小学生に戻ってるっ!?……の裏側で ~引きこもり高校生と入れ替わった小学生がいつの間にかハーレムを築いている話~

日々熟々

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26話 土曜日

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 今日も遥くんの声で目を覚ます。

 本当なら今日みたいな土曜日とかの休みの日は僕も遥くんも好きなだけ寝てるんだけど、今日はお兄ちゃんが来る予定だから特別だ。

 お兄ちゃんが来るのはお昼前だけど、寝坊するわけにも寝ぼけたまま行くわけにもいかないのでいつもどおりの時間に起こしてもらった。

 それならそれで自分で起きろ……って話なんだけど……。

「ね、ねぇ、ゆーたくん、これおかしくないかな?大丈夫かな?」

「うん、大丈夫だよ。
 すごいか……かっこいいよ」

 何度も何度も身だしなみを確認している遥くんに返事を返す。

 本音からの感想は『可愛い』なんだけど、未だに遥くんに可愛いって言っちゃっていいのか判断がついていない。

 怒られちゃうことはないと思うけど、傷つけちゃっても嫌だし……。

「ほんと?
 初めてお兄さんにご挨拶するんだから失礼のない格好にしないと……」

 ということで、遥くんも付いてくることになってるので、今日も起こしてもらった。

 本当は僕一人で会う予定だったんだけど、昨日。

「明日、お兄ちゃんと会ってくるね」

「なんで言ってくれなかったのっ!?
 ボクもご挨拶したいっ!」

 というやり取りがあって、お兄ちゃんの承諾ももらえたので急遽一緒に行くことになった。

 それ以来、昨日からずっと遥くんは緊張した様子だ。

 バイトの合間に来てくれるってことで、ファミレスでお昼を食べるだけだからそんなに気を使わなくてもいいのに……。

 そう思いながら「やっぱりこっちにするっ!」と言ってまた着替えだした遥くんを少し呆れた目で見続けていた。

 どれ着たって可愛いから大丈夫だよぉ……。



 ――――――――
 


 送迎用の駐車場に車を停めて、優太に『着いた』と連絡を入れた。

 即座に『すぐに行くね』という返事が返ってきたのを確認してスマホを消す。

 ……久しぶりに優太と会うということで、少し緊張しているのが自分でも分かる。

 前はもっと長い間会わないでいたこともあるが、今回は高校に入学してから初めての再会だ。

 中学の頃のような憔悴した様子になっていないか心配で仕方ない。

 不安に思いながら待っていると、優太が歩いてきたのに気づいて車から出る。

 遠目で見る限りだけど、元気そうな様子でひとまず安堵した。

「優太、久しぶりだな」

「お兄ちゃんっ!」

 俺の姿を見つけた優太が駆け寄ってきて、そのまま抱きついてくる。

 高校生にもなって……という思いが一瞬浮かぶが、まだ優太の『中身』は4年前のままだと考えればこんなものかと思い直す。

「元気にやっていたみたいで安心したぞ」

 遠目で見た通り、優太はやつれた様子も気落ちした様子もなく元気そのものといった感じだった。

 この様子を見る限り、心配していたイジメにあったりとか言うことはなさそうに見える。

「お兄ちゃんも元気そうで良かった」

 猫がなつくように頭を押し付けてくる優太を撫でながら、少し辺りを見回す。

「友達と一緒に来るってことだったが、どこにいるんだ?」

 昨日、優太から急に『友達も連れて行っていい?』というLINEが入った。

 友達から見た優太の様子も聞いてみたかったからすぐに承諾したんだが……その友達の姿が見えない。

 なぜか、近くにいるパンツルックのボーイッシュな女子がこちらを見てくるので、一応会釈をしておいたが……それだけだ。

 あたりには俺たちの他には通りがかりのやたらと可愛い女子がいるだけで、どこにも優太の友達の男子の姿がない。

 これはアレか……実際には友達なんていなくて、いるのを偽装した上で「今日は来れなくなった」と言うやつか。

 悲しい事実に気づいてしまったが、なにも気づかなかったフリで優太の言葉を受け入れよう。

「え?ここにいるよ」

 ……?

 優太はそう言うが、そこにはさっきの女子しかいない。

 ま、まさか、幻覚の友達が見えるように?

 …………今日はファミレスよりも病院に連れていくべきかもしれない。

「あ、あの……」

 良い病院がないか検索しようとした俺に件の女子が話しかけてくる。

「はい?どうかしましたか?」

「あ、あの……ゆ、優太くんのルームメイトで、と、友達をさせてもらっている本庄遥ですっ!!
 ふ、不束者ですがよろしくお願いしますっ!!!」

 女子生徒が意味の分からないことを言って頭を下げている。

 ルームメイト……友達……。

「え?」

 あれ?ここの寮って男女同室なんて言ういかがわしいことが許可されてるんだったか?

 …………いや、優太の入った寮は男子寮だったはずだ。

 可愛いという話は聞いていたが、これはそう言うレベルの話じゃない。

 これは……アレだな。

 ようやく現実を把握できたので優太を少し離れたところに引っ張ってくる。

「優太、これアレだろ?
 本庄くん、実は女の子なの隠して学校に通ってるってやつだろ?
 俺は気づいちゃって良いのか?それとも気づいてない感じでいったほうが良いか?」

 俺たちのことを不思議そうに見ている本庄くんをチラチラ見ながら耳打ちする。

 大丈夫、こう見えて俺、そう言う話も少しは分かるんだ。

 友達にそう言うの好きなやつがいてな、たまに漫画貸してもらったりしてるから。

「…………お兄ちゃん?なに言ってるの?
 遥くんは男の子だよ」

 ……なるほど、優太もまだ気づいていないやつか。

 見た目からしてあんな美少女な上に名前まで『遥』ってまんまな名前なのにな……。

 意外と当事者になると気づけないものなんだな。

「優太、そう言うのはなちゃんと確認しないで決めつけちゃいけないんだぞ」

 下手に決めつけると風呂とかトイレでばったりなんてことになるんだ。

 漫画で読んだことある。

「いや、だからちゃんと確認した上で男の子なんだって」

 …………そうなの?



 失礼を承知で本庄くん本人にも聞いてみたが、はっきり男だと言われた。

 お互い男のシンボルも見てしまったことがあるみたいで、疑う余地はないみたいだ。

 ……いや、お互い見たことがあるという事実自体にも驚いたけど、ルームメイトなんてやっているとお風呂やらなんやらそう言う事になってしまうタイミングもあるんだろう。

 この寮は個室に風呂トイレがあると聞いてたんだがなぁ?

 しかし、二人が話している様子を見る限り本当に仲がいいようで、一日だけ演技で頼んだとか言うこともなさそうだ。

 良かったな……友達できたんだな……優太……。

 ちょっと涙出てきた。



「変なことを言っちまった謝罪も兼ねて、二人共好きなものを注文してくれな」

 あのあと二人を車に乗せて少し離れたところにあるファミレスに向かった。

 幸いまだ12時前だったので、混んできてはいるが並ぶこともなく席に案内された。

 好きなものを頼んでいいと言ったが、結局なんやかんやみんなランチメニューになった。

 注文を済ませて、届くまでの間に本題を終わらせてしまおうと思う。

「ほれ、優太、これが約束のスマホだ」

 カバンから箱を取り出して、優太の前に置く。

「うわっ、最新機種だ」

 箱のロゴを見た本庄くんが少し驚いた声をあげる。

「えっ!?高かったでしょ、これっ!?」

 実際のところかなり痛い出費だった。

 だが、高校ではこういう物を持っているかどうかでイジメられたりもするので奮発することにした。

「あんまりこういうのに詳しくなくて店員に言われるままに買っちまったからな。
 まあそこまで痛い額でもないから気にすんな」

 来月のバイトの給料日までもやし生活を送ればいいだけだ。

「お兄ちゃん……。
 ありがとう、大事にするね」

 うん、優太のこの笑顔を見られただけで買った甲斐はあった。

「さっそくいじっていいっ!?」

「ああ。
 落としたりしないようにな」

 本庄くんと仲良さそうに話しながらスマホをいじっている優太を見て、また涙が出そうになった。



 俺たち三人で練習がてらLINEを送り合っている時、ちょっとズレたタイミングで優太のスマホが鳴った。

 今は誰も送っていないタイミングだったが……?

「あ、佐倉さんだ」

 スマホを見た優太が、聞き捨てならないことを呟いた。

 さくらさん?

 今まで聞いたことのなかった名前だが……。

 さくら『さん』?

 女子か?今度こそ女子なのか?

 い、いや、優太には申し訳ないけれどコミュニケーション下手な優太に女子の友達が作れるとは思えない。

 となると、単に目上の人に対する『さん』か?

「なんだ優太、さっそく彼女でも出来たか?」

「そ、そんなんじゃないよっ!
 ぼ、僕、ちょっとトイレ行ってくるね」

 からかい混じりの探りを入れてみたら、慌てた様子でスマホを持ってトイレに行ってしまった。

 ……え?なに?あのガチな反応なに?

 え?も、もしかして……。

「あの……本庄くん……。
 『さくらさん』ってもしかして本当に優太の彼じ……」

「違います」

 笑顔の本庄くんに食い気味に否定された。

 すごいニコニコとして可愛い笑顔なのに、すごい怖かった。

 大丈夫か?優太?

 本庄くんにイジメられてないか?



 一瞬本庄くんを怖く感じたのは勘違いだったようで、その後はちょっと初対面の緊張はありながらも楽しく優太との高校生活の話を聞かせてもらった。

「ただいま」

「おお、今ちょうど優太の話を色々聞かせてもらってたところだぞ」

「えっ!?遥くん変なこと言ってないよねっ!?」

 友達というものに慣れていないせいか妙に焦る優太をからかいながら食事をして、今回の食事会は終了した。



「それじゃ、またな」

「うん、また遊びに来てね」

「ああ」

 また三人で食事をすることを約束して学園をあとにする。

 優太が元気そうで本当に良かった。

 また涙出てきた。
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