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第10話 人間の友達が出来ましたー3

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前回のあらすじ
  ゲームを見ることが出来ました。約30年で、ここまで進歩するんですね。でも、何故でしょう?俺を見る有希ちゃんの顔が怖いときがあります。俺、何かしましたか?

☆☆☆

  今日はリビングで、俺達と一緒に寝るみたいだな。よく遊んだから、レオ・リルはもう寝てるよ。俺も眠たいんだけど、有希ちゃんとの話があるから我慢だ。楓ちゃん達も、そろそろ寝る頃かな。

「琴美ちゃん、有希ちゃん、今日は楽しかったね。」
「うん、本当に楽しかった。子犬、絶対飼いたい。」

「ふふ、私も飼おうか迷ってるところかな。」
「有希ちゃん、飼うんなら、絶対ラッキーだよ!」

俺達のことで、色々話し合ってるみたいだけど、ああ、遂に楓ちゃんと琴美ちゃんが力尽きたな。

☆☆☆

(ラッキー起きてる?)
(起きてるよ、有希ちゃん)
(それじゃあ、このままで話し合いましょう。)

やっと、心置きなく念話で話せるぞ。

(まず、ラッキー、あなたは一体何者なの?とても生後1ヶ月とは思えないわ。)
(え、急にどうしたの?)

(楓ちゃんから聞いたわ。算数の宿題でわからないところがあって、ラッキーの示す場所に公式があったから、それを当てはめたら理解できたと言ってたのよ。)

しまった、あれか!30分以上悩んでたから、つい教えたんだよな。不味いな、さすがに怪しんでいる。下手な事は言えない。まずは、有希ちゃんから信頼を勝ち取らないといけない。その為には、前世の事を話すしかない-----か。

(わかったよ、説明する。ただ、今から話す内容は真実だ。それを信じて欲しい。そして、嫌わないで欲しい。)


--------俺は、これまでの経緯を有希ちゃんに説明した------。

(前世の記憶を全部持って転生て------。)

うわー、めっちゃびっくりしてるよ。

(明利さんも言ってたな。普通じゃ、ありえないそうだ。でも、事実なんだよ。)

そうなんだよ。未だに、なんで全部引き継いで転生できたのかはわからない。

(じゃあ、全部てことは、大学生の知識・経験も全て引き継いでるの?)
(そうだよ。本当は嫌われたくないから、言いたくなかったんだけどね。)

(遅かれ早かれ、わかるわ。今の時点で、十分に怪しい。どこの世界に、算数教える犬がいるのよ。)

(あはは)

(楓ちゃんに勉強を教えれたのも納得だわ。でも、そんな目立つことしちゃ駄目じゃない!)

(うー、それは自分でもわかってはいたんだよ。ただ、楓ちゃんが一つの問題で30分以上悩んでるんだぞ。しかも、開いている教科書のページに公式が書かれていて、それを当てはめれば、答えは1分でわかるんだぞ。まどろっこしいて思って、つい、足で教えたんだよ。)

そう、俺は堂々と胸(?)を張った。

(あのね、そこは反省しなさい。琴美ちゃんは、ラッキーをアイドル犬にしようて言ってたのよ。)

(言ってたね、それは絶対に嫌だ!)

(まあ、私がフォローしておいたから安心しなさい。)
(有希ちゃん、ありがとう。反省するよ、これからはやり過ぎないようにする。)

(まだ、あるわよ。トイレの件だけど、あれはどういうこと?3匹同時にシートの上に行って、トイレを済ませたの?)

(あ、あれね。楓ちゃんの部屋に行って粗相をしたら嫌われるぞて脅したら、すぐに聞いてくれたよ。アリー母さん・レオ・リルには賢くなってもらいたいから、今、日本語を教えているんだ。と言っても、俺も日本語を話せないから、家族が話す会話を通訳して、会話に出てくる固有名詞を覚えてもらっているところかな。あと、人間の常識も教えている。)

(動物に日本語教えてるの!しかも理解できてるの!)

(うん、少しずつだけどね。外国人に日本語を教えてるようなものだよ。俺は、犬語もわかるんだから。それに、理解できたとしても、日本語は話せないから大丈夫。人間からは賢い動物としか見られないからね。)

(それでアリー、レオ、リルは賢いのね。ふー、まあいいわ。ところで、私の両親のことも知ってるの?)

ついに、その話がきたか。

(うん、聞いてるよ。土砂崩れで行方不明になってるて。)

(はっきり言うのね。普通、そこはもっと気を使うべきところなんだけど。)

(そうだな。ここに来た当初なら、そうしていたかもしれない。暗い顔をしてたからな。けど、今は、楓ちゃんや琴美ちゃんのおかげで、両親のことを吹っ切ったような感じがするからかな。)

そうなんだよな。明らかに、顔色が良くなってる。

(そう、でもラッキーのおかげでもあるのよ。)
(俺の!)

(あなたが、真っ先に念話で話し掛けてきたでしょ。しばらくの間、あなたのことしか考えてなかった。そしたら、気がついたの。この1ヶ月、両親のことばかり考えて、周りを全く見てなかった。)

そりゃそうだよな。両親が行方不明だったらそうなるよ。俺もなんとか力になってやりたいな。

(気がついたんなら、いいじゃないか。そういえば、有希ちゃんの家は陰陽師なんだろ。その力で見つけられないのか?)

(そっか、陰陽師のことは詳しく聞いてないのね。100年程前なら可能だったわ、精霊が居たからね。)

精霊という言葉を聞いて、俺は飛び起きた。あ、みんなを起こしてしまう。
ほ、誰も起きていないな。

(精霊!ん、居たて、なぜ過去形?)

有希ちゃんは精霊について、色々と教えてくれた。

  精霊は、この地球ができた頃から居たらしく、火・水・土・風・木・光・闇の7つだそうだ。各精霊の力を借りることで、色々なことが出来たらしい。精霊に変化が現れたのは、1750年頃からだ。少しずつ数が減っていき、同時に使える陰陽道の術も次第に減っていったそうだ。極め付けは、2回の大きな戦争!。人が多く死に、緑も穢され精霊の多くが死んでしまった。これによって、精霊は怒り人を見限り、深林の奥地に身を沈め、1950年以降、陰陽道の殆どの術が使用不可能となった。今では、この地球を存続させるためだけに、力を注いでいるらしい。

(霊峰富士の山奥にけば、会えるかもしれないわね。)

(1750年頃、産業革命か。なるほど、そこをキッカケに機械化が進み、緑も減少していくからな。今となっては、数えきれない程の問題が発生し、殆どの人は対処していない。精霊が見限るわけだ。)

(へー、詳しいのね。)

こらこら、俺はこれでも元大学生だぞ。知ってて当然だ。

(有希ちゃんも、もう少ししたら日本史や世界史で習うよ。でも、術が使えないのは痛いな。新たに考案された術とかはないの?精霊の力を必要としない術とかは?)

(そんなものはないわ。術の開発は、おいそれとできるものじゃない。ましてや、精霊の力なしでなんて。今は、精霊が教えてくれた技術、霊具を使って悪霊や怨霊を祓っているの。)


そっか、ないのか。でも、何か見落としている気がする。

(そうか。有希ちゃん、俺に出来ることがあったら言ってくれ。俺は有希ちゃんの味方だ。前世の事を話しても、嫌悪感を出さず、普通に接してくれた。と言っても話し相手しかできないけど。)

(ふふ、ありがとう。これから宜しくね。お休みなさい。)
(ああ、こちらこそ、お休み)

その後、有希ちゃんからは、寝息がきこえてきた。行方不明か、どうにかして発見する方法はないのだろうか。常識的に考えて、まず亡くなっているだろうな。有希ちゃん自身も気づいているだろう。ただ、この1ヶ月、車すら発見されていないのは変だな。警察の力でも発見できていない。どこか見落としがあるはずだ。俺も現場に行って捜索したいけど、この身体じゃ、外にも出れない。どうしたいいだろう。

俺は考えながら、そのまま眠った。
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