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何時も、何時までも。 Good night forever.

それからのおはなし。

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 晴れ渡った快晴の空、そよ風で優しく揺れるカーテン、規則正しい心電図の音。
 ベットに横たわる彼の寝顔。
 そして小さな妖精が1人
 彼女はベットで眠る彼の枕元に飛び行き、彼の大きな頬にキスをする。

「ただいま。」

 そう声を掛けるが彼の反応は、無い。
 ただ何時までも変わらずに心電図の規則正しい電子音と共に穏やかな寝息を立てるのみである。
 長らく彼に会えてなくてごめんね、と心の中で独り言ちてから彼の着る薄青い病衣の中に潜り込むんで猫の様に寝やすい場所を探す。
 これが病衣では無く寝間着であれば胸ポケットに入って終わり眠れるのだが、病衣は浴衣の様に着て腰紐で結ぶタイプなので中々眠りやすい位置を見付けるのが大変なのだ
 ともあれ少しして浴衣が交差する場所に決めて身体を滑り込ませる
 肌から伝わる暖かさが心地よく、欠伸と眠気を与えてくれた。
このまま身体を眠ろうか、きっと気持ちいい筈だ。

「私とアンタが出会ってから20?30だっけ…本っ当に大きくなったよね。」

眠りにつく迄少し時間もいるしちょっとだけ昔話をしようか、と言っても話し相手の彼、水瀬悠真はうんともすんとも言わないのだが
リリャーカは彼、悠真と共に過ごして来た長い人生を、悠真とは色々な事を見て聞いて共に歩んで来た懐かしい記憶を手繰り寄せ語り始めた。

「中学生の頃なんて私が起こさなければ寝坊して学校に遅刻なんてしょっちゅうするし、初めて好きな子に告白なんて見事に玉砕しちゃって部屋で落ち込んでるのを慰めるのに苦労したり……かと思えばいきなり成長しちゃって大人びて格好付けて失敗して笑い話の種になったりさ。社会人になっても毎日遅刻寸前だったりってのもあったし毎日がドキドキハラハラでアンタと居て本当に楽しかったなぁ……あ、それからさ」

………こんな事をしても彼が起き上がって一緒に笑ってくれる、一緒に泣いてくれる、そんな幸せなんて二度と訪れ無いのだ。
あの日、奪われた世界も、オデルナちゃんも全部纏めて救うって一緒に決めて文字通り全てを代償にした
私と、悠真が選んだを彼が消えてしまった埋もれた灰の後だとしても。
それでも私は、リリャーカは何時までもこの身が擦り切れて消える迄、貴方に言葉を送ろう。
あの日、貴方が私に言おうとして言えなかった問の答えを。



私も貴方を愛していると。
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