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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】
最終話 シャーロット、怒り爆発‼︎
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シエラ様が私達を転移させた目的もわかった。
1)勇者・聖女・仲間達を育て、世界に悪影響を及ぼす【悪】を滅ぼすこと
2)オーキスに不名誉な称号【やらせ勇者(笑)】を付与させないこと
どちらかというと、後者がメインだろう。
私への嫌がらせも、私自身を聖女として一段階成長させるためのもの。
実際、ステータスを封印されたことで、様々な弱点が露呈された。
こういった弱点を何も知らないままだと、敵に何処かで足元を掬われてしまう。
彼女の言い分もわかるけど…まだ手足に力が入らないか。
今は、怒りを鎮めよう。
「シエラ様、私のステータスを封印させたのは、私に弱点を気づかせるだけでなく、オーキスに自信を持たせるため実行したのですか?」
「ええ、そうよ。今後、神クラスのあなたが敵の手によって弱体化される可能性もある。そうなった場合、頼りとなる者は【鬼神変化】を持つコウヤ、トキワ、リリヤの3名、そして最後の希望となりえるのが【勇者オーキス】。勇者の称号は大器晩成型で、レベルが上がれば上がる程、成長率も大きく向上させるのだけど、本人の心の強さ次第で、数値が大きく左右されるの。心の弱いまま成長すれば、瘴気王に立ち向かうこともできず、不名誉な【やらせ勇者(笑)】が付与されるわけ。だから、計画の第一段階【心の成長】を実行に移したの」
心の成長か、何を言いたいのかはわかるよ。
でも、私の成長を促せるための計画だけが、余りにも杜撰過ぎる!
「その計画を実行に移した直後、想定外の情報がもたらされたわ」
想定外の情報?
「【オーキスの称号を通常のものへ変化させることに成功しても、肝心のシャーロットが6年もの間再起不能状態に陥る】という情報が《未来の私》からもたらされたわ。だから、慌てて計画を変更したのだけど、危うくあなたを殺すところだったわ。…本当にごめんなさいね」
コラムズさんの【計画変更】とは、この件について言っていたのか!?
この試験をやり続けると、私が再起不能状態に陥る?
私にとって、精神を壊すほどの厳しい状況が試験中続いたということ?
「あなたが再起不能に陥った原因、それは2つあるわ。1つ目、私自身がこの試験自体を甘く見ていたこと。私は他者の記憶を覗ける力を有しているけど、この力は特別なもの。妖魔族といった悪党共は使用できない。だから、私自身が【悪】の気持ちになって、あなたに試験を受けさせた」
どういうこと?
何を言いたいのだろうか?
「今後、悪党共があなたを弱体化させることに成功したとしても、用心深いあなたは絶対に初対面の相手を信用しないでしょう。敵がここにいる仲間達を操った状態で、あなたを転移させ、今回のような方法で襲ってこられたら、あなたは確実に殺される」
まさか、《悪の気持ちになって》というのは……
「あなたを殺すために動くと仮定したら、信用が第一になってくる。操った仲間で信頼を勝ち取りさえすれば、あとは塔内で殺すだけでいいと考えるわ。だから、計画自体もある程度杜撰にした方が良いと思ったのよ。でも、その杜撰さが原因であなたを苦しめてしまった」
……反論できない。
現に、私はルクスさんを信用したことで死にかけたからね。
「ちなみに、どんな罠を用意していたんですか!?」
「今回、設置した罠で死ぬことはないわ。巨大なシャーロットとオーキスの顔があなた達を追いかけ回したり、食べられることで塔の外に追い出されたり、幻惑魔法で同じ通路を何度も行き来しているうちに、四方から巨大顔に囲まれ食われたり……」
ちょっと待て‼︎
全ての罠に、私かオーキスの顔が絡んでいるじゃないか‼︎
なんで、パック○ンみたいに私をバクバクさせたいのよ‼︎
「もうわかっていると思うけど、これらの罠がシャーロットの精神崩壊を引き起こすキッカケになるのよ」
自分自身の巨大顔に五日間も追いかけ回されたら、おかしくなるかもしれない。
「初日の毒殺未遂に関しては、ルクスのミスよ。ベアトリスのことを心配するあまり、毒の量の配分を間違えたのよ。まあ、結果的にあなたの警戒心を向上させたからいいけど」
よくないわ!
未来の私も言っていたけど、あれって本当にルクスさんのミスなんだね。
怒りゲージが限界に近いけど、まだダメだ。
落ち着け、落ち着くのよ。
「2つ目の原因、それはシャーロットの責任感の強さ。あなたは最弱であるにも関わらず、自分のことよりもネルマやオーキスのことを気にかけていた。映像の未来では、自分の顔に常に追い回された状態であっても、罠の解除方法を模索したり、戦闘の際ネルマやオーキスを指示したりと、ただ只管に仲間を助けることばかり考えていた。そのせいで塔を攻略した瞬間、気が緩んでしまい、自分自身の心が崩壊してしまったの」
もし、このまま試験を続ければ、その通りになっていたかもしれない。暗闇状態の中、魔物だけでなく、自分の巨大顔にまで追いかけ回され食べられて、再挑戦を何度も何度も続け、そこにネルマやオーキスのことを考えながら攻略していったら、心を落ち着かせる余裕もないだろう。
「全ては、私の《杜撰さ》が招いたことなの。本当にごめんなさい」
シエラ様が、再び深く深く頭を下げる。
彼女の言葉から、謝罪が本気であることも窺える。
ここに転移されて7日になるのだけど、私にとっては未だ2日だ。
あの暗闇の中で味わった恐怖は、今でも忘れられない。
「わかりました。頭を上げて下さい。精神崩壊の原因は、私とシエラ様、両方にある。私は、もっと仲間に頼った方が良いのかもしれませんね」
シエラ様が顔を上げると緊張していたのか、強張っていた顔が緩んでいく。
「あの~シエラ様、オトギさんを何故転移させなかったのですか?」
フレヤからの唐突な質問がきた。
そこは、私も気になるところだ。
「それは簡単よ。あなた達の現状を【エルディア国王】と【シャーロットの従魔達】に報せるため転移させなかったの。あなた達を転移させた直後、オトギだけがあの部屋に取り残されたわ。私とコラムズが彼に事情を説明し納得してもらった後、彼はシャーロットの護衛であるドールXに説明する。ドールXが全従魔に説明したことで、従魔達はいつも通りの生活を送っているわ」
ユアラの策略に嵌り、地球に転移されたことを思い出す。
あの時、ドールマクスウェルやカムイがフランジュ帝国帝都内で大暴れしたものね。
フレヤもシエラ様の答えに納得したのか、それ以上の質問を控えた。
「色々と考えた上での強制転移だったのですね。……あ! 肝心な質問を忘れいました。どうやって、そこまでの力を入手したのですか? ダンジョンマスターであっても、範囲外からの転移魔法や私のステータスを弱体化出来ないはずです」
これこそが、一番の謎だ。
「それについては、シャーロットにだけ話していないわね。真実を言うのは簡単だけど、ガーランド様に対して激怒するわよ? それでも聞きたい?」
う、ガーランド様はシエラ様に何をしたのよ?
私が皆を1人1人見ていくと、全員が静かに頷く。
「聞きたいです。教えてください」
シエラ様は覚悟を決めたのか、纏っている空気がやや重くなる。
「勇者と聖女の管理を担った時、私はガーランド様自身の力を一部分けてもらったの。【力の共有】と言えば良いかしら? まあ共有といっても、私に与えられた力は微々たるものよ。力を完全に分けられているからこそ、私には【未来視】も使えるのよ。【神】という存在は自分の領域内であれば、基本何でも出来るわ。ガーランド様ならば《惑星ガーランド》、私は《ハーゴンズパレス》」
それって、シエラ様自身が神と同じ力を持っているってことだよね!?
「私の場合、ハーゴンズパレス内であれば、ガーランド様と同等の力を振るえるわ。だから、シャーロットを弱体化出来た。転移魔法に関しても、霊樹のネットワークを経由すれば、指定した相手をここへ転移させることも可能よ。でもね、遺跡から1歩でも出ると、私はDランクのゴーストとなってしまうのよ」
それって、致命的な弱点でしょうに!?
でも、遺跡自体が広大だから、問題ないのかな?
「しばらくの間、ガーランド様から見張られていたのだけど、元々私はこの力を悪用するつもりなんてなかった。あの方もそれをわかっていたのか、300年程で見張りを解いてくれたの」
神の力を範囲限定で使えるのだから、見張られて当然だ。でも、300年間自分の役目を全うしたことで信頼を得たんだね。
「《神の力》を使えはするけど、私からガーランド様に通信を入れることはできないわ。私は、あくまで《地上に属する者》だから」
あ、そこは私と同じなんだ。
私も、直接ガーランド様に通信を送れない。
「見張りを解かれてからつい最近まで、あの神は……」
あれ?
シエラ様の雰囲気が、どんどん険悪なものへと変化していく。
「あのクソ神は私に対して、1度も連絡を寄越さなかった!」
え、1度も!?
200年前や1000年前の戦争に、勇者と聖女が関与していたよね?
シエラ様自身、彼らを鍛えたとも言っていたよね?
「あの…いつ現れるかわからない《勇者》と《聖女》の存在を、どうやって知ったのですか?」
この2つは、ガーランド様が決める。
連絡が途絶えたのなら、自分で見つけるしかないのだけど、その手段が気になる。
「私は、魔物を自由に作れるわ。その魔物達を全世界に散開させ、情報を集めたのよ。従魔と同じ絆を持っていると考えればいいわ」
私とカムイやドール族のように、通信がどこにいても可能ということね。
「あのクソ神が私の存在を忘れたせいで、こっちは大変だったのよ! いくら魔物達の力があっても、勇者と聖女が《いつ》・《どこで》生まれるのかはわからない! オーキスとシャーロットの存在を知ったのも、あなたがハーモニック大陸へ転移され騒がれた時よ! そして、あなたが【厄浄禍津金剛】を討伐し、奴が全システムを再点検している時に私の存在にやっと気づいたのよ! あ~~~~今、思い出しても腹立つわ!」
その時、何を言われたのだろう?
ていうか、シエラ様の目が怒りに支配されているから、なんとなく想像つくんですけど。
「《君……誰だったかな? 何故、私と同じ力を使えるのか説明してもらえる?》よ。やっぱり、【私】という存在は、あいつの頭から綺麗さっぱり忘れられていたのよ!」
部屋全体が、沈黙に包まれる。なんとなく想像ついていたけど、やはりあの神はシエラ様のことを忘れていたのね。精霊様もシエラ様のことを言ってくれていると思うけど、それでも頭から抜け落ちるとは……
「冗談?」
「ではないわ。あの神は…あのクソ神は本気で私の存在を忘れていたのよ! あいつと連絡が途絶えて以降も、心の何処かで《神なのだから忙しいのよ》と思い込み、これまで生きてきたけど見事に裏切られたわ」
うわあ~あの神、最低だ。
勇者と聖女を管理する立場って、重要な役割だよ!
それを忘れるって、《開いた口が塞がらない》よ
「私はね、霊樹のネットワークを経由することで、特定の相手の記憶を覗けるのよ。2年前、あなたと上位の神がガーランドをボコボコにした瞬間を覗き見た時、胸がスカッとしたわ!」
うわあ~、これまでにないくらいの爽快な笑みだ。
それに対して、周囲の面々からは怒りのエネルギーを感じるのですが?
「その話を聞き、神ガーランドに対して怒りしか沸かないのですが?」
ここにいる全員の気持ちが、今一つになったよね!
《《《あの駄神、帰ってくるな!!!》》》
○○○
話を全て聞き終えた後、私達全員は夕食を戴いた。ここにはシエラ様だけでなく、大勢の元人族のゴースト達が住んでいる。私とネルマは全く気付けなかったけど、屋敷内から時折感じた視線の主が、ゴーストのものだったのだろう。魔物とはいえ元人族の料理人が調理したものだから、味も絶品だった。
悪人か…そういえば夕食時、シエラ様から教えて頂いたことがある。
この国の女王は聖女だったけど、生き残りの妖魔族とも関与していたらしい。代々の王族達が妖魔族と深く関わりを持っていたらしく、これまで彼らから貰ったスキル《継承》を利用して、称号【聖女】を代々の王族に継承していたようだ。
これまでの王族達は皆素晴らしい人物で、シエラ様も彼らに協力していた。でも、今統治している女王は性格最悪で、《試練の塔》のもう一つの入口から何度も無断で進入し、この遺跡に眠るとされる宝を自分の物にしようと企んでいた。
何かおかしいと思い、今の女王の記憶を覗き見ることで《原因》も掴めた。王族内で暗殺事件が3度起こり、ハーゴンズパレス遺跡の真相を知る者達もそれに巻き込まれ、皆が死亡してしまう。首謀者は現女王で、彼女は妖魔族との繋がりを持っているけど、ハーゴンズパレス遺跡については何も知らない。そのせいで、いつしか遺跡内に宝があると勝手に思い込んで、無断侵入を試みていたというわけ。
何度も何度も挑戦してくるので、シエラ様の堪忍袋も遂に切れてしまい、前回の侵入時、女王の築いてきた基本数値・スキル・魔法・称号などを全て削除し、おまけに《レベル1》へと弱体化させた。当然、聖女や継承スキルも無くなったことで、女王も内心大慌てとなっており、この非常事態を打開するべく、強い妖魔族を現在捜索しているとのこと。
また、シエラ様がこれまでに把握している妖魔族の居場所を、コウヤ先生・トキワさん・私に教えてくれた。【妖魔族討伐】という重大任務はトキワさんに引き継がれ、皆と別れた後、早速取り掛かることになっている。
夕食時、皆が意気揚々と笑顔でそういった話し合いをしたのだけど、私だけは心から笑顔を見せることができなかった。その思いをシエラ様に悟られないよう、平然とした顔で皆の話に耳を傾ける。
途中、オーキスとも話し合ったけど、【瘴気王を一撃で倒す! これが僕の目標だ!】と意気込み、明日から訓練を再開する。コウヤ先生も彼を後押ししてくれるので、本気でやり遂げるかもしれない。
和気藹々と談笑が続く中、私は……お仕置き対象者に対する天罰をゲーム画面をイメージしながら構築させていった。
そして時間は《丑三つ時》とされる深夜2時。
私のいる場所は、展望エリアから少し離れた空中だ。
ステータスに関しては、ミスラテル様の計らいにより封印も解除済みで、深夜盛大にやらかすことにも許可を貰っている。
「くくくくく、シエラ様のいる手前、心でも納得させるように振る舞っていたけど、私の怒りは収まらない。……収まってたまるか‼︎‼︎」
私以外の全員がシエラ様の理由に納得しているようだけど、私と同じ目に遭っていないから、そんな反応が出来るんだよ‼︎
平然とした反応で話を聞きながら、ずっとずっと我慢していた。
今、この怒りを解き放つ時がきたのだ!
全員が寝ていることは折り込み済み。
「くくくく、巨大顔がそんなにお好きなら、思う存分堪能するがいい。お仕置き対象者はシエラ、オーキス、試験官達(コウヤ、ルクス、ベアトリス、アトカ、イミア)! 【簡易神人化】発動‼︎」
オーキスは私の命の恩人でもあるけど、瘴気王の件は別問題だ。オーキスと国王陛下は《勇者の尊厳》を第一、私は《人の命》を第一に考えている。勇者の尊厳など知ったことではない。彼の目標は瘴気王を一撃で倒すこと、最低でも全ステータス3000超えが必要となる。8年後、その数値を下回っていたら、私の案を執行しよう。
【やらせ勇者(笑)】大いに結構!
そして、オーキスと試験官達は、初代聖女のシエラ様に怯えすぎだ。
彼女の過去と事情を聞いたことで同情し信頼してしまい、試験内容を軽く聞いただけで納得するという重大なミスを犯す。もっと詳細に聞いていれば、試験の杜撰さに気づき、私への被害を抑えることができたはずだ‼︎
初代聖女シエラ!
あなたの正体と動機もわかったけど、私に対する仕打ちがやり過ぎなんだよ!
ダンジョン制作後、何故自分で試さない?
普通、予行演習とかするでしょうが!?
杜撰に制作しているのなら尚更だ‼︎
そう、皆が私に対して無神経過ぎるのだ!
私自身のこれまでの《やらかし》も悪いとは思うけど、今回私への配慮がなさ過ぎる!
精神崩壊を起こさず、ハッピーエンドになったと思っているのだろうが大間違いだ!
お仕置き対象者だけは、【バッドエンド】にしてやる!
「私の味わった屈辱、存分に味わうといい‼︎」
ハーゴンズパレスを一時的に乗っ取る。
展望エリアにある壁全体を一時的に透明化させ、この地域一体を少し夜明け程度に明るくする。
全ての人物を掌握し、【とあるお仕置き】をイメージ構築させていく。
「あはは…あははははははは、準備が整ったよ!」
全員が無防備で寝ているね。
「さあ、ショーの始まりだ! お仕置き対象者達の動きを止める! 【ショックボルト】」
お仕置きから除外されたメンバー達は、【ダーククレイドル】で囲っているため、目覚めることはない。
「「「「「あばばばばばばばばばばばばば」」」」」
くくくく、全員が不意の電撃(麻痺付)で目を見開いている。
私の力が封印されたままと思っているから、安心しきっている。
「さあ巨大顔の皆さん、お仕置き対象者達を食べちゃって下さい‼︎」
私は、お仕置き対象者の巨大顔(直径8m)を空高くに制作し、同じ顔をした対象者達に落とす。くくくく、薄暗くてわかりにくいけど、徐々に何なのか鮮明になってゆく。薄暗い中で、巨大顔に襲われる恐怖を味わうといい‼︎
幻惑魔法だから、透明の壁も素通りだ。
おお、口を大きくバクバクしながら対象者達のもとへ落下していく。
「「「「「あばばばばばばば~~~」」」」」
《《《バク!》》》
おお、全員があばばばばと連呼し驚愕しながら、自分に食べられたよ。
そう、その表情が見たかった!
「まだまだ行くよ~~~~。第二陣、クスグリ地獄+上下左右巨大顔地獄、いってみよ~~~~~」
シエラ
(なんで…巨大な顔の私が…まさか…え…今度は何? 大量の手だけが次々と具現化されていくわ。ちょっと何する気なの! ふふ…あはははは)
「「「「「あはははははは」」」」」
よし、よし、全員が混乱状態だ!
シエラ様も私に気づいたのか、こっちを見ている。
くくくく、遅い、遅い。
あなたの力は、簡易神具で既に封印している。
己で作った罠を己で喰らうがいい‼︎
クスぐられながら、上下左右から巨大顔が徐々に近づいてくるのだ‼︎
私の味わう予定だった試験、アンタ達に少しだけ味わせてあげるよ‼︎
【第三陣 小顔啄み地獄】、自分の顔に啄まれながら笑え、笑い尽くせ!
『パクパクパクパクパクパクパクパク』
【第四陣 小顔ペロペロ地獄】‼︎
カムイに協力してもらい、小さなドラゴン達を召喚して、幻惑魔法でお仕置き対象者達の小顔へと変化させる。だから、唾は本物なのだよ!
「全員、唾塗れとなりやがれ!」
『ペロペロペロペロペロペロペロペロ』
シエラ
「あははは~~いや~~~やめて~~~私が~~~悪かっ、う」
言わせるか!
自分の顔とキスするがいい!
いいねいいね、お仕置きメンバー達の大絶叫が木霊しているよ!
味わっている地獄をひとくくりにすると、名付けて【パッ○マン地獄】だ‼︎
まだまだあるよ~~~~~!!!
「私の受けた痛みを思い知れ~~~~~」
……
今この瞬間、狂気と化した小さな女の子の笑い声だけが、周辺に木霊する。お仕置きの一部始終を見ているゴースト族達は光り輝く少女の姿を見て、こう思う。
《地獄の帝王シャーロット》
その後、彼女のお仕置きは【簡易神人化】の関係上20分と短かいものの、これまでの集大成なのか、彼女の考案した地獄が次々と解放されていった。
そして、自らに潜む鬱憤を晴らした少女は、全てから解放され爽快感に満ち溢れた笑みを浮かべ就寝する。
お仕置きされた者達はその場から動くことなく、呆然としながら朝日を迎えることとなる。翌朝、お仕置き対象者達がシャーロットに土下座謝罪したことは言うまでもない。
後日、試験の顛末をトキワから聞いたアッシュとリリヤはこう思う。
『『どちらにも選ばれなくて良かった』』と。
シャーロットの冒険の一幕は、これで終わることとなる。
しかし、蠢く敵が世界中に数多く存在する。
全員が彼女の存在を認知した。
シャーロットの冒険は、まだまだ続きそうだ。
《完》
○○○ 作者からの一言
本作品を連載してから約3年2ヶ月、読者の皆様、完結まで読んで頂き誠にありがとうございます。Web版の連載はこれにて終了しますが、【つまらなかった箇所】が多数存在すると思います。読者の方々の感想を基に、書籍版では《そういった箇所》を全てカットして、より面白くてしていきたいと思います(^o^)/
皆さま、今後とも宜しくお願いたします!
1)勇者・聖女・仲間達を育て、世界に悪影響を及ぼす【悪】を滅ぼすこと
2)オーキスに不名誉な称号【やらせ勇者(笑)】を付与させないこと
どちらかというと、後者がメインだろう。
私への嫌がらせも、私自身を聖女として一段階成長させるためのもの。
実際、ステータスを封印されたことで、様々な弱点が露呈された。
こういった弱点を何も知らないままだと、敵に何処かで足元を掬われてしまう。
彼女の言い分もわかるけど…まだ手足に力が入らないか。
今は、怒りを鎮めよう。
「シエラ様、私のステータスを封印させたのは、私に弱点を気づかせるだけでなく、オーキスに自信を持たせるため実行したのですか?」
「ええ、そうよ。今後、神クラスのあなたが敵の手によって弱体化される可能性もある。そうなった場合、頼りとなる者は【鬼神変化】を持つコウヤ、トキワ、リリヤの3名、そして最後の希望となりえるのが【勇者オーキス】。勇者の称号は大器晩成型で、レベルが上がれば上がる程、成長率も大きく向上させるのだけど、本人の心の強さ次第で、数値が大きく左右されるの。心の弱いまま成長すれば、瘴気王に立ち向かうこともできず、不名誉な【やらせ勇者(笑)】が付与されるわけ。だから、計画の第一段階【心の成長】を実行に移したの」
心の成長か、何を言いたいのかはわかるよ。
でも、私の成長を促せるための計画だけが、余りにも杜撰過ぎる!
「その計画を実行に移した直後、想定外の情報がもたらされたわ」
想定外の情報?
「【オーキスの称号を通常のものへ変化させることに成功しても、肝心のシャーロットが6年もの間再起不能状態に陥る】という情報が《未来の私》からもたらされたわ。だから、慌てて計画を変更したのだけど、危うくあなたを殺すところだったわ。…本当にごめんなさいね」
コラムズさんの【計画変更】とは、この件について言っていたのか!?
この試験をやり続けると、私が再起不能状態に陥る?
私にとって、精神を壊すほどの厳しい状況が試験中続いたということ?
「あなたが再起不能に陥った原因、それは2つあるわ。1つ目、私自身がこの試験自体を甘く見ていたこと。私は他者の記憶を覗ける力を有しているけど、この力は特別なもの。妖魔族といった悪党共は使用できない。だから、私自身が【悪】の気持ちになって、あなたに試験を受けさせた」
どういうこと?
何を言いたいのだろうか?
「今後、悪党共があなたを弱体化させることに成功したとしても、用心深いあなたは絶対に初対面の相手を信用しないでしょう。敵がここにいる仲間達を操った状態で、あなたを転移させ、今回のような方法で襲ってこられたら、あなたは確実に殺される」
まさか、《悪の気持ちになって》というのは……
「あなたを殺すために動くと仮定したら、信用が第一になってくる。操った仲間で信頼を勝ち取りさえすれば、あとは塔内で殺すだけでいいと考えるわ。だから、計画自体もある程度杜撰にした方が良いと思ったのよ。でも、その杜撰さが原因であなたを苦しめてしまった」
……反論できない。
現に、私はルクスさんを信用したことで死にかけたからね。
「ちなみに、どんな罠を用意していたんですか!?」
「今回、設置した罠で死ぬことはないわ。巨大なシャーロットとオーキスの顔があなた達を追いかけ回したり、食べられることで塔の外に追い出されたり、幻惑魔法で同じ通路を何度も行き来しているうちに、四方から巨大顔に囲まれ食われたり……」
ちょっと待て‼︎
全ての罠に、私かオーキスの顔が絡んでいるじゃないか‼︎
なんで、パック○ンみたいに私をバクバクさせたいのよ‼︎
「もうわかっていると思うけど、これらの罠がシャーロットの精神崩壊を引き起こすキッカケになるのよ」
自分自身の巨大顔に五日間も追いかけ回されたら、おかしくなるかもしれない。
「初日の毒殺未遂に関しては、ルクスのミスよ。ベアトリスのことを心配するあまり、毒の量の配分を間違えたのよ。まあ、結果的にあなたの警戒心を向上させたからいいけど」
よくないわ!
未来の私も言っていたけど、あれって本当にルクスさんのミスなんだね。
怒りゲージが限界に近いけど、まだダメだ。
落ち着け、落ち着くのよ。
「2つ目の原因、それはシャーロットの責任感の強さ。あなたは最弱であるにも関わらず、自分のことよりもネルマやオーキスのことを気にかけていた。映像の未来では、自分の顔に常に追い回された状態であっても、罠の解除方法を模索したり、戦闘の際ネルマやオーキスを指示したりと、ただ只管に仲間を助けることばかり考えていた。そのせいで塔を攻略した瞬間、気が緩んでしまい、自分自身の心が崩壊してしまったの」
もし、このまま試験を続ければ、その通りになっていたかもしれない。暗闇状態の中、魔物だけでなく、自分の巨大顔にまで追いかけ回され食べられて、再挑戦を何度も何度も続け、そこにネルマやオーキスのことを考えながら攻略していったら、心を落ち着かせる余裕もないだろう。
「全ては、私の《杜撰さ》が招いたことなの。本当にごめんなさい」
シエラ様が、再び深く深く頭を下げる。
彼女の言葉から、謝罪が本気であることも窺える。
ここに転移されて7日になるのだけど、私にとっては未だ2日だ。
あの暗闇の中で味わった恐怖は、今でも忘れられない。
「わかりました。頭を上げて下さい。精神崩壊の原因は、私とシエラ様、両方にある。私は、もっと仲間に頼った方が良いのかもしれませんね」
シエラ様が顔を上げると緊張していたのか、強張っていた顔が緩んでいく。
「あの~シエラ様、オトギさんを何故転移させなかったのですか?」
フレヤからの唐突な質問がきた。
そこは、私も気になるところだ。
「それは簡単よ。あなた達の現状を【エルディア国王】と【シャーロットの従魔達】に報せるため転移させなかったの。あなた達を転移させた直後、オトギだけがあの部屋に取り残されたわ。私とコラムズが彼に事情を説明し納得してもらった後、彼はシャーロットの護衛であるドールXに説明する。ドールXが全従魔に説明したことで、従魔達はいつも通りの生活を送っているわ」
ユアラの策略に嵌り、地球に転移されたことを思い出す。
あの時、ドールマクスウェルやカムイがフランジュ帝国帝都内で大暴れしたものね。
フレヤもシエラ様の答えに納得したのか、それ以上の質問を控えた。
「色々と考えた上での強制転移だったのですね。……あ! 肝心な質問を忘れいました。どうやって、そこまでの力を入手したのですか? ダンジョンマスターであっても、範囲外からの転移魔法や私のステータスを弱体化出来ないはずです」
これこそが、一番の謎だ。
「それについては、シャーロットにだけ話していないわね。真実を言うのは簡単だけど、ガーランド様に対して激怒するわよ? それでも聞きたい?」
う、ガーランド様はシエラ様に何をしたのよ?
私が皆を1人1人見ていくと、全員が静かに頷く。
「聞きたいです。教えてください」
シエラ様は覚悟を決めたのか、纏っている空気がやや重くなる。
「勇者と聖女の管理を担った時、私はガーランド様自身の力を一部分けてもらったの。【力の共有】と言えば良いかしら? まあ共有といっても、私に与えられた力は微々たるものよ。力を完全に分けられているからこそ、私には【未来視】も使えるのよ。【神】という存在は自分の領域内であれば、基本何でも出来るわ。ガーランド様ならば《惑星ガーランド》、私は《ハーゴンズパレス》」
それって、シエラ様自身が神と同じ力を持っているってことだよね!?
「私の場合、ハーゴンズパレス内であれば、ガーランド様と同等の力を振るえるわ。だから、シャーロットを弱体化出来た。転移魔法に関しても、霊樹のネットワークを経由すれば、指定した相手をここへ転移させることも可能よ。でもね、遺跡から1歩でも出ると、私はDランクのゴーストとなってしまうのよ」
それって、致命的な弱点でしょうに!?
でも、遺跡自体が広大だから、問題ないのかな?
「しばらくの間、ガーランド様から見張られていたのだけど、元々私はこの力を悪用するつもりなんてなかった。あの方もそれをわかっていたのか、300年程で見張りを解いてくれたの」
神の力を範囲限定で使えるのだから、見張られて当然だ。でも、300年間自分の役目を全うしたことで信頼を得たんだね。
「《神の力》を使えはするけど、私からガーランド様に通信を入れることはできないわ。私は、あくまで《地上に属する者》だから」
あ、そこは私と同じなんだ。
私も、直接ガーランド様に通信を送れない。
「見張りを解かれてからつい最近まで、あの神は……」
あれ?
シエラ様の雰囲気が、どんどん険悪なものへと変化していく。
「あのクソ神は私に対して、1度も連絡を寄越さなかった!」
え、1度も!?
200年前や1000年前の戦争に、勇者と聖女が関与していたよね?
シエラ様自身、彼らを鍛えたとも言っていたよね?
「あの…いつ現れるかわからない《勇者》と《聖女》の存在を、どうやって知ったのですか?」
この2つは、ガーランド様が決める。
連絡が途絶えたのなら、自分で見つけるしかないのだけど、その手段が気になる。
「私は、魔物を自由に作れるわ。その魔物達を全世界に散開させ、情報を集めたのよ。従魔と同じ絆を持っていると考えればいいわ」
私とカムイやドール族のように、通信がどこにいても可能ということね。
「あのクソ神が私の存在を忘れたせいで、こっちは大変だったのよ! いくら魔物達の力があっても、勇者と聖女が《いつ》・《どこで》生まれるのかはわからない! オーキスとシャーロットの存在を知ったのも、あなたがハーモニック大陸へ転移され騒がれた時よ! そして、あなたが【厄浄禍津金剛】を討伐し、奴が全システムを再点検している時に私の存在にやっと気づいたのよ! あ~~~~今、思い出しても腹立つわ!」
その時、何を言われたのだろう?
ていうか、シエラ様の目が怒りに支配されているから、なんとなく想像つくんですけど。
「《君……誰だったかな? 何故、私と同じ力を使えるのか説明してもらえる?》よ。やっぱり、【私】という存在は、あいつの頭から綺麗さっぱり忘れられていたのよ!」
部屋全体が、沈黙に包まれる。なんとなく想像ついていたけど、やはりあの神はシエラ様のことを忘れていたのね。精霊様もシエラ様のことを言ってくれていると思うけど、それでも頭から抜け落ちるとは……
「冗談?」
「ではないわ。あの神は…あのクソ神は本気で私の存在を忘れていたのよ! あいつと連絡が途絶えて以降も、心の何処かで《神なのだから忙しいのよ》と思い込み、これまで生きてきたけど見事に裏切られたわ」
うわあ~あの神、最低だ。
勇者と聖女を管理する立場って、重要な役割だよ!
それを忘れるって、《開いた口が塞がらない》よ
「私はね、霊樹のネットワークを経由することで、特定の相手の記憶を覗けるのよ。2年前、あなたと上位の神がガーランドをボコボコにした瞬間を覗き見た時、胸がスカッとしたわ!」
うわあ~、これまでにないくらいの爽快な笑みだ。
それに対して、周囲の面々からは怒りのエネルギーを感じるのですが?
「その話を聞き、神ガーランドに対して怒りしか沸かないのですが?」
ここにいる全員の気持ちが、今一つになったよね!
《《《あの駄神、帰ってくるな!!!》》》
○○○
話を全て聞き終えた後、私達全員は夕食を戴いた。ここにはシエラ様だけでなく、大勢の元人族のゴースト達が住んでいる。私とネルマは全く気付けなかったけど、屋敷内から時折感じた視線の主が、ゴーストのものだったのだろう。魔物とはいえ元人族の料理人が調理したものだから、味も絶品だった。
悪人か…そういえば夕食時、シエラ様から教えて頂いたことがある。
この国の女王は聖女だったけど、生き残りの妖魔族とも関与していたらしい。代々の王族達が妖魔族と深く関わりを持っていたらしく、これまで彼らから貰ったスキル《継承》を利用して、称号【聖女】を代々の王族に継承していたようだ。
これまでの王族達は皆素晴らしい人物で、シエラ様も彼らに協力していた。でも、今統治している女王は性格最悪で、《試練の塔》のもう一つの入口から何度も無断で進入し、この遺跡に眠るとされる宝を自分の物にしようと企んでいた。
何かおかしいと思い、今の女王の記憶を覗き見ることで《原因》も掴めた。王族内で暗殺事件が3度起こり、ハーゴンズパレス遺跡の真相を知る者達もそれに巻き込まれ、皆が死亡してしまう。首謀者は現女王で、彼女は妖魔族との繋がりを持っているけど、ハーゴンズパレス遺跡については何も知らない。そのせいで、いつしか遺跡内に宝があると勝手に思い込んで、無断侵入を試みていたというわけ。
何度も何度も挑戦してくるので、シエラ様の堪忍袋も遂に切れてしまい、前回の侵入時、女王の築いてきた基本数値・スキル・魔法・称号などを全て削除し、おまけに《レベル1》へと弱体化させた。当然、聖女や継承スキルも無くなったことで、女王も内心大慌てとなっており、この非常事態を打開するべく、強い妖魔族を現在捜索しているとのこと。
また、シエラ様がこれまでに把握している妖魔族の居場所を、コウヤ先生・トキワさん・私に教えてくれた。【妖魔族討伐】という重大任務はトキワさんに引き継がれ、皆と別れた後、早速取り掛かることになっている。
夕食時、皆が意気揚々と笑顔でそういった話し合いをしたのだけど、私だけは心から笑顔を見せることができなかった。その思いをシエラ様に悟られないよう、平然とした顔で皆の話に耳を傾ける。
途中、オーキスとも話し合ったけど、【瘴気王を一撃で倒す! これが僕の目標だ!】と意気込み、明日から訓練を再開する。コウヤ先生も彼を後押ししてくれるので、本気でやり遂げるかもしれない。
和気藹々と談笑が続く中、私は……お仕置き対象者に対する天罰をゲーム画面をイメージしながら構築させていった。
そして時間は《丑三つ時》とされる深夜2時。
私のいる場所は、展望エリアから少し離れた空中だ。
ステータスに関しては、ミスラテル様の計らいにより封印も解除済みで、深夜盛大にやらかすことにも許可を貰っている。
「くくくくく、シエラ様のいる手前、心でも納得させるように振る舞っていたけど、私の怒りは収まらない。……収まってたまるか‼︎‼︎」
私以外の全員がシエラ様の理由に納得しているようだけど、私と同じ目に遭っていないから、そんな反応が出来るんだよ‼︎
平然とした反応で話を聞きながら、ずっとずっと我慢していた。
今、この怒りを解き放つ時がきたのだ!
全員が寝ていることは折り込み済み。
「くくくく、巨大顔がそんなにお好きなら、思う存分堪能するがいい。お仕置き対象者はシエラ、オーキス、試験官達(コウヤ、ルクス、ベアトリス、アトカ、イミア)! 【簡易神人化】発動‼︎」
オーキスは私の命の恩人でもあるけど、瘴気王の件は別問題だ。オーキスと国王陛下は《勇者の尊厳》を第一、私は《人の命》を第一に考えている。勇者の尊厳など知ったことではない。彼の目標は瘴気王を一撃で倒すこと、最低でも全ステータス3000超えが必要となる。8年後、その数値を下回っていたら、私の案を執行しよう。
【やらせ勇者(笑)】大いに結構!
そして、オーキスと試験官達は、初代聖女のシエラ様に怯えすぎだ。
彼女の過去と事情を聞いたことで同情し信頼してしまい、試験内容を軽く聞いただけで納得するという重大なミスを犯す。もっと詳細に聞いていれば、試験の杜撰さに気づき、私への被害を抑えることができたはずだ‼︎
初代聖女シエラ!
あなたの正体と動機もわかったけど、私に対する仕打ちがやり過ぎなんだよ!
ダンジョン制作後、何故自分で試さない?
普通、予行演習とかするでしょうが!?
杜撰に制作しているのなら尚更だ‼︎
そう、皆が私に対して無神経過ぎるのだ!
私自身のこれまでの《やらかし》も悪いとは思うけど、今回私への配慮がなさ過ぎる!
精神崩壊を起こさず、ハッピーエンドになったと思っているのだろうが大間違いだ!
お仕置き対象者だけは、【バッドエンド】にしてやる!
「私の味わった屈辱、存分に味わうといい‼︎」
ハーゴンズパレスを一時的に乗っ取る。
展望エリアにある壁全体を一時的に透明化させ、この地域一体を少し夜明け程度に明るくする。
全ての人物を掌握し、【とあるお仕置き】をイメージ構築させていく。
「あはは…あははははははは、準備が整ったよ!」
全員が無防備で寝ているね。
「さあ、ショーの始まりだ! お仕置き対象者達の動きを止める! 【ショックボルト】」
お仕置きから除外されたメンバー達は、【ダーククレイドル】で囲っているため、目覚めることはない。
「「「「「あばばばばばばばばばばばばば」」」」」
くくくく、全員が不意の電撃(麻痺付)で目を見開いている。
私の力が封印されたままと思っているから、安心しきっている。
「さあ巨大顔の皆さん、お仕置き対象者達を食べちゃって下さい‼︎」
私は、お仕置き対象者の巨大顔(直径8m)を空高くに制作し、同じ顔をした対象者達に落とす。くくくく、薄暗くてわかりにくいけど、徐々に何なのか鮮明になってゆく。薄暗い中で、巨大顔に襲われる恐怖を味わうといい‼︎
幻惑魔法だから、透明の壁も素通りだ。
おお、口を大きくバクバクしながら対象者達のもとへ落下していく。
「「「「「あばばばばばばば~~~」」」」」
《《《バク!》》》
おお、全員があばばばばと連呼し驚愕しながら、自分に食べられたよ。
そう、その表情が見たかった!
「まだまだ行くよ~~~~。第二陣、クスグリ地獄+上下左右巨大顔地獄、いってみよ~~~~~」
シエラ
(なんで…巨大な顔の私が…まさか…え…今度は何? 大量の手だけが次々と具現化されていくわ。ちょっと何する気なの! ふふ…あはははは)
「「「「「あはははははは」」」」」
よし、よし、全員が混乱状態だ!
シエラ様も私に気づいたのか、こっちを見ている。
くくくく、遅い、遅い。
あなたの力は、簡易神具で既に封印している。
己で作った罠を己で喰らうがいい‼︎
クスぐられながら、上下左右から巨大顔が徐々に近づいてくるのだ‼︎
私の味わう予定だった試験、アンタ達に少しだけ味わせてあげるよ‼︎
【第三陣 小顔啄み地獄】、自分の顔に啄まれながら笑え、笑い尽くせ!
『パクパクパクパクパクパクパクパク』
【第四陣 小顔ペロペロ地獄】‼︎
カムイに協力してもらい、小さなドラゴン達を召喚して、幻惑魔法でお仕置き対象者達の小顔へと変化させる。だから、唾は本物なのだよ!
「全員、唾塗れとなりやがれ!」
『ペロペロペロペロペロペロペロペロ』
シエラ
「あははは~~いや~~~やめて~~~私が~~~悪かっ、う」
言わせるか!
自分の顔とキスするがいい!
いいねいいね、お仕置きメンバー達の大絶叫が木霊しているよ!
味わっている地獄をひとくくりにすると、名付けて【パッ○マン地獄】だ‼︎
まだまだあるよ~~~~~!!!
「私の受けた痛みを思い知れ~~~~~」
……
今この瞬間、狂気と化した小さな女の子の笑い声だけが、周辺に木霊する。お仕置きの一部始終を見ているゴースト族達は光り輝く少女の姿を見て、こう思う。
《地獄の帝王シャーロット》
その後、彼女のお仕置きは【簡易神人化】の関係上20分と短かいものの、これまでの集大成なのか、彼女の考案した地獄が次々と解放されていった。
そして、自らに潜む鬱憤を晴らした少女は、全てから解放され爽快感に満ち溢れた笑みを浮かべ就寝する。
お仕置きされた者達はその場から動くことなく、呆然としながら朝日を迎えることとなる。翌朝、お仕置き対象者達がシャーロットに土下座謝罪したことは言うまでもない。
後日、試験の顛末をトキワから聞いたアッシュとリリヤはこう思う。
『『どちらにも選ばれなくて良かった』』と。
シャーロットの冒険の一幕は、これで終わることとなる。
しかし、蠢く敵が世界中に数多く存在する。
全員が彼女の存在を認知した。
シャーロットの冒険は、まだまだ続きそうだ。
《完》
○○○ 作者からの一言
本作品を連載してから約3年2ヶ月、読者の皆様、完結まで読んで頂き誠にありがとうございます。Web版の連載はこれにて終了しますが、【つまらなかった箇所】が多数存在すると思います。読者の方々の感想を基に、書籍版では《そういった箇所》を全てカットして、より面白くてしていきたいと思います(^o^)/
皆さま、今後とも宜しくお願いたします!
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《転移してからが長い》という感想は、他の方々からも頂いています。
次作品を書く上で、キョウさんや他の読者の方々の意見を参考にさせて頂きます。
感想、ありがとうございます(^^)
ご無沙汰です(汗)
今思い出して読みに来ましたが、完結されてたんですね…
では感想です
シャーロットの怒りの矛先がガーランド様から初代聖女に移っただけで、アレの責任なのは変わらないって話ですな(*˘˘*)
コミカライズ版では“まだ”マトモだから余計に目立ってるしw
今も修行と言う名の罰を受けてる最中でしょうけど、是非とも今回の件も査定に含めて欲しいです。 これでは流石に歴代の勇者と聖女が憐れ過ぎですし
この試験後の続きは書籍版で読めるかもって仄めかし方ですけど、それでもWEB版で終わって欲しかったです。 たぶん大人の事情的な何かが在ったんでしょうから仕方が無いと思えますが(´._.)
それでも完走された事には変わりないですし、其処は祝福させて頂きたいと思います(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
では何時か何処かで!
バイバイ
∧_∧__
/(・ω・`) /\
/| ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| |/
 ̄ ̄ ̄ ̄
\パタンッ /
_____
/ / / |
| ̄ ̄ ̄ ̄| |
|____|/
キリンさん、最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
web版では、ガーランドのふざけ方が目立ち過ぎていたので、
書籍版とコミック版ではまともな神にしています( ^ω^ )
また、ネタバレになるのであまり言えませんが、書籍版のシャーロットはweb版と違った選択をとるので、異なる未来へ向かうでしょう。
スキル売りの子の祖父祖母への手紙、手紙を読んだ時の祖父祖母の反応が見たかった
嬉々さん、感想ありがとうございます。
ウェブ版で足らなかった箇所に関しては、書籍版で補足していく予定です。
ユアラ関係は、書籍9巻で書くと思います(^。^)