T.M.C ~TwoManCell 【帰結】編

sorarion914

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第4章・迷動

#4

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 朝靄あさもやにけむる川沿いの道を、宇佐美は足早に歩いていた――
 足音以外は何も聞こえない。
 すれ違う者もいない。
 目の前を歩く男と、自分以外は誰も……
 (これは夢?)
 前を歩く男の後を、宇佐美はついていった。
 歩きながら、男が背後を気にしているのが分かる。背中に走る緊張感が、周囲の空気を震わせているからだ。
 自分たちを取り巻く空気が、徐々に張りつめてゆく――

 ふいに――目の前の男が立ち止まった。
 宇佐美も足を止める。
 男がゆっくりとこちらを振り返った。
 だが、顔が見えない。黒いシルエットだけがユラユラと揺れている。
 (――⁉)
 宇佐美は思わず後ずさりした。
 振り向いた男の体から、陽炎のような黒い炎が湧き出てくる。
 それが突然、激しい黒煙を上げて一気に燃え上がった。
 目の前で男が大きく口を開け、轟音のような絶叫をあげる。
 それを見て、宇佐美も声を上げた。
「うわぁぁぁぁぁ――――!!」

「――!!」
 宇佐美はベッドから跳び起きた。
 枕元でスマホのアラームが鳴っている。
 が……
 自分の目を覚ましたのは、自分自身の絶叫だと気づいて、ゆっくりと項垂れた。
「はぁ……はぁ……」
 激しく息をついて、両手で顔を覆う。
 夢だと分かっているのに、体の震えが止まらなかった。まるで今、その現場を見てきたような感覚だ。
 目の前で、男が燃えていく姿を。
 (……あんな現場を見に行くからだ)
 わざわざ雨の中、行く必要などなかったのに――どうしても行かずにはいられなかった。
 を連れてきてしまったんだろうか?
 でも……何か違うような気もする。
 アパートの容疑者ではない感じがした。もっとも、宇佐美は容疑者の姿も何も知らないから、ハッキリと断言はできないが。
 スマホを手に取りアラームを止める。そして、メッセージの着信があるのに気が付いた。
 野崎からだった。

 >少し話がしたい。これに気づいたらでいいので連絡ください。

 着信は4時間ほど前だった。
 宇佐美は時計を見た。もう午前10時を回っている。

 >すみません。今気づきました。

 宇佐美は返事を返したが、なかなか既読がつかない。なんせ昨日の今日だ。忙しいのだろう……そう思い、宇佐美は焦らず待つことにした。
 その野崎からようやく返信が来たのは、もう夕暮れ時だった。

 >遅くなってすみません。昨日現場で姿を見たけど、近くに住んでるの?

 宇佐美は

 >歩いていけないことはないかな。
 と返す。

 >今、あの現場近くの公園にいる。来られそう?

 (今……?)
 宇佐美は時計を見た。じきに17時になる。日が高いのでまだ充分明るいが……

 >行きます。

 それだけ送ると、外に出る。雨は朝から降ったり止んだりだったが、今は幸い止んでいた。
 遠く西の空が明るい。
 明日は晴れそうだ……そんなことを考えながら、宇佐美は河川敷の方へ向かって歩いた。



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