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47話 底知れぬ憎悪と欲望
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2人共、さっきから何も語らず、互いを睨んでいる。
いつまで、この膠着状態は続くんだ?
「フレデリック、そこまでして私の開発した天候魔法を望むのか?」
「ああ。これまで言わなかったが、ヒライデン家こそがあの魔法を持つべきだと思っている」
結局、爺さんだけでなく、元父も天候魔法とやらに魅了された1人じゃないか。
「ならば、自分で開発しろ……と言いたいところだが、お前にチャンスをやろう」
「チャンスだと?」
元父は怪訝な顔で、アランさんを見る。
「今から、私と勝負をしよう。これに勝てば、お前の頭の中には、天候魔法の制御方法が入ることになる」
アランさん、どんな勝負を仕掛ける気なんだ?
「負ければ?」
「私がフレデリックとなり、君の意志は消滅する。いわゆる、タルパ特有の乗っ取りというやつだ。私の意志に勝てば、私が消滅し、君は今の私の魔力と天候魔法の制御方法を入手できる。悪い話じゃないだろう?」
乗っ取りには、そんな効果も隠されていたのか。
アランさんが勝てば、情報が引き継がれ、元父の身体へと宿すことが可能となり、フレデリック・ヒライデンとして生きていける。天候魔法を発表して、ヒライデン伯爵家を繁栄させるもよし、自分の正体を打ち明け、家族を殺めた関係者全員に対して復讐するも良しだ。
ヒライデン伯爵が勝てば、アランさんの全てを自分のものにでき、天候魔法の真髄を知識と魔法の両方で取得できるわけだ。
天候魔法に魅了されている以上、元父はこの勝負を飲まざるをえない。ただ、乗っ取りにおいて、重要なのは魔力量ではなく、目的を達成させるための信念の強さにある。どちらの意志が強いのか、僕的にはアランさんだと思う。
「その勝負を受けよう」
ヒライデン伯爵が勝負を飲んだことで、どちらも険しい顔となるも、アランさんがふと僕の方を見る。
「リョウト君、一ついいかね?」
「はい、何でしょう?」
ラリマンド伯爵からの質問、受けて立ちましょう。
「君は、この男の元息子だ。父が殺されるかもしれないのに、どうして私に何も言わないんだい? そもそも、今の時点で何故平然としていられるのかね?」
なんだ、そんな事か。
「そんなの決まってるでしょう? 生物学上、この方は僕の父親で間違いありませんけど、僕自身が父、母、兄、祖父母たちを他人と思っているんですよ。物心がついて以降、僕は人に愛されたことがありません。全員が僕に対して、ヒライデン家を繁栄させるための人形として、これまで厳しい教育を施してきた。そこに、愛情など皆無でした」
アランさんは、気の毒そうな顔で僕を見る。
「フレデリック、君は自分の身に起きたことを、子供達にもしていたのか? その行為が、どれほど悲しいことかを知っているだろうに」
それは、初耳だ。
元父も、祖父母に愛されていなかったのか。
「家に役立つ者には、愛を与えていた。だが、リョウトは違う。5歳以降、我々を散々期待させておいて、魔法を一つも習得できなかった愚か者だ。そんな愚者に、愛など必要ない!! 甘やかせば勘違いし、努力を怠るからな」
元父は家の役に立てる力があるのに、両親から愛されていなかった。その過ちを犯さないために、早い段階から家の役に立てるとわかっていた兄だけに愛を与え、役に立てるか不明な僕に対しては、愛を与えなかったのかよ。
「愚かなことを」
同意見です。
「なんとでも言え。伝統ある我が家に、愚者はいらん。だが、今のリョウトならば、家の役に立つか」
全然、嬉しくないお言葉をありがとう。
そして、僕を利用する気満々の発言をありがとう。
「続きを言わせてもらいます。この方は、僕にとって他人同然なんですよ。故に、僕が家に戻ることは、未来永劫ありえません。元父がこの戦いに勝利し、僕を家に連れ戻そうとしても、全力で抵抗します」
正直、どちらが勝つのかは薄々わかっているけど、あえて口にはしない。
「無駄な足掻きだ。私が勝てば、絶大な力を入手できる。貴様をヒライデン家の奴隷にして、そのギフトを有効利用させてもらおう」
欲望丸出しじゃないか、爺さんとよく似ている。
「リョウト君、私が勝利した場合、君は何を望む?」
アランさんは僕の力を知っているせいか、勝利後の事を気にかけている。
「特に、何も望みませんよ。強いて言うなら、僕や仲間たちに関わらないで欲しいですね」
勝利すれば、アランさんがフレデリック・ヒライデンとなるのだから、関わってくると色々と面倒な事態が起きるからね。
「了解した。フレデリック、貴様を殺し、その身体をもらうぞ」
「アラン……お前を殺して天候魔法を戴く」
さっきまで言い訳とかして狼狽えていたけど、天候魔法を余程欲しいのか、ヒライデン伯爵も覚悟を決めた顔つきとなっている。タルパが乗っ取り行為を行う際、相手の身体の中に入らないといけない。
アランさんが宙に浮き、狙いを定め、ヒライデン伯爵の心臓目掛けて突進する。伯爵は彼を受け入れると、部屋中に轟かせるほどの大声をあげる。
魂と魂の衝突、この戦いは身体の中で行われるので、外の世界に影響しない。互いを食い合い、勝者が敗者の魂を吸収し、身体の主人となる。ヒライデン伯爵は突っ立ったまま微動だにしないけど、今その内部では激しく戦いが繰り広げられているはずだ。
[家族を殺された恨み]VS[天候魔法を欲する欲望]。
さあ、どちらが勝つかな?
いつまで、この膠着状態は続くんだ?
「フレデリック、そこまでして私の開発した天候魔法を望むのか?」
「ああ。これまで言わなかったが、ヒライデン家こそがあの魔法を持つべきだと思っている」
結局、爺さんだけでなく、元父も天候魔法とやらに魅了された1人じゃないか。
「ならば、自分で開発しろ……と言いたいところだが、お前にチャンスをやろう」
「チャンスだと?」
元父は怪訝な顔で、アランさんを見る。
「今から、私と勝負をしよう。これに勝てば、お前の頭の中には、天候魔法の制御方法が入ることになる」
アランさん、どんな勝負を仕掛ける気なんだ?
「負ければ?」
「私がフレデリックとなり、君の意志は消滅する。いわゆる、タルパ特有の乗っ取りというやつだ。私の意志に勝てば、私が消滅し、君は今の私の魔力と天候魔法の制御方法を入手できる。悪い話じゃないだろう?」
乗っ取りには、そんな効果も隠されていたのか。
アランさんが勝てば、情報が引き継がれ、元父の身体へと宿すことが可能となり、フレデリック・ヒライデンとして生きていける。天候魔法を発表して、ヒライデン伯爵家を繁栄させるもよし、自分の正体を打ち明け、家族を殺めた関係者全員に対して復讐するも良しだ。
ヒライデン伯爵が勝てば、アランさんの全てを自分のものにでき、天候魔法の真髄を知識と魔法の両方で取得できるわけだ。
天候魔法に魅了されている以上、元父はこの勝負を飲まざるをえない。ただ、乗っ取りにおいて、重要なのは魔力量ではなく、目的を達成させるための信念の強さにある。どちらの意志が強いのか、僕的にはアランさんだと思う。
「その勝負を受けよう」
ヒライデン伯爵が勝負を飲んだことで、どちらも険しい顔となるも、アランさんがふと僕の方を見る。
「リョウト君、一ついいかね?」
「はい、何でしょう?」
ラリマンド伯爵からの質問、受けて立ちましょう。
「君は、この男の元息子だ。父が殺されるかもしれないのに、どうして私に何も言わないんだい? そもそも、今の時点で何故平然としていられるのかね?」
なんだ、そんな事か。
「そんなの決まってるでしょう? 生物学上、この方は僕の父親で間違いありませんけど、僕自身が父、母、兄、祖父母たちを他人と思っているんですよ。物心がついて以降、僕は人に愛されたことがありません。全員が僕に対して、ヒライデン家を繁栄させるための人形として、これまで厳しい教育を施してきた。そこに、愛情など皆無でした」
アランさんは、気の毒そうな顔で僕を見る。
「フレデリック、君は自分の身に起きたことを、子供達にもしていたのか? その行為が、どれほど悲しいことかを知っているだろうに」
それは、初耳だ。
元父も、祖父母に愛されていなかったのか。
「家に役立つ者には、愛を与えていた。だが、リョウトは違う。5歳以降、我々を散々期待させておいて、魔法を一つも習得できなかった愚か者だ。そんな愚者に、愛など必要ない!! 甘やかせば勘違いし、努力を怠るからな」
元父は家の役に立てる力があるのに、両親から愛されていなかった。その過ちを犯さないために、早い段階から家の役に立てるとわかっていた兄だけに愛を与え、役に立てるか不明な僕に対しては、愛を与えなかったのかよ。
「愚かなことを」
同意見です。
「なんとでも言え。伝統ある我が家に、愚者はいらん。だが、今のリョウトならば、家の役に立つか」
全然、嬉しくないお言葉をありがとう。
そして、僕を利用する気満々の発言をありがとう。
「続きを言わせてもらいます。この方は、僕にとって他人同然なんですよ。故に、僕が家に戻ることは、未来永劫ありえません。元父がこの戦いに勝利し、僕を家に連れ戻そうとしても、全力で抵抗します」
正直、どちらが勝つのかは薄々わかっているけど、あえて口にはしない。
「無駄な足掻きだ。私が勝てば、絶大な力を入手できる。貴様をヒライデン家の奴隷にして、そのギフトを有効利用させてもらおう」
欲望丸出しじゃないか、爺さんとよく似ている。
「リョウト君、私が勝利した場合、君は何を望む?」
アランさんは僕の力を知っているせいか、勝利後の事を気にかけている。
「特に、何も望みませんよ。強いて言うなら、僕や仲間たちに関わらないで欲しいですね」
勝利すれば、アランさんがフレデリック・ヒライデンとなるのだから、関わってくると色々と面倒な事態が起きるからね。
「了解した。フレデリック、貴様を殺し、その身体をもらうぞ」
「アラン……お前を殺して天候魔法を戴く」
さっきまで言い訳とかして狼狽えていたけど、天候魔法を余程欲しいのか、ヒライデン伯爵も覚悟を決めた顔つきとなっている。タルパが乗っ取り行為を行う際、相手の身体の中に入らないといけない。
アランさんが宙に浮き、狙いを定め、ヒライデン伯爵の心臓目掛けて突進する。伯爵は彼を受け入れると、部屋中に轟かせるほどの大声をあげる。
魂と魂の衝突、この戦いは身体の中で行われるので、外の世界に影響しない。互いを食い合い、勝者が敗者の魂を吸収し、身体の主人となる。ヒライデン伯爵は突っ立ったまま微動だにしないけど、今その内部では激しく戦いが繰り広げられているはずだ。
[家族を殺された恨み]VS[天候魔法を欲する欲望]。
さあ、どちらが勝つかな?
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