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48話 決着
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2人の戦いに、決着が付いた。
伯爵の目が開き、目が合った瞬間、僕はどちらが勝ったのかを悟る。
「家族の仇を取れましたか、アランさん」
アランさんは、複雑な笑みを浮かべている。
彼の目から、憤り・怒り・悲しみを感じ取れる。
「リョウト君、私の復讐はまだ終わっていない」
父の声で言うものだから、凄い違和感を感じる。
「あの…できれば、アランさんの声で話してくれませんか?」
「ああ、そうか。奴の声で、この話し方はおかしいな。…ゴホン…フレデリックの言ったことは、全て事実だ。私の開発した天候魔法に異様な執着を持っているのは、彼の両親で間違いない。そして……死ぬ間際、奴は私と君に謝罪したよ」
アランさんが父の声ではなく、魔力を使い、自分の声で話してくれたけど、最後の言葉が妙に引っ掛かる。
あの男が謝罪?
ありえないだろ。
「あの父が、僕たちに謝罪…ですか?」
「彼は本来の自分を押し殺すことで、妻や息子たち、両親に期待通りのフレデリック・ヒライデンを演じていただけだ。子供の頃から理想を押し付けられ、自分の個性を押し殺したまま、長期間窮屈な生活を強いられてきたことで、いつしか『両親の理想通りに演じれば、自分の幸せに繋がる』と強く思い込んでしまったのだ」
は? そんな過去が、あの父親にあったの!?
「正々堂々とした勝負だったが、奴は初めから勝ち目のない戦いだと思っていたのか、死に際になって本来の自分を曝け出し、私に真摯に謝罪した。あの時のフレデリックは、間違いなく私や君の知るフレデリックではなかった。学生時に打ち明けてくれれば、違った未来があったはずだ…不器用で馬鹿な男だ」
高位貴族である以上、父も覚悟を決めて、自分を押し殺し、両親の理想を演じ続けていたってわけか。
ある意味、僕の父親も被害者のようなものか。
アランさんの言う通り、少しでもそういった内面を見せてくれていれば、15歳の誕生日を迎える前に、僕も《父との和解》という選択肢をとったかもしれない。
なんだか、釈然としない結末になったな。
「複雑な気分ですけど、最後に父の本当の気持ちが聞けて良かったです。アランさんは、これからどうするのですか?」
「私はフレデリック・ヒライデンとして生き、数年間は奴らの生き様を観察しようと思う。ただ、殺すだけでは生温い。しっかりと復讐プランを練り、あの2人に絶望を味合わせるつもりだ。君の母と兄に関してだが、我々の殺害に関与していないから、何もしない」
天候魔法を求めている祖父母、僕も色々と虐待まがいの訓練に付き合わされていたけど、あいつらの本性を知らない。母と兄に関してはどうでもいい存在だから、どうなろうが僕の知ったことではない。
「手助けは必要ですか?」
ここまで深く関わった以上、僕も何かしてあげたいところだけど、アランさんが望まない可能性もある。
「いや、遠慮しておこう。君にとってはどうでもいい存在かもしれないが、それでも血の繋がりのある家族だ。君は、我々の最後を見届けてくれればいい」
「了解です」
そういえば、父は昨日の騒動について、最後まで聞いてこなかったな。
知っていれば、魂の記憶を引き継いだアランさんが何か言ってくるだろう。
それだけ、両親に天候魔法のことで追い詰められていたってことか。
窓を開けると、先程までどんよりした空気が一掃され、清浄なものへと変化している。騒動が落ち着いても、まだ後処理が残っている。僕が黒幕を捕縛する瞬間を、ジェイコブさんが見ている以上、どうやって討伐させたのかを説明しないといけない。
「アランさん、生き残った神官1名が庭で待っています。あなたが今回の事件の黒幕なんですけど正直に言ってしまうと、事態がややこしくなりますので、ここは《この案》で話を合わせてくれませんか?」
「なるほど…私(フレデリック)を利用するのか。しかし、その案だと、ヒライデン家の手柄となるがいいのか?」
僕自身、ヒライデン伯爵への復讐心もゼロというわけじゃないけど、正直もうどうでもいいんだよね。ここからは、全てアランさんに任せよう。
「構いませんよ。というか、全てが明るみになったら、貴族間のバランスが大きく崩れて、何が起こるかわかりませんからね。僕自身が、誰かに恨まれる可能性だってある。アランさんも、それは本意ではないでしょう?」
「そうだな。恨みを抱く者は、私だけで十分だ。その案でいこう」
今回の事件で生き残った神官ジェイコブさんと次代の聖女候補マクレミーサ、そしてアランさん(=フレデリック・ヒライデン)には、神殿や冒険者ギルドへの報告義務がある。
この案が通れば、ルティナとリノアの関わった事件に関しても一区切りつき、少なくとも聖女様たちが帰還するまでの間は、2人も冒険者としての生活に集中できるだろう。
伯爵の目が開き、目が合った瞬間、僕はどちらが勝ったのかを悟る。
「家族の仇を取れましたか、アランさん」
アランさんは、複雑な笑みを浮かべている。
彼の目から、憤り・怒り・悲しみを感じ取れる。
「リョウト君、私の復讐はまだ終わっていない」
父の声で言うものだから、凄い違和感を感じる。
「あの…できれば、アランさんの声で話してくれませんか?」
「ああ、そうか。奴の声で、この話し方はおかしいな。…ゴホン…フレデリックの言ったことは、全て事実だ。私の開発した天候魔法に異様な執着を持っているのは、彼の両親で間違いない。そして……死ぬ間際、奴は私と君に謝罪したよ」
アランさんが父の声ではなく、魔力を使い、自分の声で話してくれたけど、最後の言葉が妙に引っ掛かる。
あの男が謝罪?
ありえないだろ。
「あの父が、僕たちに謝罪…ですか?」
「彼は本来の自分を押し殺すことで、妻や息子たち、両親に期待通りのフレデリック・ヒライデンを演じていただけだ。子供の頃から理想を押し付けられ、自分の個性を押し殺したまま、長期間窮屈な生活を強いられてきたことで、いつしか『両親の理想通りに演じれば、自分の幸せに繋がる』と強く思い込んでしまったのだ」
は? そんな過去が、あの父親にあったの!?
「正々堂々とした勝負だったが、奴は初めから勝ち目のない戦いだと思っていたのか、死に際になって本来の自分を曝け出し、私に真摯に謝罪した。あの時のフレデリックは、間違いなく私や君の知るフレデリックではなかった。学生時に打ち明けてくれれば、違った未来があったはずだ…不器用で馬鹿な男だ」
高位貴族である以上、父も覚悟を決めて、自分を押し殺し、両親の理想を演じ続けていたってわけか。
ある意味、僕の父親も被害者のようなものか。
アランさんの言う通り、少しでもそういった内面を見せてくれていれば、15歳の誕生日を迎える前に、僕も《父との和解》という選択肢をとったかもしれない。
なんだか、釈然としない結末になったな。
「複雑な気分ですけど、最後に父の本当の気持ちが聞けて良かったです。アランさんは、これからどうするのですか?」
「私はフレデリック・ヒライデンとして生き、数年間は奴らの生き様を観察しようと思う。ただ、殺すだけでは生温い。しっかりと復讐プランを練り、あの2人に絶望を味合わせるつもりだ。君の母と兄に関してだが、我々の殺害に関与していないから、何もしない」
天候魔法を求めている祖父母、僕も色々と虐待まがいの訓練に付き合わされていたけど、あいつらの本性を知らない。母と兄に関してはどうでもいい存在だから、どうなろうが僕の知ったことではない。
「手助けは必要ですか?」
ここまで深く関わった以上、僕も何かしてあげたいところだけど、アランさんが望まない可能性もある。
「いや、遠慮しておこう。君にとってはどうでもいい存在かもしれないが、それでも血の繋がりのある家族だ。君は、我々の最後を見届けてくれればいい」
「了解です」
そういえば、父は昨日の騒動について、最後まで聞いてこなかったな。
知っていれば、魂の記憶を引き継いだアランさんが何か言ってくるだろう。
それだけ、両親に天候魔法のことで追い詰められていたってことか。
窓を開けると、先程までどんよりした空気が一掃され、清浄なものへと変化している。騒動が落ち着いても、まだ後処理が残っている。僕が黒幕を捕縛する瞬間を、ジェイコブさんが見ている以上、どうやって討伐させたのかを説明しないといけない。
「アランさん、生き残った神官1名が庭で待っています。あなたが今回の事件の黒幕なんですけど正直に言ってしまうと、事態がややこしくなりますので、ここは《この案》で話を合わせてくれませんか?」
「なるほど…私(フレデリック)を利用するのか。しかし、その案だと、ヒライデン家の手柄となるがいいのか?」
僕自身、ヒライデン伯爵への復讐心もゼロというわけじゃないけど、正直もうどうでもいいんだよね。ここからは、全てアランさんに任せよう。
「構いませんよ。というか、全てが明るみになったら、貴族間のバランスが大きく崩れて、何が起こるかわかりませんからね。僕自身が、誰かに恨まれる可能性だってある。アランさんも、それは本意ではないでしょう?」
「そうだな。恨みを抱く者は、私だけで十分だ。その案でいこう」
今回の事件で生き残った神官ジェイコブさんと次代の聖女候補マクレミーサ、そしてアランさん(=フレデリック・ヒライデン)には、神殿や冒険者ギルドへの報告義務がある。
この案が通れば、ルティナとリノアの関わった事件に関しても一区切りつき、少なくとも聖女様たちが帰還するまでの間は、2人も冒険者としての生活に集中できるだろう。
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