幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護

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6話 冒険者資質認定試験

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全ての工程を終え、待機室で5分程待っていると、スズナお姉さんが入ってきて、冒険者カードを手渡される。

「これが冒険者カード! 僕の顔がある!」

表には、僕の顔が右側にあって、名前、種族、年齢、冒険者ランクの記載があり、裏には冒険者としての規則が書かれている。

「それと、この本を渡しておくわね」
「これは?」
「冒険者としての心得が書かれたものよ。冒険者ギルドでの依頼受諾方法や決まり事が書かれているの。まだ、ノア君には難しいでしょうから、依頼を受けたいときは私に言って。あなたにオススメな依頼を選んであげる」

それは、僕としても嬉しい。さっきの掲示板を見た限り、身長が低いせいで、上の方を見れなかったからね。

「今の時点で、何かある?」
「ふふふ、あるわよ。手始めに、これを受けてみなさい」

一枚の依頼書、依頼内容は薬草の運搬で、冒険者ギルドの倉庫で保管されている薬草類を生産ギルドへ運搬すること。

「[収納]は、魔道具の収納鞄と違って、多種類の薬草を一気に異空間へ移動させ、ステータスを利用することで、種類別に仕分けすることも瞬時に可能よ。一般人にこれをやらせれば、かなりの労力を要するわ。まだ5歳で初めての運搬業務だけど、貴方は賢く、物事の良し悪しをしっかりと理解しているから、この業務を任せます」

収納の便利性を理解したけど、冒険者になったばかりの5歳の僕に運搬なんて任せていいのか不安になる。でも、スズナさんは僕のことをきちんと見て信頼できると判断してくれたのだから、しっかりと業務に励もう。

「うん、これやるよ!」
「わかったわ。これは警告、絶対に盗まないように」
「当然さ、そんな事しないよ!」

そんな悪行を犯したら、僕の寿命が減るからね。

○○○

僕は冒険者ギルドの倉庫から、大量の薬草類を収納に入れると、『12種類の薬草が収納されました。種類ごとに、区分分けしますか?』と出たので承諾すると、一瞬で区分分けされて、おまけに何個あるかも記載されていた。種類と数をスズナさんに教えると、資料と照らし合わし、問題なしと判断されたので、僕は冒険者ギルドを出てここから、徒歩20分程度の位置にある生産者ギルドへ向かっている。僕は歩きながら、スズナさんからの忠告を思い出す。

『この薬草類を、必ず今日の営業時間内に届けてね。そして、収納については、誰にも言ってはいけません。あなたくらいの年齢だと、品物目当てで容易に誘拐できるからです。私たちの方でも、他者にあなたの情報を言いませんので、ノア君も十分注意して生活してね』

冒険者ギルドに行って、正解だ。
スズナお姉さんは、ここで暮らす上での注意事項を教えてくれたからね。
あれ? 
あそこでトボトボ歩いている女の子、ミサって子を探している人だ。

「ねえ、お姉さん」
「うん? あ、さっきの子供」
「僕はノア、5歳。お姉さんは?」
「レアナ、12歳だよ」

ショートカットのレアナお姉さん、すっごくしょんぼりしているけど、何かあったのかな?

「元気ないね」
「あはは…わかる? 奴隷ギルドに行ったら、君の言った馬車が到着したばかりで、今まさに奴隷たちを検分している途中だったせいで、邪魔だから追い出されちゃった。明日行っても、奴隷たちの情報を開示してくれるかどうか…はは、ごめんね、愚痴っちゃって」

う~ん、大変な事態になっているようだ。僕がミサって子を助けたら、善行になるのかな? でも、無関係の僕が介入しようとしたら、レアナお姉さんにきっと怪しまれる。善行するのなら、偶然を装った方がいい。

「いいよ。頑張って」
「おおう、見事に他人事のような言い方だ」
「だって、他人だもん」
「そうだよね~まあ、頑張るよ。一層の事、夜に侵入しちゃおうかな…あはは」

レアナお姉さんは、元気なくフラフラと僕から遠ざかっていく。
余程、ミサって子と仲が良かったのかな? 

僕は気を取り直して、生産者ギルドを目指す。周囲から視線こそ感じるけど、そこに敵意はないから、特に気にかけることなく歩き進めると、目的地に到着したので、受付の眼鏡をかけた男性に、依頼票と手紙の入った封筒を渡す。そこには、スズナさんが僕を指名した理由が書かれている。

「これは!? 早い到着だと思ったら、なるほど逸材ですね。ノア君、倉庫に来てもらえるかな?」
「はい」

僕はギルドの敷地内にある大きな倉庫へ行き、収納から種類ごとに薬草を置いていく。

「まだ、5歳で我々の求める容量を全て収納可能とは…驚きですね。少々お待ちを」

受付の男性は資料と照らし合わせながら、一つ一つ丁寧に調査していき、全てを終えたのは40分後だった。それまで男性は、忙しなく動いていた。

「ノア君、ありがとう。全てが完璧です。こんな小さな男の子に運搬を任せるのも如何なものかと思いますが、収納のスキル所持者は希少ですし、その利便性を考慮すればやむを得ない判断でしょう」

やった、褒められた!

「今後、運搬に関しては、君に任せましょう」
「いいの?」

「ええ、ギルドマスターからの許可を得ています。あなたのような子供に、荷物を運搬させるとは誰も考えないでしょうから。ノア君の情報に関しては、秘匿扱いにしておきますので、悪者に狙われる危険性も低い。ただ、ここから冒険者ギルドまでの運搬中に、災難に遭う可能性もゼロではないので、任務中は絶対に油断しないように」

「はい、わかりました」

「依頼達成の印を押しましたので、これを受付のスズナ嬢に渡せば、報酬をもらえます。今後とも宜しく」

「うん、宜しくね!」

あとは冒険者ギルドに戻って、報酬を受け取れば、お仕事達成だ。

○○○

僕は冒険者ギルドに戻り、スズナお姉さんに依頼書を渡す。

「依頼達成、おめでとう。途中、女の子と話し合っていたけど、殆ど時間を潰す事なく、目的地に到着したわね。その後の生産ギルドでのやりとりも合格よ。ノア君は、これで正真正銘のランクF冒険者です」

え? どういうこと?

「もしかして、ずっと見ていたの?」

スズナお姉さんは、ニコッと笑う。

「ええ、ずっと気配を消して観察していました。そもそも、互いのギルドの信頼性を損なう可能性もある大口の仕事を、普通5歳の子供に任せません。ただ、収納の利便性を活かしたいのも事実、ギルドマスターと相談して、私が監視しながら、冒険者の資質テストも兼ねて、貴方の業務態度を見させてもらいました」

僕の運んだ薬草類って、生産ギルドでポーションなどの製造に利用されるって聞いたけど、それって人にとってかなり重要な物品だ。その材料を子供に任せる行為自体が、おかしいことだったのか。

「僕って、冒険者として認められたってこと?」
「ええ」

この依頼の最初から最後までが、僕の冒険者としての資質があるのかを試す試験だったってことか。

「良かった~。あ、てことは、今後も生産ギルドへの配達って、僕がやっていいのかな?」
「ええ。それ以外にも、スキル[収納]を利用したランク共通のお仕事をお任せする予定です。そして、これが今回の報酬」

これって金貨? 3枚もあるけど?

「金貨1枚で10000万ゴルド、報酬は3万ゴルドです」
「こんなに貰っていいの?」
「当然よ、成功報酬だもの。ノア君の場合、財布に入れて持ち歩くのは危険だから、収納に入れておくべきね。この報酬額に関しても、人に言ってはダメ」


話を聞いた限り、ランクFの1つの依頼における平均報酬額は、3000ゴルド。僕は、その10倍の報酬を貰ったことになるので、周囲に知られると襲われる可能性が高いんだって。

う~ん、僕って秘密にするものが多くないかな?

【善行[生産ギルドへの配達運搬]を実施したため、寿命が5日回復します。残り寿命、109日となりました】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        《ノアの善行日記》
生後7日目
善行:生産ギルドへの配達運搬
僕の残り寿命:104→109日(5UP)
今日から、僕は冒険者だ。次は、どんな依頼を受けようかな?
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