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54話 訪問者
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タルパ騒動を終息させた翌朝、僕はリオさんに事の顛末を嘘偽りなく話すと、彼女は頭を抱えてしまう。まあ、僕の父親の意志が消滅して、そこにラリマンド伯爵の意志が入ったのだから無理もないし、何よりタルパ誘引のキッカケを与えたのはヒライデン伯爵家の悪意なのだから無理もない。
当然、この真実を公には明かせないので、僕はアランさんと2人で考えた代案を話し、この案は昨日の夜中に神殿側に報告されている事を明かすと、それが最適解だったこともあり納得してくれて、そのまま副ギルドマスターであるナーバスさんへと報告された。彼が使い魔の鳥を使い、ヒライデン伯爵に確認をとったことで、その内容は全て認知され、僕は副ギルドマスターの権限で、GからEへと昇格を果たした。真実を明かせない以上、今回の実績は代案にある[父ヒライデン伯爵の補助]ということになるからだ。
報告を終えると、僕はそのまま冒険者たちに教える魔法講義へと移った。今回の参加者は26名、2時間半かけて講義を終わらせると、また御呼び出しがかかったので、副ギルドマスターのいる執務室へ入ると、そこにはヒライデン伯爵(=アランさん)がいた。
彼から話された内容は、母や兄、祖父母に関するもので、僕にとって嬉しくないニュースだった。
アランさんは、家族に今回のタルパ騒動の真相を教えず、代案のみを話した。
僕がタルパの親玉と化したリッチの居場所を襲撃前に突き止め、その内容を邸内で偶然再会した父に話したことで、父がリッチを討伐するための準備を進めていく。全てが整ったところで、僕がリッチを邸内へと誘き寄せ、父がリッチを瞬時に討伐したということになっている。
僕が【回復・解毒魔法の革新的改良】【リッチ討伐のサポート】という実績を叩き出し、おまけに『魔法を使えず追放処分となりましたが、知識と魔法制御だけを家の教育で徹底的に学んだので、今回それを活かしました』と爆発事故の騒動後に記者に語ったところ、ヒライデン家の評価もかなり向上した。僕の追放処分に関しては、家自体が特殊な家系ということも考慮され、仕方なしと判断されたのか、世間からの批判は多少あったものの、大きな問題にはならなかった。
本来、僕はヒライデンの名を使わないよう言われていたので、使った場合は何らかの罰が下されるのだけど、母、兄、祖父母たちは、こういった世間からの評価もあり、僕にお咎めなしという判断を下した。それに、アランさんが4人に上手く説明してくれたおかげで、僕には利用価値があると判断され、『今後も何らかの実績を出した場合に限り、家の名前を使っても良い』という上から目線での使用許可が下りた。アランさんの口から語られたこの決定に、副ギルドマスターとリオさんも心底呆れていた。
いつか、このヒライデン家の本性を世間に暴露したいよ。
まあ、これでヒライデン家から狙われる危険性も無くなったからいいけどさ。
騒動の翌日は超忙しかったけど、あれから4日も経過すると、僕の講義を受ける人数も10人程となり、タルパ騒動も落ち着き、ようやく普通の生活に戻れるようになった。この間に、ルティナもFランク昇格となり、僕たちはようやく初心者冒険者へと成長し、今日もFランク依頼を受けようと宿屋1階に降りたところで、僕を訪ねてくる執事服を着たお客さんと遭遇する。
○○○
僕、ルティナ、リノアは、フレミングス家の用意された馬車の中にいる。宿屋に訪れたお客様は、フレミングス子爵家筆頭執事ギャリソンさん、40歳前後の男性だった。
どうやら5日前に起きた研究施設の爆発事故で治療したナナリス様の容態が安定したので、彼女の父ハミルトン子爵様が、僕に改めて御礼を言いたいらしく、今回彼を僕のもとへ派遣した。急を要する用事もなかったので、その招待を快く承諾し、そのまま馬車へと誘われ、現在彼はナナリス様について語ってくれている。
話を聞いた限り、ナナリス様は生まれた時からこの病気を患っていて、邸の敷地外へ出られない状況だった。そして去年、研究施設に依頼しておいた症状緩和用魔道具が完成したことで、ようやく外の世界を知ることができたけど、その維持費が年間1000万ゴルドと膨大なため、後々のことを考え、何らかの薬で対処できないかを色々と模索していたらしい。
「今回、旦那様とお嬢様は、薬学の権威ともいえる先生のもとへ赴き、なんとか自然界に存在するもので薬を調合できないか、御助言を戴こうと施設へ伺った際に、爆破事故に巻き込まれ、貴方様と偶然出会った次第です。そんな出会って間もない貴方様とルティナ様が、お嬢様の中に潜む毒を魔法で消し去り、維持費を殆ど要しないあのマスクを作り上げた!! これは、実に画期的なことなのです!!」
ギャリソンさん、話す度に、声量がどんどんと大きくなっているよ。
僕はいいけど、ルティナとリノアが少し引いている。
「ギャリソンさん、ここは馬車の中なので、馬を驚かせないよう、もう少し抑えてください」
「おっと、これは失礼。我々は、たった20分ほどで作り上げたリョウト様の技量に感嘆しております。スキル【魔力具現化】は、魔力を高密度高圧縮されることで、初めて具現化に成功するのですが、ベテラン冒険者や魔法士であっても、簡易的な盾、剣、杖などしか製作できません。しかし、貴方の製作したマスクは、まるで専門業者の製作したもの…いえ、それ以上に精巧かつ緻密で、誰であろうとも再現できませんでした」
大袈裟なような気もするけど、あれはギフト[加工]と併用したからこそ、あの時間で製作できたんだ。ギフトがなくても、知識と時間さえあれば製作可能なはずだろ?
「症状の原因とマスクの原理をフレミングス子爵様に、簡易的にお伝えしましたけど?」
「勿論、我々はそれを信用しております。あのマスクのおかげで、お嬢様の症状は、この5日間1度も発症しておりませんので」
5日か。
あれは簡易的なものだから、そろそろ交換した方がいいな。
「しかし、その世界の権威とも言える方々に、魔力残滓と病気の関係性について説明し、マスクをお見せしても、全員がその理論に驚き感嘆の意を示し、似た言葉を仰っています。『素晴らしい着想です。症状が出ないことを察するに、その理論は正しい。だが、魔力具現化スキルを持つ者でも、またマスクの専門業者であっても、これと同等のものは作れない。拒絶反応を起こさない程の精巧さと、内部構造の緻密さ、どれをとっても超一流だからです。これを魔力具現化スキルだけで製作した人物は、魔力制御の天才です』と言い放ちました」
あ~、確かに緻密だね。
なんせ、ミクロンサイズ(μm)の穴が空いているからね。
魔力残滓が塵や埃に付着している以上、それを防ぐ効果のあるマスクを製作しないといけないし、おまけに時間もなかったから、後先考えずにやってしまった。まさか、専門家たちでも製作不可能とは思わなかったよ。
当然、この真実を公には明かせないので、僕はアランさんと2人で考えた代案を話し、この案は昨日の夜中に神殿側に報告されている事を明かすと、それが最適解だったこともあり納得してくれて、そのまま副ギルドマスターであるナーバスさんへと報告された。彼が使い魔の鳥を使い、ヒライデン伯爵に確認をとったことで、その内容は全て認知され、僕は副ギルドマスターの権限で、GからEへと昇格を果たした。真実を明かせない以上、今回の実績は代案にある[父ヒライデン伯爵の補助]ということになるからだ。
報告を終えると、僕はそのまま冒険者たちに教える魔法講義へと移った。今回の参加者は26名、2時間半かけて講義を終わらせると、また御呼び出しがかかったので、副ギルドマスターのいる執務室へ入ると、そこにはヒライデン伯爵(=アランさん)がいた。
彼から話された内容は、母や兄、祖父母に関するもので、僕にとって嬉しくないニュースだった。
アランさんは、家族に今回のタルパ騒動の真相を教えず、代案のみを話した。
僕がタルパの親玉と化したリッチの居場所を襲撃前に突き止め、その内容を邸内で偶然再会した父に話したことで、父がリッチを討伐するための準備を進めていく。全てが整ったところで、僕がリッチを邸内へと誘き寄せ、父がリッチを瞬時に討伐したということになっている。
僕が【回復・解毒魔法の革新的改良】【リッチ討伐のサポート】という実績を叩き出し、おまけに『魔法を使えず追放処分となりましたが、知識と魔法制御だけを家の教育で徹底的に学んだので、今回それを活かしました』と爆発事故の騒動後に記者に語ったところ、ヒライデン家の評価もかなり向上した。僕の追放処分に関しては、家自体が特殊な家系ということも考慮され、仕方なしと判断されたのか、世間からの批判は多少あったものの、大きな問題にはならなかった。
本来、僕はヒライデンの名を使わないよう言われていたので、使った場合は何らかの罰が下されるのだけど、母、兄、祖父母たちは、こういった世間からの評価もあり、僕にお咎めなしという判断を下した。それに、アランさんが4人に上手く説明してくれたおかげで、僕には利用価値があると判断され、『今後も何らかの実績を出した場合に限り、家の名前を使っても良い』という上から目線での使用許可が下りた。アランさんの口から語られたこの決定に、副ギルドマスターとリオさんも心底呆れていた。
いつか、このヒライデン家の本性を世間に暴露したいよ。
まあ、これでヒライデン家から狙われる危険性も無くなったからいいけどさ。
騒動の翌日は超忙しかったけど、あれから4日も経過すると、僕の講義を受ける人数も10人程となり、タルパ騒動も落ち着き、ようやく普通の生活に戻れるようになった。この間に、ルティナもFランク昇格となり、僕たちはようやく初心者冒険者へと成長し、今日もFランク依頼を受けようと宿屋1階に降りたところで、僕を訪ねてくる執事服を着たお客さんと遭遇する。
○○○
僕、ルティナ、リノアは、フレミングス家の用意された馬車の中にいる。宿屋に訪れたお客様は、フレミングス子爵家筆頭執事ギャリソンさん、40歳前後の男性だった。
どうやら5日前に起きた研究施設の爆発事故で治療したナナリス様の容態が安定したので、彼女の父ハミルトン子爵様が、僕に改めて御礼を言いたいらしく、今回彼を僕のもとへ派遣した。急を要する用事もなかったので、その招待を快く承諾し、そのまま馬車へと誘われ、現在彼はナナリス様について語ってくれている。
話を聞いた限り、ナナリス様は生まれた時からこの病気を患っていて、邸の敷地外へ出られない状況だった。そして去年、研究施設に依頼しておいた症状緩和用魔道具が完成したことで、ようやく外の世界を知ることができたけど、その維持費が年間1000万ゴルドと膨大なため、後々のことを考え、何らかの薬で対処できないかを色々と模索していたらしい。
「今回、旦那様とお嬢様は、薬学の権威ともいえる先生のもとへ赴き、なんとか自然界に存在するもので薬を調合できないか、御助言を戴こうと施設へ伺った際に、爆破事故に巻き込まれ、貴方様と偶然出会った次第です。そんな出会って間もない貴方様とルティナ様が、お嬢様の中に潜む毒を魔法で消し去り、維持費を殆ど要しないあのマスクを作り上げた!! これは、実に画期的なことなのです!!」
ギャリソンさん、話す度に、声量がどんどんと大きくなっているよ。
僕はいいけど、ルティナとリノアが少し引いている。
「ギャリソンさん、ここは馬車の中なので、馬を驚かせないよう、もう少し抑えてください」
「おっと、これは失礼。我々は、たった20分ほどで作り上げたリョウト様の技量に感嘆しております。スキル【魔力具現化】は、魔力を高密度高圧縮されることで、初めて具現化に成功するのですが、ベテラン冒険者や魔法士であっても、簡易的な盾、剣、杖などしか製作できません。しかし、貴方の製作したマスクは、まるで専門業者の製作したもの…いえ、それ以上に精巧かつ緻密で、誰であろうとも再現できませんでした」
大袈裟なような気もするけど、あれはギフト[加工]と併用したからこそ、あの時間で製作できたんだ。ギフトがなくても、知識と時間さえあれば製作可能なはずだろ?
「症状の原因とマスクの原理をフレミングス子爵様に、簡易的にお伝えしましたけど?」
「勿論、我々はそれを信用しております。あのマスクのおかげで、お嬢様の症状は、この5日間1度も発症しておりませんので」
5日か。
あれは簡易的なものだから、そろそろ交換した方がいいな。
「しかし、その世界の権威とも言える方々に、魔力残滓と病気の関係性について説明し、マスクをお見せしても、全員がその理論に驚き感嘆の意を示し、似た言葉を仰っています。『素晴らしい着想です。症状が出ないことを察するに、その理論は正しい。だが、魔力具現化スキルを持つ者でも、またマスクの専門業者であっても、これと同等のものは作れない。拒絶反応を起こさない程の精巧さと、内部構造の緻密さ、どれをとっても超一流だからです。これを魔力具現化スキルだけで製作した人物は、魔力制御の天才です』と言い放ちました」
あ~、確かに緻密だね。
なんせ、ミクロンサイズ(μm)の穴が空いているからね。
魔力残滓が塵や埃に付着している以上、それを防ぐ効果のあるマスクを製作しないといけないし、おまけに時間もなかったから、後先考えずにやってしまった。まさか、専門家たちでも製作不可能とは思わなかったよ。
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