カードガチャでリスタート‼︎〜パーティーを追放されたカード戦士は導き手となって最善ルートを突き進む〜

犬社護

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1話 カードガチャでリスタート

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ああ…暗い。
何も見えない。
ここは、何処だ?
全てが闇に、覆われている。
俺自身の姿も見えない。
俺は…どうしてここにいるんだ?

今日は、十五歳となった俺の誕生日のはずだ。

年一回必ず起こるイベントだが、成人となる十五歳の日だけは誰であっても特別なものとなる。何故なら女神様から一人前になった証として、一つの恩恵が人々に授けられるからだ。

それが《職業》。

各街の教会内に設置されている女神像の前でお祈りすることで、自分にしか見えないステータスプレートが具現化され、自分自身に潜む内なる力がそこに示される。俺も朝早くから教会へ行き祈ったのだが……何も起きなかった。周辺にいる俺と同じ誕生日の男女は明らかに何もない空間を見て喜んでいるのだが、俺がどれだけ祈ってもステータスプレートは現れない。

正直、俺は何が起きたのかわからず、その場を動けなかった。

俺の後から入ってくる人間達は次々に喜んでいるのに、俺だけが抜け殻のように立ち尽くす。どれほどの時間が経過したのかわからないが、俺は教会を抜け出しパーティーメンバーである幼馴染達ロゼスト、ミゼラガ、バウスの待つ冒険者ギルド二階のゲストルームヘ向かった。あの時の俺の心は、嵐の如く荒れていて、とにかくこの異常事態を誰かに聞いて欲しかったんだ。だから、三人に全てを話すと…パーティーリーダーのロゼストが俺に激励の言葉と耳寄りの情報を贈ってくれた。

「稀に、そういう事も起きるさ。案外、一年後の誕生日に凄い職業を授かるかもな。それより、これからダンジョンへ行こう。そういう気分の時は、何もかも忘れて魔物狩りに集中すれば良い。実はな、耳寄りの情報が手に入ったんだよ。二日前、ここ王都から東に十キロ程離れた森林地帯に、洞窟ダンジョンが形成されたんだ。その情報を聞きつけた冒険者達が通路内の探索を始めたらしいんだが、規模がかなり大きいらしい。浅い区域なら、俺達の力量でも通じるから探索に行ってみないか? 上手くいけば、誰よりも早く宝を入手できるぞ。フィックスも、そこで気晴らしに暴れるといい」

彼だけでなく、ミゼラガやバウスも俺に励ましの言葉を贈ってくれたことで、俺の目からは知らぬ間に、感激の涙が一滴一滴と流れ出ていた。

金髪頭の【ロゼスト】は、剣術や体術に雷魔法を組み合わせた職業《雷装戦士》。
常に冷静さを失わず、誰もが認めるパーティーリーダー。

オレンジ頭の【ミゼラガ】は、槍術・闇魔法に秀でた職業《魔槍士》。
目つきも悪く、大雑把で乱暴な性格。
一度戦闘になると、容赦無く魔物を屠る豪腕を持つ。

黒髪頭の【バウス】は、剛力と防御を兼ね備えた職業《重戦士》。
重装備で強面な顔をしているが、見た目とは裏原に温厚な性格だ。

三人とも俺より生まれが早いため、二月前の時点で職業が既に決まっていた。新たに得た力で個人の冒険者ランクを早々に二等星から三等星へ上げたこともあって、ギルド内でも名を覚えられつつある。いまだに俺だけが下から二番目の二等星のため、肩身の狭い思いをしていた。足手纏いになりつつあるそんな俺を、皆が励ましてくれる。これ程、嬉しいことはない。

その時、俺はこいつらのためなら何だってできると思ったよ。

その後、俺達は王都の外れにある目的のダンジョンへと潜入し、魔物共を刈りまくったのだが、ロゼストが探索中に隠し通路を発見した。初めての出来事であったため、俺達は浮かれる事なく、そこから慎重に歩を進めていく。一本道となっており、真っ直ぐ進んでいくと、一つの巨大フロアへと到達した。

最奥には一際立派な台座があり、その上には大きな宝箱が一つ設置されている。それを守るかのように、両端となる壁には二体の巨大騎士の石像が鎮座されている。明らかに罠だと思い、俺は入口付近で踏みとどまったのだが…

「フィックスは、そこから俺達を見張っていてくれ」
ロゼストの発言に、俺は戸惑いを感じた。
「見張る? お前ら、何をするつもりだ?」
「決まってるだろ? お宝を貰うんだよ」

そう言うなり、三人共一目散に宝箱へと向かい、ロゼストがなんの躊躇いもなく宝箱を開ける。正直、正気の沙汰じゃないと感じたが、三人は中身を理解しているのか、すぐに取り出し、今持つ武器を収納袋に入れ、ロゼストの右手には魔剣、ミゼラガの右手には魔槍、バウスの右手には魔斧が握られている。ここから離れているが、あの装備自体から強い魔力を感じる。あんな武器が眠っていたことに驚きではあるものの、ああいった強力な武器は一度宝箱から取り出されると二度と復元しないと聞く。つまり、今回が初見ということだ。

俺がこのフロアについて考え事をしている間、三人は何故か酷く焦りながら、収納袋から何かを取り出そうと必死になっていた時、突如フロア内から警笛が鳴り響き、俺の後方にある通路へと繋がる道が壁によって閉ざされた。そして、何処からか振動が響いてくる。

「やばい、もう十五秒経過していたのか。ミゼラガ、早くアレを出せ‼︎」
あれ?
「わ~ってるよ‼︎ ほらよ」
ミゼラガが取り出したのは、三人分の黒い外套だった。

「お、おい、今から何が始まるんだ?」
奴らが外套を着込むと、姿が消えて魔力も気配も希薄になっただと‼︎
「おい、何処だ‼︎ ロゼスト‼︎」
『なんとか間に合ったな。【能無しフィックス】、煩いぞ』

あの時の言葉、今でもはっきりと覚えている。
あいつは間違いなく、俺のことを《能無し》と蔑んだ。

『は、言葉も出ないか。フィックス、仲間として最後の命令だ。もうすぐ、ここの岩壁が開き、そこから大勢の魔物達が押し寄せてくる。【囮】、頼んだぞ。俺達が逃げ切るまで、時間を稼げ。能無しのお前でも、少しは役立ってから死んでくれよ。今日着ているお前の服には、魔物の好む匂い袋を縫い付けておいた。この意味、わかるだろ?』

あの時、俺はあいつの言葉で、全てを理解した。奴等はあの武器欲しさに、俺に内緒でここの情報を集め、設置された罠を掻い潜るための策を用意したのだと。

【全ての魔物を俺へ引き寄せ、存在感を希薄にさせた自分達だけが魔物の通ってきた道を利用してフロアを脱出する】

『ああ、それと良いことを教えてやろう。このフロアでは、脱出アイテムの使用は禁止されている。脱出する方法は、魔物の殲滅しかない。仮になんらかの方法で脱出できたとしても、お前は俺達のパーティーから追放だからな。それじゃあ身代わりくん、後は頼んだぜ!』
ロゼストの声だけが、フロアに響く。
「お、お前ら~~~」

俺が叫んだ瞬間、両脇に控えていたあの二体の石像が動きだした。また、台座後方にある壁が開き、魔物がわんさかと雪崩れ込んでくる。その数は不明、全てが俺に向かって押し寄せてくる。戦闘の覚悟を決めた時には、ロゼスト達の声はしなくなっていた。結局、俺は大勢の魔物達に殴られ蹴られ斬られ、最後にあの巨大石像に……踏み潰されたんだ。

「そうだよ…俺は…踏み潰されて死んだんだ」
『あら~やっと魂が目覚めたのね~』

突然、透き通る綺麗な女性の声が暗闇から聞こえてきた。
いやいや、こんな暗闇の中に、女性がいるわけない。
人間の肉を好む魔物、セイレーンとかだったりしないよな?

「ここって…まさか地獄?」
『う~ん惜しい‼︎ ここは【虚無牢獄】、生ある時に大罪を犯した者だけが死後収監される場所よ。魂自体が罪を認め浄化されるまで、一生出られないわ』
なん…だと…
「俺は、大罪なんて犯していない!」
あ、まずい。
相手は姿こそ見えないが、今のところ優しく接してくれている。
機嫌を損ねないよう、出来る限り敬語で話していこう。

『そう、あなたは大罪を犯していない。全ては、ブルセイド王国を担当する職業担当精霊が悪いの』

え…精霊?
どういうことだ?

『本来、あなたは職業を貰えるはずだった。でも、あのバカが入力し忘れちゃったせいで、ステータスプレート自体があなたの前に現れなかった。まあ、千年に一度起こるか起こらないかのミスね。あなたは、このミスが原因でダンジョン内にて仲間から裏切られ死んでしまった』
ちょっと待て‼︎
まさか、全ての発端はその精霊のせいなのか?
『ご明察~~~、あなたの魂があまりにズタズタだったから、ここで修復させていたのよ』
巫山戯るなよ!
人の人生をなんだと思っているんだ!
『安心してね~私が責任を持って、そいつを消滅させておいたわ~』
消滅って…そもそもこのゆる~い声の主人は誰なんだ?
まさか、女神様?
『ノーコメント。さて、あなたを復活させたいのは山々なんだけど、私の世界にも法律が存在していてね~。こちら側のミスで人を死なせてしまった場合においても、《死なせてしまった原因の排除》と《死からの復活》しかやってはいけないのよね~。本当にこの法律を作った奴って、頭が硬いわよね~』

俺としては、その行為だけで嬉しいが、《死からの復活》って場所は何処になるんだ?
まさか、あのトラップフロアーじゃないよな?

『それはないから安心してね~。さてと…』

うお、突然俺の目の前に、淡い青色の光を放つカードが十五枚出てきた! カードには幾何学的なデザインが施されており、中々ユニークだ。

『そのカード類には、各々1~15の数字が一つずつ描かれているわ。この数字は、あなたの年齢を指しているの。あなたは、それらのカードから一枚を選びなさい。選択したカードに描かれた数字の誕生日に復活することになるわ~』

そうか、俺は十五歳で死んでいるから、カードの数も十五枚ということか。俺は孤児でブルセイド王国王都ブルセイドのスラム街出身、両親の記憶など欠片も残っていない。多分、個が完全に形成されていない時期に別れた可能性が高い。1の数字を引けば、両親に出会える可能性だってある。そうなったら、今とは違う未来になるかもしれない。

「わかりました。カードを選びます」
『ズルしちゃダメよ~~。さあ、何が出るかしら~』

俺の存在が魂だからなのか、何故か身体を動かせない。身体さえ動けば、浮いているカードの反対側へ回って、堂々と数字を観察したかもしれないが、今はズルなどできそうにない。俺は勇気を振り絞り、目の前に浮かんでいる十五枚のカードから一枚を凝視する。

その瞬間、残り十四枚が姿を消す。
このカードの数字は何だ? 
俺が波打つ心を必死に抑えていると、カードが少しずつ裏返っていく。
完全に裏返った数字は……
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