哀歌ーelegy－

雷雪

インターバル【現在】

「そういや姐さん、今日は何日だ？」
　ふいに佐倉にそう聞かれて、サチ姐はカレンダーに目をやった。
「１８日よ。それがどうしたの？」
「そうか……」
　佐倉はそう呟いて頷いた。

　軽いノリで話を聞いていたスーちゃんと綾瀬だったが、これ以上、話の先を聞いていいものかどうか迷ってしまった。
　そして、神妙な面持ちでテツの方を見る。

「あ、ねぇ。話やめてカラオケでもする？」
　スーちゃんがそう言ってマイクを取り出した。
「そうだね。エージさんが刑事だったって知っただけでも十分だよ」
　綾瀬もそう言いながら、頷く。



「いいよ、気にしないで」



　ふいにテツがそう言って、２人を見た。
「でも……」
「大丈夫。だって過去の事だもん。それに、僕も知りたいんだ。エージ君がなんで警察辞めちゃったのか」
「テツさん」
　テツは佐倉を見ると、「聞かせてサッ君」と言った。
　佐倉はテツの目をじっと見つめた。

　そこに、かつての怯えた青年の目はなかった。
　愛される者の強さと自信が、今のテツの眼差しにはあった。

　その事に佐倉は気づくと、黙って頷いた。


　そして改めて、当時のエージに思いを馳せると、込み上げてくる苦い思いに顔をしかめる。
　それでも、佐倉は続けた。


「俺はアイツの変化に気づいていた。でもそれが何かまでは分からなかった。もっとちゃんと調べていれば――それを思うと、今も後悔しているよ」