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1-2 落ちこぼれ②
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あれから一週間たった。
俺は変わらず薪割りをしている。
しかし、珍しいことに執事のダリスが変わったことを言い放った。
「今日はライガー様の師匠候補の方々が来られる。私も同席しなければならないため、お前の面倒を見ることはできない。大人しく、薪割りをしていることだ」
「あ、ああ」
「いいか、くれぐれも来客の方の眼に触れるなよ。お前は視界に入るだけで罪に問われる存在であることを弁えろ」
嫌に念を推してくる。
とりあえず頷いておくと、ダリスの奴はいそいそと行ってしまった。
——薪と向き合ってみる。
うむと唸り、闘気を流し込んでみる。
横目で辺りを見回した。
今度はわざとらしくペシペシと音を立てて木材を叩いてみる。
再び辺りを確認し、誰も来ないことを認識する。
本当に行ってしまったらしい。
「よし、フケるか」
何が大人しくしておけだ。誰も見ていないところで真面目にやっていられるほど俺は馬鹿じゃない。
久しぶりの自由に、ウキウキとしながら向かう先は厨房だ。
厨房は屋敷の一階にある。昼過ぎなので、使用人は誰もいない。絶好のチャンスだ。
「確か、上から三番目のここにあったはず……」
棚を開けると、そこには水瓶が鎮座している。
ゴクリと喉を鳴らす。
蓋を開けるとほんのりと甘い蜜の香りがした。
試しに中身をすくって、皿に盛ってみる。
金色の液体がキラキラと踊る様に目を惹かれる。
それで、試しに見た目を上から眺めてみる。
透明な液体の向こうで、細やかな気泡が魅惑的にこちらを見つめる。
試しにそれを口に近づけて、中に放り込む。
瞬間、口の中で溶ける甘味成分。
ドロっとした重厚な感触が舌の上を支配し、それにフレッシュな甘味が追随する。
これが——幸福の味。
疲れ切った体が息を吹き返すかのようだった。
「これだよ、これ……! ゴールデンスライムの蜜だ!」
「おや、ここで何をしているんだね少年。訓練のサボりかの?」
瞬間、怖気が全身を駆け巡った。
誰だ。
振り向くよりも先に、数々の言い訳が脳内を過ぎる。
どうする!? どうしよう!? まさかこの時間に厨房に人がいるとは思わないだろ!?
——終わった。
絶望しながら振り向けば、そこにいるのは使用人でも家族でもなかった。
「一人でヒソヒソ隠し事とは、感心せんのう」
老爺だ。
白い髭に、黒のコート。それから、髪のない頭。
「——ワシも混ぜてくれんか?」
老爺は意地らしく目を細めて、そう言った。
俺は変わらず薪割りをしている。
しかし、珍しいことに執事のダリスが変わったことを言い放った。
「今日はライガー様の師匠候補の方々が来られる。私も同席しなければならないため、お前の面倒を見ることはできない。大人しく、薪割りをしていることだ」
「あ、ああ」
「いいか、くれぐれも来客の方の眼に触れるなよ。お前は視界に入るだけで罪に問われる存在であることを弁えろ」
嫌に念を推してくる。
とりあえず頷いておくと、ダリスの奴はいそいそと行ってしまった。
——薪と向き合ってみる。
うむと唸り、闘気を流し込んでみる。
横目で辺りを見回した。
今度はわざとらしくペシペシと音を立てて木材を叩いてみる。
再び辺りを確認し、誰も来ないことを認識する。
本当に行ってしまったらしい。
「よし、フケるか」
何が大人しくしておけだ。誰も見ていないところで真面目にやっていられるほど俺は馬鹿じゃない。
久しぶりの自由に、ウキウキとしながら向かう先は厨房だ。
厨房は屋敷の一階にある。昼過ぎなので、使用人は誰もいない。絶好のチャンスだ。
「確か、上から三番目のここにあったはず……」
棚を開けると、そこには水瓶が鎮座している。
ゴクリと喉を鳴らす。
蓋を開けるとほんのりと甘い蜜の香りがした。
試しに中身をすくって、皿に盛ってみる。
金色の液体がキラキラと踊る様に目を惹かれる。
それで、試しに見た目を上から眺めてみる。
透明な液体の向こうで、細やかな気泡が魅惑的にこちらを見つめる。
試しにそれを口に近づけて、中に放り込む。
瞬間、口の中で溶ける甘味成分。
ドロっとした重厚な感触が舌の上を支配し、それにフレッシュな甘味が追随する。
これが——幸福の味。
疲れ切った体が息を吹き返すかのようだった。
「これだよ、これ……! ゴールデンスライムの蜜だ!」
「おや、ここで何をしているんだね少年。訓練のサボりかの?」
瞬間、怖気が全身を駆け巡った。
誰だ。
振り向くよりも先に、数々の言い訳が脳内を過ぎる。
どうする!? どうしよう!? まさかこの時間に厨房に人がいるとは思わないだろ!?
——終わった。
絶望しながら振り向けば、そこにいるのは使用人でも家族でもなかった。
「一人でヒソヒソ隠し事とは、感心せんのう」
老爺だ。
白い髭に、黒のコート。それから、髪のない頭。
「——ワシも混ぜてくれんか?」
老爺は意地らしく目を細めて、そう言った。
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