二周目貴族の奮闘記 ~シナリオスタート前にハーレム展開になっているんだけどなぜだろう?~

日々熟々

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第一章 ゲームの世界

16話 更新

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「この度は絶体絶命の窮地を救っていただき、本当にありがとうございます。
 勇者様が来てくださらなければ我々は間違いなく全滅しておりました……」

 取り急ぎの戦後処理のあと、荷馬車から降りてきた隊商の主が地に頭がつかんばかりに何度も深々と頭を下げている。

 ちなみにこのときの『勇者』というのは、このような場合に相手をおだてる常套句で本来の意味ではない。

「いえ、プロイセス王国騎士として当然のことをしたまでのこと。
 どうかお気になさらずに」

 極力鷹揚に見えるように笑顔を浮かべて商人さんのお礼を受け取る。

 兄上からさんざん「商人には出来るだけ『いい顔』をしておくように」と仕込まれているので半ば条件反射だ。

「おおっ、騎士様でございましたか。
 改めまして、私はミハイル・ハルツヴァーと申しまして、小さな商会の商会長をいたしております。
 あちらにおりますのは娘のシャルロッテでございます。
 シャルロッテ、ほら、隠れていないでお前もお礼をしなさい」

 ミハイルさんは荷馬車に積まれた荷物の後ろからこっちの覗き込むようにしているシャルロッテさんを呼ぼうとするけど、シャルロッテさんは僕と目が合うと逆に完全に荷物の影へと隠れてしまった。

「いやはや、どうやら騎士様の勇姿を見て恥ずかしくなってしまったようですな、礼儀のなっていない娘で申し訳ありません」

「いえいえ、このような血なまぐさい事態になって怖かったのでしょう。
 気にしないでください」

「暖かいお言葉ありがとうございます」

 再びペコペコと頭を下げだしたミハイルさんが、頭を下げたまま言葉を続ける。
 
「なにかお礼をすべきところなのですが、なにぶん今は納品途中の商品しか手元になく……商会に戻り次第、きちんとしたお礼をお届けいたしますので本日のところはこれでどうか……」

 そのまま多分金貨の入った皮の小袋を捧げるように差し出してくる。

 その様子は完全に恐縮している善人に見えるけど、兄上から「こういう場合はこの場を適当に乗り切って、お礼は有耶無耶にする気だ」と教わっている。

 …………兄上は商人に対してなにかトラウマがあったんだろうか……。

「そうですか、ではありがたく受け取らせていただきます。
 騎士として当然のことをしただけですので、正式なお礼というものもあまり高価なものでなくて構いませんから」

 同時に「差し出してきたものはもらっとけ。ついでに少しは欲も見せておけ。無欲の人間を商人は不気味がる」とも教わっている。

 絶対商人となんかあったな、兄上。

「寛大なお言葉、流石は高潔なる騎士様でございますっ!」

 兄上から色々話を聞いている身からすると、ミハイルさんのすべてが白々しく見えてくるから不思議だ。

 見た感じ悪い人ではないんだと思うけどなぁ。

 僕みたいな子供に対して態度が仰々しすぎるのでどこか胡散臭く見えるのは確かだ。

「旦那ぁっ!動けない奴らは全員荷台に積み込みましたぜぇっ!」

 最後まで残っていた護衛さんが大声で報告しながら戻ってきた。

 結局、彼を含めて11人いた護衛のうち二人は即死していて助けることは出来なかった。

 他にもまだ動かせない傷を負っている護衛さん達がいるけど、彼等は後ほど改めて治癒魔法を使えば問題なく動けるようになるはずだ。

 …………僕が昨日のうちにゴブリンの巣を潰していれば彼等の犠牲は出なかったのだろうか?

 昨日みんなと過ごす事にしたのは間違った選択ではなかったと思うけど、後悔とまではいかない苦い気持ちが残る。

「オレの名前はアルバ。
 今日は本当に助かったっ!坊っちゃん、助太刀ありがとうなっ!」

 明るくそういうアルバさんにぎこちない笑顔を返すことしか出来なかった。



 屋敷のある村、アルメン村が目的地だという隊商と一緒に街道を歩く。

 まだゴブリンの巣は残っているけど、ある意味で目的は果たしたので今日のところはこのまま一緒に帰ろうと思う。

 彼等がシナリオにどう絡んでいるかだけど、『前』、ゴブリン騒動が本格化し始めた頃に街道でゴブリンに襲われ全滅した隊商の痕跡が見つかるということがあった。

 街道での戦闘音を聞いて、彼等だと当たりをつけたんだけど正解だったようだ。

 後々の村民有志によるゴブリン討伐の際にはチャンピオンはいなかったはずなのでアルバさんが相打ちで倒したのだと思うんだけど、結局彼等は一人を除いて誰も生き残らなかった。

 生き残った一人というのは、彼等の中で唯一の女性シャルロッテさんだ。

 ゴブリンの厄介な特徴の一つとして、二足歩行の哺乳類であれば他種族とも交配可能だということがある。

 しかも、なぜか人間と似た美醜感覚をしているらしく、同族のメスよりも人間の女性、それも整った顔立ちの女性を好む。

 そのためゴブリン族は、捕虜を取らずに人間は皆殺しが基本の魔王軍の中で数少ない――女性のみとは言え――捕虜を取る魔物であり、テリトリー外へは殆ど出てくることのない魔王軍の中で人間の女性を求めて積極的に人里に降りてこようとする厄介な魔物なのである。

 そんな彼等がつややかな金髪をした美少女であるシャルロッテさんを捨て置くはずもなく、巣に戦利品として持ち帰り……。

 色々あってシャルロッテさんは最終的には疫病をもたらすための生贄にされてしまう。

 今回のゴブリンの巣討伐は大まかに言えばシャルロッテさんが生贄になることの阻止が目的なので、一応は目的達成したようなものだ。

 あまり遠出するとノゾミちゃんが目を覚ましてしまうし、今日のところはこれで帰るとしよう。











 ――――――


 
更新情報:
バージョンアップに伴い、メインシナリオにシナリオ分岐を実装いたしました。
また、分岐シナリオ実装に伴いキャラクターの追加を致しました。

今後も、当ゲームをよろしくお願いいたします。
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