23 / 30
Side.B・テツとエージのにゃんこ★すたぁ【R-18】
#13
しおりを挟む
ベッドの上に横たわり、点滴を受けているテツを、エージは腕を組んでじっと見つめていた。
救急で対応したのが、三浦という顔馴染みの医師であったことに多少安堵する。
歳は佐倉と同じ40半ばくらいだが、この界隈から運ばれてくる患者のことは、ある程度熟知している医師だった。
その三浦が言った。
「手首の傷はかすり傷だ。飲んだ市販薬も微量。ほとんど吐いちゃったんだろうな。胃洗浄するほどじゃなかった」
「そうか……」
「彼はエージさんの友人?」
そう聞かれて、エージは「まぁね……」とだけ答えた。
友人という意味合いが、恋人も兼ねていることは敢えて口にしない。
こちらの事情は承認済み。なので今更否定も肯定もしない。
エージの返事に三浦は頷くと、「なら言うけど、彼――性的暴行受けてるよ」と言った。
エージはゆっくりと視線を向けた。
「肛門に酷い裂傷があった。精液を採取したけど、1人じゃないな」
「……」
「薬物検査はシロだった。念のため、感染症の検査はするけど……どうする?」
被害届出す?と三浦が聞いてきた。
エージは黙ったまま、蒼白い顔で眠っているテツを見ていた。
顔を殴られたのだろうか……腫れて赤くなっている。
「体の傷よりも、彼には心のケアが必要だよ、エージさん」
そう言われて、エージは「あぁ……」と低く呟く。
深夜の救急外来の廊下で、エージは寒さも忘れて立ち尽くしていた。
「エージ君……?」
呼びかけられて、エージはベッドの傍に寄った。
「気づいた?」
「ここ……病院?」
そう聞かれてエージは頷く。椅子を寄せて座ると、テツの額に手を当てて優しく撫でる。
「もう大丈夫」
「エージ君……」
テツはそう言うと、涙を浮かべた。
「ごめんね……僕」
「てっちゃんが謝ることないだろう。謝るのは俺の方だ――」
エージはそう言って何度もテツの額を撫でながら頭を下げた。
「ごめんな。助けてやれなくて……俺が助けてやらなきゃいけなかったのに」
「違うよ。エージ君のせいじゃないの」
テツはそう言うと、「僕のせいなの。僕がバカだから……」と両手で顔を覆った。
「あんな奴信じた僕がバカだった。分かってたのに……でも逆らえなくて」
震えながら話すテツの手を、エージは握りしめた。
「僕、助けてって言ったのに。カズ君、乱暴される僕見て笑ってた。1人エッチしながら」
「てっちゃん、もういいよ。話さなくていいから」
「イヤだって言ったのに……僕、助けてって言ったのに……」
「てっちゃん」
エージは泣きじゃくるテツの頭を優しく抱きしめると、「もういいから。何も言うな」と額にそっとキスをした。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
と、繰り返しながら――安心したのか、再び深い眠りに落ちたテツを見て、エージはそっと病室を出た。
救急で対応したのが、三浦という顔馴染みの医師であったことに多少安堵する。
歳は佐倉と同じ40半ばくらいだが、この界隈から運ばれてくる患者のことは、ある程度熟知している医師だった。
その三浦が言った。
「手首の傷はかすり傷だ。飲んだ市販薬も微量。ほとんど吐いちゃったんだろうな。胃洗浄するほどじゃなかった」
「そうか……」
「彼はエージさんの友人?」
そう聞かれて、エージは「まぁね……」とだけ答えた。
友人という意味合いが、恋人も兼ねていることは敢えて口にしない。
こちらの事情は承認済み。なので今更否定も肯定もしない。
エージの返事に三浦は頷くと、「なら言うけど、彼――性的暴行受けてるよ」と言った。
エージはゆっくりと視線を向けた。
「肛門に酷い裂傷があった。精液を採取したけど、1人じゃないな」
「……」
「薬物検査はシロだった。念のため、感染症の検査はするけど……どうする?」
被害届出す?と三浦が聞いてきた。
エージは黙ったまま、蒼白い顔で眠っているテツを見ていた。
顔を殴られたのだろうか……腫れて赤くなっている。
「体の傷よりも、彼には心のケアが必要だよ、エージさん」
そう言われて、エージは「あぁ……」と低く呟く。
深夜の救急外来の廊下で、エージは寒さも忘れて立ち尽くしていた。
「エージ君……?」
呼びかけられて、エージはベッドの傍に寄った。
「気づいた?」
「ここ……病院?」
そう聞かれてエージは頷く。椅子を寄せて座ると、テツの額に手を当てて優しく撫でる。
「もう大丈夫」
「エージ君……」
テツはそう言うと、涙を浮かべた。
「ごめんね……僕」
「てっちゃんが謝ることないだろう。謝るのは俺の方だ――」
エージはそう言って何度もテツの額を撫でながら頭を下げた。
「ごめんな。助けてやれなくて……俺が助けてやらなきゃいけなかったのに」
「違うよ。エージ君のせいじゃないの」
テツはそう言うと、「僕のせいなの。僕がバカだから……」と両手で顔を覆った。
「あんな奴信じた僕がバカだった。分かってたのに……でも逆らえなくて」
震えながら話すテツの手を、エージは握りしめた。
「僕、助けてって言ったのに。カズ君、乱暴される僕見て笑ってた。1人エッチしながら」
「てっちゃん、もういいよ。話さなくていいから」
「イヤだって言ったのに……僕、助けてって言ったのに……」
「てっちゃん」
エージは泣きじゃくるテツの頭を優しく抱きしめると、「もういいから。何も言うな」と額にそっとキスをした。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
と、繰り返しながら――安心したのか、再び深い眠りに落ちたテツを見て、エージはそっと病室を出た。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる