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第一章 不遇からの脱出
四話 ミルフィアに迫る危機
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ウィンドルお兄様と入れ替わりで、学園服を纏うミルフィア様が入って来る。
その悲嘆に暮れる姿から、何か重大な出来事が起きたことを物語っている。
彼女の身に、一体何が起きているのだろう?
ルミネも彼女の顔色を見て只事じゃないと思い、邪魔にならないよう私と彼女から距離をとる。
「ティアナ様、目覚めたばかりなのに申し訳ありません。どうしても、今話しておかないといけない緊急案件があります」
ルミネから聞いていると思うけど、私自身を改めて見たことで再認識したのか、彼女は深々と頭を下げる。ミルフィア様は私の欠陥について知りながらも決して馬鹿にせず、これまでにいくつものアドバイスをしてくれた事もあり、非常に助かっている。数少ない貴族の友人だからこそ、彼女の悩みを聞き、今度は私が彼女を助けてあげたい。
「身体は大丈夫なので気にしないでください。それでその案件というのは?」
ミルフィア様は俯いたまま、何も語ろうとしない。
その悲壮な姿を見るだけで、相当な何かを心に抱え込んでいるのがわかる。
そして覚悟を決めたのか、俯いていた顔をパッと上げ、私を見る。
「ティアナ様、【デモンズキューブ】というものをご存知ですか?」
「授業で習いましたから、当然知っています。世界各地で見つかっているパンドラキューブの中でも、最高ランクの難易度を誇るキューブのことですよね」
大地やダンジョンに眠るとされている《パンドラキューブ》、いつから存在しているのかは不明だけど、最低でも四百年前の時点で明るみになっているのは、古い資料で証明されている。
世界各地で発見されている一辺十センチ~三十センチの立方体となる鍵穴のない箱の総称で、キューブから提示されるギミックを完全に読み解けば、絶大な力が手に入ると言われている。
そのため、一時期キューブ集めが各国でブームになった程だ。これによって理解されたことだけど、キューブはそれぞれ異なる力を有しているらしく、詰め込まれたギミックも多種多様となっている。
現在では…
《パズルキューブ》
《メイズキューブ》
《パティエンスキューブ》
《イレギュラーキューブ》
《デモンズキューブ》
と五種類に区分されており、難易度で言えば、パズル→メイズ→パティエンス→イレギュラー→デモンズとなっている。
これらのキューブで共通していることが四つだけある。
・人が直接接触しない限り、キューブ自体は永久に休眠状態であること。
・一度でも触れてしまうと、キューブは目覚めてしまい、その力を解放させる。
・解放後、多くの人々を体内に吸引し、何らかの試験を執り行う。
・キューブには覚醒期と休眠期の二パターンあり、休眠期に限り、封印可能とされている。
・キューブ自体が未知なる金属でできており、全ての物理攻撃や一部の魔法攻撃を跳ね返す性質を持っている。
ミルフィア様の言ったデモンズキューブはかなり特殊で、異なる悪魔の顔が六面全てに描かれており、まるで生物かのように周囲にいる者たちをキューブの中へと無作為に吸い込んでいく。そして、そこからの生還者はゼロ、一つのキューブにつき被害者は千を超えると言われている。
これは全世界の国において共通しているため、このキューブを最初に見つけた者は決して目覚めさせないよう、絶対に触れずに国へ報告することが義務付けられている。その後、国家魔法師たちが休眠中の新たなキューブを封印し、国の管理下で厳重に保管される。確か、学園内にも国から認可されているデモンズキューブが一個あると言われているけど、私は見たことがない。
「二日前、私は学園の授業にて、封印中のデモンズキューブを拝見しました。そこで事故が発生し、私だけがキューブに呪われてしまい、三時間後に贄として食われることが決定しております」
「は、事故!? 三時間後に生贄として食われる!?」
あまりにも唐突すぎる!!
私が寝込んで間もない時期に、学園でそんな事件が起きていたの!?
パンドラキューブの中でも最高難易度を誇るデモンズキューブ、その封印も厳重に施されているから、授業で生徒たちに見せることは可能だろうけど、相当な衝撃でも与えない限り、封印は壊れないはず。
「誰かが、キューブの封印を解いたんですか!?」
真っ青になっているミルフィア様、身体も小刻みに震えている。
先程のお兄様の様子から察して、もうお母様もお父様も全てをご存知なのね。
「当時、私たちは教室内で封印されているデモンズキューブを見ながら、その危険性に関する説明を受けていました。授業の後半、直径二十センチ程の雷球が突然窓を割り乱入して、不運にもキューブに直撃したのです」
雷球が乱入して、不運にも直撃?
そんな偶然、起こりえるの?
「そのショックでキューブの封印が解けてしまい、突如一本の触手が出現して私を絡め取りました。そして、《贄を発見、二日後に吸引する。それまでに、皆との別れを済ませておけ》という声が教室全体に響き渡りました。その後、タイムリミットが今でも私の視界に表示されていて、時間が刻一刻と減少しつつあります」
いくらなんでも、不運すぎる。
それに、これまで聞いていた情報と齟齬もある。
封印から解放されたキューブの場合、これまでの恨みを晴らすかのように、周囲にいる人々を取り込むと聞いているけど、ミルフィア様一人だけを贄認定して、別れの挨拶を済ませておけって……随分と殊勝なキューブね。
「本当はもっと早くこの件をティアナ様に伝えたかったのですが、熱で倒れたと聞き、行くのを躊躇っていました。でも、もう一刻の猶予もありません。最後の別れをしたかったので、無礼を承知ながらも訪れた次第です」
そんな危機的状態だからこそ、目覚めたばかりの私に会いにきたのね。
「キューブの再封印は?」
封印方法は確立されているのだから、再度封印を試みればいい。
私の期待とは裏腹に、ミルフィア様は首を横に振る。
「ダメでした。ウィンドル様や先生方、お父様、国王陛下、王妃様が現在も調査してくれているのですが、今もキューブは教室内で稼働状態となっており、下手に魔力で調査しようものなら、その者も私のように贄とされてしまいます。私を吸引した後に生じる休眠期であれば、再封印も可能かと思います」
それって、ミルフィア様を贄としてキューブに捧げろってことじゃない!!
冗談じゃない、何か救える手段があるはず……あ、お兄様や先生方が二日間動いて何も対処していないのなら、完全なお手上げ状態ってこと? だから、お兄様も諦めてしまったのか、あんな言葉をミルフィア様に言ったの?
【二人目の贄を発見。今回の候補者は四名。只今より、候補者たちを吸引する】
今の声は何?
男性の低い声が、私の部屋から突然聞こえてきたけど、部屋内に男性はいない。
「この声は…まさか!! 待って下さい、贄は私一人ではなかったのですか!? 時間だって、まだ二時間以上も残っています!!」
ミルフィア様は、声の主を知っている?
もしかして、デモンズキューブの声?
「ティアナ様、ミルフィア様!! お二人の真下に異様な紋様の魔法陣が!! 急いでこの部屋から脱出を!!」
入口付近に控えていたルミネが、突然大声で叫ぶ。
「「え?」」
私たちが慌てて床を見ると、濃い紫色のこれまでに見たことがない紋様の魔法陣が唐突に出現し、異様な光を放っていく。ルミネが私の方へ向かってくるものの、何かに阻まれてしまい、魔法陣の内側に入って来れない。
これはやばい…早く脱出しないと!!
「う…」
「「ティアナ様!?」」
目覚めたばかりで急に立ち上がったせいで、立ち眩みが…まだ完全に回復していないんだわ。光がどんどん強くなり、遂に私は目を開けられなくなった。
その悲嘆に暮れる姿から、何か重大な出来事が起きたことを物語っている。
彼女の身に、一体何が起きているのだろう?
ルミネも彼女の顔色を見て只事じゃないと思い、邪魔にならないよう私と彼女から距離をとる。
「ティアナ様、目覚めたばかりなのに申し訳ありません。どうしても、今話しておかないといけない緊急案件があります」
ルミネから聞いていると思うけど、私自身を改めて見たことで再認識したのか、彼女は深々と頭を下げる。ミルフィア様は私の欠陥について知りながらも決して馬鹿にせず、これまでにいくつものアドバイスをしてくれた事もあり、非常に助かっている。数少ない貴族の友人だからこそ、彼女の悩みを聞き、今度は私が彼女を助けてあげたい。
「身体は大丈夫なので気にしないでください。それでその案件というのは?」
ミルフィア様は俯いたまま、何も語ろうとしない。
その悲壮な姿を見るだけで、相当な何かを心に抱え込んでいるのがわかる。
そして覚悟を決めたのか、俯いていた顔をパッと上げ、私を見る。
「ティアナ様、【デモンズキューブ】というものをご存知ですか?」
「授業で習いましたから、当然知っています。世界各地で見つかっているパンドラキューブの中でも、最高ランクの難易度を誇るキューブのことですよね」
大地やダンジョンに眠るとされている《パンドラキューブ》、いつから存在しているのかは不明だけど、最低でも四百年前の時点で明るみになっているのは、古い資料で証明されている。
世界各地で発見されている一辺十センチ~三十センチの立方体となる鍵穴のない箱の総称で、キューブから提示されるギミックを完全に読み解けば、絶大な力が手に入ると言われている。
そのため、一時期キューブ集めが各国でブームになった程だ。これによって理解されたことだけど、キューブはそれぞれ異なる力を有しているらしく、詰め込まれたギミックも多種多様となっている。
現在では…
《パズルキューブ》
《メイズキューブ》
《パティエンスキューブ》
《イレギュラーキューブ》
《デモンズキューブ》
と五種類に区分されており、難易度で言えば、パズル→メイズ→パティエンス→イレギュラー→デモンズとなっている。
これらのキューブで共通していることが四つだけある。
・人が直接接触しない限り、キューブ自体は永久に休眠状態であること。
・一度でも触れてしまうと、キューブは目覚めてしまい、その力を解放させる。
・解放後、多くの人々を体内に吸引し、何らかの試験を執り行う。
・キューブには覚醒期と休眠期の二パターンあり、休眠期に限り、封印可能とされている。
・キューブ自体が未知なる金属でできており、全ての物理攻撃や一部の魔法攻撃を跳ね返す性質を持っている。
ミルフィア様の言ったデモンズキューブはかなり特殊で、異なる悪魔の顔が六面全てに描かれており、まるで生物かのように周囲にいる者たちをキューブの中へと無作為に吸い込んでいく。そして、そこからの生還者はゼロ、一つのキューブにつき被害者は千を超えると言われている。
これは全世界の国において共通しているため、このキューブを最初に見つけた者は決して目覚めさせないよう、絶対に触れずに国へ報告することが義務付けられている。その後、国家魔法師たちが休眠中の新たなキューブを封印し、国の管理下で厳重に保管される。確か、学園内にも国から認可されているデモンズキューブが一個あると言われているけど、私は見たことがない。
「二日前、私は学園の授業にて、封印中のデモンズキューブを拝見しました。そこで事故が発生し、私だけがキューブに呪われてしまい、三時間後に贄として食われることが決定しております」
「は、事故!? 三時間後に生贄として食われる!?」
あまりにも唐突すぎる!!
私が寝込んで間もない時期に、学園でそんな事件が起きていたの!?
パンドラキューブの中でも最高難易度を誇るデモンズキューブ、その封印も厳重に施されているから、授業で生徒たちに見せることは可能だろうけど、相当な衝撃でも与えない限り、封印は壊れないはず。
「誰かが、キューブの封印を解いたんですか!?」
真っ青になっているミルフィア様、身体も小刻みに震えている。
先程のお兄様の様子から察して、もうお母様もお父様も全てをご存知なのね。
「当時、私たちは教室内で封印されているデモンズキューブを見ながら、その危険性に関する説明を受けていました。授業の後半、直径二十センチ程の雷球が突然窓を割り乱入して、不運にもキューブに直撃したのです」
雷球が乱入して、不運にも直撃?
そんな偶然、起こりえるの?
「そのショックでキューブの封印が解けてしまい、突如一本の触手が出現して私を絡め取りました。そして、《贄を発見、二日後に吸引する。それまでに、皆との別れを済ませておけ》という声が教室全体に響き渡りました。その後、タイムリミットが今でも私の視界に表示されていて、時間が刻一刻と減少しつつあります」
いくらなんでも、不運すぎる。
それに、これまで聞いていた情報と齟齬もある。
封印から解放されたキューブの場合、これまでの恨みを晴らすかのように、周囲にいる人々を取り込むと聞いているけど、ミルフィア様一人だけを贄認定して、別れの挨拶を済ませておけって……随分と殊勝なキューブね。
「本当はもっと早くこの件をティアナ様に伝えたかったのですが、熱で倒れたと聞き、行くのを躊躇っていました。でも、もう一刻の猶予もありません。最後の別れをしたかったので、無礼を承知ながらも訪れた次第です」
そんな危機的状態だからこそ、目覚めたばかりの私に会いにきたのね。
「キューブの再封印は?」
封印方法は確立されているのだから、再度封印を試みればいい。
私の期待とは裏腹に、ミルフィア様は首を横に振る。
「ダメでした。ウィンドル様や先生方、お父様、国王陛下、王妃様が現在も調査してくれているのですが、今もキューブは教室内で稼働状態となっており、下手に魔力で調査しようものなら、その者も私のように贄とされてしまいます。私を吸引した後に生じる休眠期であれば、再封印も可能かと思います」
それって、ミルフィア様を贄としてキューブに捧げろってことじゃない!!
冗談じゃない、何か救える手段があるはず……あ、お兄様や先生方が二日間動いて何も対処していないのなら、完全なお手上げ状態ってこと? だから、お兄様も諦めてしまったのか、あんな言葉をミルフィア様に言ったの?
【二人目の贄を発見。今回の候補者は四名。只今より、候補者たちを吸引する】
今の声は何?
男性の低い声が、私の部屋から突然聞こえてきたけど、部屋内に男性はいない。
「この声は…まさか!! 待って下さい、贄は私一人ではなかったのですか!? 時間だって、まだ二時間以上も残っています!!」
ミルフィア様は、声の主を知っている?
もしかして、デモンズキューブの声?
「ティアナ様、ミルフィア様!! お二人の真下に異様な紋様の魔法陣が!! 急いでこの部屋から脱出を!!」
入口付近に控えていたルミネが、突然大声で叫ぶ。
「「え?」」
私たちが慌てて床を見ると、濃い紫色のこれまでに見たことがない紋様の魔法陣が唐突に出現し、異様な光を放っていく。ルミネが私の方へ向かってくるものの、何かに阻まれてしまい、魔法陣の内側に入って来れない。
これはやばい…早く脱出しないと!!
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