冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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第三章 水面下で蠢く者たち

27話 アンリエッタの謝罪

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日記帳を入手してから三日が経過しました。

お兄様から経過を聞いたところ、ニーナ・エクスランデは現在も隔離状態となっており、無実を訴えているようです。ただ、私(ルーテシア・フォンテンス)の事件以降、冤罪を起こさせないためにも、容疑者の隔離期間は一ヶ月と決まっており、その期間以内に何も集まらなかった場合は解放されるようです。

また、別の真犯人もしくは共犯者がいることも想定し、隔離中の容疑者の警備は、《遠距離からの狙撃魔術》、《面会人による暗殺》、《料理や飲水による毒殺》など、あらゆる事を想定し厳重になっているため殺される心配もありません。

エクスランデ公爵家も動きを見せておらず、アンリエッタがずっと学園を休んでいるため、日記帳がどうなったのかもわからないので、お兄様も待機状態となっています。

私はというと、チェルシーの護衛を務めながら、のんびりと平和な学園生活を送っています。

まあ、焦る必要はありません。

私の死から十八年、真犯人が私の知り合いであるのなら、奴も四十歳前後のはず、チェルシーを護衛しつつ、少しずつ手掛かりを見つけていきましょう。

そして今日、私がチェルシーやクリスティーと共に学園へ登校し教室に入ると、そこにアンリエッタの姿がありました。彼女から私の姿を見えるよう設定しているため、こちらを見るといきなり席を立ち上がりました。急に立ち上がったこともあり、クラスメイトたちもこちらを見ています。私は、右手人差し指を立て口につけてからジェスチャーで言わないよう合図すると、彼女は静かに頷きチェルシーたちに声をかけました。

「チェルシー、クリスティー、おはようございます」

二人も意図に気づいたのか、笑顔で挨拶を交わすと、早速アンリエッタが二人に話しかけてきました。

「二人共、あの件で話したいことがあるので、昼食後《一番の相談室》に来てください」

アンリエッタの言うあの件とは、当然《私》と《立志の儀》で起きた事件のことを指していますね。ただ、日記帳の複製品については私もアンリエッタに話していませんので、チェルシーとクリスティーもそこだけを注意して話し合えばいいでしょう。

「了解です!!」
チェルシー、何故敬礼をするのですか?

「わかりました。昼食後にお伺いします」
そうそう、クリスティーの対応が普通です。

チェルシーの言い方は貴族らしくないものの、これが彼女の個性なのでしょう。周囲の女性陣からも敵意を感じませんので、皆も彼女の個性を気に入っているのね。

『わかったわ。そこでの話し合いが楽しみね』

三人が笑顔となり静かに頷くと、そのまま自分たちの席へと向かいました。
さて、アンリエッタが登校してきたと言うことは、公爵家の方も落ち着いたと言うことね。
彼女との話し合いで、何か進展があればいいのだけど?

○○○

この学園には、談話室・相談室・指導室といった部屋が存在しています。談話室は、十人程度が寛げる比較的広い部屋で、学生用の小さなお茶会が開催可能となっており、貴族の男性陣や女性陣たちがよく利用しています。そして私たちの向かっている相談室、ここは四人前後が入れる小さな部屋となっており、悩みを抱える人たちが信頼できる教師や友達などに相談するために存在しています。

私たちが一番の相談室に入ると、既にアンリエッタがおり、飲み物を準備しているところでした。

「アンリエッタ様、そう言うのは男爵令嬢の私がやりますよ!!」

チェルシーが慌てて彼女の元へ向かいますが、丁度準備が終わったところのようです。

「いいえ、私にやらせてください。今回、私の母がチェルシーを陥れようとしたこと、そして私はルーテ様に助けて頂きました。その謝罪とお礼をせねばなりません」

チェルシーも意味を理解したのか、すぐ横にあるソファーへ座りました。アンリエッタが対面側のソファーに座ると、クリスティーはこれからのことを予期したのかその隣へ、私はチェルシーの隣に座り実体化します。

テーブルには、四人分のアップルティーが置かれていたので、私がそれを口に含むと、三人もそれに習います。身分上、アンリエッタが最も高いのですが、高位精霊の私が動きませんと、皆も飲めないでしょう。

「まずチェルシー、謝罪が遅れてしまい申し訳ありません。あの時、あの物的証拠がなければ、あなたも容疑者の一人になっていたはずです。そうなったら、学園でのあなたの評判は地に落ち、追い出されていた可能性があります」

ふふ、良い判断です。
今は私への御礼よりも、チェルシーへの謝罪が先決ですわ。

アンリエッタが深々と頭を下げたことで、チェルシーもかなり当惑しているようです。やはり、アンリエッタはニーナと外見上似ていますが、中身の性格が全く違いますね。あの人は何らかのヘマを犯したとしても、高位貴族としてのプライドが高いせいもあって、自らが頭を下げると言う行為を絶対にしません。

あの日記に書いていた通り、ニーナは自分の娘の価値を高く評価しているからこそ、ラルカーク様の婚約者にしたかったのでしょう。

「アンリエッタ様、私は怒っていませんから頭を上げてください!!」
「チェルシー……ありがとう」

頭を上げたアンリエッタの微笑みからは、謝罪だけでなく、感謝の念も伝わってきます。どうやら彼女は、今の時点で王太子妃としての資質を十分持ち合わせていますね。私と同じ教育を受けたとしても、彼女なら短期間で全てを習得できるでしょう。だからこそ、何故ニーナがあんな行為に走ったのか疑問に思います。チェルシーへの謝罪を終えると、次は隣にいる私に顔を向けてきました。

「ルーテ様、我が公爵家へ御助力して頂き、誠にありがとうございます」
先程と同じく、アンリエッタは私に対して頭を下げます。

「その言い方から察するに、エクスランデ公爵にきちんと伝えたのね?」
彼女の顔は真剣そのもの、嘘をついていないのはわかります。

「はい。勿論、ルーテ様の存在は伏せてあります。チェルシー、クリスティー、ここから先は、他言無用でお願いしますね」

二人はその内容を全て把握しているのですが、アンリエッタから感じる真剣さに気圧されたのか、身体を固くしているため、そういった気配を全く感じさせません。

「あの事件絡みのことですよね? 私とクリスティーに話しても良いんですか?」
その真剣さから、チェルシーも聞いていいものか迷っているようですね。

「構いません。チェルシーは事件の関係者ですし、クリスティーはルーテ様の存在を知っていますから、信頼に置ける人物だと判断します」

この子は、的確な判断をしますね。
クリスティーもアンリエッタに御礼を言い、頭を下げます。

「ルーテ様の助力もあって、母の私室から日記帳が見つかりました。その結果、

アンリエッタは私たちのいる前で、はっきりと自分の母が犯人の一人であることを断言しました。
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