加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護

文字の大きさ
55 / 61

55話 恩師との再会

しおりを挟む
フレミングス子爵の邸に到着すると、僕たち3人は玄関へと通された。中に入ると、研究施設で会ったハミルトン・フレミングス子爵と、マスクを付けたナナリス様、研究所で見たタルパ(半透明状態)の女性がいた。

「「ようこそ、私たちを救ってくれた英雄様方」」
「よ…ようこそ…私たちを救ってくれた…英雄様方」

3人は僕たちを笑顔で優しく出迎えてくれたけど、真っ先に返答したのはルティナとリノア(実体化)だった。

「「院長先生!!」」

2人とも駆け出していき、院長先生に抱きつく。

「2人とも久しぶりね。元気…と言ってはいけないわね。リノアが死んでしまったのだから」

悲しげな顔を浮かべる院長先生。
事故の際、この女性がナナリス様を守ってくれていたわけか。

「先生、私は死んじゃったけど、今はリョウトさんと出会えたことで幸せなの」
「私も私も!!」

「ふふ、あなたたちの噂は聞いているわ。リョウトさん、私は孤児院を経営していたサーシャと言います。私はタルパになった後、聖女様から孤児院の状況を聞きました。子供たちの多くが亡くなり愕然としましたが、聖女様が皆を天国へ行けるよう配慮してくれたのです。ただ、私は残された子供たちがどうしても心配で、成仏を待ってもらっているのです。子供たちから私のことを尋ねられた場合は、成仏しましたと言ってくれるよう、聖女様だけでなく、神官様方にもお願いしていました」

なるほど、だからルティナもリノアも、成仏したと思っていたわけか。そこから話を聞いたところ、サーシャさんは生き残った子供全員が、安心して暮らしていることを確認している最中で、残るはルティナとリノアだけだったらしい。

聖女候補として神殿に引き取られているので、2人は安全と思い、会いに行くのを最後にまわしていた。1ヶ月前になって、ようやく会いに行こうと思った矢先、ナナリス様たちと出会い、彼女の容態が気にかかることもあって、2人に会いに行けなかったわけか。

「リョウトさん、2人の面倒を見て頂き、ありがとうございます」

サーシャさんの第一印象は、子供たちを笑顔にさせる保母さんだな。

「2人とも、7歳とは思えないほどの優秀さですよ。独り立ちできるまでは、一緒に行動するつもりです」

「それを聞いて安心したわ」

「サーシャさん、リノアはタルパなので、彼女にタルパとしての知識を授けてくれませんか?」

「それは必要ね。新聞で読んだ限り、神殿の件も解決しているはず。それで自力で成仏していないということは、残る未練は、ルティナの行く末かしら? わかりました、私もタルパになって、日は浅いけど、私の持つ知識をリノアに伝授するわ」

「やった!! 先生、お願いします!!」

「私たちは3人で話し合いをしましょう。まずは、孤児院の火事で生き残った子供たちの現状を教えるわね」

「はい!! お兄ちゃん、先生と話し合ってくるね」

ルティナもリノアもサーシャさんと手を繋いで、執事ギャリソンさんの案内で僕から離れていく。彼女ってタルパになって一年程度のはずだけど、どこまで強くなっているのいのだろう? まあ、それを聞くのは野暮か。せっかく、恩人の先生と再会できたのだから、ここは何も言わないでおこう。

僕は僕で、ナナリス様やフレミングス子爵と話し合おう。

「リョウトと言います。フレミングス子爵、ナナリス様、素敵なお出迎えに感謝します」

「はははは、驚かせてしまったかな。改めて、自己紹介を。私はフレミングス子爵家当主、ハミルトン・フレミングス。そして、こちらが…」

ハミルトンさんがナナリス様の方を向き、軽く促すと、彼女が1歩前へ出てきた。ただ、僕を見てオドオドしているので、かなりの人見知りというのが第一印象だ。

「初め…まして。ナナリス・フレミングスです…リョウト様、この度は私たちを救って頂き、誠に…ありがとうございます」

彼女は小刻みに震えながら言い切り、軽くお辞儀する。長い銀髪の一部が、右側からするりと顔の動きに合わせて落ちていく。

「申し訳ない、ナナリスは病気で去年まで敷地の外に出たことがなく、極度の人見知りなんだ」

なんか、僕と少し似てるな。それに、あの挙動不審さから見て、多分この一年で何らかの嫌がらせでも受けて、人見知りになったのかもしれないな。

「ナナリス様の気持ちは、少しわかります。私も15歳になるまで、敷地外に出られない軟禁生活を強いられていましたから」

貴族との話し合いである以上、こっちも一人称を[私]にしておこう。

「え、そうなんですか!?」

これは新聞にも掲載されていないから、ナナリス様が驚くのも無理はない。

「それは初耳だ。新聞には、そこまでのことは掲載されていなかった。私もヒライデン家と商売上の付き合いを持っているが、これまで[リョウト・ヒライデン]という名前を伯爵や奥方から聞いたことがなかった。[魔法を習得できない]、それが理由で秘匿扱いされていたのか」

軟禁のことまで話せば、世間からバッシングを受ける可能性が高いからね。

「酷い」

ナナリス様が、何故か悔しがっている。

「ヒライデン家は、優秀な魔法士を生み出す家系。魔法を習得できない者は、愚者扱いされ、その恥を周囲に知られないよう配慮したんですよ。今回、僕の事情を世間に一部知られましたが、魔法改良の件もあって、お咎めなしで済みました」

「それを聞いて安心した。さあ、リビングへ移動して、ゆっくり話し合おう」

僕達は、リビングへと移動していく。

フレミングス子爵は王都でも一目置かれている商会の会頭でもあるから、どの貴族からも注目されている人物だ。こうやって話してみると、気さくで好印象を受けるけど、彼の目を見た限り、商売人のせいか、芯の強さを感じる。

さて、どんな話し合いになるのやら。

○○○

リビングに通され、飲み物とお菓子を出されたけど、やはり大商会だけあって、食器類も優雅で気品があり、紅茶やお菓子もかなり上質なものを使っていて美味い。今頃、ルティナとリノアも、別部屋でパクパクとがっついているかもしれないな。

飲み物を数口飲み落ち着いた気分になったところで、僕はナナリス様を見る。さっきから怯えた目で僕を見ているせいか、視線を合わせると、すぐに逸らされてしまう。

「ナナリス、命の恩人に対して、その視線と表情は失礼だぞ」
「あ…申し訳ありません」

これは、重度の人見知りだな。フレミングス子爵も、悲しげな表情を浮かべているから、何か込み入った事情があるようだ。

「構いませんよ、フレミングス子爵。今回私を招待した理由は…やはりナナリス様のことですか?」

僕の方から話題を本題へと切り替えたことで、彼の顔つきが変わる。
子爵は申し訳ない表情で、僕を見る。

「その通り。既にギャリソンから聞いていると思うが、君の製作してくれたマスクがあまりにも高性能で精巧かつ緻密、専門業者やベテラン魔法士でも製作不可能だとわかった。リョウト君、君はあのマスクを簡易的なものだと言ったが、あそこまで優秀なものを何故そう言ったのか聞いてもいいだろうか?」

この世界は、地球でいうところの19世紀中盤くらいの文明で、建築様式はヨーロッパに近い。マスクとかも開発されているから、てっきり誰にでも製作可能だと思ったのに、とんだ誤算だよ。

「あれを毎日使用していると、目詰まりを起こしてしまい、その機能をいずれ果たせなくなるんです。それに、魔力残滓の吸入をゼロにするわけじゃないので、定期的な解毒魔法による治療が必要です。なにより、ナナリス様がそのマスクを付けていると、せっかくの可愛い顔が半分程しか見えません。だから、不完全な物なんです」

あれ? ナナリス様の顔が赤いぞ? 実際、可愛い顔立ちなんだから、言い慣れているとばかり思っていた。というか、人見知り、何処に行った? この言葉だけでおちたら、お兄さんは君の将来が非常に心配になる。

「あはは…これはやられたな。まさか、そこまで娘のことを考えてくれていたとは…いやはや驚きだ。君には、商売人としての素質がある」

僕に、商売の才能はないよ。あくまで、前世の知識を披露したに過ぎないからね。まあ、何の事情も知らない人から見れば、そう感じてしまうものか。

「大袈裟ですよ。あとで、ルティナの解毒魔法を使い、ナナリス様の体内とマスク内にある魔力残滓を消しておきましょう」

「身体の外にある毒素も、消せるのかね?」

「消せます。ただし、何の知識もなく、言っても理解できない者が、解毒魔法を行使しても、効果はありません。術者自身が、対象者や対象物のことを深く知る必要性があるのです。ルティナには、解毒魔法の真髄を教えていますし、講義受講者にも教えていますので、僕たちがいない時に発作が起きた場合でも、冒険者ギルドに連絡すれば対応可能な問題です」

武器や防具類に付着した毒物の除去が可能と知って、皆も喜んでいたよね。ナナリス様もフレミングス子爵もほっとしているところ悪いけど、一つ注意を入れておこう。

「ここで、一つ忠告しておきます。病気の症状が出ない日々が続けば続くほど、人は『もしかしたら完治したのでは?』と思ってしまいがちです。その油断でマスクを外して行動すると、途端に発症するので、ナナリス様は自分の病気が治っていないことを強く自覚してください」

「は…はい」

僕の真剣な物言いで、彼女も自覚したのか、真剣な面持ちで頷いてくれた。

しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...