冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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第一章 姪との出会い

8話 召喚されし者 ※チェルシー視点

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え、どういうこと?
なんで、あんな生物が召喚されるの?

陣の近くにいる国王陛下も、召喚したラルカーク自身もあまりの衝撃で固まったままだ。

「ピヨピヨピヨピヨ」

彼の召喚に求め応じた生物は……《ひよこ》。
意味がわからないよ。
なんで、あんな可愛い生物が召喚されるの?

野生の生物は、魔物と同じく世界中何処にでも存在する。全ての生物にとって、魔物は天敵だ。だから、生きとし生けるもの全てが弱肉強食の世界で生き抜くため、日々強くなろうと研鑽を果たしているから、野生の生物たちが私たちの願いを聞き入れ召喚される場合もありうるけど、いくらなんでもこれはない。

彼が自分のことを《ひよっこ》と言ったから、その言葉に合わせた《ひよこ》が召喚された? 

もしかして、不具合が陣に起きたんじゃあ? 

気まずい空気が周囲を覆う。儀式の最中だから、誰も口出しできない以上、ラルカーク自身か陛下のどちらかが場を進めてもらいたい。

「陛下、も…もう一度、儀式を行います!! 構いませんか?」
「ま…まあ良かろう。何らかの不具合が起きたのだろう」

不具合…だよね? うん、そう信じたい。まさか、第一王子の資質がひよこレベルってことはないよ!! 入学試験、初回の定期試験だって三位以内に入る程の秀才だもの!!

「召喚されたひよこは、元の場所へ帰還させる」

可哀想だから、是非帰還させてあげて!!
あ、ひよこがラルカークの言葉で消えたわ。

「私の求める者は威風堂々とした佇まいで、その場に立つだけで相手を威圧させるほどの鋭い眼光を持ち、安心感を抱かせる者を召喚したい!!」 

ラルカーク、注文多いよ!!
そんな限定した範囲だと、召喚される者だって限られてくるんだよ!!
あ、召喚が始まった!!
何が召喚される?

「な…馬鹿な…なんで…」

信じ…られない。多分、この場にいる全員が、私と同じことを思っているかもしれない。召喚された者は、確かにラルカークの言った条件に全て当てはまっているわ。

《威風堂々とした佇まい》、《威圧させるほどの鋭い眼光》、《安心感を抱かせる者》。

これらの条件に当てはまる者が出現して言葉を発しようともせず、ラルカークをじっと睨んでいる。

でも……

「これが…これが私の資質だと言うのか!! そんな馬鹿なことがあってたまるか!! どうして…どうして《ハシビロコウ》が召喚されるんだ!! 私は…私は…こんな」
「「ラルカーク!!」」

庭園に轟くラルカークの怒声、そして言ってはいけない一言を発しようとした瞬間、国王陛下と王妃様が同時に声をあげた。

召喚された者がたとえどんな生物であろうとも、術者は話し合いもせずに拒絶してはいけない。魔法陣の中にいるもの同士は、魔力が一時的に結合しているから、相手の言っている内容を理解できる。だから、召喚しておいて勝手に拒絶しようものなら、相手は怒る。ひよこは赤ちゃんだから問題なかったけど、今度の鳥ハシビロコウは違う。明確な意思を持ち、ラルカークを睨み、何故呼んだのかを問おうとしているわ。野生生物はどんな環境に置かれているかで、強さも異なるし、魔術…いえ精霊と同じ魔法だって使用してくる。

「も…申し訳ありません。ハ…ハシビロコウと話を致します」

これまで野生の動物や鳥類と契約を結んだ実例もあるけど、ハシビロコウは図鑑でしか知らないし、契約を結んだ者だっていない。その強さは未知数だけど、こうやって実物を見ると、結構可愛いし強いかもしれない。

「な、断るだと!!」

ラルカーク、契約を拒絶されたんだ。あれだけ嫌な素振りを見せたら、言葉を発しなくても相手に伝わっちゃうのかな。

「はあ!? 私との契約は嫌だけど、ここが気に入ったから帰還させるなだって!?」

自己主張の強い鳥さんだ。
あの鳥とは、仲良くなれる気がする。
でも、結局のところ主導権はラルカークが握っているんだよね。
どんな判断を下すのかな?

「な!? 番となるハシビロコウをもう一体召喚しろだと!? お前…何処まで厚かましいんだ…く、良いだろう。私が召喚した以上、責任は取ろう」

国を守護する風の特異精霊フューイ様がいる以上、ラルカークも下手に対応できない。対応次第では、王位継承権だって剥奪される場合もある。ラルカークの立場も、かなり揺らいだんじゃないかな? でも、今回の召喚は少しおかしい。《ひよこ》は間違いなく不具合による召喚だけど、ハシビロコウはどうなんだろうか? 

……結局、召喚されたハシビロコウは二体となり、王城で飼うことになった。

その場にいた男性騎士の一人が陣内に入り、ラルカークを経由して二体と話し合ったことで、主従契約を結くことに成功させた。二体とも魔法を使えるらしく、王城で飼われる代わりに、周囲一帯を警備してくれることになった。

これで立志の儀も終了となったわけだけど、ラルカーク一人だけが魔術陣の敷かれている場所に今でも立ち尽くし、呆然と地面を見ているから、この結果に納得していないのが一目でわかる。自分はハシビロコウに嫌われた一方で、先程の男性騎士は二体に好かれ契約を結べたのだから無理もない。でも、『魔術陣の不具合だからやり直しを要求する』と言わないだけ大人だよ。彼にとっては、屈辱的な出来事だろう。私やクリスティーがこの場で慰めに言っても、多分怒るだけだ。

「ねえチェルシー、あなたが祝福される側にいたら、別の何かが起きていたかもしれないね」

そうか、クリスティーの言う通りだわ!! 

ラルカークの提案に乗っていたら、私も被害に遭っていたかもしれない。まあ、それは魔術陣に何らかの不具合が起きていた場合の話だけど、あのハシビロコウだってラルカークの資質で本当に呼び出された場合もあるもの。

「提案を一蹴しておいて良かったわ。あの鳥さんとは、今後も仲良くできる気がする。召喚されたばかりでのあの厚かましさが気に入ったよ」

「あはは…誕生日パーティーはどうなるのかな?」

はっきり言って、このままの状態では続行しづらいよね。でも、パーティーが始まって一時間程しか経過していないから、終了するとは思えない。今、この時点でのラルカークの器が試されているかもしれない。

『チェルシー、このまま《立志の儀》を終わらせてはいけません!!』

え、今の声はルーテ!?
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