小学生に戻ってるっ!?……の裏側で ~引きこもり高校生と入れ替わった小学生がいつの間にかハーレムを築いている話~

日々熟々

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2話 四年間であったこと

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 流石にあの部屋でくつろぐ気にはなれなかったので、部屋には一歩も入ることなくリビングに向かった。

 お兄ちゃんにも部屋の中を見られちゃってすごい恥ずかしい。

 なにも言われなかったのだけが救いだ。

 リビングは4年前と変わらない感じだけど、すこしなにかが腐ったみたいな臭いがする。

 と思ったら、テーブルの上に食べかけのお弁当が放置されてた。

 いくらなんでもこれはひどい。

 異臭を放つお弁当の残骸を袋に入れて捨てて、窓を開ける。

 これでしばらくすればマシになるだろう。

 ひとまずやることをやってソファに落ち着いてからお兄ちゃんがいたことを思い出した。

 どうにも長いこと僕しか家にいない生活を送っていたから、家に誰かがいるってことに慣れない。

「あ、お兄ちゃんごめんなさい。
 座って座って」

 リビングのドアのところでちょっと呆然とした様子で立っていたお兄ちゃんを手招きする。

「お見苦しいものをお見せいたしました」

 食べかけのお弁当を放置しておくとか、記憶を失う前の僕はなにをやっていたんだろう。

「あ、いや、あれは俺が残しちゃったもんだから……」

「え?そうなの?」

 お兄ちゃんは中学の頃からかなりしっかりした人だったのに、そんなことをするなんて珍しい。

「あ、ああ……お前が飛び降りたって聞いて慌てて……」

 そこまで言ったお兄ちゃんが、しまったという感じで口を閉ざす。

 そっかー、やっぱり僕、自殺したのかぁ。



 僕の座るソファの向かいに、気まずそうな顔でお兄ちゃんが座ってる。

 まあ、僕としては4年前から多分このままいつか自殺するんだろうなぁと思っていたから、「やっぱりかぁ」って感じなんだけど……。

「…………いや、すまん。
 優太が……久しぶりに元気に動いてる優太を見たら、なんか色々混乱しちゃって……」

 簡単な部屋の片付けをするだけで驚かれる僕って一体。

「4年後……今の僕ってどんなだったの?」

 僕の言葉は届いていると思うんだけど、お兄ちゃんは黙ってうつむいたまま話してくれない。

 あんまり言いたくないんだろうけど、僕としては聞いておかないとだからなぁ。

 僕も困っちゃって黙っていたら、ためらうようにゆっくりとお兄ちゃんが口を開いた。

「…………俺も月に一度くらいしかこれなかったんだけど、ベッドから起き上がっているのをもう何年も見たことなかった」

 うわぁ……引きこもり続けるとそんなになっちゃうんだ……。

 そう思ったんだけど、お兄ちゃんがぽつりぽつりと話してくれた僕の知らない4年間は引きこもり続けた4年間ではなかったみたいだ。

 小学5年の2学期の頃…………多分、お弁当の日にクラスで僕だけがコンビニのお弁当を持ってきたのが始まりだったと思う。

 はじめの頃はそのことをからかわれていただけだったのに、だんだん悪口を言われるようになって、僕のものが無くなったり壊されたりするようになって、最後には手が出るようになった。

 友達だった子たちが話もしてくれなくなって、先生は気づいても助けてくれなくて。
 
 それでも、なんとか頑張って学校に通ってたんだけど、ある日、外でイジメられている時に通りがかったコーコーセーに可哀想なものを見る目で見られて……。

 でも、目も合ったのになにも見なかったというようにそのまま立ち去って行って……。

 なんでかはよく分からないけど、それからは学校に行けなくなった。

 その時はすぐに冬休みになったけど、そのまま新学期が始まっても学校にはいけなくて……。

 そのまま学校に行けないまま6年生になって。

 ちょうど一学期が始まる前日の誕生日までが僕の記憶だ。

 お兄ちゃんによると、その後、僕は6年生をまるまる休んで引きこもっていたらしい。

 でも、中学生になった時に、もう一度学校に通い出したんだそうだ。

 と言っても、保健室登校?ってやつらしくて、お兄ちゃんはしきりに褒めてくれてたけど、どうやらまともには通っていなかったみたいだ。

 そして、そこでもまたイジメられて、それでも一学期の間は頑張ったらしいけど、夏休み明けの二学期からは一度も学校に行かないまま今に至るらしい。

「今俺さ、バイトして一人暮らししててさ。
 本当は優太と一緒に暮らす予定だったんだよ」

 ……?

 どういうことだろう?

 引きこもっていたとは言え、ここには僕の家も部屋もあったのになんでそんな話になったんだろう。

「誕生日の日はさ、色々準備が整ったから優太を迎えに来てたんだよ。
 それなのにあんな事になっちゃって……」

「……………………えっと……僕が嫌がっていたとか……?」

 この家を出ていく理由は分からないけど、お兄ちゃんと一緒に暮らすって言うなら僕は喜んでいくと思うんだけど……。

 だけど、話を聞いているとタイミング的にはそのことが原因だとしか思えない。

「いや、優太は乗り気でいてくれた……と思う」

 だとしたら僕はなにがそんなに嫌だったんだろう?

 乗り気に見せていただけで本当は家を出るのが死ぬほど嫌だったんだろうか?

 不思議に思っている僕の耳に、玄関のドアが開く音が聞こえた。



「あら、帰ってきてたの?
 あんまり心配かけないでよね」

 珍しく家に帰ってきたお母さんがソファに座る僕を見るなりそう言った。

 お母さんは元々大人なせいか4年経っても見間違えるほどの変化はない気がする。

 僕の覚えている頃と同じスーツ姿のピシッとした感じのままだ。

「全くだ。
 いい加減面倒をかけるのはやめてもらえんもんかね」

 お母さんに続いて、お父さんも入ってきた。

 お父さんは顔自体はそれほど変わんなかったけど、以前はあんまり着ている印象のなかったスーツを来ている。

 お母さんは教育評論家?という仕事をしていてテレビに出たり大勢の人の前で話したりで飛び回っている。

 お父さんも元プロサッカー選手の解説者としてやっぱり飛び回っている。

 その二人が同時に家にいるとか珍しいな。

「…………おい、病院にも来ないで今までなにやってたんだ?」

 お兄ちゃんの声が、低く不穏な感じになっている。

「え?だって命に別条はないって聞いてたし」

「ああ、悪いが今は支持者回りで忙しい時期でな」

「悪いけど、私もこの後すぐに札幌に行かないとだから忙しいのよ。
 高校の方には怪我で少し入学が遅れるって伝えてあるから、帰宅できてるんなら早く寮に入りなさいね」

 高校?寮?

「まだそんなこと言ってやがんのかっ!?
 お前らが無理にそんな話進めるから優太は自殺しようとしたんだろうがっ!!」

 び、びっくりした。

 基本無口で穏やかなお兄ちゃんが怒鳴るのなんて初めて見た。

「やあねぇ、自殺なんて人聞きの悪い事言わないでよ。
 優太はただ足を滑らせただけ、そうでしょ?」

「ああ、あんまり面倒な話にしないでくれよ。
 そろそろ総選挙の時期なんだから、汚点になるような話が流れるとマズイんだよ」

「そうそう、私もちょうど本を出したところだから変な噂流れるとマズイのよ。
 だからわがまま言わずにいい加減ちゃんと学校に通ってよね」

「そうだぞ。
 優太、お前がイジメられるのはお前が弱いからいけないんだからな。
 強くなってイジメてた奴らを見返してやれ」

「そうそう、学校なんてただ通ってればいいのよ。
 別にいい成績を取るとかにはもう期待してないから、気楽に通いなさい」

 …………びっくりしたぁ、4年経ったていうのが嘘かと一瞬思っちゃった。

 僕の最後の記憶、4年前の誕生日のときにも二人に全く同じことを言われた。

「…………話になんねぇ。
 優太は俺んちに連れて行くからな」

 怒りを通り越して呆れた様子のお兄ちゃんが、もう決まったことみたいに言う。

 まあ、僕は全然それで構わないんだけど……。

「え?そんなのだめに決まってるじゃない。
 中学まではなんとか誤魔化したけど、これ以上息子が引きこもりなんて無理よ」

「そうだぞ、そんなことがマスコミに知られたらせっかく築いた地盤が崩れかねん」

 やっぱり、この人たちには話通じないよねぇ。

 学校は通って当然、通わないのは恥ずかしいって散々言われたからなぁ……。

「そんなんお前らの都合だろ。
 別にお前らの同意なんて求めてねえよ。
 どんなに反対しようが勝手に連れて行くからな」

「あら、それは困ったわねぇ」

「たしかお前のマンション、俺が保証人になってたよな?
 優太を連れて行くと言うならあれは無効にするぞ」

「……ちっ。
 代わりの保証人か、保証人の必要ない部屋探すから問題ねーよ」

「あらあら、子供が生意気なこと言っちゃって。
 まあ、そうしたいならそれでもいいけど、新しい部屋が見つかるまでは優太は寮に入ってもらうからね」

「あまりみっともない事をするな。
 親子仲が悪いなどと週刊誌に騒がれたら面倒だろうが」

 言い合いを始めてしまったお兄ちゃんとお父さんたちだけど……お兄ちゃんのほうが分が悪そうだ。

 とうとうお兄ちゃんが大学を辞めて働くといい出して、これはまずいと思った。

「大丈夫っ!僕高校に通ってみるよっ!」

 こうして僕の高校生活が始まることが決まった。
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