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第7章・過去
#2
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翌日。
宇佐美は長野へ移動した。
昨日訪れた上野原の役場で、宇佐美は父の弟と知り合いだという、関という男に会うことが出来た。
初めは半信半疑だったが、自分の戸籍と身分証を見せ、真剣に話す宇佐美を見て嘘ではないと思ったのか、個人的に連絡を取ってくれた。
『宇佐美さんは今、長野に住んでいる娘さんの所で静養しています。娘さんの携帯番号を教えて貰ったので、駅に着いたら連絡してください』
そう言われて教えられた番号に、宇佐美はかけてみた。
今日は金曜日。
週明けの月曜が祝日になるので、実質明日から三連休になる。
観光地へ向かう駅は、もうすでに人が多い。ただ、宇佐美が教えられた場所は、そんな観光地からは少し離れた静かなエリアだった。
標高が高いせいか、やや肌寒い。
幾度かの呼び出しの後、女性が出た。
「もしもし?川島裕子さんで間違いないでしょうか?」
電話の向こうで少し躊躇う気配がしたが、すぐに『はい……』という返事が返ってきた。
簡単な自己紹介の後、迎えに行くのでしばらく駅で待っていて欲しいと言われ、宇佐美は駅舎の待合室で迎えが来るのを待つことにした。
15分ほど待っていると、駅のロータリーに白い軽ワゴン車が止まって、1人の女性が出てきた。宇佐美と目が合い、何となく会釈をしてくる。
「宇佐美さん……ですか?川島です。お待たせしてすみません」
「こちらこそ。わざわざ申し訳ありません」
初めて顔を合わせるが、戸籍上ではいとこ同士になる。妙な気分だった。
どうぞ、と促され宇佐美は助手席に乗った。
「この辺、タクシーもあまり走ってないから、車は必需品なんですよ」
裕子はそういうと、慣れたようにハンドルを切った。
「申し訳ないです」
宇佐美は恐縮して頭を下げた。その様子に、裕子は少し安心した様に微笑んだ。
「父方にいとこはいないと思っていたので、ちょっと驚きましたけど……想像していたような感じじゃなかったので、その方に今驚いています」
え?というように宇佐美は裕子を見た。
「どんなオジサンが来るのかと思ってたら」
そう言って宇佐美の方をチラリと見て、「やっぱり東京の人は垢抜けてていいですね」と笑う。
「メンズ雑誌から出てきた人かと思いました」
「そんな――」
どう切り替えしていいか分からず、宇佐美は「オジサンですよ。それに東京じゃないし……」と口ごもる。
木立に囲まれた林道をひた走る。すれ違う車はほとんどなかった。静かな所だ。
「お父さんは静養されていると伺いました……具合が悪いんでしょうか?」
裕子はしばらく黙っていたが、「えぇ……」と頷いて言った。
「少し前まで入院していました。今は私の家で——」
「そうですか……本当に無理言ってすみません」
「いえ、父が会って話したいというので。本人の意向ですから、気になさらずに」
でもなるべく短時間で――と言われ、宇佐美は頷いた。
前庭の広い敷地内に入る。
平屋の一戸建てだった。
車を降りて、玄関を開く。
「お父さん、宇佐美さんをお連れしました」
どうぞ中に……と案内されて、宇佐美も入る。
「連れてきましたよ」
「あぁ……こっちへ」
清次はそう言ってベッドから僅かに身を起こした。
部屋の中に、ゆっくりと入ってくるその男の姿を一目見て――清次は思わず息を飲んだ。
そして、驚愕した様に目を見開く。
心電図の計測器が、異常アラームを鳴らす。
裕子は驚いて父に駆け寄った。
「お父さん、大丈夫⁉」
「――」
宇佐美は部屋の入口に佇んだまま、どうしてよいのか分からず、戸惑っていた。
やがて落ち着いたのか、清次は大きく息をつくと、「すまない。もう大丈夫だ」と頷いて、立ち尽くしている宇佐美の方を見た。
そして手招きをする。
「裕子、何か飲み物を持ってきて。宇佐美さん……驚かせて申し訳ありません。どうぞ、そこに腰かけて下さい」
そう言われ、宇佐美は軽く頭を下げると勧められた椅子に腰を下ろした。
「こんな姿で申し訳ないが、このまま話をさせて貰って構いませんか?」
「もちろんです。無理ならいつでも出直します」
そう言われて清次は力なく笑った。
「いつでもか……私にその時間があればいいが――」
「……」
清次は目の前にいる宇佐美を見て、複雑な表情を浮かべた。
宇佐美は長野へ移動した。
昨日訪れた上野原の役場で、宇佐美は父の弟と知り合いだという、関という男に会うことが出来た。
初めは半信半疑だったが、自分の戸籍と身分証を見せ、真剣に話す宇佐美を見て嘘ではないと思ったのか、個人的に連絡を取ってくれた。
『宇佐美さんは今、長野に住んでいる娘さんの所で静養しています。娘さんの携帯番号を教えて貰ったので、駅に着いたら連絡してください』
そう言われて教えられた番号に、宇佐美はかけてみた。
今日は金曜日。
週明けの月曜が祝日になるので、実質明日から三連休になる。
観光地へ向かう駅は、もうすでに人が多い。ただ、宇佐美が教えられた場所は、そんな観光地からは少し離れた静かなエリアだった。
標高が高いせいか、やや肌寒い。
幾度かの呼び出しの後、女性が出た。
「もしもし?川島裕子さんで間違いないでしょうか?」
電話の向こうで少し躊躇う気配がしたが、すぐに『はい……』という返事が返ってきた。
簡単な自己紹介の後、迎えに行くのでしばらく駅で待っていて欲しいと言われ、宇佐美は駅舎の待合室で迎えが来るのを待つことにした。
15分ほど待っていると、駅のロータリーに白い軽ワゴン車が止まって、1人の女性が出てきた。宇佐美と目が合い、何となく会釈をしてくる。
「宇佐美さん……ですか?川島です。お待たせしてすみません」
「こちらこそ。わざわざ申し訳ありません」
初めて顔を合わせるが、戸籍上ではいとこ同士になる。妙な気分だった。
どうぞ、と促され宇佐美は助手席に乗った。
「この辺、タクシーもあまり走ってないから、車は必需品なんですよ」
裕子はそういうと、慣れたようにハンドルを切った。
「申し訳ないです」
宇佐美は恐縮して頭を下げた。その様子に、裕子は少し安心した様に微笑んだ。
「父方にいとこはいないと思っていたので、ちょっと驚きましたけど……想像していたような感じじゃなかったので、その方に今驚いています」
え?というように宇佐美は裕子を見た。
「どんなオジサンが来るのかと思ってたら」
そう言って宇佐美の方をチラリと見て、「やっぱり東京の人は垢抜けてていいですね」と笑う。
「メンズ雑誌から出てきた人かと思いました」
「そんな――」
どう切り替えしていいか分からず、宇佐美は「オジサンですよ。それに東京じゃないし……」と口ごもる。
木立に囲まれた林道をひた走る。すれ違う車はほとんどなかった。静かな所だ。
「お父さんは静養されていると伺いました……具合が悪いんでしょうか?」
裕子はしばらく黙っていたが、「えぇ……」と頷いて言った。
「少し前まで入院していました。今は私の家で——」
「そうですか……本当に無理言ってすみません」
「いえ、父が会って話したいというので。本人の意向ですから、気になさらずに」
でもなるべく短時間で――と言われ、宇佐美は頷いた。
前庭の広い敷地内に入る。
平屋の一戸建てだった。
車を降りて、玄関を開く。
「お父さん、宇佐美さんをお連れしました」
どうぞ中に……と案内されて、宇佐美も入る。
「連れてきましたよ」
「あぁ……こっちへ」
清次はそう言ってベッドから僅かに身を起こした。
部屋の中に、ゆっくりと入ってくるその男の姿を一目見て――清次は思わず息を飲んだ。
そして、驚愕した様に目を見開く。
心電図の計測器が、異常アラームを鳴らす。
裕子は驚いて父に駆け寄った。
「お父さん、大丈夫⁉」
「――」
宇佐美は部屋の入口に佇んだまま、どうしてよいのか分からず、戸惑っていた。
やがて落ち着いたのか、清次は大きく息をつくと、「すまない。もう大丈夫だ」と頷いて、立ち尽くしている宇佐美の方を見た。
そして手招きをする。
「裕子、何か飲み物を持ってきて。宇佐美さん……驚かせて申し訳ありません。どうぞ、そこに腰かけて下さい」
そう言われ、宇佐美は軽く頭を下げると勧められた椅子に腰を下ろした。
「こんな姿で申し訳ないが、このまま話をさせて貰って構いませんか?」
「もちろんです。無理ならいつでも出直します」
そう言われて清次は力なく笑った。
「いつでもか……私にその時間があればいいが――」
「……」
清次は目の前にいる宇佐美を見て、複雑な表情を浮かべた。
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