ポチの日記

手の平クルクル

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母さん日記

小さな悪意 改

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ポチが寝袋に包まり寝ている傍で母さんことテルミストはポチから渡された日記の添削をしていた。
ポチが書いた日記は「森を歩きました。楽しかったです。」と相変わらず簡潔に書れていて内容の薄さに苦笑いを浮かべるが、自分が子供の頃も似た様な物だったから内容には目を瞑ろう。
誤字を訂正して「よくできました」と一言感想を書き加えて小さな花丸を描く。
そうして添削の終えた日記はポチの枕元に置かれる。
ふと顔を覗いてみればポチは穏やかな寝息を立ていた。
頭を優しく撫で付けると心地良さそうに身動ぎをして小さく「かあさん」とポチが呟いた。

「…………母さん、ね。」
 
この子と旅を初めて随分と経つ。
だけど未だにこの人に、ポチから"母さん”と呼ばれることには慣れない。
それでもポチから母さんと呼ばれる度に胸の中が熱くなるのを感じる。
私の事を母さんと呼んで喜びに満ちた笑顔、拗ねて怒った時、失敗して半ベソになって泣いてる姿、楽しそうにはしゃぎ回る姿は見てるだけでポチの事を愛おしく思う。

────────でも、そんな時間が続けば続く程に胸の奥に小さな棘が突き刺さり重苦しくなる。
ポチが母さんと呼ぶ度に小さな棘がどんどん突き刺さり心に闇を落とす。

あの時、遺跡に入らなければ。
あの時、彼を見付けて目覚めさせなければ。
あの時ポチと名前を与えなければ。

             お前さえ居なければ。

何処までも冷たくて重いドス黒い感情が渦を巻き眠るポチの顔を見据える。
どこまでも純粋でそして悍ましい男の寝顔は憎悪を、怒りを身体の中から滾らせて─
その時、両手が何かを握り込んでいるのに気が付き視線を移す。
頭を撫で付けていた手は何時の間にかポチの首を両手で締め上げていた。
慌てて手を引き離すも力が強かったのかポチの首には手の跡がくっきりと残っていた。

「ぁ…私…私なんで…?」

驚きの余り視線が交互に自分の両手とポチの首へと交差する。

私が、私がポチの、自分の子の首を絞めた?

手から首へ、視線が何度も移り変わる度に無意識に彼を殺そうとしたのだと現実が追ってくる。

「生きて……生きてる…よね…」

テルミストは恐る恐るポチの顔を覗き込む。
首には手の跡が無く、ポチは何事も無かったかの様に穏やかに眠っていた。

「あぁ…良かっ─」

良かった。そう言いかけて自分の手が再度ポチに伸び掛けている。
慌てて引っ込めて荷物の中から適当な紐を取り出し両手にキツく縛り付ける。
そしてそのまま自分の寝袋に入り込み目を閉じた。


きっと悪い夢を見ているのだ
今日の事は忘れよう。
忘れて寝てしまおう。
眠ってしまえばきっと……きっと大丈夫だから。
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