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最終章 事件の真相
41話 グレースの秘事 前編
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「う…私は? え、何故ベッドの上にいるの?」
「それは、私が運んだからです」
あのまま気絶したグレースを放置しておくと、風邪を引かせてしまいます。
子供が大人を抱き上げるシチュエーション、早々起きないでしょうね。
「夢じゃなかったのね。ルーテシア…なのよね?」
「ええ、そうです。どういうわけか、精霊に転生しちゃいました」
グレースは私を直視するとすぐに、ガバッと起き上がりました。
「あなたを殺した犯人は誰なの!?」
やはり、そこを追求してきますわね。
ごめんなさい、あなたの望む答えを今の私は持っていないのよ。
「わからないわ。あの時、奴はフードを被っていて、魔術で声を中性的なものへ変化させていたの」
「そ…そうなのね」
気分も落ち着いたようですし、まずは私の近況を教えてあげましょう。私は生後一週間ほどで、結構濃密な体験をしていますから、彼女も驚くかもしれません。あの牢屋で生まれ、チェルシーと出会い、家族の状況を知って悲嘆に暮れ慟哭したことを伝えると…
「ちょっと待って!! ということは、あれはあなたの仕業なの!?」
何かを思い出したのか、急に叫びましたが、《あれ》とは何を指しているのでしょう?
あ!?
「もしかして慟哭した後、気づいたらオリハルコン製の牢が崩壊寸前になっていて、周辺に貼られていた聖宝符が全て消失したことを言っているの?」
あの時はやらかしてしまったと思いましたが、少し騒ぎになる程度で問題ないでしょうと勝手に判断し、完全放置していましたわ。
「それよ!! 今日になってそれが発覚して、事情を知らない貴族や騎士たちが騒いでいて、宥めるのが大変だったの!!」
思った以上の騒ぎになっていたのね。
私のゴーストを封印したそうですが、私自身が精霊として生まれ変わったのだから、その残滓に関しては完全に消失していますわ。そうでなかったら、今頃もっと騒ぎになっていたでしょう。
「事情は、ロイドお兄様の娘チェルシーから聞いているわ。目覚めるまで私は、白い空間にいたのだけど、精霊として生まれた際、何故か犯人への憎しみが殆どなかったのよ。多分、死んだ際に憎しみだけが牢に留まったのね。まさか、それが政治に利用されるとは思わなかったけどね」
私の言いたことを理解したのか、グレースはしゅんと項垂れます。
私を政治に利用した理由、それは何かしら?
「ごめんなさい。あなたが捕縛されて以降、私たちの考えていた以上に、新聞記者たちが、【《ルーテシアは悪女?》】という見出しの新聞を大々的にあちこちの街に配ったせいもあって、国中に広まったのよ。あなたが殺されて以降は見出しで、《ルーテシア、自決する!!》、《王家の大失態? ルーテシア、真犯人に毒殺される》という記事まで出てきて、収集がつかなくなってきたの」
新聞記者の中には、新聞自体の売り上げばかりを考えて、真相などそっちのけで有る事無い事書いたりしますから、平民の方々はそれを面白がって読み、その情報がクチコミで拡散されるのよね。王家がその新聞社を潰そうものなら、他の新聞社がその件を叩く。結局のところ、その行為自体が自らの失態を認めることになります。
王家側も、迂闊な行動を起こせません。
「そこにあなたのゴーストが現れたこともあって、騒ぎに拍車がかかったわ。新聞記者の中にはあなたのゴーストに真相を聞くべく、王城の地下へ潜り込もうとした馬鹿もいるくらいよ。このままだと事件自体が歪曲された状態で他国にも広まり、王国の力と権威が大きく失墜する恐れもあった。幸い、あなたのゴーストはあの牢屋から出ないこともあって、前国王陛下は臣下の意見に賛同し、ルーテシア一人を悪者にする判断を下したの」
なるほど、そういう裏があったのね。
新聞記者にとって、ニーナ・エクスランデの事件は格好の獲物だもの。
私個人としては怒りに燃えていますが、王太子妃教育を受けてきた私にとって、この問題を国という観点と第三者視点で考えると、《騒ぎを一刻も早く終息させるにはどうしたらいいのか?》、これを前提にして動かないといけませんから、陛下の下した判断も仕方ないと思います。その時点で私の家族(お兄様以外)も事故で亡くなっていますから、王家の失態を防ぐためにも、フォンテンス家を犠牲にして、元の平和を取り戻す苦肉の策と言えるでしょう。
「それに関しては、別に怒っていませんわ。国を守る陛下の立場から考えれば、最も安全な策と言えるでしょう。それよりも、今の私にとって重要なのは、《私を殺した者》と、《ニーナを唆した者》、これらが同一犯がどうかです」
私の目的は、真犯人に鉄槌を与えること。
現時点で、まだ私の存在に気づいていないはずです。
気取られる前に、真犯人に辿り着きたいですわ。
「それに関しては、まだわからないわね。ルーテシアの方は、何か手掛かりを掴んでいるの?」
グレースとニーナの対談が行われるのは今から七日後、身分差演習交流終了日ですわ。やはり、今の時点では何の手掛かりもありませんか。それならば、今から話す事に対して、どんな反応を示すかしら?
「ええ、掴んでいるわよ。学園の騒ぎもあって、チェルシーが今日からクバイルム侯爵邸にお世話になるのだけど、私が先行してどんなところか見に行ったの。そうしたら、アイリスとベルナが二人だけで話し合っていたから、堂々と部屋の中で盗み聞きさせてもらったわ。おかげで、有力な情報を入手できたわ」
今の私は精霊。
だから、グレースも私のやったことをすぐに理解したのか笑い出しました。
「あははは、あなた…それって、もう盗み聞きのレベルじゃないわよ? 精霊の力を最大限に利用しているのね。それで、何がわかったの?」
ここからが重要ですわ。グレースが今から話す内容を理解してくれるのか否かで、流れが大きく変わってきます。
○○○
私が見たあの時の会話の内容をグレースに教えると、彼女はなんとも言えぬ表情を作っていました。無表情ではないのですが、少し目を細め苦笑いを浮かべているため感情を読み取れませんわね。ただ、然程驚いていないことから察すると、やはり彼女も遠い未来を見通せる力を持っているのでしょう。私がそれを指摘すると…
「そこまで知られているのなら、正直に話すしかないわね。でも、ルーテシアにとって荒唐無稽な話になるわ。何も言わず、最後まで聞いてね」
私が静かに頷くと、グレースは私に理解できるよう、ゆっくりと自分の抱える秘密を話し始めました。
「それは、私が運んだからです」
あのまま気絶したグレースを放置しておくと、風邪を引かせてしまいます。
子供が大人を抱き上げるシチュエーション、早々起きないでしょうね。
「夢じゃなかったのね。ルーテシア…なのよね?」
「ええ、そうです。どういうわけか、精霊に転生しちゃいました」
グレースは私を直視するとすぐに、ガバッと起き上がりました。
「あなたを殺した犯人は誰なの!?」
やはり、そこを追求してきますわね。
ごめんなさい、あなたの望む答えを今の私は持っていないのよ。
「わからないわ。あの時、奴はフードを被っていて、魔術で声を中性的なものへ変化させていたの」
「そ…そうなのね」
気分も落ち着いたようですし、まずは私の近況を教えてあげましょう。私は生後一週間ほどで、結構濃密な体験をしていますから、彼女も驚くかもしれません。あの牢屋で生まれ、チェルシーと出会い、家族の状況を知って悲嘆に暮れ慟哭したことを伝えると…
「ちょっと待って!! ということは、あれはあなたの仕業なの!?」
何かを思い出したのか、急に叫びましたが、《あれ》とは何を指しているのでしょう?
あ!?
「もしかして慟哭した後、気づいたらオリハルコン製の牢が崩壊寸前になっていて、周辺に貼られていた聖宝符が全て消失したことを言っているの?」
あの時はやらかしてしまったと思いましたが、少し騒ぎになる程度で問題ないでしょうと勝手に判断し、完全放置していましたわ。
「それよ!! 今日になってそれが発覚して、事情を知らない貴族や騎士たちが騒いでいて、宥めるのが大変だったの!!」
思った以上の騒ぎになっていたのね。
私のゴーストを封印したそうですが、私自身が精霊として生まれ変わったのだから、その残滓に関しては完全に消失していますわ。そうでなかったら、今頃もっと騒ぎになっていたでしょう。
「事情は、ロイドお兄様の娘チェルシーから聞いているわ。目覚めるまで私は、白い空間にいたのだけど、精霊として生まれた際、何故か犯人への憎しみが殆どなかったのよ。多分、死んだ際に憎しみだけが牢に留まったのね。まさか、それが政治に利用されるとは思わなかったけどね」
私の言いたことを理解したのか、グレースはしゅんと項垂れます。
私を政治に利用した理由、それは何かしら?
「ごめんなさい。あなたが捕縛されて以降、私たちの考えていた以上に、新聞記者たちが、【《ルーテシアは悪女?》】という見出しの新聞を大々的にあちこちの街に配ったせいもあって、国中に広まったのよ。あなたが殺されて以降は見出しで、《ルーテシア、自決する!!》、《王家の大失態? ルーテシア、真犯人に毒殺される》という記事まで出てきて、収集がつかなくなってきたの」
新聞記者の中には、新聞自体の売り上げばかりを考えて、真相などそっちのけで有る事無い事書いたりしますから、平民の方々はそれを面白がって読み、その情報がクチコミで拡散されるのよね。王家がその新聞社を潰そうものなら、他の新聞社がその件を叩く。結局のところ、その行為自体が自らの失態を認めることになります。
王家側も、迂闊な行動を起こせません。
「そこにあなたのゴーストが現れたこともあって、騒ぎに拍車がかかったわ。新聞記者の中にはあなたのゴーストに真相を聞くべく、王城の地下へ潜り込もうとした馬鹿もいるくらいよ。このままだと事件自体が歪曲された状態で他国にも広まり、王国の力と権威が大きく失墜する恐れもあった。幸い、あなたのゴーストはあの牢屋から出ないこともあって、前国王陛下は臣下の意見に賛同し、ルーテシア一人を悪者にする判断を下したの」
なるほど、そういう裏があったのね。
新聞記者にとって、ニーナ・エクスランデの事件は格好の獲物だもの。
私個人としては怒りに燃えていますが、王太子妃教育を受けてきた私にとって、この問題を国という観点と第三者視点で考えると、《騒ぎを一刻も早く終息させるにはどうしたらいいのか?》、これを前提にして動かないといけませんから、陛下の下した判断も仕方ないと思います。その時点で私の家族(お兄様以外)も事故で亡くなっていますから、王家の失態を防ぐためにも、フォンテンス家を犠牲にして、元の平和を取り戻す苦肉の策と言えるでしょう。
「それに関しては、別に怒っていませんわ。国を守る陛下の立場から考えれば、最も安全な策と言えるでしょう。それよりも、今の私にとって重要なのは、《私を殺した者》と、《ニーナを唆した者》、これらが同一犯がどうかです」
私の目的は、真犯人に鉄槌を与えること。
現時点で、まだ私の存在に気づいていないはずです。
気取られる前に、真犯人に辿り着きたいですわ。
「それに関しては、まだわからないわね。ルーテシアの方は、何か手掛かりを掴んでいるの?」
グレースとニーナの対談が行われるのは今から七日後、身分差演習交流終了日ですわ。やはり、今の時点では何の手掛かりもありませんか。それならば、今から話す事に対して、どんな反応を示すかしら?
「ええ、掴んでいるわよ。学園の騒ぎもあって、チェルシーが今日からクバイルム侯爵邸にお世話になるのだけど、私が先行してどんなところか見に行ったの。そうしたら、アイリスとベルナが二人だけで話し合っていたから、堂々と部屋の中で盗み聞きさせてもらったわ。おかげで、有力な情報を入手できたわ」
今の私は精霊。
だから、グレースも私のやったことをすぐに理解したのか笑い出しました。
「あははは、あなた…それって、もう盗み聞きのレベルじゃないわよ? 精霊の力を最大限に利用しているのね。それで、何がわかったの?」
ここからが重要ですわ。グレースが今から話す内容を理解してくれるのか否かで、流れが大きく変わってきます。
○○○
私が見たあの時の会話の内容をグレースに教えると、彼女はなんとも言えぬ表情を作っていました。無表情ではないのですが、少し目を細め苦笑いを浮かべているため感情を読み取れませんわね。ただ、然程驚いていないことから察すると、やはり彼女も遠い未来を見通せる力を持っているのでしょう。私がそれを指摘すると…
「そこまで知られているのなら、正直に話すしかないわね。でも、ルーテシアにとって荒唐無稽な話になるわ。何も言わず、最後まで聞いてね」
私が静かに頷くと、グレースは私に理解できるよう、ゆっくりと自分の抱える秘密を話し始めました。
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