記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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39話 ユリネアの懺悔 *視点-ユリネア

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アリエス…ユイが、あの男を撃退してくれた。

あの子は全て奪われても、努力を惜しむことなくやり続け、この短期間のうちに新たなスキルや魔法を身に付けたのね。

ユイは真実を知った上で、私を助けてくれた。
そして、親友とも呼んでくれた。 
強奪の糧にしている以上、アリエスの記憶は2度と戻らないのに。

ユイのポーションのおかげで、力がどんどん戻ってくる。
これなら、1人で起き上がれそうだわ。

「動いて、大丈夫?」
「ええ。ユイのポーション、凄い効き目だわ」

私は起き上がり、助け出してくれたユイとウィステの顔をそっと見る。2人の表情には憎しみや怒りもなく、ただただ私を心配そうな顔で見ているわ。

「私、最低ね。恨まれても仕方ないよね。力を強奪したからこそ、アリエスは私の中で暴れているんでしょ?」

また、身体がはち切れそうなくらい、心が暴れ出す。
苦しい、苦しいよ。
でも、私に助けを求める権利なんてない。
親友を…殺したのだから。

「ユリネア、あのね。私の中にも、アリエスがいるの」
「え…」

ありえないわ。
お父様たちはアリエスの記憶を代償にして、力を強奪したもの。

「私のステータスには、強奪の詳細が記載されているの。強奪された割合は92.5%」

92.5!?
全身の力が、一気に抜けていく。

「お父様は、ほぼ全ての力を強奪したのね、だから、私は数多くのスキルや魔法を覚え、魔力量も倍以上に膨れ上がった」

目覚めた後、私がステータスを見て混乱しないよう、お父様は前もって私の納得する言葉を考えていたんだ。私は、それを馬鹿正直に信じてしまったのね。

「そんな悲観的にならないで。残りの7.5%の中に、アリエスの残滓があって、私もさっき話し合えたの。彼女はね、貴方のことを恨んでなんかいないよ」

「嘘よ! 知らなかったとはいえ、私と関わったせいで、アリエスという人格が最悪の形で殺されたのは事実だもの!」

どんな形であれ、私は無二の親友の人生を奪ってしまった。
もう…永遠に彼女の記憶は戻らない。
全て…私が悪いのよ。
アリエスだって、こんな私を絶対に恨んでいるはずよ。

「貴方も、自分の心に語りかけてみて。心が騒ついているのは、アリエスが《私に気づいて!》と強く訴えているからだよ。私の中に、心と心を通い合える効果を持つスキルがあるの。使ってもいいかな?」

心と心を通い合えるスキル? 強奪されて何もかも無くした状態で、そこから努力してそんなスキルを習得したの? 私よりも貴方の方が、大変だったはずなのに……生きることを諦めることなく、ずっと努力し続けているのね。彼女が真摯になって私を救い出そうとしているのだから、私はその思いに応えなければいけないわ。

「私の中にアリエスがいるのなら…語り合いたい!」

私は覚悟を決めて、じっとユイを見つめる。

「わかった。ユリネアに使うね。スキル《融和》発動!」

融和? そんなスキルがあるのね。今でも爆発しそうなくらいの心の騒つき、これがアリエスの訴えだとすれば、貴方は私に何を言いたいの? ユイのスキルで、私の心が少しずつ落ち着きを取り戻していく。今なら、彼女と語り合えるかもしれない。

『アリエス、いるの?』
『よう…やく気づ…いてく…れた』

私の心に語りかけてくる声…間違いない、私の知るアリエスだ!

『アリエス、私は貴方の力を強奪したの。ごめんね』

『全部、聞こえてたよ。お父様とお母様に関しては、元々子供の教育とか無関心で、私たちのことを愛しているのか疑問に思っていたけど、正直売られるとは思わなかったな。ロベルト様やアレッサ様も事情を言ってくれれば、私の力を貴方に渡したのに』

『何を言ってるの! そんな事をしたら、貴方が…』

『大丈夫だよ。無理矢理奪うから、魂が傷つくんだよ。相手の同意を得た状態で、不必要な記憶を代償に、必要なものだけを奪えば、きっと無傷で強奪できたと思う』

『それは…確かにその通りかもしれないけど…もう…全てが遅いわ』

『だね~~私崩壊寸前だし~~』

『どうして、そんなに軽いの! 貴方は、死んでしまうのよ!』

『違うよ。強奪魔法のせいで、私の心の残滓が貴方とユイの中に残ってしまった。そして、その自我はもう少しで消えてしまうけど、貴方と一つになれる。私は、大切な親友の心の中で生き、支え続ける』

心の中で生き、支え続ける……ああ、そうか。強奪以降、私が不安定にならないよう、アリエスはずっと私の心の中で支え続けてくれていたんだ。

私の探し求める彼女は、自分の心の中にいたのね。

『もう…時間だね。私という自我が消えて、貴方の心と一つになるみたい。ユリネア、私からお願いを言ってもいいかな?』

消えないでほしい、もっと話し合いたい……だめね。
これは私の我儘だわ。
せめて、彼女の最後の願いだけは叶えてあげないと。

『何でも言って』
『貴方は、家庭を大事にしてね。ロベルト様たちだって、貴方のためにと思って行動したのだから恨んじゃだめ』
『それは! ……いえ、そうね。わかった、誓うわ。私は、両親を大切にする。絶対に恨まない!』
『うん……それとユイを守ってあげて。あの子の中にも、私はいるの』

そうだわ。アリエスの残滓があの子の中にいるからこそ、私を探し当ててくれたのよ。

『勿論よ。あの子も、親友だもの! 話し方も、貴方と同じだしね』
『それは、そうだよ。記憶こそなくなったけど、あの子は私だもん。ユリネア…もう…』

ああ、アリエスが消えて……いえ、それは彼女に対する冒涜よ。
消えるんじゃない、私と一つになるのよ。
彼女から強奪した力を、無駄にしてはだめ。

『アリエス…私を救ってくれてありがとう。私は、もう大丈夫。お休み』
『うん…貴方の中…暖かい。お休み…なさい』

アリエスが、私の心に溶け込んでゆく。
今、1つになったのね。
彼女は私の中で、ずっと生き続ける。

「ユイ、ウィステ。迷惑をかけてごめんなさい」

さっきまでの騒めきが、嘘のように静まっている。

「うん、さっきまで感じた不安定さもないね」
「当然よ、アリエスは私の心と1つになったもの」
「そうだね」
「ユリネアは悪くない! みんな、仲良しなのです!」

ウィステが私とユイの手を握り、3人で手を重ねると、2人の温かさが伝わってきて、自然に笑みをこぼしてしまう。2人も察してくれたのか、笑い合ってくれている。そこには、侮蔑や嫌悪なんて微塵も感じとれない

前に進もう。
いつまでも引きずっていたら、皆に失礼だ。
起きたことは変えられない。

私が努力を重ね、第一王子の婚約者として相応しい存在になれるかはわからないけれど、アリエスに恥じない生き方をしていこう。
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