟あるのですか?」
「御自分でお探し下さい」

う、遺跡の構造についても話せないのね。

「はい! 転移された人数を教えてください!」
ネルマ、いい質問だよ!

「……12人です」
「「12!?」」

そんな大勢の人達が遺跡内の何処かにいるの!
ランダルルキア大陸最大の遺跡と言われているくらいだから、規模も相当大きいはず。
残り9人の人達と出会えるだろうか?

「今後、全員が主人と謁見するための試験を受けてもらう手筈となっております。ただ課題にもよりますが、最悪……死にます」

それはそうだろう。
ここは半ダンジョン化された遺跡の中だし、ボスの正体も不明だ。
ネルマも状況を理解したのか、顔が青ざめている。

「なるほど、試験に合格できれば主人や仲間達と対面出来るんですね?」

ルクスさんは静かに頷いてくれた。遺跡の主人と謁見できれば、《何故私達をここへ転移したのか》、その理由を伺えることができる。

「外出はできませんが、この屋敷内であれば自由に行動して構いません。ただし、ネルマ様!」

ルクスさんがネルマに対し、突然語気を強めた。

「は、はい!」
「シャーロット様と違い、あなたのステータスは封印されておりません。だからといって、無闇にスキルや魔法を行使し、物を破壊しないよう。【全ての事象には、発生理由が存在する】。この言葉をお忘れなきよう、お願い致します」

ルクスさんのあまりの迫力に、ネルマは言葉を失う。
彼女の言葉の言い様、何かあるね。

【ネルマはステータスを封印されていない】

この事象に、何か意味があるのだろう。
これから始まる試験の内容も気になる。

遺跡内にいる転移者達と再会するためにも、一先ずは【主人】の掌の上で転がせてもらおう。

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